文:森田鈴菜  撮影:馬場かれん
 
 阪南大学では2024年度から総合情報学部が新設され、AI・データサイエンス専攻もできます。そこで今回はロボット教材などの開発、販売を行っている株式会社アドウィンの代表取締役社長である答島一成(こたじま かずなり)さんに取材をさせていただきました。
担当教員注: 答島社長は本学の松田健教授から紹介いただきました。
——:株式会社アドウィンの事業内容は何でしょうか?
答島: 工業系の技術者を育成するための教育コンテンツの開発と販売が主な事業内容になっています。その他にも映像制作・技術講習・セミナーの企画・運営なども行っています。
——: では、小学生向けなどの初歩的な教材というより、工学部などの学生向けの教材を多く開発されているんですか?
答島:自分の母校でもある呉工業高等専門学校で使う教材を作っているので、ロボットなどに興味がある方向けの教材が多いかもしれません。
——:私たちの大学ではレゴのロボットを組み立てる授業があるのですが、レゴのロボット教材と アドウィンのロボット教材との違いはなんでしょうか?
答島:レゴはプログラムの基本など簡単に手を出せるという特徴があると思います。しかし、弊社のロボット教材は実際技術を勉強するために使用できる教材になっているかと思います。
——:AI・データサイエンスや情報処理を学ぶ上で,ロボット教材の意義・効果は何でしょうか?
答島:『親しみやすい』ところですね。
——:ロボットやAIについて詳しくないビジネス系の学生も貴社の提供するロボットを扱うことはできるのでしょうか?
答島:もちろん。何でもそうですけど、「新しいことをしたい」だったり、興味があれば、誰でも始めることはできます。
——:続いては、答島さんについてお伺いします。起業するまでの経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか?
答島呉工業高等専門学校の機械工学科に一期生として入学し、卒業後に東芝に入社しました。東芝では医用機器事業部玉川工場の自動化推進グループに配属になり、10年ほど勤め、工場が移転するタイミングで東芝をやめて1980年に起業に至りました。
——:何故、起業しようと思ったのでしょうか?
答島はじめから起業したいなとは思っていて。でも、とりあえず稼がなきゃいけないからと結婚式のビデオ撮影の商売を始めました。
——:では、最初はロボット教材とは関係ない、カメラ屋さんだったということですか!? 
答島そうです。そこで金の稼ぎ方とか仕組みを理解していきました。
——:カメラ屋さんとしてスタートした会社で現在の「教材の企画・開発・販売」を事業内容に変化したきっかけは何でしょうか?
答島 ビデオ撮影の仕事をしていく中で、企業のビデオ撮影の仕事も入るようになっていったんです。自動機械を作っている会社から依頼が来たり、ロボットを作っている会社とも知り合う機会があったりと徐々につながりが増えていきました。加えて、東芝時代の元上司から海外向けの技術者教育のビデオ制作の依頼をいただいたんです。それがきっかけだったかなと思います。それから、東芝をはじめとして色々なお仕事を頂いたんですが、やっぱり自社商品が必要だなと教材開発・販売の事業も始めていきました。
——:じゃあ、沢山のご縁が繋がって今の事業内容があるんですね!! 
答島ほんと、色々な方に助けていただきました(笑)。
——:今後していきたい事業はありますか?
答島オンライン教育です。自社の教材はテキストだけではロボットや制御装置も一緒になっているのでそのシステムの構築の仕方などを動画で説明した方がわかりやすいなと思うので。加えて、そのオンライン教育を利用して、東南アジアなどの貧困と言われている国を貧困から脱却させる手助けを出来たらなと思っています。
——:会社のホームページを見ると答島さんは工学博士の学位を取られていますが、東芝に勤務しておられた頃に取られたのでしょうか?
答島:やめてからです。広島大学の沢先生と知り合ってそれで興味が湧いて博士号を取りました。
——:会社をしながらだったんですね!ちなみに何歳くらいに取られたんですか?
答島: 60歳くらいで始めました。新しいことをするのはいつでもできますから。
——:60歳から!! 
答島:そういうのが好きなんですよね(笑)。今もワードプレス[注1]を新しく学んでます。
ライター注1:ホームページやブログを制作できるコンテンツマネジメントシステム
——:日本の民間企業の中には博士号を取った人を雇用することに消極的な傾向があるようですが,アドウィンは逆に博士号取得者を積極的に雇用しているとお聞きしました。理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
答島:やっぱり学ぶことに意欲的な人は積極的に雇用していきたいなと思います。私自身が新しいことを学ぶのが好きなんでそういう人は魅力的に見えます。
——:最後にロボットやAI・データサイエンスに興味がある学生に一言お願いします!
答島:新しいことを始めるというのは常に面白いので意欲があれば挑戦していってほしいです。
——:この度は興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!!

取材を終えて

お忙しい中、取材を引き受けてくださりありがとうございました。実際にロボットを動かしているところを見ながらのインタビューだったのでとても理解が深まりました。また答島さんのいつまでも新しいことをしようと挑戦する姿勢や物事の考え方にとても惹かれるものがあり、将来自分が社会人になった時に参考にしたいと思いました。
昼食をごちそうしていただきありがとうございます。広島風お好み焼き大変美味しかったです!
森田 鈴菜


答島さんの新しことを学ぶ意欲や行動力は、私自身も見習わなければならないことだと強く思いました。取材中もとてもお優しく、そんな答島さんだからこそ周りの方も協力したいと思われたのだと感じました。美味しい広島のお好み焼きもごちそうくださりありがとうございます。この度はお忙しい中、取材に応じてくださりありがとうございました。
馬場 かれん

「ロボティクス・IoT」担当松田教授コメント

 総合情報学部で開講予定の「ロボティクス・IoT」はメカナムホィールを装着した平面方向の全方向に移動可能なロボット(当記事掲載写真)を用いて、参加者が自由に作品を作り上げることを目的とした集中講義型の授業です。数理・情報分野のあらゆる技術を活かすことも可能ですし、ロボットからメカナムホィールを取り外して別のものに改造するのも自由です。自らアイデアを出し、それを実現するための様々な設計を体験でき、その上で自分が開発したいものにどのような数理・情報分野の知識が必要であるかということを、知識がなくても学べるような授業です。講師にアドウィンの技術者の方も加えて、理学・工学・情報学の複合分野について学んでもらえればと思います。
松田 健
経営情報学部学生広報委員会では、「じぇむ」の記事を書いていただける方・撮影をしていただける方を募集しています。興味のある方は担当教員(濱、中條)か、教務課までお問い合わせください。