2013年12月8日、第28回日本観光研究学会全国大会が神奈川県厚木市の松蔭大学で行われ、『教養演習Ⅰb』の受講生や観光地域特別入試入学生の1〜3回生、計5名が学生ポスターセッションの発表に挑戦しました。
 教養演習Ⅰbでは、学生1人ひとりが関心を持っている地域を選び、課題を抽出し、観光を使って解決の糸口を探るというフィールドワークの基本的な手法の習得をめざしています。そして、自分たちがまとめた研究成果を伝える機会として、学生ポスターセッションでの発表を行いました。3回目の発表という学生がいる一方で、初めて成果を発表する学生にとっては、準備段階からとまどっていましたが、無事に発表することができました。今回発表した学生と発表題目は以下の通りです。
発表者名 発表題目
上江洲 清輝 地域住民と観光者の交流をめざした観光情報発信の提案−沖縄県与勝諸島を事例に−
峯松 健 ドラマブーム後の観光客の集客方法の提案−岩手県久慈市を例に−
吉田 知奈 明日香村のイベントを全国に広めるための提案
上田 健太 お遍路さんをボランティアでもてなす仕組み−愛媛県松山市坂本屋を事例に−
水野 巧基 観光を活用した伝統産業の保全の可能性−奈良市のがんこ一徹長屋を事例に−
 学生ポスターセッションを通して、多くの方々から意見やアドバイス、批判や提案をいただき、今回の研究だけでなく、今後のゼミ活動や卒業研究に向けて、考え方を整理できたのではないかと思います。以下では、研究成果をまとめる過程や学会での経験などを通して得た成果や感じたことを、当日参加した学生が報告します。(報告:森重昌之)

※この学生教育研究活動は阪南大学学会より補助を受けています。

参加した学生の報告

ポスターセッションを通して学んだこと
国際観光学部1年 上江洲清輝

 12月8日(日)に神奈川県の松蔭大学にて行われた、日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。私は、地元である与勝諸島を事例に、住民と観光者の交流をめざした観光情報発信について研究し、発表しました。
 学生ポスターセッションに参加するための調査やポスターの制作などの過程や当日の発表で、うまくいかなかったことも多々ありました。情報収集の時に、訪れている観光者数といった、欲しいデータを見つけられないこともありました。しかし、地元について研究していくにつれ、今まで生活していたにもかかわらず、知らなった伝統行事や観光資源の情報を知ることができ、自分自身の地元を見直す良い機会になりました。また、発表内容をまとめる時も、最初はどのように書いていけばよいのかわからず、難しかったですが、それまでの授業の復習や教科書を読むこと、先生のアドバイスで、少しずつ書けるようになりました。教科書や論文を読み込むことは、文章を書く力になると思いました。
 ポスターセッションの発表では、初めてであったこともあり、うまく発表することができませんでした。しかし、発表を聞いてくださった方から、質問や貴重な意見をいただくことができました。今回の学生ポスターセッションには15組の発表があり、他の組の発表を聞かせていただきました。先輩方や他の大学の発表ポスターには、グラフなどのデータやヒアリング調査などの情報があり、発表内容がわかりやすく伝えられていました。それに比べると、私のものは文章や写真などの図だけで説明していたため、相手にわかりやすく伝えるには、具体的な内容やデータが必要だと学ぶことができました。また、私のポスターセッションを見に来てくださった方々から、多くの質問をいただきました。それらを通して、自分の研究内容の説明が不十分な個所や新たな課題を知ることができ、今後の課題につながりました。これらの不足部分を改善し、研究内容をさらに深めていこうと思います。
 さらに、ポスターセッションの発表で空いている時間の合間に、先生方の研究発表も見学させていただきました。先生方の発表はより専門的であり、研究内容が難しく、理解することが難しい内容もありました。しかし、私の研究もより深い内容を聞くことで、観光学についてさらに学び、先生方のように、1つの観点を多方面から考える思考ができるようになりたいという意欲がわきました。
 今回学んだ研究の方法や論文を書く手順を、今後の活動につなげていきたいと思います。

久慈市の魅力を伝えたくて
国際観光学部1年 峯松健

 2013年12月8日に、神奈川県厚木市にある松陰大学厚木ステーションキャンパスで開催された「第28回日本観光研究学会全国大会」の学生ポスターセッションに参加しました。学会の学生ポスターセッションに参加するのは今回が初めてだったので、とても緊張しながら会場に向かっていきました。
 今回私がポスターセッションで発表した内容は、「ドラマブーム後の観光客の集客方法の提案−岩手県久慈市を事例に−」でした。今年NHKで放送されたテレビドラマ「あまちゃん」でブームに沸いている岩手県久慈市ですが、過去の事例を見ると、このドラマブームが去ってしまった後、観光客が急激に減る可能性があります。実際、教養演習Ⅰaの授業でドラマブームが過ぎて観光客が急激に減ったという北海道富良野市の事例を勉強したので、もしかしたら久慈市でも同じことが起こるかもしれないと思いました。そこで、今回はこのことを研究テーマにし、いかにして観光客を急激に減らさないようにするかについて提案しました。
 会場で内容についてプレゼンテーションしていると、他大学の学生に「これは1人で考えたのですか」や、他大学の先生から「とても良い案だと思います」、「久慈市を選んだのは、目のつけどころが良い」と言われ、とてもうれしく思いました。しかし、さまざまな人びとの前で自分の考えをプレゼンテーションしていると、自分では気づかなかった視点が多々あることがわかりました。例えば、「ポイントラリーの存在を知らずに来た観光客はどうするのか」、「広範囲の移動が困難な高齢者はどうするのか」などと聞かれた時には、予想外の質問であったため、すぐに返答することができませんでした。また、「インパクトがない」と言われた時には、返す言葉もありませんでした。もっと事前に内容を深め、多角的に見つめるべきであったと思います。その他に、市役所で情報を得ると良いのではないかなど、現地に行って調査する時のアドバイスをくださった先生もおられ、ぜひ参考にしたいと思いました。
 今回の学生ポスターセッションに参加したことによって、自分の未熟さを感じる場面が多々ありました。しかし、学生ポスターセッションで得た意見やアドバイスを糧とし、今後もさまざまな場面で活用できるようにしていきたいです。またこのような機会があれば、積極的に参加したいと思っています。今度は私の地元である奈良を研究テーマにしたいです。その際は今回の反省を活かし、より良いプレゼンテーションができるよう努力したいと思います。

初めての学会発表で学んだこと
国際観光学部1年 吉田知奈

 今回、私は12月8日に神奈川県厚木市の松蔭大学で行われた日本研究学会全国大会のポスターセッションに参加しました。
 「教養演習Ⅰb」の授業の一環で、私は「明日香村を全国に広めるためのPR提案」という内容に取り組みました。明日香村では、観光客を誘致するためにさまざまなイベントが行われていますが、PRが不十分なために地元の小さなイベントになってしまうという課題を見つけました。そこで、現在誰がどのようにしてPRをしているのかを調べたところ、明日香村観光協会と近畿日本鉄道のみが簡単なPRをしていることがわかりました。今後どのようなPRを行っていけば、全国から観光客を誘致できるかについて考えた結果、「明日香村を出張させる」というイベント形式のPR方法を提案しました。
 当日の学会発表では、阪南大学の先輩方、他大学の学生や大学院生のポスターも見学させていただきました。それぞれ個性の溢れた研究発表で、1回生の私には難しいテーマもたくさんありましたが、普段話す機会が少ない先輩方や、他の大学から来られている学生の皆さんとお話しさせていただき、とても良い機会になりました。
 私の発表を聞きに来てくださった方からは、参考になる指摘やコメント、質問を下さり、これから先もこの研究の内容を深めていくにあたって、素晴らしい意見をたくさんいただきました。特に嬉しかったことは、「おもしろいイベントだ」と皆さんに言っていただいたことです。「この企画を明日香村だけでなく、似たようなまちおこしをしたいと考えている地域と一緒になって、「明日香村ブース」や「○○ブース」というように分けて行えば良いのではないか」というコメントもいただき、現実にイベント開催ができるのではないかという期待も膨らみました。今回の学会発表でいただいたコメントを参考に、来年も明日香村を舞台に新しいPRイベントを考え、いずれは1つでも実現できるようなイベントを生み出したいという目標を持つことができました。また、明日香村の観光客数を増やすためのお手伝いできれば良いと思います。
 学会発表用のポスターを作成している間は、私のような発表を聞いていただけるのか、興味を持ってくださるのかと不安でした。しかし、どなたも私の話をよく聞いてくださり、「頑張って下さい」と言っていただけたことがとても嬉しく、行って良かったと思いました。来年は大阪で開催されると聞いているので、今年見つけた課題を踏まえ、研究の内容をより良くして、また参加したいと思います。

人に説明することの難しさ
国際観光学部2年 上田健太

 12月8日に神奈川県厚木市にある松蔭大学で、日本観光研究学会の学生ポスターセッションに参加しました。私は、愛媛県松山市にある「坂本屋」をテーマにしました。坂本屋とは、お遍路さんをもてなす接待所で、地元の人びとがお茶や茶菓子、郷土料理などを提供してお遍路さんをもてなしています。この坂本屋の活動は、すべてボランティアの方々による負担で行っているということを知り、坂本屋に興味を抱きました。実際に現地に行き、ボランティアの方々やお遍路さんにお話を伺い、周辺にある観光資源などを調べました。そのようなことをまとめ、私が感じたことや問題点などを発表しました。
 実際に発表してみると、内容やレイアウトなど、周りの人びとのレベルの高さに驚きました。日本観光研究学会に参加されている先生方に発表し、数多くのご指摘をいただきました。遍路文化が衰退した原因の1つに、コンビニエンスストアが大きく関係しているということを教えていただきました。昔は、物を入手することが非常に困難でした。そのため、遍路宿や接待所が数多く存在し、金剛杖や笠など遍路に必要なものを販売していました。しかし、コンビニエンスストアが登場したことで、接待所などの数が減少したそうです。しかし、私の発表にはコンビニエンスストアに関する情報が一切ありませんでした。そのため、坂本屋からコンビニエンスストアまでの周辺地図を乗せると良いというアドバイスをいただきました。また、歴史的建造物に指定されているのか、この坂本地区の高齢化率はどのぐらいなのかなど、自分が調べていない点を質問され、答えることができませんでした。専門の先生に見ていただくことで、自分がわからないことや気付かないことを的確にご指摘、アドバイスをしていただきました。
 また、先生方の研究発表を聞かせていただきました。先生方の発表は、専門知識の乏しい私でも理解することができるぐらい、丁寧にまとめられていました。
 今回の発表を通して、より坂本屋を良くしたいという思いが強くなりました。そのためには、もっと四国遍路に関しての歴史や文化、坂本屋周辺の観光資源を発見する必要があると感じました。また、自分では完璧だと思ったポスターも、自分とは違う視点で見ると、できていないところが数多くあり、できたと思っても何回も見直すことが大切だと感じました。また、先生方の発表を聞き、人に説明する時には、疑問や仮説、結果、考察といったことをきちんとまとめる必要があるのだと感じました。

今後の個人研究に向けて大きな起点となった学会参加
国際観光学部3年 水野巧基

 12月8日に開催された第28回日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションに参加しました。今回は一昨年と昨年に続き、3回目の参加となりました。今までは「伝統産業を活用した観光の可能性」について発表してきましたが、今回は視点を変えて、「観光を活用した伝統産業の保全の可能性について、奈良市のがんこ一徹長屋を事例に発表しました。
 研究を進める上で聞き取り調査を実施しましたが、伝統産業に従事する方々は伝統工芸品を嗜好品や美術品と捉えており、観光資源であると考え方とは認識が違っていました。そのため、伝統産業を観光客向けに提供していくには、職人の意識改革から始めていく必要があると感じました。また、職人が観光客に対応するしくみを考える上で、金銭的な利益などのメリットを提示するだけでなく、実際に観光客に触れ合って話をすることも効果的であるのかと感じました。
 がんこ一徹長屋の職人の中には、「作業場なので話しかけられると困る」、「邪魔をしてほしくない」と考えておられる方もいる一方、「日頃から伝統産業に触れる機会の少ない観光客に工芸品を見せて説明することで、伝統産業の再生につながっていくかもしれない」、「実際に専門家だけでなく、観光客などの一般の方にも見てもらい、感想や意見を聞くことで作業意欲も向上し、より良い作品をつくっていきたいという刺激になった」とおっしゃる方もおられました。
 また、がんこ一徹長屋のように、伝統産業が1つの施設で鑑賞や体験できる場所は、全国的に見ても珍しく、魅力的な施設であるにもかかわらず、文化保全の目的で運営されていて、観光客誘致に重きを置いていないことが課題だと思いました。そこで、外国人や日本人観光客を誘致することで、文化保全や奈良県の新たな観光資源になると考え、ポスターセッションで発表しました。
 発表して先生方のお話や意見をうかがううちに、観光客誘致だけでなく、修学旅行生向けの学習施設として活用できるのではないかと考えるようになりました。奈良県は近年、修学旅行生が京都や大阪に流出し、宿泊だけでなく、修学旅行生の来県者数も減少傾向にあるので、がんこ一徹長屋を観光客だけでなく、修学旅行生向けの施設としてアピールしていくことで、修学旅行の目的地としての魅力創出にもつながるのかもしれません。現地で聞き取り調査を行った際、「奈良県内の小中学生が授業の一環で訪れることはあるが、修学旅行生が訪れることは少ない」とおっしゃっていたので、観光客だけでなく、修学旅行生が施設を訪れ、伝統産業に触れる機会を提供することで、奈良県だけでなく、日本の文化にも興味を持ってもらうきっかけを提供できるのではないかと感じました。
 今回の学会では、ポスター発表だけでなく、研究者の発表も聞きました。その中で、伝統産業を保全するにあたってさまざまな方法や事例があることを知りました。また、今までは伝統産業を活用して観光地としての魅力を向上させたいと考えていましたが、今回の発表準備を行い、実際に発表した結果、今後はさまざまな事例を研究し、観光を活用して伝統産業を保全していくための個人研究をしていきたいと強く意識する機会になりました。これが今回の大きな成果です。今後も研究を進め、さまざまな場で発表し、研究内容を深めていきたいと思います。

※この教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。