2014.3.12

南大阪地域大学コンソ-シアム主催「南大阪の歩き方」に参加して—中間報告—

 清水ゼミでは毎年「南大阪の歩き方」へ参加しており、今年で3回目になります。毎年年度末に参加大学の学生の発表会が開催されていましたが、残念ながら本年度は発表会がなく、その代わり各チーム10ページの報告書が南大阪地域大学コンソ−シアムのホームページに掲載されます。
 この研究は清水ゼミ3年生が1年間で行なう2つの課題の後半部分(前半は旅行業の研究)になります。3年生18名を4チームに分けて各々が南大阪で調査地を設定し、観光資源を発掘、調査し、地域の自然、文化や観光の振興について研究を行なっています。本年度は松原市、羽曳野市、堺市、岸和田市の4市を選択しました。今回はその途中経過を報告します。
※この学生教育研究活動は阪南大学学会の補助を受けています。

松原市のツアー企画ができるまで
岡本英里香

 私たちは現在、阪南大学のある松原市の観光まちづくりに取り組んでいます。なぜ今回の「南大阪の歩き方」で松原市を選んだのかというと、阪南大学の学生なので毎日のように松原市に来ますが、通学以外に松原市で遊ぶことはほとんどありません。大学の最寄り駅の河内天美駅には飲食店やスーパーなどがたくさんあり、生活するうえではとても暮らしやすい町だと思います。しかし阪南大学の学生109人に「松原市でおすすめ出来る場所は?」というアンケートを実施したところ、松原市に住んでいる学生も含め86パーセントの学生が「おすすめることができる場所がない」と答えました。このことから、1人でも多くの人に松原市の魅力を感じてもらいたいと思ったことが松原市を選択した理由です。
 松原市には神社・寺・歴史的建造物が多くあり、今までにはそれらを訪れるツアーも開催されています。松原市について調べていく中で、老舗店も多くあることに気付きました。飲食店から工場まで、ジャンルは様々です。そのような背景もあり「見る」・「食べる」・「体験する」という3つのことを1つのツアーに詰め込み、他県の人はもちろんのこと、松原市に住んでいる人であっても、もう一度松原市の良さを再確認できるようなツアーを作りたいと思い、企画を進めていきました。
 ツアーを企画するにあたり、まず老舗店の情報収集を手分けして行い、次にいくつかの主要となる駅をピックアップし、駅から歩いて行ける距離の老舗店を探しました。インターネットで情報を集めるもなかなか思うようにはいかず、私たちは直接現地へ出向くことにしました。現地へ出てみると、駅からお店までの距離感や商店街の雰囲気など、ネット上では気付けなかったことがたくさんあり、現地調査の重要さを感じたと同時に、何度もその地に足を運ばなければいけないということも実感しました。また以前から協力をお願いしていた、松原市市民生活部産業振興課の篠本さんの手助けもあり、現在ではようやくツアーの形が見え始めてきました。学生だけで話を進めていけば、どうしても難しいことも多々あります。しかし今回ご協力いただく会社やお店の方たちのように、学生の企画に真剣に耳を傾け、応援してくださっている方の存在が私たちの原動力になることも企画をしていく中でわかりました。
 私ひとりではツアーを一から作り上げることはできませんが、チームの仲間はもちろん、行政や老舗店の店主の皆さんの協力と理解があったからこそ、今まで企画を進めることができました。私たちのチームは、この老舗めぐりのツアーを2014年4月に開催する予定です。
  • 御菓子司 吉乃屋店主の中西さんによる和菓子作り体験

  • 季節の和菓子

羽曳野市の地域活性化に向けた調査報告
増森千絵

 清水ゼミ3年生の後期では南大阪の地域活性化を目的とした研究を行っており、私のグループでは大阪府羽曳野市の地域活性化を目的とした研究を進めています。なぜ羽曳野市を研究対象の市として選んだかというと、羽曳野市には多くの古墳や史跡が今もなお残っており、とても珍しく魅力的に感じたからです。実際に羽曳野市では百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録に向けて、活発に観光PRも行われています。また、羽曳野市にはぶどうやいちじくなどの農産物や特産品が多くあり、これらを利用して羽曳野市の地域活性化に結び付けることはできないかと考え、私たちは羽曳野市を選びました。
 まず私たちは羽曳野市の観光資源についてよく知ろうと思い、フィールド調査を行いました。フィールド調査ではレンタサイクルで自転車を借りて羽曳野市内を巡り、おもに白鳥古墳や誉田八幡宮などの歴史遺産を見て周りました。民家が立ち並ぶ中にそのような歴史遺産が違和感なく存在していることに、非常に興味を掻き立てられました。また別の日には羽曳野市役所へ行き、生活環境部産業振興課の方々にヒアリングを行いました。これらの調査を通して、私たちは市役所の方が地域活性化についてどのようなイメージを持っているのか、また現在取り組んでいることを知り、羽曳野市のイメージをつかむことが出来ました。そしてせっかく羽曳野市のために何か作るのであれば、新しいものを作りたいと考え始め、羽曳野市の歴史遺産ではなく、自然や特産物をテーマとした研究を進めていくことに決めました。その中でも「地元で生産されたものを地元で消費する」という「地産地消」に私たちは注目することにしました。羽曳野市ではいちじくが多く栽培されていて、大阪随一の生産量を誇っています。また大阪では唯一のいちじくのハウス栽培を行っている農家もあり、いちじくは羽曳野市の特産品にもなっています。私たちはこのいちじくを利用し、地産地消を取り入れた観光まちづくりを考えることにしました。
 今後の研究の進め方としては、まず人々が羽曳野市に対してどのようなイメージを持っているのかアンケートをとり、その結果を通して羽曳野市の現状について理解していこうと考えています。また、全国の地産地消に取り組んできた事例を調べ、羽曳野市の地域活性化に繋がる情報を収集していく予定です。今回の研究は前期で行った旅行会社の研究とは異なり、実際に行政や民間の方々と協力して進めていく研究なので、羽曳野市への現地調査を何度も繰り返し、相互に話し合って、羽曳野市の地域活性化に繋がるアイデアを実現していこうと思います。
  • 道の駅しらとりの郷 タケル館にて販売されているいちじくジャム

  • 西琳寺にてフィールド調査の様子

観光マップ作りを通して
冨岡祥子

 後期の研究課題であり、文化・歴史、観光によって地域の活性化を目的とした「南大阪の歩き方」で、私たちのチームは堺市の研究に取り組みました。
 堺市は観光地としての認知度が低く、観光資源と言えば、百舌鳥古墳群や刃物、線香のような伝統産業など比較的に中高年層に認知度の高いものばかりで、若年層からの認知度はあまり高くありませんでした。私自身、堺市に住んでいるのですが、確かに歴史や産業というイメージしか浮かばず、若者より年配の方々に好まれる都市という印象がありました。また、堺市役所の観光課の方へのヒアリング調査を行った結果、堺市に若年層の観光客を呼びたいという意見を頂きました。そこで、私たちは20〜30代の若い女性をターゲットにして、堺市に興味を持ってもらえるような観光マップを作ることになりました。
 観光マップを作るにあたって既存の堺市の観光マップを分析すると、そのほとんどが歴史や伝統産業をメインにしたものばかりでした。そこで今までとは違った私たち学生の視点から、あまり知られていなくとも若い女性に面白いと思ってもらえ、喜んでもらえるようなイベントや施設情報を集め、堺市へと足を運んでくれる若年層が増加することを期待した新しい観光マップを作成することになりました。
 観光マップに載せるための情報を調べて、面白そうなものを挙げていきましたが、それだけでは何処にでもあるような観光マップになってしまいます。情報に堺市らしさを出しつつ、若年層に喜んでもらうためにはどのような情報を集めればいいか悩んで研究が行き詰り、非常に焦りを感じました。そこで、もう一度研究内容を見つめ直し、改めて堺市の新たな観光の起点となるような情報を調べました。また、研究を進めているうちに、新たな観光資源を探し出すためにはインターネットや情報誌に頼るだけでは見つけることはできず、実際に現地へのフィールドワークを重ねることが大事だと気が付きました。チーム全員がそれぞれ忙しい中、何度も堺市にフィールドワークへ行き、様々なお店への訪問、ヒアリング調査を重ねました。
 実際にフィールドワークを行い、前もって調べていたカフェや雑貨屋を訪問して今回の研究の内容を伝えると、喜んで協力してくれるお店もあって、現地のお店の方も堺市を活性化させたいという気持ちは一緒だと分かり安心しました。また清水先生からのアドバイスもあり、自分たちの思い描いていたものが形になってきました。
 今まで知らなかった堺市の魅力を発見することができたので、これからも堺市を活性化させるために、この研究を続けたいと思います。
  • 紙カフェの古墳かぷちーの

現地調査の重要性
口脇円佳

 私たち清水ゼミでは2013年後期の授業から南大阪のまちづくりを課題とし、各チームで選択した市町村について調査を始めました。まず、私たちのチームには地方出身者がいるので、みんなが聞いたことのある町にしようという理由で岸和田市に決定しました。しかし、私たちは岸和田市に関する情報はだんじり祭りのみと、非常に知識が乏しい状態でのスタートでした。
 まず始めに、私たちは岸和田市の観光とはどのようなものがあるのか、岸和田ボランティアガイドの川上さんと共にまちあるきを行いました。実際に岸和田市に行ってみると、有名建築家である渡辺節設計の建物、歴史情緒あふれる日本庭園の五風荘、別名「千亀利(ちきり)城」と言われ、春には桜が咲き誇る岸和田城、日本でも有数の動物のはく製を展示しているきしわだ自然資料館、祭りの期間以外にもだんじりを間近で感じ、その構造なども見ることが可能なだんじり会館や、人の温かさを再確認できる岸和田駅前通商店街など本当にたくさんの見どころがある町でした。だんじりの通過する道には電柱がなかったり、祭りの事故を防ぐための観客用停止線があるなど、だんじりの町ならではの工夫がされている町並みには衝撃を受けました。岸和田市は大阪ミュージアム構想で最初に補助事業として認定されたこともあり、観光資源が豊富なのだと肌で感じました。その後、岸和田市産業復興部観光課の松野さんに、岸和田市の観光における現状や今後の方向性など詳しく聞かせていただきました。その聞き取りを通じて、岸和田には「岸ぶら」という団体があり、岸和田の観光に精通しているということで、「岸ぶら」編集長の渡邉さんとお話しする機会を設けていただきました。「岸ぶら」では岸和田市民の一般ブロガーが主に活動していて、イベント情報やおすすめスポットをリアルタイムで発信しています。観光客のみならず、地域住民にとっても活用できるサイトとなっています。渡邉さんは、まず市民に岸和田の素晴らしさを実感してほしいと話していました。さらに現在の岸和田の課題としては、岸和田だんじり祭りによる浜側と山側の二極化の問題があると言っていました。今後、だんじりを存続するためにも改めて市民と共に、だんじりを通じての地域活性化を重要視していきたいと仰っていました。
 今回、岸和田市に実際行ってみることによって、岸和田の素晴らしさを身を以て実感できました。ネット社会と呼ばれるようになった現代ですが、現地に行かなければ感じられない雰囲気や聞けない話があることを再確認できました。それと同時に、改めて地域の方にプラスになる研究をしなければならないと思いました。人と人との関わりを大切にして、貴重なお話をしていただいた方々に恩返しできる研究内容になるよう、今後も努力し続けていきます。
  • 岸和田駅前商店街

  • まちあるきでの歴史説明

  • 五風荘の入り口

  • 五風荘内の庭園

  • 岸和田城

  • だんじり会館で展示してあるだんじり

  • だんじり会館のパネル前

  • きしわだ自然資料館