—リスキリング革命を大阪の地から—

本学経営情報学部 松田 健 教授とJR西日本SC開発株式会社の共同研究プロジェクトである「バイオメトリクスセキュリティ(生体認証)とLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)モデリング共同講座」(以下、本共同講座という)が、経済産業省の産官学連携事業「令和4年度高等教育機関における共同講座創造支援事業費補助金」に採択されました。
このことから、今秋より、本学の経営情報学部生とJR西日本SC開発のマーケティング担当社員を対象に、松田教授が講師としてセキュリティエンジニアやデータサイエンティストに必要なスキルを身に付けられる実践的な講座が開講されます。
オンライン受講方式も多いリスキリングですが、本共同講座は実際に大学へ足を運び、学生と共に学ぶ取り組みによりオンライン受講よりも得られるものが多く、新たな可能性への発展に期待できます。
なお、松田教授が同事業に採択されるのは去年に引き続き2度目となり、前回は畜産業・農業分野のスマート化を推進するために、畜産が盛んな長崎県を事業所とする企業と共同して畜産農家が抱える課題をAIの力で解決する事業を実施しました。

共同講座という新たなリスキリングのアプローチ

〇リスキリングの新たな視点と学生の成長
リスキリングの手法は、企業が準備した講座やeラーニングの受講等がありますが、これらの手法では社員は企業側からの「学ばされている感」を払拭するのが難しいという課題があります。
そこで本共同講座では、実際に講座を受講するJR西日本SC開発の担当者が補助金の申請時から本学と共同で立ち上げることで、いわばプロジェクト業務に携わる感覚で講座を受講できるようになり、社員の学びをより実践的で魅力的なものに変え、リスキリングの成功に寄与します。
また、学生にとっても実社会で働く社員と同じ空間で学ぶことは、実践的な洞察力やビジネスの視点等あらゆる観点から学生の成長を促し、社会適応力を向上させます。

〇学びへのモチベーションを維持
リスキリングのもう一つの課題として、「実務で扱う場面が無ければ、新しいスキルを習得しても意味がない」と思い、学びへのモチベーションを維持することの難しさがあげられます。
しかし、本共同講座ではJR西日本SC開発が実際に保持するビッグデータを基に模式的に表したモデルを作成し、その実践的なデータを扱い学ぶことから、習得した知識を職場に持ち帰ってすぐに活用でき、モチベーションの維持を図ることができます。
また、業務で利用することで反復学習となって、スキルとして着実に身につくため、さらに学びへの意欲を誘発します。

共同講座の概要

*一部の講座は公開講座としても運営します
  1. 日時:2023年10月下旬スタート予定
  2. プログラム
    【講義】数理統計学/Pythonなどによる機械学習
    【実習】IoT開発・ビッグデータ解析実習、バイオメトリクスシステム実装・検証演習
    【研究】LTVモデリング研究
  3. 内容
    〇ビッグデータの活用方法
    駅型商業施設「ルクア大阪」や「天王寺ミオ」などの運営を行っているJR西日本SC開発が保持する実データをデータモデリングシステム(※)で模倣し、リアルなビッグデータを生成します。この実社会に基づいたビッグデータを使用して、実践的なデータ分析を行います。
    〇バイオメトリクス認証(生体認証)への理解
    バイオメトリクス認証はセキュリティや利便性、プライバシー保護などの側面から、多くの分野での活用が期待されている認証方法です。しかし一方で、倫理的な課題やプライバシーの懸念に対処する必要があります。本共同講座の実装・検証演習を通じて、バイオメトリクスシステム(※)の様々なリスクを学習し、安全な運用方法を学びます。

    ※ データモデリングシステム及びバイオメトリクスシステムの両システムは松田教授がアルコリズムを組み、設計。

共同講座創造支援事業費補助金とは

JR西日本SC開発株式会社

大阪府大阪市北区に本社を置き、JR西日本グループ会社で駅ビルなどショッピングセンターの開発・運営にあたっている。国内最大級の駅型商業施設である「ルクア大阪」や「天王寺ミオ」などの運営を手掛けており、JR西日本グループのSC(ショッピングセンター)事業を行う会社で構成する「JR西日本SCカンパニー」を統括する役割も担う。 所在地:大阪府大阪市北区梅田3-1-3

松田 健 教授 コメント

JR西日本SC開発ご担当者様から、日々会社に蓄積するビッグデータをより有効に活用するためにデータを扱える社員の育成が必要不可欠であり、それらの教育について課題があるとのことから、本共同講座を行うこととなりました。一般的に、データサイエンスの技術的な話題を扱う研修の場合、アルゴリズムやプログラミングの方法を学ぶことが多いですが、本事業では一般的な内容も含みながら、そもそもそのデータがどのように発生しているのか、所望のデータを取得するにはどのようにすればよいのかなどについても協働で考えることで、データサイエンス分野のリスキリング教育の内容を再構築したいと考えています。
また、昨年度採択された事業(鳥獣害対策の取り組み)においても、現在も精力的に取り組んでおります。活動を通して得た知見は、研究だけでなく子供向けの体験イベントなどの形でも応用しています。鳥獣害の被害は農業分野以外にも様々なところで課題になっており、社会的にも早急な対策が必要であると考え、今後も継続して活動を続けてまいります。