2017.5.8

国際観光学部学生広報誌「ラ・れっとる 第34号」2年間で16ヶ国 タフな心身を育てる旅の力

大きな自信につながる旅

 国際観光学部には、すばらしい国際感覚とたくましい行動力をもって、さまざまな国を旅する学生がいます。グローバルな感性をもった学生が次々と現れるのは、「国際」を冠する学部ならではのことでしょう。海外では、思わぬハプニングや不便さに悩まされることも多々ありますが、そこは若い力で乗り切り、得難い経験を積めば、大きな自信となって、社会に出ても、きっと心の支えになることでしょう。旅する学生の中でも、入学して2年間で16ヶ国を巡り歩いたという芥川祐貴君の経験はずば抜けています。インタビューでその体験記を綴りましょう。(安村莉緒)



※この広報活動は、阪南大学給付奨学金制度によって運営しています。

旅を学びの場とする教育

安村:インタビューの話を快く受けて下さり、ありがとうございます。さっそくですが、海外旅行をするようになったきっかけは?
芥川:大学が開いている「総合旅程管理主任者」の資格講座を受け、研修旅行で台湾に行ったことがきっかけです。人生初の海外旅行でした。
安村:えっ、その時が初めてだったのですか。
芥川:そうでね。その時に「海外はこんなに楽しいんだ」と感じました。国内旅行では味わえない感動を覚えます。
安村:テレビやインターネットで海外の情報がいくらでも飛び込んできますが。
芥川:知っているつもりでも、実際に行ってみると、全く違った雰囲気を味わえます。
安村:総合旅程管理主任者の資格講座を1回生のころから受けるということは、将来は海外旅行のツアーコンダクターになる夢を持たれているのですね。ちなみに、今までに巡った国はかなり多いと聞いていますが。
芥川:台湾・韓国・中国・タイ・香港・マカオ・ベトナム・ラオス・アラブ首長国連邦・オマーン・トルコ・アゼルバイジャン・イラン・マレーシア・ブルネイ・カンボジアの16ヶ国です。
安村:それはすごい。渡航先はどのようにして決めているのですか。
芥川:旅行アプリを見て、興味をもった国に。今はインターネットで航空券を検索して、乗り継ぎなども調べられます。
安村:海外旅行はお金がかかるでしょう。旅費はどのようにして捻出しますか。
芥川:とにかく働きました。授業のない土・日・月をあわせて24時間、平日も授業が終わってから働いて、月に10万円のペースで貯めました。
安村:全部、働いて捻出されたのですね。それでも旅費は高いですよね。
芥川:「スカイスキャナー」というアプリで探ると、安い航空券が手に入ります。多少乗り継ぎが多いのですが、贅沢は言えません。たとえば、ドバイのあるアラブ首長国連邦への航空運賃は、通常でしたら10万円はしますが、上海で1泊して雲南省の昆明で乗り継ぐと、3万円ばかりです。ホテルも航空券とセットで買ったり、セールを狙ったりすることで費用を押さえられます。
安村:そうなんですか、見習わなければ。それはそうと、旅行の体験と学部での学びが結びつくことはありますか。
芥川:大学の授業では「観光とは何か」という基本から始まりますね。日本の観光政策や諸外国の観光に対する考え方も学びます。ホストとゲストの両面から観光をとらえるように教えられます。そのような観点を得られたことで、旅先で受けたサービスについても、「観光客にどのような利便性をもたらすものなのか」「どのような客層を想定しているのか」などと考えることがあります。「これを日本に当てはめると、どうなのか」とも考えます。

さまざまな国でのさまざまな体験

安村:学部で観光の基本を学んだことで、単なるお遊び旅行ではなくなるのですね。これだけの国を回ると、数え切れないほどの体験談があるでしょうが、その中で特に印象に残っていることは?
芥川:カンボジアを訪れたときですね。北朝鮮政府が経営するレストランが何軒かあるのです。
安村:ホットな話題ですね。
芥川:店内は写真撮影がNGでしたので、お見せすることができませんが、薄暗くて、私以外の客はいませんでした。
安村:店員の方は?
芥川:チマチョゴリを着た女性の方のみでした。大学で韓国語を勉強しているため、少しでも彼女たちと会話ができたのはよかったですね。自分と同じ20歳の女性もいて、「日本から来ました」と言うと、知っている日本語で応じてくれました。このレストランで働いているのは選び抜かれた人たちだそうで、母国のために働いているそうです。自分たちに照らし合わせて、深く考えさせられる経験でした。
安村:私たちは自分たちのために働きますが、彼女たちは国のために働いているのですね。他に、旅先で出会った印象に残る人は?
芥川:タイのアユタヤで出会った日本人女性です。正社員でずっと働いておられたそうですが、旅に目覚めて仕事をやめ、片道航空券だけ買って世界一周のバックパック旅行に出てこられたとのこと。
安村:それはまた大胆な行動ですね。
芥川:その1ヶ国目がこのときのタイで、「貯金が全部なくなるまで絶対に帰らない」とおっしゃっていました。
安村:大丈夫でしょうかね。少し心配です。芥川君も旅先でハプニングに見舞われたことがあるでしょう。
芥川:ある国で三輪車のドライバーに騙されたことですね。その国の通貨は単位がとても大きく、日本の200倍ばかりした。
安村:それだけ違うと、単位の感覚がわからなくなりますね。
芥川:言われた運賃をよくよく計算してみると、相場の10倍近い値段でした。文句を言おうとしましたが、ドライバーたちに囲まれ、身を守るのが精一杯でした。勉強代だと思って、泣く泣く払いました。
安村:払わざるを得ない雰囲気だったのですね。でも、無事に帰国できて本当によかった。旅をするときに、いつも心がけていることは?
芥川:現地の人と話すことです。日本人を珍しがって話しかけられることも多いのですが、自分からも積極的に話しかけるようにしています。大抵の人は親切で、お勧めのレストランや観光スポットを教えてくれます。日本人や日本の印象を聞くと、「サムライ」「トヨタ」「ホンダ」と答える人が多いですね。「どうして日本人は家族を放置して毎日毎日働くのか」と聞かれたときは、答えに窮しましたね。
安村:家族のために毎日働いているのですが、伝えづらいですね。で、ほかに心得は?
芥川:交通カードを買うことですね。ICOCAのようなものです。韓国の場合、タクシー・バス・地下鉄の運賃だけではなく、買い物にまで使えます。また、運賃が割安になります。他の国でも同じような特典があるので、行く前に調べてみて下さい。

旅先で何度も感じた人の優しさ

安村:バックパッカーには、少しでもお得な情報がありがたいですね。私も海外へ行くときは、いつも交通カードを買っています。小銭しか使えない自動券売機もあるので、便利ですよね。ところで、旅の魅力を感じる瞬間は?
芥川:素晴らしい人に出会えた時でしょうか。イランを訪れたときに、ある施設に入場しようとしたのですが、バックなどの持ち込みが許されない場所でした。係員は英語が話せませんでしたので、もうやめようかと思った矢先、そこに居合わせた若者が、「フォローミー」とだけいって、手荷物の預け場所まで連れて行ってくれたのです。最初は勧誘か何かかと疑いましたが、違いました。
安村:親切な人だったのですね。
芥川:本当に親切な若者でした。その出会いを振り返ると、運命というものを考えてしまいます。もしその日、朝起きるのが30分遅ければ、1本あとの電車に乗っていたら、この人に会えていなかっでしょう。旅では、ときどきこういう運命的な出会いがあります。旅をしてよかったと感じる瞬間ですね。
安村:素敵な話ですね。不思議な縁だからこそ、心に残るのですね。それはそうと、近年、女性のバックパッカーが増える一方、男性のバックパッカーが少なくなっているようですが、どう思われますか。
芥川:そういえば、海外で日本人男性バックパッカーに会ったことがないですね。ラオスでゾウ使いのライセンス取得に挑戦したときも、日本人の参加者は女性がほとんどで、男性は夫婦できていた1人だけでした。
安村:やはりそういう傾向なのですね。
芥川:身の危険を感じることの少ない日本にいると、個人で海外へ出かけるのは怖いことかも知れません。ただ、学生時代にこそ、海外にもっと出るべきだと思います。映像の世界を観るだけでなく、実際に訪れて、話して、その地を理解することで、自分の世界が広がり、考え方も変わると思います。社会人になると、自由な時間はほとんどなくなるでしょう。学生時代でしかできないとこをやるべきだと思います。男性には、勇気を出して旅に出て欲しいですね。
安村:草食系男子が増えているからでしょうか(笑)。芥川君の言う通り、人生において、学生時代ほど時間を自由に使える時はないので、特に国際観光学部の学生には、どんどん旅に出て欲しいですね。ところで、それだけ海外旅行を続けると、語学力も上がるのでは?
芥川:英語力は格段に伸びましたね。海外にいると、日本語を話す機会はほとんどありません。すべて英会話です。海外に出始める前に比べ、TOEICのスコアが200点ほど上がりました。語学以外のコミュニケーション能力も上がりましたね。絵を描いたり、ジェスチャーを使ったりと、とにかく「伝える力」が養えます。
安村:使わざるを得ない状況に追い込まれてこそ、語学力が上がる、というわけですね。TOEICの点数は単位を取る上でも大事ですので、好きな旅行をして単位も取りやすくなる。いいことばかりですね。羨ましい。それで、これからの旅の計画は?
芥川:今後は長期間のバックパックにチャレンジしようと思います。南米縦断旅行もやってみたいですね。
安村:語学力や経験がさらに増えそうですね。それでは最後に、芥川さんにとっての「旅行とは何か」を一言で。
芥川:旅とは、新しい発見、出会い、感動を得られる最高の娯楽だと思います。「日本人はブラザーだぜ」「日本から来たのか。家でチャイ飲んでいきな」「ジャパン?そうか、コンニチハ」などなど、ストレートだけど、温かい言葉。日本では、なかなか味わえない率直な心に触れられる。旅の魅力ですね。だからやめられない。
安村:人と接することで、たくさんのものが得られる。
芥川:はい。おおげさな言い方ですが、これからの日本を作るのは、人と接する経験の豊かさだと、海外に出て感じました。知識を頭に入れることも大事ですが、人と接して知識を確かめることが、より大事なのでは、と感じたのです。国際観光学部は現場で学ぶ実学教育を進めていますが、その大切さを、私も旅で実感しました。ぜひ、いっしょに実学をしましょう。
安村:目の覚めるような体験談、参考になりました。ありがとうございます。

インタビュー後記

 なんて個性的な仲間が多いのだろう。学部奨学生の広報部員となって何人かの学生を取材し、振り返ってまとめてみると、この感想に尽きます。私にとってのラストとなるインタビューで話を聞かせていただいた芥川祐貴君は、最も個性的なひとりです。大好きな旅に出て、さまざまな経験を重ね、たくさんの人に出会い、強い刺激によって成長してきたことが、言葉の端々に感じられます。語る姿も生き生きとしています。なんてたくましい仲間なのでしょうか。芥川君はこれから1年間、韓国に留学するそうですが、異国で生活をする不安を微塵も感じさせません。「早く行って、いろんなことを学びたい」という気持ちが表情に溢れ出ています。その姿を見ていると、現代の若者が失いつつある冒険心や探究心を、旅が取り戻してくれるのだと確信できます。2年間で16ヵ国を回るなんて、無茶な真似はできませんが、国際観光学部の学生であるからには、日本を出て、世界へ羽ばたこうではありませんか。