2021.9.1

観光地応援プロジェクト2~滋賀県・信楽高原鐵道~

滋賀県のローカル鉄道・信楽高原鐵道~歴史ある鉄道と信楽焼のたぬき~

国際観光学部3年 中西崇也

 信楽高原鐵道は滋賀県南東部にある貴生川(きぶかわ)駅と信楽(しがらき)駅を結ぶ14.7kmのローカル鉄道です。1987年にJR信楽線を第三セクター鉄道として引き継ぎ、開業しました(1)。大阪駅からはJR東海道本線、草津線を乗り継いで1時間30分の距離にあり、手軽に行くことができます。
 信楽高原鐵道には雲井駅や第一大戸川橋梁(だいいちだいとがわきょうりょう)をはじめとする、貴重で古い鉄道構造物が数多くあります。貴生川駅から2駅目となる雲井駅には1933年9月に完成した駅舎が残っています(写真1)。プラットホームが1本だけある小さな駅で、かつては列車の行き違いが可能な構造でした。現在でもプラットホームの跡があり、面影を残しています。駅舎の前には大きな木がそびえ、2011年に放映された「砂の器」というドラマでは、亀嵩(かめだけ)駅としてロケ地にもなっています(2)。無人駅で小さな駅であるものの、綺麗に保たれており、地元住民の方々に愛されている駅だと感じることができます。玉桂寺前(ぎょくけいじまえ)駅の北側には、日本初のプレストレスト・コンクリート造の橋である第一大戸川橋梁があります(写真2)。現在の橋は、1954年に架けられた2代目で、初代の橋は1953年の豪雨で流出しました。橋の長さは31mで、豪雨でも流されないように橋脚は設置されていません。プレストレスト・コンクリート造の橋は、あらかじめ圧力を加えることでひび割れを防いでおり、今なお高品質の優れたコンクリート建造物となっています。このことから、2021年5月に国の重要文化財に指定されました(3)。
 滋賀県甲賀市信楽町は信楽焼が有名であり、信楽高原鐵道各駅や一部列車の車内にはたぬきの焼物が置かれています。終点の信楽駅にはたぬきの焼物の形をした電話ボックスがあり、現在は新型コロナウイルスが流行していることから、たぬきにマスクがつけられています。また、雲井駅の近くには「信楽陶苑たぬき村」という店舗があり、陶芸体験や信楽焼の販売が行われています(4)。特に店の駐車場にあるたぬきの焼物は日本一の大狸と言われており、写真スポットとなっています(写真3)。店内にも阪神タイガース柄のたぬきの焼物があるなど、たぬきの焼物の種類も数多く並んでいます。
 信楽高原鐵道沿線には、開業当初からある雲井駅の駅舎や日本初のプレストレスト・コンクリート造の橋である第一大戸川橋梁など歴史ある鉄道構造物が多く、半世紀以上経った今でも地域の足として支えています。駅周辺にはたぬきの焼物が多くあり、地元の人々とともにたぬきの焼物が出迎えてくれるおもしろい場所です。信楽はコロナ禍以前には全国から観光客がやってくる場所でしたが、その数は大幅に減少しております。京阪神から日帰りできる所なので、感染状況が落ち着いたら、一度信楽高原鐵道に乗って、信楽を訪れてはいかがでしょうか。

【参考文献】
(1)信楽高原鐵道株式会社「会社情報」https://koka-skr.co.jp/company.html(閲覧日:2021年8月25日)
(2)滋賀のロケーションガイド「松本清張ドラマスペシャル『砂の器』ロケレポート」https://shigaloca.shiga-saku.net/e673374.html(閲覧日:2021年8月25日)
(3)信楽高原鐵道株式会社「第一大戸川橋梁・重要文化財指定へ」https://koka-skr.co.jp/news/archives/1432(閲覧日:2021年8月25日)
(4)株式会社信楽陶園「たぬき村」https://tanukimura.com/(閲覧日:2021年8月25日)
  • 写真1 自然豊かな雲井駅

  • 写真2 日本初のプレストレスト・コンクリート造の橋の第一大戸川橋梁

  • 写真3 日本一の大狸と子狸