2021.9.22

経営情報学部学生広報誌「じぇむ」no.39 河内天美で鰻屋を営む芝崎竜也さん

文:藤田佑衣子 撮影:馬場かれん

 今回は、阪南大学の地元である河内天美で鰻屋「三田」(さんだ)を経営されている流通学部卒業生の芝崎竜也さんに取材させていただきました。芝崎さんのお母さんも取材に一部参加されました。

開業当時は鰻を掴めなくてお客さんに笑われた

——:卒業後、どのような経緯で現在に至っているのか教えていただけますか?
芝崎:大学時代にアルバイトをしていた日本料理屋さんに卒業後そのまま勤めたんですよね。その後は製造直売みたいなことをしたくて、ポン酢屋さんをしていたんですけど、母の住む家を探しているときにたまたま物件を見つけて、鰻屋さんを始めました(笑)。
——:鰻屋さんを始めるために物件を探した訳ではないのですね。
鰻を選んだ理由は何ですか?
芝崎:やっぱり鰻が好きだったからですね。
——:他の鰻屋さんの調査はされましたか?
芝崎:ネット検索したら、すごく良いことが書いてあって流行っている鰻屋が東京にあったので、ベンチマーキングっていうのを意識して、そのお店を真似したら俺の店は流行るって思ったんですよ(笑)。でも、実際食べに行ったら、出来合いのものを使っていて、全然美味しくなかったんですけどね。
ライター注:ベンチマーキングとは、自己革新を目的とし、高い革新成果を達成している他社のやり方を学び、自己の革新を最高水準に高める方法を考え出すことである。(出典:マネジメント用語集

——:鰻屋さんで修業はされていないのですか?
芝崎:ほぼ独学ですね。一番初めにやったときには、商品を出すのに1時間ぐらいかかりましたね(笑)。
芝崎母:鰻を掴めなくてお客さんに笑われながらね(笑)。
——:(笑)。そうすると開店当時は半分素人のような感じだったんですか?
芝崎母:半分素人と言うよりほとんど素人(笑)。
芝崎:ど素人ですね(笑)。もう勢いだけでね。
——:今は注文を受けてから出すのにどれぐらいかかりますか?
芝崎:20分ぐらいですね。

注文を受けてから鰻を捌く店をやりたかった

——:「三田」さんでは注文を受けてから生きた鰻を捌くのはなぜですか?
芝崎:捌きたての鰻を食べたいのにそういう店がなかったんですよね。だから、自分でやろうと思ったんです。生きた鰻を捌いて、目の前で焼いて食べれば絶対美味しいじゃないですか。こっちに技術がなくても美味しいので(笑)。あと、衛生面でも安心ですよね。
——:調理方法での工夫は何かありますか?
芝崎:調理は、お客さんによって変えていますね。ちょっとお年を召した方や女性には柔らか目に長く蒸すとか、男性や肉体労働系の方だとちょっと脂が残っている方が良いかなとか。
——:「三田」さんは炭火焼だそうですが、ガスで焼くのとどんな違いがありますか?
芝崎:やっぱり、芳ばしい香りとか、表面のパリッとした焼き加減が違いますね。
芝崎母:火力が全然違うもんね。
芝崎:ガスだと表面だけが焦げるんですよ。ただ、炭火焼は灰が飛ぶんで、店がすごく汚れるっていうね(笑)。そういう意味では鰻屋さんじゃないと炭火焼は難しいですね。
——:鰻屋さんや焼き鳥屋さんなどは、タレを継ぎ足しているそうですが、なぜタレの継ぎ足しをするのですか?
芝崎:うちはしないですね。
——:しないんですか。
芝崎:新しい方がおいしいですね。醤油とか味噌でも古かったら美味しくないですね。あと、鰻の古い脂が継ぎ足しで入ると胸やけを起こしますね。
——:そうなんですね。

内装のコンセプトは、内装にお金をかけないこと(笑)

——:次に経営のことについてお伺いします。
開業にあたって競合調査などはされましたか?
芝崎:していないですね。経営する上でのコストってテナント料と人件費じゃないですか。うちはテナント料なしでやっているので、むしろ競合が来ても勝負しやすいですね。
——:鰻屋を開業するのになぜ河内天美を選んだのですか?
芝崎:家から近くて、馴染みがあったからです。
——:「うなぎ」の看板は専門業者に依頼されたのですか?
芝崎:母に書いてもらったんです。
——:字が上手ですね。
内装のコンセプトを教えていただけますか?
芝崎:内装のコンセプトは、内装にお金をかけないことですね(笑)。内装より料理にお金をかけた方がいいじゃないですか。
——:確かにそうですね。
開業までの準備で何が大変でしたか?
芝崎:当初の計画より開業が3ヶ月も遅れて、その頃は不安や焦りがありましたね。
——:開業当時嬉しかったことはありますか?
芝崎:お客さんや取引先に助けられたことですね。いい人が多くて、付き合いはずっとしていますね。
——:開業して良かったことは何ですか?
芝崎:やっぱり人と出会えることですね。経験も積めるし、楽しいです。そのために店内飲食をしているっていうのはありますね。

原価率が高いのが売り

——:開業当時とやり方を変えたことはありますか?
芝崎:開業当時はお客さんがあまり来なかったので、鰻の炒り蒸しとか、鰻のお茶漬けの佃煮とか試行錯誤しましたね。鰻の仕入れが高くなったときには、穴子丼とか通販とかいろんなことをやりました。でも、結局は一緒ですね。だからアレンジはやらん方がいいなって(笑)。もともとのやり方を守って長く続けた方が良いですね。
——:お店の経営ポリシーみたいなものはありますか?
芝崎:うちは原価率が高いっていうのを売りにしているんですよ。原価率が低いと美味しくないんでね。
——:原価率はどのぐらいですか?
芝崎:原価率は50%ぐらい、つまり利益率50%くらいですね。大手の利益率70%(原価率30%)よりかなり低いです。その分うちはお客さんにとって優しい価格設定になっていますね。
——:コロナの影響で売り上げに変化はありましたか?
芝崎:ないですね。かえって忙しいぐらいです。松原市はクーポン券とかで市内の事業者の名前を載せて宣伝してくれるので、コロナで逆に知ってくれるようになった人が多いです(笑)。
——:経営する上で、気を付けていることはありますか?
芝崎:法人に仕出しをして、その入金が3ヶ月先に遅れてもいいように、キャッシュフロー計算みたいな考え方はいつもありますね。
ライター注:会計上の利益は、すべて現金で入金されるわけではない。会計上は黒字でも、現金が手元にない状況も生じ得る。利益を計算するための損益計算書とは別に、現金の動きを詳細に記録したものが、キャッシュフロー計算書である。(参考:阪南大学経営情報学部BD分析研究会『ビジネスデータ分析入門 2020改訂版』三恵社,2020年.)

簿記の授業が商売に役立っている

次に芝崎さんに関する質問をさせていただきたいと思います。
——:なぜ阪南大学を志望されたのですか?
芝崎:近かったからです。
——:流通学部を志望した理由は何ですか?
芝崎:商売とかそういうのが好きで、商学部みたいなところに行きたかったからです。
——:入試区分は何ですか?
芝崎:一般入試です。
——:出身校はどこですか?
芝崎:上宮太子高校です。
——:大学では何か部活やサークルに所属されていましたか?
芝崎:してなかったです。中学生からボクシングをしていて、30年ぐらい。今でもボクシングジムに通っています。
——:所属ゼミはどこですか?
芝崎:井上(徹二)ゼミです。
——:ゼミではどんな勉強をしていましたか?
芝崎:財務会計を勉強していました。
——:卒論のテーマは何ですか?
芝崎:「中小企業の財務会計」みたいなのでしたね。
——:学生時代はどんな仕事をしたいと思っていましたか?
芝崎:経営コンサルタントになりたかったんですよ。そのために、マネジメントの専門学校にも通って勉強をしていました。
——:たくさん勉強されていたんですね。
大学で勉強した科目の中で、店を経営する上で役立っている科目は何ですか?
芝崎:簿記の授業が今でも役立っていますね。商売でも、お金がしんどいってなると、原材料費をケチろうってなっちゃうんで。財務がしっかりしていて、製品がしっかりしていて、マーケティングがしっかりしているっていうのが本来は良い状態ですね。まあそういう意味で僕は、マーケティングを外しているんですけど、流行りすぎてもできないっていうのもあるので、財務と製品だけはしっかりしておこうっていう考えですね。あと、堀先生の授業をよく受けていましたね。その当時現役で税理士をされていたので、授業が面白かったです。
担当教員注:堀浩司氏。元 阪南大学常任理事。

ドラッカーを読んで影響を受ける

——:阪南大学に入って良かったことは何ですか?
芝崎:図書館ですね。図書館が一番勉強できて、めちゃくちゃ利用しましたね。卒業して10年ぐらいはずっと通っていましたね。
担当教員注:阪南大学図書館は、卒業生も利用できます。

——:どんな本を借りていたのですか?
芝崎:経営とかの本が多かったですね。大学時代に200円ぐらいの中古のドラッカーの本を古本屋で買ったんですよ。それからドラッカーにはまって、図書館でたくさん借りたんですよね。
ライター注:ピーター・ドラッカーは、オーストリア出身の経営思想家(1909~2005年)。「経営学の父」「マネジメントの権威」「ビジネス・コンサルタントの創始者」として知られ、「顧客の創造」「知識労働者」「分権制(=事業部制)」「ナレッジマネジメント(KM)」「コアコンピタンス」など、経営・管理に関する多くの用語・概念を生み出し、経営学者や企業人に大きな影響を与えた。ドラッカーの組織管理論をベースにした小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海・09年刊)は、ブームの火付け役となった。(出典:知恵蔵(朝日新聞出版)

——:どんな本だったのですか?
芝崎:「未来企業」です。今でも影響を受けていますね。
——:そのどういうところに影響を受けていますか?
芝崎:長期的な見方というところです。うちは堺の和菓子屋さんのようにつぶれない経営をイメージしてやりだしたんでね。
——:堺の和菓子屋さんというとどこですか?
芝崎:「かん袋」さんです。何100年も続いているような、ああいう経営を真似しようとしていましたね。
ライター注:「かん袋」は、鎌倉時代末期の1329年創業の老舗の和菓子屋さんです。

——:学生に向けて一言アドバイスをお願いします。
芝崎:まじめにやることじゃないですかね。ドラッカーの言葉で、「神様はいつも見ている」っていうのがあったんですよ。誰も見ていなさそうなところでもまじめにしないとダメだということですね。小手先のずるさとかでは無理ですよ。絶対に。

取材を終えて

 お忙しい中、ありがとうございました。芝崎さんの経営理念や考え方、人柄が素敵で、考えさせられるところがたくさんありました。また、起業や経営についても取材を通して学びがあり、もっと勉強しようと思いました。ドラッカーの本、面白かったです。はじめて鰻屋さんで鰻を食べたのですが、芳ばしい香りとふわふわの身が美味しかったです。また食べに行きます。
藤田佑衣子

 
 今回は取材させていただきありがとうございました。原価率を高くしたり、新鮮なうなぎをすぐに調理して、鮮度を保ったまま提供されていたりと、お客様ファーストの心で提供されていることが、「三田」さんの人気の一部になっていることを知りました。また調理の撮影をしているとき、撮りやすいように工夫してくださったのも大変助かりました。またお伺いしたいと思います。この度は取材に応じてくださりありがとうございました。
馬場かれん
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