数年前、第2回目シンポジウム(第10回授業回実施)終了後、受講学生の一人から「学生参加の第3回シンポジウムは出来ませんか?」との要望をもらいました。私たちは、その場で直ちに検討し、授業計画の変更を各担当者が履修学生に明確に説明することで、学生参加型シンポジウムを第15回目の授業での実施について合意。学生の参加方法は、「質問の可視化とシンポジウム会場での情報共有」を目標として、Teams「チャット機能」を使用することにしました。

今回も上記の方法で、第2回シンポジウムで受講学生から提出された質問に回答する手法で実施しました。極めて良質な質問に、松本・陳・神尾の科目担当者はタジタジとしながらの90分間となりました。その中で、私たちの回答に対して即時に学生から質問が投げられるという緊張感は、刺激的でもありました。その根底には右の目的と目標を学生諸君が理解してくれたことがあるかと存じます

さて、今回は学生のレポートではなく、科目担当者のレポートをお届けします。

松本 典昭(ヨーロッパ)

 毎回緊張するシンポジウムですが、無事終わってホッとしました。
シンポジウムは論者の立脚点が違ってもいいし、意見が違ってもいい、というより、大きく違うほど建設的でおもしろいものになります。こちらがまちがった意見を述べても、訂正してもらえるので、素直に訂正して、またまちがいを恐れずに発言できます。
それは、言葉をポーンと共通の輪のなかに投げ入れてみる試みと言えましょうか。その輪とは、相撲でいえば土俵のイメージですが、そこに勝ち負けはなく、「得たもん、勝ち」という勝者だけの有難い空間です。私は知らないことだらけなので、多くを得ることができました。
そのような楽しくもヒリヒリする時間と空間を共有できたことを、お二人の先生がたに心より感謝いたします。そして「おもしろい、おもしろい」と励ましてくれた受講生の皆さんにも心より感謝いたします。受講生の皆さんは今後、自分が主役になって、ゼミの場をそんな自由な討論の道場にしていってください。

陳 力(中国)

 2010年からの毎年のシンポジウム。始まる前にはやはり身が引き締まる思いがしますが、終えた後はとてもいい充実感に包まれることは私の最大の体感です。毎回のシンポジウム、立場や視点が交差し、自分の思い込みがほどけていく瞬間がよくありました。発言が正しいかどうかよりも、互いの言葉が場に投げ込まれ、思考が連鎖していく過程そのものが貴重なのだと改めて感じました。
 16年という年月の中で、同じテーマを扱っているはずなのに、毎回新しい気づきが生まれるのは、参加者一人ひとりの姿勢が場を育ててきたからでしょう。私自身、ファシリテーションが得意とは言えませんが、いつも神尾先生の進行のうまさと松本先生の迅速かつ奥深い返答に啓発され、追随する形ですが、思い存分にシンポジウムを楽しんできた。本当にありがとうございます。
 特に去年と今年、受講者の皆さんからの質問は素晴らしかった。受講者のなかに一回生から知り合った学生が多く、その質問を読んだ瞬間、その成長ぶりを確認でき、この上なく嬉しく思う瞬間が多々ありました。
 先生方や受講生の皆さんに支えられ、なんとかここまで歩んでこられました。この経験が示してくれたのは、討論の場は「完成された答え」を求める場所ではなく、「問いを育てる」ための共同作業だということです。
 2027年以後も、その場をさらに豊かにし、新たな議論の土俵を築いていってくれることを期待しています。

神尾 登喜子(日本)

 2010年から16年間継続した、授業を使ったシンポジウムを行ってまいりました。担当者3名が互いに質問をし合いながら、刺激をうけることを常としてきた「都市文化論シンポジウム」も2025年度で最後となります。松本先生が今年度末で大学での授業担当から退くことが理由です。※ 

 さて、このシンポジウムの思い出を一つ。2010年度のカリキュラム編成担当をしていた私が、最終確認のために松本先生の研究室を訪ねた際に、以下のような会話が。
  
 
 松本:私は、神尾先生の「都市文化論」を担当したい。
 神尾:いいですよ。松本先生の科目が増えますが、どうぞよろしくお願い致します。
 松本:言葉が足りませんでした。「都市文化論」をヨーロッパ・中国・日本で同時限開催したいのです。
 神尾:ならば、陳先生にお願いしないといけませんね。ではすぐに、研究室に伺いましょうか。
     (上記の説明の後)
 陳 :やろう!
 松本:その授業で、2回程3人でシンポジウムをしませんか。
 陳 :本学で初めての試みですね。ワクワクします。
 本学初の授業内でのシンポジウム開催に躊躇する必要はありませんでした。説明と合意  に要した時間は、全部合わせても3分ほど。即断即決の授業運用です。

 そこから16年。毎年見ているデータでありながら、毎回新たな発見の繰り返しでした。ファシリテータが得意とはいえない私を鍛えて下さったお二方の先生には、感謝しかありません。不得意は克服できませんでしたが無事に、ここまで到達できたことに安堵していることも事実です。
※次年度は、陳先生が国内研究のため、シンポジウムはありません。ただし、2027年度はまた、陳・神尾の2名で復興することになりました。