2018.3.29

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 56号」地方創生をめざす堀内史朗先生の夢

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 56号」地方創生をめざす堀内史朗先生の夢

地方創生を掲げて

 2017年の4月から国際観光学部の准教授として教鞭をとり始められた堀内史朗先生のゼミでは「地方創生」をテーマにしています。先生曰く、「地域を拠点にして人が成長することが、地方創生のめざすべきこと。地域の発展を優先するあまり、人が犠牲になるような地方創生はありえない」とのこと。広報部員の大矢さんは堀内先生が指導するゼミで学んでいます。そのご縁で、先生のことをよく知ってもらおうと、ご無理を申し上げ、取材に応じていただきました。記して謝意を表します。
 2017年11月に、堀内先生が関わる大阪市此花区梅香・四貫島エリアのまちなかイベント「見っけ!このはな」に参加させていただき、その際、あれこれとお話しをお聞きしました。京都大学の理学部で学ばれた堀内先生が、なぜ国際観光学部に来られたのか。そのいきさつについてもお伝えしましょう。お読みいただければ、きっと堀内先生の魅力を感じていただけるはずです。(春本莉花)

※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

若者アーティストが移り住む此花区

大矢:このたびは、インタビューに応じていただき、ありがとうございます。
堀内:こちらこそ、とりあげていただき、感謝します。
春本:さっそくですが、「見っけ!このはな」はどのようなイベントなのでしょうか。
堀内:アーティストや小規模な事業者などの民間人が主導している地方創生事業のイベントです。
大矢:地方創生をめざすイベントなのですね。ところで、先生とイベントの主催者とは、どういうご関係なのですか。
堀内:数年前に「奈良・町屋の芸術祭はならぁと」で知り合った方と久々に連絡を取り、その方が「見っけ!このはな」の運営に関わっておられた。その活動に惹かれるものがあり、参加することに。
春本:なるほど。
堀内:ゼミ生の勉強にもなると思って声をかけたんだけど、意外と反応が薄く、それで「観光社会学」の授業でも呼びかけてみることに。
春本:それは、私には幸運でした。此花区に住む友達がいて、「見っけ!このはな」の話を聞き、興味を持ち始めていたのです。ちょうどそのときに、「観光社会学」の授業で先生がその話を持ち出された。「これは参加しなくては」と即決しましたね。
大矢:今さらですが、私も「見っけ!このはな」に惹かれるものがあったのですよ。ただ、先ほどのお話しに出た奈良県橿原市今井町での「はならぁと」のフィールドワークを選びましたので…。でも、この「ラ・れっとる」の取材をきっかけに、こちらにも参加できることになって、よかったです。
堀内:結果的に、お二人が参加してくれることになり、嬉しい限りです。
春本:此花区といえば、世界的なテーマパークがある町として知られますが、街自体の発展はどうなのでしょうか。
堀内:近年、移住する人が増えてきているようですね。なかでも、美術や音楽の世界で活躍する若いアーティストが多いと。
春本:なぜ若いアーティストが此花区に?
堀内:此花区の住民の多くは、外部からの人を快く受け入れてくれるそうです。また、家賃が安く、下町的な雰囲気に暮らしやすさを感じる人が多からじゃないかな。
大矢:たしかに。下町の雰囲気に親近感を覚えますし、住民の方も人間味にあふれ、優しい人が多いという印象を持ちました。
堀内:ところで、お二人は「見っけ!このはな」に参加して、どう感じました。
大矢:行政の手を借りず、民間でここまでできることが、すごい。住民の「つながり」を感じます。民間事業ならではの「自由さ」もあって、何より、とてもおしゃれな事業ですね。
堀内:春本さんは?
春本:芸術と町がコラボしている点が、面白い。私の中での此花区に対するイメージが変わりました。それでいて、妙に落ち着く雰囲気や、どこか懐かしい下町の風情は変わらない。変化するものとしないものがうまく融け合っている。そこがいいですね。
堀内:何かをつかんでくれて、よかったよ。
大矢:先生は、どのように感じられましたか。
堀内:少し難しい話になるんだけど、外来の観光客は、街づくりではカヤの外に置かれることが多く、住民であっても、子供・女性・老人、マイノリティとなる外国人などは、街づくりの周辺に置かれてしまう。でも、此花区では、彼らが経済の循環や治安の向上に貢献しそうな気がする。そこに関心を引かれた。だから、これからも此花区を調査し、研究していきたいね。
大矢:感じられるところが深いですね。

人に関心があることに気づいた大学2年生の春

大矢:では、ここからは堀内先生ご自身のことをお聞きします。
堀内:お手柔らかに。(笑)
春本:先生は京都大学の理学部を卒業されたそうですが、子どものころから相当に勉強されたのでしょうね。
堀内:そうだね。小学5年生ぐらいからスパルタ塾に入り、そこで勉強をするスキルが身についたね。
春本:スパルタ塾に!嫌ではなかったのですか?
堀内:親に言われて入ったんだけど、全然嫌ではなかったね。
春本:嫌じゃないところが、すごい。塾に入られたのは、中学受験に臨むためですよね。
堀内:地元奈良の東大寺学園という中高一貫校に行こうと。
大矢:東大合格者もたくさん出る名門校ですよね。そのころから京都大学をめざされていたのですか。
堀内:いや、「京都大学に入りたい」というよりは「理学部に行きたい」と。自然科学について学びたいという思いが強かった。ただ、あまり遠い大学に行くのも嫌で。京都大学はノーベル賞の受賞者もたくさん輩出していますし、それで、そこを選ぶことに。
大矢:「めざせ、京大」ではなく「めざせ、理学部」ということですね。いずれにしても、羨ましい限りです。
春本:同感。
堀内:でも、なぜか今は「観光」の教員になってるね。
大矢:理系から文系に大きく転身された。
堀内:不思議でしょ。
春本:子どものときから何の科目が好きでしたか。
堀内:一番好きだったのは歴史。だけど、なぜか得意科目は物理や数学。だから自分は理系のほうが向いているのかなと思ってしまった。
大矢:好きなのと得意なのとは、別なんですね。それじゃ、理学部での授業は?
堀内:数学が途中から面白くなくなった。そして、2年生の時に気づいたんだ。自分が「自然科学」ではなく「人間」に関心があることに。
大矢:でも、もう理学部の学生ですよね。
堀内:理学部の授業で唯一好きな科目は動物学だった。動物の行動は人間の行動と共通する部分があり、そこに興味を持てた。だから、専攻は動物学を選び、動物の行動を研究することに。それが、僕にとってのターニングポイントだね。
春本:なるほど。そのとき気づかなかったら、今の堀内先生はないと。大学卒業後は大学院に上がられたのですね。
堀内:そうだね。博士号を28歳で取り、それから任期付きの教員として、さまざまな大学を転々とし、色んな研究や調査をしましたね。阪南大学に来る前に在籍していた山形大学では、地方創生に地域コーディネーターとして関わっていたんだ。
春本:さまざまな経験をされたのですね。大学の教員は、子どもの時からの夢だったのですか。
堀内:いや、まったく。小さいころは漫画家になりたいと思ってた。中学校の時にもひたすら漫画を描いていたね。でも、途中で漫画は趣味の世界だと気づき、将来の夢ではなくなった。
大矢:漫画家とは!意外過ぎます。他に熱中していたことはありますか。
堀内:一番熱中していたのは、散歩。実家で飼っていた雑種犬を連れて、毎日出かけた。週末は5時間くらい。犬がへばっても、ひっぱりながら十数キロは歩いていたような。一人は寂しいからね。
春本:犬がかわいそう。(笑)そこまで散歩に熱中されたわけは?
堀内:街を歩いていると、自分が街を支配しているような感じがして、たまらなくワクワクする。廃墟を発見した時も、楽しかった。急にヤギが出てくることもあったりして。
春本:週末にそれほど散歩をしていて、勉強時間はあったのですか。
堀内:平日に勉強していましたから。それでも、平日も30分から1時間くらいは犬の散歩をしていたね。今思うと、犬が本当にかわいそうだったよ。
大矢:ほんとに。(笑)

とにかく自分から動く大切さ

春本:これからの目標や活動についてお伺いします。まず個人で研究したいことは何ですか。
堀内:今関心があるのは、1ヵ所ではなく、複数の場所に拠点を置く生活スタイルが、人口減少が進む日本社会でどのような意義を持つかということ。これを人々へのインタビューや統計分析、社会シミュレーションなどで明らかにしたいね。
大矢:とても意義深そうですね。では、国際観光学部で進めたいことは?
堀内:観光の可能性を広げたい。今注目されているMICE(ビジネスイベンツ)や医療ツーリズムだけでなく、仕事体験、お試し移住、告別式、離婚式など、これまで観光と言われなかった行動を観光としてとらえ、産業化することをやってみたいね。来年度からできたらいいなとは思っている。
大矢:スケールの大きな話ですが、実現しそうな気がします。とても楽しみです。
春本:阪南大学に来られて1年目なのに、すでに本学でやるべき研究を明確にされているのですね。学生たちも研究テーマにできそうな話題ですね。ところで、ゼミ生の指導については、どのような方針で?
堀内:どうすれば、ゼミ生が物事に関心をもってくれるか。どうすれば、関心事に対して動いてくれるか。そういうことを考えながら、方針を立てています。
春本:「自分から動くということが大切だ」と、堀内先生は考えておられるのですね。
堀内:そうだね。それは社会に出る時に必要なスキルだと思う。それと、自信をもって行動して欲しい。
春本:なるほど。
堀内:そのことに関して、ゼミ指導で大切だと思うのは「失敗を経験させる」こと。学生は失敗することが大事。100やってね、99失敗してもいいんだよ。とにかく、失敗を恐れず、何でもチャレンジすることが大切だと、僕は考えるね。
春本:大矢さんは、ゼミで何か失敗した?
大矢:失敗ができるフィールドにまで至っていない。そういう経験はこれからの話かと。
春本:早く失敗ができるようになって下さい。では最後に、堀内ゼミの将来をどういう方向に?
堀内:基本的に学生が自ら作って欲しい。僕から指示をするのではなく、学生が自ら行動するようなゼミにしたい。
春本:意外に難しいことですよね。
堀内:とにかく民主的にしたい。さっきも言った通り、失敗してもいいから。ゼミ生自らが動くような雰囲気が作れたらいいね。でも、その雰囲気づくりも、僕がやったら民主的ではなくなるからね。ゼミ生から動かないと…。ということで、大矢さん、頼むよ。
大矢:はい。頑張ります。失敗を恐れず、積極的に活動していきます。
春本:堀内先生も大矢さんも頑張ってください。ありがとうございました。

インタビュー後記

 インタビューの間、ずっと笑顔で応対してくださった堀内先生。たくさんのお話を伺ったのですが、記事が膨大になるので、半分以上は割愛することに。インタビュー中もそうですが、普段のゼミでも感じることは、先生の「自然体な」お人柄。なんでも素直に受け取って下さる。独特の感性をもって、感じたこと、考えたことを、ためらうことなく行動に移される。できそうで、できないことです。個性が光る魅力的な先生であることを、インタビューを通じて改めて感じた次第です。そんな堀内先生が指導されるゼミに籍を置くことを幸運と思い、失敗を恐れず、ぐんぐんと前に進みます。(大矢萌々華)

堀内ゼミの活動は以下のページに掲載されています。