ますます高まる求人倍率

 ビジネス・ニュースでは毎日のように「人手不足」が叫ばれています。人手不足については、連載講座「グラフで見るビジネス情報」第2回「バイト時給は上がったけれど~人手不足と景気~」
 ですでにお話していますが、最新データで確認しておきましょう。有効求人倍率は1.62(2018年6月)で、これは44年ぶりの高水準です。(なお、連載講座「グラフで見るビジネス情報」は、本シリーズ「連載講座 身近な経営情報あらかると」に吸収・終了ということにしたいと思います。)
 このようなとき、政府は6月15日の臨時閣議で成長戦略を決定しましたが、人手不足への対応が焦点となりました。そこでは外国人労働者の受け入れ拡大と、高齢者に目を付けました。65歳の平均余命は、男性が19.6年、女性が24.4年あるので、65歳以上の健康な人にも働いてもらおうとするのです。
 このようなことを受けてのことでしょうか、東京・品川のコアコンシェルという会社が、働きたい高齢者を人手不足に悩む企業や個人とマッチングさせる人材紹介サービスを始めました。働きたい高齢者が同社のシニア活動支援サイトに登録し、空き時間やスキル、得意分野などを入力し、求人情報とマッチングするのです(日経MJ2018年7月27日)。
 他方、「高度プロフェッショナル制度」などで国会が紛糾した「働き方改革法案」は、最近の労働問題で最も注目されていることです。

働き方改革のゴールは「完全」週休3日制

 このように言うのは、テレビでもおなじみの経済アナリスト・森永卓郎氏です。1日8時間・週休3日=週32時間労働という「完全」週休3日制はほとんど普及していない現状で、このように主張しても、現実味が全くないと感じることでしょう。
 しかし、今から33年前(1985年)、森永氏が経済企画庁(現在の内閣府)にいたとき同庁が「完全週休2日制」を打ち出すと、通産省(現在の経済産業省)はおろか労働省(現在の厚生労働省)にまでコテンパに怒られたそうです。「そんなことができるわけないだろう。そんなことをしたら、日本中の企業が倒産してしまう。」と。(「週休3日制を考える」NHKラジオ第1「社会の見方・私の視点」2017年10月4日放送。)
 ところが現在では、多くの企業が週休2日制ですね。
  • (フリー画像pixabay)

もうひとつの働き方改革

 森永氏の話のように週休2日制の経緯を考えれば、将来は完全週休3日制も実現するのではないかと思えます。
 ところが、すでに現在、もっと楽な職場があります。「好きな日に出社し、好きな時間だけ、好みの仕事で働く。休むときも会社への連絡は一切不要。長期休暇は何日取っても問題なし。」これは、大阪府茨木市の「パプアニューギニア海産」というエビ加工会社の話です。
 従業員は19名で、うちパートが16名。最低3人いれば作業ができるようにし、社員は決められた時間通りに勤務。パートが1人いれば工場は動かせる。売上高は約1億円で横ばい。しかし、人件費は2017年までの4年間で約30%減(パート時給は950円で安めだが、応募は殺到し、離職率も低下)。
(以上、日経産業新聞2018年6月6日より。なお、同社のサイト で働いている様子がわかります。)
 これほどでなくても、週休3日(以上)の勤務形態はすでにいくつか新聞でも紹介されています。アクセンチュアという世界最大級の経営コンサルティング会社の日本法人は、正社員に週3日・計20時間以上という短い勤務を認める「短日短時間勤務制度」を2016年から実施しています。
 また、社名が「週休3日」という株式会社(浜松市)もあります。永井宏明社長は、週休3日の働き方を広めようと社名に掲げ、主に調剤薬局向けに週休3日の条件で人材紹介を手がけています(日経産業新聞2018年7月26日)。
 普及するのはまだまだ先に違いありませんが、週休3~4日という「働き方改革」の道ができつつあると言えるでしょう。
 さらに言えば、次のようにも考えられます。「AIに仕事を奪われる」と言われていますが、そうではなく、いずれはAIに仕事をさせて人間は余暇を楽しむ、という方向に社会を向かわせたいものです。

身近な経営情報あらかると

 本連載では、われわれ阪南大学経営情報学部の教員が日頃の研究成果をもとに、みなさんの暮らしに役立つちょっとした知識を提供していきたいと考えています。研究分野はさまざまですが、いずれの場合も社会に役立つことを最終目標としています。難しい理論はとりあえず脇に置いて、身近な視点から経営情報学部に興味を持ってもらえれば幸いです。

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