— 西成区の街歩きと杭全神社夏祭りを通した実践的学び —

韓国・培花女子大学から「短期言語・文化交流プログラム」に参加している学生たちは、2026年7月9日(木)と13日(月)の2日間にわたり、阪南大学の松村先生およびゼミ生とともに、大阪市内で地域フィールドワークを行いました。

7月9日(木)には大阪市西成区を歩き、都市の発展を支えてきた労働の歴史や地域社会の変化について学びました。7月13日(月)には大阪市平野区の杭全神社夏祭りを訪れ、だんじりの曳行や祭礼のにぎわいを通して、日本の地域文化と共同体のつながりを体感しました。

都市の歴史と社会の変化を読み解く西成区フィールドワーク

  • 西成区の路上で説明を受ける学生たち

西成区でのフィールドワークでは、教員の解説を聞きながら地域を歩き、まちの景観や施設、人々の暮らしを実際に観察しました。
今回訪れた西成区北東部のあいりん地域は、戦後の高度経済成長期を中心に、建設や土木などに従事する日雇い労働者が集まる「寄せ場」として発展しました。仕事を求める労働者の生活を支えるために簡易宿所が集積し、労働、居住、福祉が密接に関係する独自の地域社会が形成されました。

現在も、仕事や住まいが不安定な人への就労相談、生活相談、技能講習など、地域の歴史的背景に応じた支援が行われています。
一方で、建設業の機械化や就労機会の減少、労働者の高齢化などによって、地域を取り巻く環境は大きく変化してきました。また、かつて労働者向けに利用されていた簡易宿所の一部が、近年では国内外の旅行者向け宿泊施設やゲストハウスとして活用されるなど、観光化に伴う新たな変化も見られます。
  • 街の景観を観察しながら地域を歩く学生たち

学生たちは、地域に対して外部から付与される一面的なイメージだけで判断するのではなく、なぜこの場所に労働者が集まり、どのような暮らしや支援の仕組みが形成されてきたのかを、都市の発展や産業構造との関係から考えました。

街を実際に歩くことで、歴史的な建物や簡易宿所、商店街、観光客の姿など、異なる時代の痕跡と現在の変化を同時に確認することができました。現地の景観や人々の営みと結び付けることにより、社会課題を抽象的な情報としてではなく、都市と関わる問題として捉える機会となりました。

また、地域の歴史や生活環境を学ぶ際には、そこに暮らす人々の尊厳を大切にし、先入観や偏見を持たずに向き合う姿勢が欠かせません。今回の街歩きは、社会の多様性を理解するとともに、異なる立場にある人の背景を想像し、多角的に地域を見る力を養う実践的な学びとなりました。
  • 街歩きを終え、新世界周辺で記念の集合写真

杭全神社夏祭りで体感した地域共同体の文化

                 
                               祭りの行列・提灯を掲げる担い手

7月13日(月)には、大阪市平野区の杭全神社を訪れ、夏祭りを参観しました。杭全神社は、平安時代初期の貞観4年(862年)に始まったと伝えられ、古くから平野郷一円の守護神として地域の人々の信仰を集めてきました。境内には重要文化財に指定された本殿や、全国で唯一現存するとされる連歌所などがあり、平野地域の長い歴史を伝えています。

杭全神社の夏祭りは、疫病や災害を鎮め、人々の平安を願う祇園会に由来するとされ、江戸時代中頃から、神輿や太鼓台、だんじりが登場する現在の祭礼の形が整えられてきました。毎年7月11日から14日まで行われ、地域の九つの町からだんじりが曳行される、大阪を代表する夏祭りの一つです。
            
                                 だんじりの上で演技する担い手
学生たちは神社に参拝し、自分や家族の健康を祈願したほか、お守りを選び、屋台の食文化も楽しみました。そして、太鼓や鉦の音、威勢のよい掛け声とともに進む迫力あるだんじりを間近で見学し、日本の祭りが持つ熱気を全身で感じました。

だんじり祭りは、華やかな見世物であるだけでなく、地域の人々が世代を超えて準備や運営に関わり、歴史や技術、作法、地域への思いを受け継いでいく共同体文化でもあります。だんじりを曳く人、囃子を奏でる人、安全を守る人、祭りを見守る人など、多くの住民がそれぞれの役割を担うことで、地域全体の一体感が生み出されています。

培花女子大学の学生たちは、本や映像で日本の祭りを知るだけでは得られない、音の大きさ、人々の動き、沿道の歓声、夏の暑さ、地域全体を包む高揚感を直接体験しました。その経験を通して、祭りが地域の信仰や歴史を守ると同時に、住民同士のつながりを確認し、次の世代へ文化を伝える役割を果たしていることを学びました。

二つの地域から学んだ大阪の多様性

  • だんじりの上で演技する担い手

今回のフィールドワークでは、西成区で都市の労働史や社会構造、地域の変化を学び、平野区では祭礼を通して受け継がれる歴史文化と共同体の力に触れました。

一見すると異なる二つの地域体験ですが、どちらも、まちがそこに暮らす人々の仕事、生活、信仰、助け合いによって形づくられていることを理解する機会となりました。地域の姿は建物や観光名所だけで成り立つものではなく、人々が重ねてきた歴史や記憶、社会的な関係の中でつくられています。

培花女子大学の学生にとっては、日本の社会や文化を現地で多面的に学ぶ異文化体験となりました。また、同行した阪南大学の学生にとっても、自分たちが暮らす大阪の歴史や地域文化を外国人学生に説明することを通して、身近な地域を改めて見つめ直す学習機会となりました。異なる文化的背景を持つ学生同士が、現地で感じた疑問や驚きを共有することで、一つの地域を複数の視点から捉えることができました。

教室を離れ、実際のまちを歩き、地域の人々が守り続けてきた祭りに触れる経験は、異文化理解を深める上で大きな意味を持ちます。今回のフィールドワークは、大阪の地域社会が持つ複雑さと豊かさを実感するとともに、歴史や社会、文化を自ら観察し、考え、対話する有意義な時間となりました。

以下では、フィールドワークに参加した培花女子大学生の感想を紹介します。

研修参加学生の感想

7月13日に、阪南大学の学生の皆さんと一緒に杭全神社のお祭りに行きました。日本の祭りに行くのは久しぶりだったので、行く前からとても楽しみにしていました。神社ではお参りをして、自分や家族の健康を祈願しました。また、記念にお守りも買いました。屋台ではせんべいを食べました。とてもおいしくて、日本のお祭りならではの味を堪能できました。

松村先生のゼミの学生さんと時間を共有しながら、日本の文化を実際に体験することができて、とても良い思い出になりました。暑さや混雑で大変なこともありましたが、友達と一緒に日本の祭りを楽しむことができて、本当に楽しかったです。また機会があれば、ぜひ日本の祭りに参加してみたいです。
(韓国・培花女子大学/チェ・ヨンジ)


杭全神社の祭りに行ってきました。屋台の賑わいや、会場全体を包む熱気に感動しました。特に地車(だんじり)の迫力は凄まじく、目の前を通り過ぎるたびに自分の心臓までドキドキと高鳴ることを感じました。伝統ある祭りの熱量を肌で感じることができ、日本の文化の深さに触れた貴重な一日となりました。また機会があれば、今度はもっと長い時間見学したり、積極的に参加したりしてみたいです。
(韓国・培花女子大学/ファン・イェラン)


大学の語学研修を通じて杭全神社へ行き、初めて日本の祭り(夏祭り)を体験しました。絵馬という木札に願い事を書いて掛ける体験はとても新鮮で面白かったです。何よりも、現地の日本人の友達と一緒に祭りを 楽しめたことが一番の思い出になりました。

また、「だんじり」も初めて見ましたが、力強い太鼓の音や掛け声、そしてだんじりの上で踊る人々の姿を見て、私自身も元気が湧いてきて、もの凄い熱気と情熱を感じました。

当日はとても暑い日だったが、その暑さのおかげで、より熱気にあふれた活気ある夏祭りを満喫することができたと思います。 
初めての祭りでしたが、日本の文化と人々の情熱を肌で感じることができる、本当に素晴らしい機会となりました。
(韓国・培花女子大学/ソ・イヒョン)


杭全神社を訪れた際、日本の伝統的な祭りやだんじりに込められた地域の方々の熱い思いを肌で感じることができ、大変印象に残っています。地域の歴史や文化を守り継ぐために、町全体が一つとなって祭りを支え、活気あふれる雰囲気を創り出している姿は、本で読むだけでは知ることのできない日本の共同体文化を実感する貴重な機会となりました。
(韓国・培花女子大学/リュウ・ソウォン)


今後も「短期言語・文化交流プログラム」を通して、学生たちが地域や文化、人との出会いから得た学びと成長の様子を順次紹介します。