テーマ:Triadic relation among Chinese, Japanese and Taiwanese: The Magic of Triads, Understanding international group relation from behavioral experiments.
講師:江 彦生(中央研究院社会学研究所・副研究員)
報告:段 家誠(本学国際観光学部教授)

2019年6月27日、台湾の中央研究院より江 彦生副研究員を招いて第49回研究フォーラムを開催しました。

 今回、江副研究員は、阪南大学に短期招聘で来られ筆者と共同研究を進めた。今回の短期招聘で江副研究員と筆者は、Heiderの三者関係論を台湾、中国、日本の国際関係に応用する手法で研究を進めた。三者関係論は、台湾人、中国人、日本人が、それぞれを信任するかどうかで得られる報酬が異なるというモデルをいくつか検討するものである。本研究フォーラムはその短期招聘での研究成果でもある。
 当日の参加者は19名であった。報告は英語で行われ、適宜日本語と中国語も使われた。フロアの専任教員からは質問がなされ、活発な質疑応答が行われた。
 江副研究員の専門は社会学の社会ネットワーク研究でさらにその中でも、構造的均衡 (Structural Balance)理論について詳しい。構造的均衡は社会学のうち社会ネットワークにおける重要な理論の一つである。同理論は、ドイツのFritz Heider(1896-1988)が1950年代に提唱したものである。構造的均衡理論が求める問いは、3つの個体の関係について、そのうちのいずれか1つの関係の変化がその他の2つの関係の発展にどのような影響を及ぼすのかという点である。台湾、中国、日本の関係を例にすれば、その三角関係において、そのうちの台湾と中国の関係の変化が、その他の中国と日本、台湾と日本の関係に影響を及ぼす可能性は高い。
 江副研究員は、これまでHeiderの理論を、台湾人と中国人の関係の解釈に応用している。今回、江副研究員は、その第三者に日本人が加わることにより、台湾人と中国人の関係に、必然的に微妙な変化が生じる可能性が高いと考え、阪南大学の筆者担当の講義を通じて簡単な実験調査を行なった。今回その予備的な調査の報告を研究フォーラムで行った。
 信頼の三者関係論(Triadic Trust)のモデルは、3名のプレーヤー(A: Trustor, B: Trustee, C: Judge)によって次のように展開される。AはBに対して信頼もしくは不信頼の2つの選択肢があり、信頼の選択肢の先にはCの選択が待っている。ここで、Aが信頼する理由はCが公正であるからとする。AとCの中間にいるBは、2つの選択肢があり、Aの信頼を尊重すればA、Bそれぞれに5点が入る。Bが信頼を尊重せずCに判断が任された場合、Cは、その信頼への懲罰容認の選択肢ではAにマイナス5点、Bに10点が付与される。それとは別の選択肢で、Bの懲罰的選択を罰するならばAに10点、Bにマイナス5点が付与される。
 上記のモデルを基本にして、A、B、Cにそれぞれ中国、台湾、日本の役割を与え、その役割をすべてのプレーヤーで替えて被験者の反応をみるものである。

 この研究と実験の特徴は、信頼の三者関係論を、東アジアの中国、台湾、日本に当てはめて考察するところである。1956年にこの手法が考案されたときは2グループのみであった。中台関係は、近年中国の経済成長と覇権主義の台頭がみられ、中国の台湾統一への武力使用も否定されていないことから、このモデルとデータが示唆する状況は興味深い。それに第3者である日本がどう関与するかで結果が異なるかが注目される。
 この三者関係論は、東アジアの国際関係論に限定すれば、アメリカを加えると日米関係と米中関係が入りさらに複雑になる。これに韓国と北朝鮮がその時々の情勢によって影響を受け、さらにロシアが関与するとその複雑さはさらに増してくる。将来的には、こうした情報の収集にはニュース情報の量と質の解析、SNSの投稿分析やビックデータの活用が重視されるであろう、さらに課題の計算にスーパーコンピューターや、AIを活用してシミュレーションを行う必要性が感じられた。