正月恒例の開運松原六社参りを視察

ポスターとマップの効果を確かめる

2004年の申年から始まった「開運松原六社参り」は今年で9年目を迎えます。今年は阪南大学が協力してポスターを制作し、近鉄各駅に掲示していただいたこともあり、参拝者の数が増すことが予想されました。また、松原市商店会連合会の協賛を受けて制作した多色刷りの「開運松原六社参りMAP」がどれほど役に立ったのか、という点も気になります。そこで、松原ブランド研究会のメンバーは参拝の状況を確かめるため、六社参りを実際に体験しました。

1月8日(日)朝9時、近鉄布忍駅に集合した参加者は18人。中にはOMBC(松原インターネット放送局)「ママ友クラブ」に出演中のお二人中も参加されています。視察は人のネットワークを広げる機会ともなりました。以下、参拝のコースに従って視察の報告を綴ります。

(国際観光学部 来村 多加史 教授)

駅長おすすめハイキングの参加者が倍増

布忍駅を出発し、細い路地を通って西除川に出ると、右手に朱色の宮橋と布忍神社の森が見えます。神社までは駅から歩いて5分ばかりです。境内に入ると、寺内成仁宮司に出迎えていただき、参拝に続けて500円の初穂料でスタンプを集める横長の絵馬を頂戴しました。聞けば、絵馬がもう残りわずかなようで、予想を超える人数が参拝していることがわかりました。前日の7日に行われた近鉄開催の「駅長おすすめハイキング」には参加者が600人近くにものぼり、去年に比べて倍増したとのことです。ポスターの宣伝効果はてき面でした。ただ、効果が出すぎて、中日にして準備した絵馬が不足するという事態となりました。これには寺内宮司も「弱った」という顔をされています。開けてみなければ数字が読めないのが難しいところです。とはいえ、この反響は開運松原六社参りが地域ブランドになることを実感させてくれるものです。協力をさせていただいた者としては、嬉しい限りです。

人気のある阿麻美許曾神社のお福ぜんざい

布忍神社から我堂八幡宮へは1.4km、徒歩約25分の距離です。我堂八幡宮ではなんと絵馬が出尽くしていました。ひとりの年配の女性が授与所で事情を説明され、急いで布忍神社へ向かわれました。カバンを持っておられないので、おそらく地元の方でしょう。毎年欠かさずお参りしている方にとっては、スタンプを集めて授与される張り子の十二支は縁起物でもあるでしょうから、お気の毒です。布忍神社にまだ絵馬が残っていることをお祈りして、我々は次へ向かいました。

我堂八幡宮から善正寺の道を北上し、西除川の歩道橋を渡って天美西公園で小休止。足の疲れが出るほどの距離を歩いていますが、皆さんはまださほど休憩が必要ないようです。10分ばかり休憩したのち、阿麻美許曾神社まで一気に歩きました。我堂八幡宮から阿麻美許曾神社までは2km、徒歩40分の距離です。阿麻美許曾神社は1月7日から9日にかけて八日戎が催され、地元婦人会による「お福ぜんざい」の振る舞いがあります。準備中に伺いましたので、お相伴に預かることはできませんでしたが、仮説テントの座席には多くの参拝客が順番を待って、腰を掛けています。人気があるとは聞いていましたが、その通りでした。

地元が支える阿保神社の書き初め

阿麻美許曾神社から下高野街道を横切り、西除川の旧河道を通って近鉄南大阪線の踏切を渡ると、阪南大学の本キャンパスに突き当たります。ここでしばし手洗い休憩をとり、正門守衛室でトイレを借りに来られた参拝者の数を尋ねたところ、嬉しいことに十数名が訪れたようです。去年はひとりの来訪者もなく、寂しい結果でしたが、ここでも着実な増加が見られました。開かれたキャンパスを見ていただく絶好の機会となります。

阿麻美許曾神社から本キャンパスを経て天美駅前東商店街を通り、屯倉神社に至るまでは、最も長い道のりとなります。距離を測れば、3.3kmで、1時間も歩かねばなりません。工事中の阪神高速大和川線にそった単調な自動車道をたどれば最短距離となりますが、それでも2.9kmと、あまり変わりません。六社参りをより楽しんでもらうには、この距離を辛く感じさせない工夫が必要です。経路に何らかの仕掛けが必要ですが、それはこれから知恵をしぼることにしましょう。

屯倉神社では授与所に妻屋宏宮司がおられたので、ご挨拶をすると、やはり今年は盛況であるとのことでした。そのときひとりのご婦人が「地図をいただけませんか」と、授与所に置かれた六社MAPを遠慮気味に指さされました。「どうぞどうぞ」と差しだされる妻屋宮司との間に和やかな会話が交わされます。地図は頗る評判がいいとのことで、頑張って制作した努力が報われました。

中高野街道を下って阿保神社に至る道は900m弱と短く、足の疲れを覚えるまでに到着します。阿保神社では書き初めが行われ、境内には所狭しと長い半紙が吊るされ、神社にお参りする人々の多さが伺えます。絵馬への捺印に大忙しの鶴井皓司宮司にうかがったところ、ここでも絵馬がすべて出てしまったとのお返事でした。毎年団体でのお参りをされている地元老人会の参加者も今年はかなり増えたようです。六社参りを通じて連帯の輪が広がったことの証です。

研究会のメンバーも六社参りを達成

阿保神社から柴籬神社までの距離は1.6kmですが、時間も正午を過ぎましたので、近鉄河内松原駅でひとまず解散し、駅周辺の食堂で各自昼食をとっていただきました。昼食を挟むと、それなりに経済効果があるというものです。40分後に駅前で再集合し、柴籬神社へ向かう途中、丹比大溝や山ノ内古墳跡の説明をしますと、皆さん熱心に耳を傾けて下さいました。埋蔵文化財が見せる街中のかすかな痕跡を探すのは、楽しい体験です。六社参りのコースにそって松原の歴史を味わうこともできるのですが、史跡や歴史を伝える手段が必要です。案内の手段が言葉であれ、活字であれ、ウェブ情報であれ、実現可能な路線を模索する必要があるでしょう。

六社目となる柴籬神社では、絵馬をもった参拝客が列を作っていました。ここでも盛況ぶりが伺えます。さて、絵馬に六社のスタンプが揃ったところで、ふたたび出発点の布忍神社まで戻らねばなりません。柴籬神社から布忍神社までは徒歩で3kmの距離があります。さすがに疲労の色が皆さんの顔に出てきましたので、河内松原駅から布忍駅まで近鉄電車に乗って距離を縮めました。

布忍神社に到着したのは午後2時でした。朝の9時から始めて、ちょうど5時間です。食事の時間を除いても、4時間あまりの行程でした。ゆっくりと歩く参拝者であれば、食事を挟まなくても、ゆうに5時間はかかるでしょう。まだ日没が早い季節ですので、午後からスタートすれば、確実に暗くなってしまいます。やはり午前中から始めて昼食をとり、余裕をもって歩くのが宜しいかと思います。布忍神社で絵馬を提示すると、可愛らしい張り子の辰が授与されました。ママ友クラブのお二人に感想を聞くと、「来年もお参りします」とのお返事でした。疲労感よりも達成感が上回る体験であったことを、その言葉が物語ります。六社参りが松原ブランドになることを実感できた視察でしたが、地域振興への波及効果を高めるにはどうすればよいのか。研究会で検討すべき課題がひとつ増えました。