2023.3.16

経営情報学部学生広報誌「じぇむ」no.49 大学教員になった東川和将さん

文:藤田佑衣子 撮影:松田珠実
 
 今回は、経営情報学部の卒業生で、函館大学で専任講師になられた東川和将さんにインタビューさせていただきました。

研究室への憧れから大学教員へ

——:函館大学専任講師へのご就任おめでとうございます。
東川:ありがとうございます。
——:大学教員になるまでの経緯を教えて下さい。
東川:漠然と大学の先生の研究室って良いな、と思ったのがきっかけです。大学教員になるために、まずは大学院に進学しようと思い、3回生の頃から大学院試の勉強を始めました。無事に4回生の夏に大阪大学大学院経済学研究科に合格することができ、そこで5年間研究した後、2021年4月に函館大学商学部に経営学の専任講師として就職しました。
——:指導科目は何ですか?
東川:経営史、経営戦略論、国際経営論、簿記です。
——:研究内容は何ですか?
東川:研究分野は会計学で、中でも財務会計と管理会計について研究しています。企業の会計情報を使う側、つまり投資家等の視線に立った研究です。株式投資で儲けるためには会計情報のどこに注目したら良いのか、あるいはどのような特徴を持った企業が利益を上げているのかといったように、会計情報をどのように使うことが出来るのかを研究テーマにしています。
——:その研究をしようと思ったきっかけは何ですか?
東川:高校生の時に商業高校で簿記をたくさん勉強したので、ここまで苦労して作っている会計情報が、具体的に社会でどのように役立っているのかに関心を持ったのがきっかけです。
——:先生の研究が実社会でどのような役割を果たしていると考えますか?
東川:私の研究内容は、端的に言えば「将来値上がりする銘柄を見つけるために会計情報をどのように駆使すればよいか」ということです。そこで得られた知見は、人々が「資産運用」を考える際に役立つと思います。「お金の増やし方」については、会計の知識を動員すれば、もっと効果的に実践できるはずです。これから高齢化が進み社会保障等の個人負担額が増加していくことが予想されるので、効果的に資産を増やしていく方法を、研究を通してフィードバックしていくことには一定の意義があると考えます。
——:大学研究者にとって必要な資質とは、どのようなもと考えますか?
東川:粘り強く研究し続ける忍耐力と集中力と知的好奇心だと思います。
——:大学教員になるまでに指導経験はありましたか?
東川:博士課程3年の時に1年間、阪南大学の非常勤講師として、「簿記・会計学入門」の授業をしていました。
——:学生に教えるにあたって工夫していることはありますか?
東川:専門的な内容を扱っているので、小難しい言い回しは避けながら、理論をかみ砕いて伝えるよう工夫しています。
——:大学教員になって良かったことは何ですか?
東川:好きな研究をしながらお給料がもらえるところと、好きな研究に時間を充てられるところです。

いちからの勉強で大阪大学大学院へ進学

——:試験科目は何でしたか? 
東川:英語と専門科目と面接でした。
——:一日何時間ほど勉強されていましたか?
東川:4~6時間程勉強していたと思います。
——:試験勉強するにあたって時間の使い方の工夫はされていましたか?
東川:特になく、集中力がもつだけ勉強していました。
——:勉強場所はどこですか?
東川:気分転換で家だけでなく図書館もよく使っていました。また、ゼミの中條先生とも大学で勉強会を行っていました。
——:中條先生に勉強を見てもらっていたのですね。
東川:大学院試験で必要な科目と、大学院に入学してから必要と思われる知識を教わっていました。
——:試験勉強するにあたって勉強方法の工夫はされていましたか?
東川:頭の中では理解したつもりでも、記憶として定着していないことが多いので、本当に理解できているか文章で書き起こして確認するようにしていました。
——:勉強するにあたって、苦労したことは何ですか?
東川:高校までは勉強から逃げてきたので、ブランクを埋める作業が大変でした。英単語の覚え直しや数学の微分の勉強等はいちからの勉強でした。今考えると、中條先生に一文ずつ英語の日本語訳を聞いてもらい、微分も基礎から教えてもらった事が良い思い出です。
 

大学院では研究に必要な素養を身につけられた

——:修士課程ではどのような勉強をされていましたか?
東川:研究テーマであった企業価値評価に関する最新の論文を読んだり、実際のデータを扱う素養を身につけるために統計学の勉強をしていました。
——:修士論文はどのような内容を書かれたのですか?
東川:会計情報の品質が、何によって決まっているのかという内容です。会計情報って過去情報をまとめただけのように思われがちですが、実は将来予測もたくさん含んでいます。予測が正確な経営者は、投資家に役立つ情報を提供できますが、予測が不正確だと、そんな情報を利用しても投資家は適切な判断ができません。投資家の将来予測に役立つ情報が、質の高い会計情報と言えます。
——:確かに、情報の質が悪ければ、正しい判断は出来ませんよね。
東川:はい。そのため、論文では、質の高い情報を使えば投資家は適切な判断ができるのと同時に、株式投資でも成功するということを明らかにしました。
——:博士論文はどのような内容を書かれているのですか?
東川:博士論文は修士論文の延長線上で、複数の会計情報がある時に、それらを使い分けるときの基準は何かを明らかにするという内容です。特に、予測情報は複数あり、企業が毎年発表する情報だけでなく、アナリストが出している業績予想もあります。そのような中で、どのような基準で経営者予想やアナリスト予想を使い分けているのかを明らかにしようとしています。
——:なるほど、株式投資に使えそうな分析ですね。大学院生活で苦労したことはありますか?
東川:ゼミで研究の進捗報告をすることが辛かったです。ゼミは月1回でしたが、毎回新しい内容を報告しないといけないので苦労しました。
——:大学院に入って良かったことは何ですか?
東川:研究する上で必要な知識を学べたことが良かったです。勉強は大変でしたが、今となっては勉強して良かったと思います。
——:勉強で辛いときはありましたか?
東川:研究の成果が出ないと論文が書けないし、論文が書けなかったら就職もできないので、そのプレッシャーが辛かったです。
——:函館大学にはどのような方法で就職されたのですか?
東川:人事の応募書類を色んな大学に出して、最終的に面接まで合格したところが函館大学でした。採用していただいた函館大学には、とても感謝しています。
——:就職活動のときに、大学教員以外の職業は考えていましたか?
東川:考えていませんでした。そのため、他の人には無謀だと言われました(笑)。
 

阪南大学で良い先生と出会えた

——:なぜ阪南大学を志望されたのですか?
東川:率直に言って、家から近かったからです。
——:阪南大学経営情報学部を志望した理由は何ですか?
東川:経済学部と迷いましたが、数学を使うのは嫌だったのと、経営は聞きなじみがあったので、経営情報学部を志望しました。
——:入試区分は何ですか?
東川:公募推薦です。
——:出身校はどこですか?
東川:大阪市立西高等学校の流通経済科です。
——:中條ゼミではどんな勉強をしていましたか?
東川:中條先生には3回生からお世話になり、コーポレート・ファイナンスの勉強をしていました。
——:卒論のテーマは何ですか?
東川:「企業価値評価に関する先行研究のレビュー」です。
——:どんな内容ですか?
東川:会計情報から企業の株価を数式でより正確に説明しようとする一連の研究について考察しました。
——:受講して良かった科目は何ですか?
東川:中條先生の「企業分析論」と「情報会計論」です。強調しておいて下さい(笑)。企業分析論では財務諸表分析、ファイナンス、確率統計の基礎知識と代数的な技法を学びました。授業で学んだ内容が、その後、大学院で「企業価値評価」をテーマに研究していく上での土台となりました。また、情報会計論では、日商簿記1級レベルの論点を学びました。会計情報を研究対象とする者として最低限必要な素養を身に付けることができたので、受講して良かったです。
——:学生時代に読んで印象に残っている本はありますか?
東川:大学院生のときに読んだウィリアム・スコットの『財務会計の理論と実証』です。『財務会計の理論と実証』では、過去の会計研究が年代ごとにわかりやすく整理されていて、先行研究を体系的に理解していく上で非常に有意義な本でした。過去の研究を整理するとともに、まだフォーカスされていない研究テーマの発見にもつながり、それが論文のテーマにもなりました。
——:阪南大学に入って良かったことは何ですか?
東川:中條先生に出会えたことです。大学院の入試勉強から論文の知識や数式の勉強まで大変お世話になりました。
——:学生に向けて一言アドバイスをお願いします。
東川:一度きりしかない人生なので、自分を信じて悔いのないように突き進んでほしいと思います。
 

取材を終えて

 お忙しい中取材に応じてくださり、ありがとうございました。大学で勉強されて大学院へ進学し、今では大学教員として授業や研究に励んでおられ、その過程ではたくさん努力されたのだろうと感じました。私も東川さんを見習い、日々精進して参りたいと思いました。
藤田 佑衣子


 まずは函館大学専任講師へのご就任おめでとうございます。研究に対する意欲が伝わってきて本当に研究が好きで、それを続けていくための忍耐力や探求心が凄まじい方だと感じました。東川先生のように学び続け成長し続けられる人間になりたいと感じました。最後になりましたが、お忙しい中貴重なお時間をいただきありがとうございました。
松田 珠実

ゼミ指導教員コメント

 東川君は3年次から私のゼミに所属し、そのときの学習内容から、企業財務や財務会計に関する実証研究に興味をもつようになりました。地道な研究を続けた結果、大学教員になられたことを非常に嬉しく思います。今後も虚心坦懐に研究に励み、立派な研究者・教育者となられることを祈念しています。
中條 良美
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