ニュージーランドで実施したフィールドワークの成果を発表しました

 今年度の「観光実習Ⅱ(海外)」では、8月29日から9月4日までニュージーランドのオークランド、オトロハンガ、ロトルアの3都市を訪問し、受講生3人がそれぞれのテーマを持ってフィールドワークに臨みました(2013.10.03 海外でフィールドワークする−観光実習Ⅱ(海外)をご参照ください)。3人の研究テーマは、以下の表をご覧ください。
 それぞれの成果をまとめ、12月8日に神奈川県厚木市の松蔭大学で行われた第28回日本観光研究学会全国大会の学生ポスターセッションで発表しました。たんに調査するだけでなく、その成果を学外で発表することは、彼らにとって貴重な体験になったようです。当日、受講生のためにさまざまなご意見をくださった皆さまに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 以下では、受講生がポスターの作成プロセスや学会発表で得た経験、今後の課題などについて報告します。(報告:森重昌之)

※この学生教育研究活動は阪南大学学会より補助を受けています。
発表者名 発表題目
橋本大樹(4年) キーウィの保護活動の現状と国外からの支援に向けた課題
小杉周平(3年) 外国人観光案内書の機能の改善方法−ニュージーランド・オークランド観光案内書を例に−
谷川純菜(3年) 土産物を通じたマオリ文化の継承の可能性

キーウィ保護施設の知名度を上げるための課題
国際観光学部4年 橋本大樹

 私は12月8日(日)に松蔭大学にて開催された、学生ポスターセッションで発表を行いました。発表の内容は「キーウィの保護活動の現状と国外からの支援に向けた課題」です。発表では、まずこの研究をしようと思ったきっかけについて説明しました。そして、キーウィの保護活動を行っている施設に実際に行ってみて、そこから考えたことや見えてきた課題について解説しました。
 発表を行っていく中で、見に来てくださった方の多くが、オトロハンガキウイハウスやレインボー・スプリングス・キーウィ・ワイルドライフパークのような施設の存在をまったく知らないということがわかりました。だからこそ、これからは知名度をあげていくことが大切だと感じました。例えば、いただいた意見の中で、オーストラリアとの比較が出てきました。オーストラリアはコアラが有名で、130匹以上のコアラがいる世界最大のコアラ保護区、ローソンパインコアラ保護区があります。この施設はブリスベンを代表する観光地の1つで、観光スポットとして毎日多くの観光客が訪れる場所です。それに対して、ニュージーランドのキーウィ保護施設は観光地としてはまだまだ定着していないという現状です。私自身もオーストラリアで有名な動物はすぐにわかりますが、ニュージーランドでキーウィが有名であるというのは、この研究をする前まで知りませんでした。
 知名度を上げるにはどうすれば良いかについて、次のようなアドバイスをいただきました。それは、『地球の歩き方』のようなガイドブックにも載せていくべきという意見です。オーストラリアの保護施設は『地球の歩き方』にも掲載されていて、国内外の人びとによく知られています。さらに、現地の人びとが中心ですが、大人気のボランティア施設にもなっています。それに対し、実際に私が行ったニュージーランドの2つの保護施設はどちらもボランティアを募集していますが、なかなか広まっていません。ニュージーランドは、ボランティアとその献身を高く評価してくれる国で、保護施設を円滑に運営するのに、海外からのボランティアはなくてはならない存在です。その活動ではキーウィの孵化プログラムに関わることができ、キーウィを野生に帰した時の喜びと感動は一生忘れられないものとなるはずです。ニュージーランドの自然にあこがれて訪れる海外からの観光客は多いので、エコツアーとしてボランティア活動を広めていくことが今後の課題です。施設の存在を事前により多くの人びとに知ってもらい、このような国際ボランティアが広まることで、施設の多言語表記にもつながっていくのではないかと考えています。

苦労したポスターセッションまでの道のり
国際観光学部3年 小杉周平

 12月8日に行われた日本観光研究学会の学生ポスターセッションに、観光実習Ⅱ(海外)の授業で調査を行った、「ニュージーランド・オークランドにおける5ヶ所の観光案内所が、国際観光振興機構(JNTO)が公表している外国人観光案内所の定義に沿って実際に運営できているかどうか」の発表を行いました。
 私はこれまで、人前で調査した内容を発表したことがありませんでした。しかし、観光実習?(海外)の授業は、学会大会のポスターセッションで成果を発表しなければならない授業だったので、調査する前から発表ができるかどうか、不安がありました。その思っていた不安の通り、8月の現地調査終了後からポスター制作を始めましたが、調査した内容をどのように発表すればよいのか、まったくわからなくなってしまいました。なぜなら、現地調査を行う前の下調べがまったくまとまらなかったからです。そのため、いくら考えても良い方向になかなか進まず、先生に見せても、「これでは発表できない」と毎日言われ続けました。しかし、この授業を履修していない、ゼミの仲間たちがいろいろな提案をしてくれたり、一緒に履修している授業の仲間がサポートしてくれたりするなど、励みになることをしてくれたおかげで、ようやく内容がまとまる段階にまで辿り着くことができました。改めて、仲間の大切さや自分の未熟さなどを学ぶことができました。
 発表当日は、各大学の先生や大学院生など、観光の学んでおられる方々が来られ、いろいろな意見をいただくことができました。そこで、ある大学の先生から次のような意見をいただきました。「なぜニュージーランドでなければいけないのか」。この意見に対する回答を全然考えていなかったので、答えることができませんでした。その時、なぜそこまで考えていなかっただろうか、奥深く考えていなかったのだろうかなど、いろいろな思いが重なって自分自身に腹が立ってきました。このように腹が立つのであれば、もっと普段から考えてポスター制作をしなければいけないと、改めて勉強になりました。
 私は、今回のポスター制作を通じて、勉強することばかりでした。何ひとつ自分1人でできなかったですし、質問に答えることができませんでした。今までの積み重ねがしっかりできていなかったということがわかりましたし、もっと努力をしないとまた同じことを繰り返すので、そうならないように頑張りたいと思います。また、観光実習Ⅱ(海外)の授業で学んだことを糧として、これからの就職活動にもつなげていきたいと思います。

観光実習Ⅱ(海外)の授業を通して気づけたこと
国際観光学部3年 谷川純菜

 観光実習?(海外)の授業で行った、ニュージーランドのフィールド調査結果を報告するために、神奈川県の松蔭大学で行われた、日本観光研究学会の学生ポスターセッションに参加しました。
 ニュージーランドに住むマオリの間では、部族社会を離れて生活する人が増え、マオリの伝統文化が失われつつあります。そこで、土産物をマオリの伝統文化を伝承するツールとして有効に活用できないかと考え、その可能性についての発表を行いました。見て下さった方からは、「『文化の窮状』という本に同じような研究をされている方がいるので、ぜひ参考にしてみて下さい」といったことをはじめ、さまざまなアドバイスをいただきました。今後は教えていただいたいくつかの本を参考に、土産物の文化の可能性だけでなく、何を基準に土産物と定義するかについても、さらに追求していきたいと思います。
 ポスターセッションを終えた感想は、「ああ、終わったのか」と拍子抜けした感覚と、「ちょっと寂しいな」という感覚が入り混じった気持ちです。しかし、最も大きな気持ちは、ここまでサポートして下さった森重先生をはじめ、先輩方への「感謝」です。観光実習Ⅱの授業を振り返ってみると、私は最初から最後までトラブルメーカーであったと思います。当初行く予定だったマレーシア・ボルネオ島から、急遽ニュージーランドへフィールドが変更になって以降、調査目的がなかなか決まらず、夜9時過ぎまで先生に付き合っていただきました。ニュージーランドのオークランド空港に着いたものの、準備不足のために調査に3時間以上もかかってしまいました。またポスターセッションでは、行きの電車で大切なポスターをなくしてしまいました。数え上げればきりがないほど問題を起こす私を、最後まで見放さず支えて下さいました。本当に自分が周りの方々にどれだけ支えられているのか、また甘えていたかを痛感しました。今までは少し失敗してもあまり気にせず、気持ちを切り替えて行動してきました。しかし、その気にしないというところに問題があるのだと気づくことができました。失敗したなら、「なぜ失敗したのか」、「どうすればよかったのか」、「今後はどうしていくか」についてしっかり振り返っていこうと心に決めました。
 この授業で学んだことは、勉強面でももちろんたくさんありますが、自分の課題に真正面から向き合えるようになったこと、これが何よりの成果だと思います。今まで、人に頼られるようになりたいと周りからの評価を求めていることが多かったのですが、今は自分のことをもっと知ること、自分で自分に自信が持てるような生き方をすることを目標にしています。観光実習?を通じて気づけたことを実行に移し、周りに対する感謝を忘れずにこれからも頑張ります。かかわって下さった皆さん、本当にありがとうございました。