都市文化論シンポジウム2023
北半球・歴史都市の旅-フィレンツェ/西安/京都-

 「都市文化論2023」第1回シンポジウムを実施いたしました。3クラスの受講学生が、フロンティアホールに集まってくる姿を見つめながら、私たちは、毎年、若干の緊張感に包まれます。「今年度もうまく伝わるであろうか」との期待と不安の中で始まりました。本科目は、他学部受講ができる科目ですので、学部横断で学生諸君のコメントは選んでいます。

科目担当者コメント

「都市文化論2023」第1回シンポジウムを終えて

松本 典昭:都市文化論(ヨーロッパ)担当

 学生の感想のなかに「先生がなんでも知っていることに驚いた」という意見があった一方で、「先生でも知らないことがあるのに驚いた」という意見があった。実は、知らないことだらけ、わからないことだらけなのです。むしろ「知れば知るほど、知らないことが増えてくる」というのが実感です。だから知ることが楽しいのです。
 シンポジウムの最後、突飛な思いつきにより、学生から質問を募ることになりました。なかなかいい質問がきたので、次回はそれらの質問にも(ウンウンと苦しみながら)答えを探っていきたいと今から準備しています。

陳 力:都市文化論(中国)担当

 あっという間の感じですが、「都市文化論」のシンポジウムはもう14年目となります。毎回と同じく、学生の皆様の主体的にシンポジウムに取り組む態度を見て、私も熱くなって、対談のほかに奇問をほかの教員に投げ出してしまいました。
 教員三人の対談を聞いて、今年の受講者の学生の皆様はおそらく都市の本質や学問の本質について、授業と違う栄養を吸収したのではないかとおもいます。学生だけではなく、2010年以来、このシンポジウムでの教員・学生は相互啓発をうけて、私もそれをきっかけにして研究領域を広げ、数本の論文を公開しました。毎年度のシンポジウムは、私の都市文化のより深層の部分に潜り込む起爆剤になっていると言っても過言ではないと思います。

神尾 登喜子:都市文化論(日本)担当

 「都市文化論」でのシンポジウムの実施。振り返ってみると、毎年、互いに質問をしあう中で、心臓をハクハクさせながら新たな課題を見つけている私たち教員は、このシンポジウムで「学生諸君の前で、恥をかき、冷や汗をかこう」というのがテーマです。
 日本全国の大学の授業でも、地域を変えて、同一科目名・同一曜日・同時限開講で、このようなシンポジウムを展開しているのは本学だけです。それができるのも、教員が互いにどのような研究をしているのかを熟知していることと、「知りたい願望」が無限に広がっているからにほかなりません。
 ある学生のレポートに「大人が先頭に立って意見を言う姿はかっこよかった」という言葉がありました。これによって、学生にド真剣な教員の姿を見て貰うことが何よりも大切なのだ、と実感しています。

コメンテーター (河野千春:教務課国際コミュニケーション学部担当)

 学生時代に受講した科目である「都市文化論」。今回は、立場を変えて、教務課学部担当者としてシンポジウムの打ち合わせ段階から参加させて頂きました。
90分間の流れを確認し、昨年度の振り返りをふまえて、話は第2回目のシンポジウム(第10回目授業)に。一人の先生が、「テーマを教室で決めてもいいですよね」とご発言。お二人の先生方は、「いいですよ。冷や汗をかきますか。」といとも簡単に合意。もちろん、「パワーポイントデータがないので、説明は解り易くしましょうか」の確認を。ここまでで15分。
 職務上、先生方と打ち合わせを行うことは日常的にありますが、この授業でのシンポジウムの打ち合わせを目の当たりにすることで、3人の先生方の「知識」の圧倒的な分量と、互いに向けての「関心の目」には瞠目するばかりです。それと共に、シンポジウムを楽しんでいる3人の先生方の姿がここにはありました。互いの発言に耳を傾け、私には「えっ?!」と息をのむ提案にさえ、即座に「OK!」と回答する打ち合わせのテーブル。驚きの連続でした。
 始まりから終わりまでを見せて頂いたことで、私自身の日常の業務にも多くの学びがありました。第2回目のシンポジウムも楽しみにしています。次回もコメンテーターで出席させていただく予定です。

「都市文化論」第1回シンポジウム・学生コメント

岡田 結菜

 フィレンツェと西安と京都には共通点も多いことを知り、驚きました。フィレンツェと西安と京都は、それぞれ場所が離れていますが、緯度の差は10度以内であるということを始めて知りました。3つの都市に共通している温帯という気候は文化が生まれる地帯であり、文化は東西に広がるということを学ぶことができました。
 今回のシンポジウムで特におもしろいと感じたのは、フィレンツェでは人間中心主義の考え方でしたが、西安や京都では自然中心主義の考え方をしていたということです。考え方の違いが建物にも表れていて、それぞれ違った特徴があるのが魅力的だと感じました。また、フィレンツェと西安には外壁がありましたが、京都には城壁がなかったということを始めて知りました。
 フィレンツェの都市の形は、現在でも2000年前の姿が残っているのは、昔の人々が作ったものや文化が伝承されていて素敵だと感じました。3つの都市を比較しながら、共通点や異なる点を学ぶことができ、非常におもしろいシンポジウムでした。

猪野 結香

 普段の授業では一人の先生が話をしてくださることがほとんどですが、このシンポジウムでは三人もの先生方が前で話をしてくださり、それに加えて実際に討論をしてくださり一度に三人の先生のそれぞれの視点で話を聞くことが出来てとても新しい体験でした。
 それと同時に不思議な感覚になりましたが個人的にはとてもいい機会であったし、貴重な時間であったなと感じています。特に先生方の意見交換など普段は直接自分の目で見る事の出来ない風景でとても新鮮な気持ちになりました。
 また、一度に三つの都市を比較して考えることが出来たのでとても理解しやすく、いい学びができたなと感じています。次のシンポジウムでは先生方の生のどんな討論を見ることが出来るのかとても楽しみです。

久井 悠生

 今回初めてシンポジウムに参加して、これまでに経験したことのない授業形式でしたので驚きました。3人の先生が3都市をそれぞれの見方で話を展開していく様子や先生同士が質問し合っている様子など興味深い内容が多かったです。僕がゼミなどでグループディスカッションをすることがあった時、先生たちがそれぞれの意見を出していたように僕も自分の意見を発していけるようになりたいと考えました。
 この授業を受けて新たに理解したことが2つあります。1つ目は約北緯40度の地域で文化は誕生したということです。今後、都市を見ていく際にこの情報というのは重要だと感じました。2つ目は文化を他の地域に伝えるのは難しいですが、技術を伝えるのはあまり難しくないということです。文化はそれぞれの地域でできたため、他の地域に伝えようとすると環境の違いなどがあるので伝えるのは難しいですが、日本が中国の都市の形を手本に自分たちの都市を作り上げたように技術を伝えるのはあまり難しいことではないというのを理解しました。

欧陽 雅煕

 シンポジウムでの一つの質問はとても面白いと思いました。それはなぜ『日本国憲法』に首都に関する条項がなかったかということです。シンポジウムの後、ネットでこの問題に関する情報を探して都に関する日本文化的な考えをいろいろ知りました。中国の大学で勉強したとき教えられた「日本関東・関西関係はステレオタイプだ」との内容と思い出して、さらに興味深いと思いました。
 そして、今の世界地図を見ると、北緯40度線付近のエリアは首都都市が置かれたことが多いことがわかります。例えば、中国の北京・アメリカのワシントンD.C.・トルコのアンカラ・スペインのマドリードなどです。北温帯以外の国や国の面積が狭い国のことはさておき、アメリカのような幅広い国は首都を選んだとき、なぜ北緯40度線エリアにその立地を決めたか、などのいろいろな質問を聞きたくなってきました。
 このような知的好奇心の惹起は都市文化研究の魅力であると思います。シンポジウムを受けてよかったと思います。これから比較研究の手法を生かして世界各地の都市文化を研究したいです。

釜本 健介

 フィレンツェ、西安、京都の三都市は、緯度が北半球の34~43度の範囲内にあり、温帯に位置しています。三都市とも山に囲まれていますが、フィレンツェにはアルノ川、西安には渭川、そして京都には桂川と鴨川が流れています。道路については、三都市とも碁盤の目状です。西安と京都では、南北にのびる大通りの北に皇帝や天皇がいました。外敵の侵入を防ぐ対策として、フィレンツェと西安は城壁を築きましたが、一方、京都は都市への入り口として羅城門はあるものの城壁はありませんでした。
 今回のシンポジウムでは、普段学んでいる都市(フィレンツェ)とは異なる都市(西安・京都)の意外な共通点と相違点を知る貴重な機会になりました。

辻岡 千里

 三都市の共通点は緯度がほぼ同じで、温帯であるということです。さらに歴史の転換点で都市が変化している点です。フィレンツェには皇帝がいませんが、西安と京都には皇帝と天皇がいました。フィレンツェと西安は城壁があり、京都は城壁がありません。都市の形は、どれも方形であるが、西安は南北の距離が短く、京都は南北の距離が長めでした。
 フィレンツェがなぜその場所を選んだのかというと、安全性と利便性のバランスを取ったからです。フィレンツェの人口は1300年頃に約10万人で、それがヨーロッパ5大都市の一つというのだが、ヨーロッパの都市は全体に規模が小さいので「歩ける都市」であると理解しました。温帯は横長であり、人が横移動しやすい地帯と初めて知りました。国と国は対立する傾向がありますが、都市と都市は繋がることができるので、平和を築いていく上で健全な市民意識を持つことが重要であると理解しました。
 先生達を見ていて、私も分からないことがあれば、どんどん質問しよう、そうすることで自分の財産にしていこう、と考えました。

寺田 隆之介

 フィレンツェ、西安、京都の三都市の共通点は、三都市とも緯度が10度以内の範囲であること、温帯であること、そして内陸にあるということです。次に初期の西安と京都は場所を転々としていました。西安と京都は立地が似ているという点もあります。また都市の選定には占いが重要だった点は、洋の東西を問わず重要でした。相違点としては、フィレンツェの土地はどこでもよく、強いて言えば河川のそば、盆地ですが、京都と西安は都市の選定に非常に悩んだ点が違います。
 今回シンポジウムを受けて感じたこと。まず初めに、国際コミュニケーション学部の先生方の講義を一度に聞くことができたのが、とても貴重な良い機会でした。今はフィレンツェについて学んでいますが、それと同時に進行していた別の国の別の都市(西安、京都)では何が起こっていたのか、異なる文化と世界観を知ることができました。異文化を学ぶ時に重要なのが比較という方法です。従いまして、シンポジウムの中で先生同士が質問しあっているのは、比較がしやすく、かつ理解がしやすかったです。有意義なシンポジウムでした。

岡 優里

 経済学部所属ですが、他学部履修でこの科目を受講しています。
 今回のシンポジウムを通してフィレンツェ・西安・京都、三つの都市の共通点や相違点などを学ぶことができました。私が一番印象的だったのが、なぜ西安という場所が都市に選ばれたのかというテーマのときです。様々な要素がありましたが、その中でも風水などによって決められるものがありました。アオウミガメの甲羅を桜の木をくべた火にかざしてひびの割れ方から都道府県を決定するということにすごく興味を持ちました。ほかの占いや風水についても調べてみようと思いました。
 京都と西安では似ているところが多いと考えます。京都では都がうろうろしていたように西安でも同じように転々としていました。都市の形に関しても京都は中国の都の模倣でありました。3つの都市の形がすべて四角形であったことに驚きました。なぜ四角形なのかは国によって理由が違うということも面白いと思いました。フィレンツェでは古代には円に接する正方形は人間の形であり、完璧な形と考えていました。西安では父親の都である宇宙の真ん中にある紫微宮と同じ形で建設しなければなりませんでした。国によって様々な考え方があってすごいと感じました。
 今もグローバル時代ですがかつても3つの都市は関係性があったことが分かりました。陳先生が神尾先生に平安京から京都にかわったのはいつかと質問を投げかけ、先生同士が質疑応答を繰り返していてすごいと思いました。知識がないと、すぐには質問に答えられません。私もこれからの大学生活で興味の持ったものを調べて知識を蓄えていこうと思いました。
 第2回目のシンポジウムにも参加します。次は自分も質問できるようになりたいです。

鶴野 悠莉

 経済学部所属ですが、他学部履修でこの科目を受講しています。
 シンポジウムの講義を聞くにあたり、三都市の共通点や相違点がはっきりと浮き彫りになっていると感じました。都市の形が同じ四角でも込められている意味がそれぞれあることや、誕生や構成する要素が三都市ごとに重要視されていることが違う部分が自分的にとても興味が湧き、もっと知りたいと思いました。
 いつもの講義は京都のことを学んでいるので、今回のシンポジウムでほかの都市のことも学べ、光栄でした。シンポジウムならではの気づきがたくさんあり、とても新鮮な気持ちになりました。三都市合同シンポジウムは、なかなか聞けませんのでいい機会の場だと感じ、他の都市同士で比較も出来ましたのでこの講義を履修して良かったと思いました。次のシンポジウムの機会にも期待しています。

西 真叶

 経営情報学部所属ですが、他学部履修でこの科目を受講しています。
 本日のシンポジウムでは、なかなか新鮮な授業だったなと思いました。普段専門的な分野を学ぶことはありますが、その専門家同士がディスカッションしている授業は、余りなく珍しく勉強になりました。日本の都の話がありましたが、一番初めはどこから栄えたのでしょうか、もう少し、ディープな内容が聞きたいなと感じました!

シュイホゥイジェン

 私は交換留学生として、現在は国際コミュニケーション学部に所属しています。
 各授業の先生が共同しての授業はとても珍しいと思います。日本について学ぶ授業を選びましたが、中国とヨーロッパの授業も受けれるのが本当に嬉しかったです。普段は日本文化について勉強しています。そして、私は台湾出身なので、中学時代で中国の歴史も少し勉強したことがあります。でもフィレンツェは初めて勉強した都市。ヨーロッパ、中国と日本は違う文化があるのに、そんなに様々な共通点があるのは驚きました。これらの都市は歴史と文化が豊かで、美しい自然環境があるんだが、それぞれの独自性が魅力です。どの都市も訪れる価値があると思います。