2016年度 オータムセミナー(研究成果報告会)を開催しました

 オータムセミナーは、本学の教員が専門分野から身近なテーマを選んで、一般社会人に分かりやすく解説する講座です。
 今回は、9月15日(木)、阪南大学あべのハルカスキャンパスにおいて、最先端の学術研究成果等の内容を紹介する講座として、「見て・聞いて 防災意識を高めよう−災害対応力養成のためのシミュレーション技術−」をテーマに開講しました。

 ご講演では、まずご自身の研究分野である「マルチエージェントシステムを用いた避難者の群流動シミュレーション」の紹介とその評価方法の説明をされました。その後、このような研究の先にある広域での防災に活用できるという観点から防災や減災に関する行政機関や地域コミュニティの動向に関する話題を提供されました。

 後半の講演では、日本における災害の現状や近い将来起こるであろう巨大災害についてのまとめを行った後に、東日本大震災を契機とした防災、減災に対する基本的な考え方の変化について説明がなされました。

 東日本大震災における想定を超えた災害が被害を増大させたとの反省から、耐震や防波堤などのハードな対策に加えて、事前の対策では対応できない事態に対する体制や行動計画を策定するなどソフトな対策を講じる必要があり、現在の防災行政がそのような観点で進められていることを強調されていました。そのソフトな対策には、公的組織に頼らず自らが地域と連携して対応していく「自助」「共助」の体制構築が、最も重要であると説明され、来場者へも地域の防災活動に積極的に参加することの重要性を説かれていました。また、防災対策の中でLアラートなど公共情報コモンズなどのIT活用のツール紹介と、今後のIT利用についての説明もなされました。

 講座には、40名の方が参加されました。講演後、「高齢者などの弱者対策を充実すべき」、「効率的な避難のために的確な情報提供の必要性を強く感じる」、「地域コミュニティにおいて事前の備えのために日ごろから準備しておくべきであると思われる」など来場者から改善すべき事項の意見が数多く提示され、参加者の関心の高さが表れていました。

 研究の情報提供に加えて、防災、減災のあり方について再考する良い機会になったと思われます。