2014.12.12

国土交通省「はなやか関西」 連携事業Vol.4 「門真れんこんツアー」を催行

 「着地型観光」をテーマにする清水苗穂子(しみずなほこ)研究室。自治体や企業との多彩な連携活動の成果を知った国土交通省から依頼を受け、同省による「はなやか関西〜文化首都年〜」の一環である旅行企画の立案と運営に携わって3年目となる。
 2013・2014年度のテーマである「関西の食文化」に基づき、2013年11月には堺市で「堺こんぶウォーク」を、2014年2月には交野市で「五感で感じる伝統の酒」を催行。3回目となる11月29日(土)には「門真れんこんツアー」を催行した。
伝統野菜づくりに尽力する農家の方々の熱意と、そのおいしさを堪能できるツアーとなった。

れんこん畑を訪れ、門真れんこんの歴史を学ぶ

11月29日(土)、門真南駅から「門真れんこんツアー」はスタートした。
雨交じりの空模様だったが、最少催行人数10人を上回る12名の参加をいただき、集合時刻の午前10時には雨は止んだ状態に。黄色のスタッフジャンパーに身を包んだ清水ゼミの上田健太君(3年生)、鈴木成美さん(3年生)、新城朱里さん(2年生)、高橋香菜子さん(2年生)の4名が、参加者を順番にタクシーへと案内。タクシーは「中西農園」へと向かった。

中西農園は中西正憲氏が曾祖父の代から営むれんこん農園。雨で足元が悪いからと参加者が歩く道にブルーシートを引いて待っていて下さった。れんこん畑を見学しつつ、中西氏より門真れんこんの歴史について説明が行われた。

ルーツとなる地蓮は3500年前からあること、商都大阪では「商売に穴があく」とのジンクスで最初はれんこんは好まれなかったこと、奈良や京都では茶菓子として食され需要があったことなど、れんこんの多彩な話題と中西氏の楽しい語り口に、参加者一同も和やかなムードに包まれた。 続いて、中西氏が自られんこん掘りを披露。れんこんを一本掘るのがいかに重労働なのかがよくわかる機会となった。またれんこんのどの部位が一番おいしいか、門真れんこんが炒めても黒くなりにくい理由など、門真れんこんの品質の良さについての解説も行われた。れんこんを食べてみたい気持ちが高まったところで、中西氏が経営するれんこん料理専門店「れんこん屋」へ移動となった。

れんこん料理専門店「れんこん屋」で、コース料理を堪能

中西氏がシェフとなってれんこん料理を作っている間に、参加者は学生スタッフの案内で座敷席でVTRを鑑賞。いずれも中西氏が登場したテレビ番組で、「探偵ナイトスクープ」ではかつて行われていたれんこんの“沈み堀り”(泥の中にもぐってれんこんを取る)に、「ちちんぷいぷい」では現在のれんこん掘りに挑戦する内容だった。いずれの番組でもサービス精神たっぷりにふるまう中西氏の姿に、伝統野菜普及への思いが伝わってきた。

門真れんこんへの期待が最高潮に達した時に、れんこんのコース料理が運ばれてきた。料理やお茶の給仕は、学生スタッフが役割分担をして対応。れんこんの白和え、れんこん饅頭、れんこんご飯など、全てのにふんだんに門真れんこんが使われており、参加者たちは「もちもちしている」「普通のれんこんとは違う」と感想を述べ、初めて口にする門真れんこんのおいしさに満足している様子だった。

ランチタイムが終わり、レシピ付きの門真れんこんがおみやげに配られると、参加者からは歓声が上がった。三時間半のツアーだったが、門真れんこんへの理解をぐっと深めていただけたようだ。

「関西の食文化」シンポジウムでの研究成果をツアーとして商品化

このツアーは、今年3月に開催された「関西の食文化」シンポジウムでの学生研究発表のひとつである「門真れんこんの伝承」がベースとなっている。プレゼンテーションしたのは、上田君と鈴木さん。この成果をツアーにすれば普及活動の一環となるのではと、取り組んだという。

上田君は「新しく清水ゼミに入ってきた2年生に“はなやか関西”のコンセプトを理解してもらうためにも、実際にツアーを企画して運営するのがいいのではないかと考えました」と語り、自らリーダーシップを取ってチームをまとめた。

鈴木さんは「楽しんでいただけたという手応えを感じられました。いい雰囲気になるようにお客様に話しかけるように心がけたのが実を結びました」と、この日のツアーを振り返ってくれた。

清水准教授は「最初は漬け物や粟おこしなど、他の食文化でツアーをという話も出ていました。でもシンポジウムで得た知識と人脈を生かした方が面白いツアーになるのではと、今回のツアーに至ったのですが正解でした。なかなか出会えない農家の方から、なかなか食べることができない伝統野菜の料理をふるまっていただけるのは貴重な体験です」と、ツアーのオリジナリティを高く評価した。また「車・徒歩での移動、食事など、時間の管理が重要になる内容でしたが、きちんと実行できたと思います」と、具体的な運営面でも高評価だった。

小さな積み重ねが、地域振興を広げていく

この日は門真市役所・産業振興課の田井達弥主任もツアーに同行。「10月頃に阪南大学様からツアーの連絡を受け、大変嬉しく感じました。学生さんたちのガイドぶりも細かい気配りができていて素晴らしいです」と感想を述べ、さらに「門真市は観光資源が少ないと思われていますが、門真れんこんを始め、くわい・しろな・貝割れ大根など特産品が数多くあります。中西さんをキーパーソンに、門真の食文化がつながって大きな観光資源に成長してほしいです」と、今後の希望も語って下さった。




また前回のツアー「五感で感じる伝統の酒」にも同行いただいた国土交通省の濱詰輝紀専門員は「学生でなければ考えつかない手作り感のあるツアーで、とても面白かったです。すでに高い実績を上げている清水先生のゼミ生が作ったツアーなので、安心して任せられました」と振り返るとともに、「来年度からは新たなテーマになると思いますが、引き続き観光資源の発掘と開発にお力を貸していただければと思っています」と、清水ゼミへのさらなる活躍に期待を寄せていただいた。

「実体験」が自分の可能性を広げる

清水准教授は「旅行を企画するまでなら、多くの学生が挑戦しています。でも実際にツアーを運営するところまで経験するのは、まだまだ稀なケースです。お客様の反応を直接見ることができますし、コミュニケーションの取り方も体験的に学べます。生きた経験をすることで、観光への理解と実践力をさらに高めてほしいです」と、ツアー運営の重要性を示唆した。学生にとって、運営を体験することは大きな自信につながるようだ。

愛媛県出身の上田君は地元松山市の活性化に役立てようと阪南大学に入学したが、大学での体験を通じて関心がさらに深まった。「海外留学で観光開発についてもっと見聞を広め、グリーンツーリズムや魅力ある地域同士をつなぐ活動ができればと思っています」と今後の目標を語ってくれた。

また鈴木さんは「ゼミでタイへ研修に行った際に、観光に関わる様々な仕事をしている人に出会い刺激を受けたのですが、今回のツアーで自分もその一人になるトレーニングができました。できれば、地域振興に関わる人材として活躍したいです」と夢を語ってくれた。

未来の観光業界をリードする人材は、清水ゼミで確実に育ちつつある。