2014.3.11

国土交通省「はなやか関西」 連携事業Vol.2 「五感で感じる伝統の酒」を実施しました

「旅行業の現状と課題」「着地型観光」をテーマにしている清水苗穂子(しみずなほこ)研究室は、自治体や地域の企業と多彩な連携活動を行っている。その成果を知った国土交通省から参加依頼を受け、昨年から取り組んでいるのが「はなやか関西 〜文化首都年〜」。
2013年度のテーマである「関西の食文化」に基づき、大阪府交野市の地酒を楽しむツアー「五感で感じる伝統の酒」を企画し、2月22日(土)に催行した。
まだ寒さの残る日であるにもかかわらず、募集人員(定員20名)を満員で獲得。
交野市の山野酒造株式会社の酒蔵見学、マッチング(利き酒)などを行い、ツアーは大成功となった。2013年度に大学生によって企画された8ツアー中、本企画と昨年の「堺こんぶウォーク」の2ツアーが阪南大学清水ゼミによるものだが、満員での参加者獲得は阪南大学の2ツアーのみ。
行政主導の文化事業でも、実学に強い阪南大学をアピールする結果となった。

地域資源から関西文化を発信する「はなやか関西〜文化首都年〜」。

「はなやか関西〜文化首都年〜」は、国土交通省近畿地方整備局の「文化首都圏プロジェクト」を推進する取り組み。本物の文化が数多く集積している関西に毎年特定のテーマを設けて各地を連携させ、関西が一丸となって支援や情報発信を行い、関西を「文化都市圏」として発展させようというものだ。
スタートした2011年度のテーマは「茶の文化」、2012年度のテーマは「人形浄瑠璃」、そして2013年度・2014年度のテーマが「関西の食文化」。

清水ゼミは「関西の食文化」のテーマに参加し、昨年11月に3年生による「堺こんぶウォーク」を実施。そして今回は2年生による「五感で感じる伝統の酒」だ。昨年4月から入念に企画を検討し、チラシ作り・配付・山野酒造との打ち合わせなどを経て10ヶ月、ついにツアー当日を迎えた。天気にも恵まれ、午前9時には集合場所の京阪交野市駅に20名の日本酒ファンが集合。清水ゼミの福崎美帆さん(2年生)と交野市星のまち観光協会の佐々木克己さんが参加者に挨拶して、ツアーがスタートした。

酒蔵まで歩きながら、交野市の歴史と文化をガイダンス。

京阪交野市駅から山野酒造までは、徒歩で10分ほど。一級河川の天野川が古今和歌集に詠まれたり、弘法大師の秘法によって星が降った伝説が残るなど、交野市は歴史と伝統のある町。昔ながらの風情ある町並みを進んでいくと、立派な門構えの屋敷が現れる。地元では「代官屋敷」と呼ばれている重要文化財の北田家住宅だ。

ツアー参加者に交野市の魅力を伝えるため、ボランティアガイドの佐々木さんが北田家住宅の前でその由緒を解説してくださった。300年以上の歴史がある建築だということ、長さ56メートルの白壁作りの長屋門は民家としては日本一の長さを誇ること、北田家は南北朝時代に南朝方に仕えていた武将北畠顕家を先祖に持つということ、現在も14代目の当主が住んでおられることなど……。公開時期ではないので外側から鑑賞するのみだったが、その豪壮なたたずまいを前に写真を撮る人も多く、ツアー感が一気にアップ。メインテーマである日本酒への期待も大きくなっていった。

社長による日本酒講座に、日本酒の素晴らしさを再認識。

北田家住宅を後にすると、ほどなく山野酒造に到着。山野酒造は全国新酒鑑評会で二度の入賞、三度の金賞に輝く「片野桜」で名高く、江戸時代末期からの伝統を受け継ぐ酒蔵。蔵元の山野久幸社長が参加者を出迎え、まずは日本酒講座が行われた。

山野酒造は東北の南部杜氏と地元の杜氏との混成チームであり、最も伝統的で大変な手間と労力を必要とする生酛(きもと)と呼ばれる製法で酒母を造っている。戦後は精米技術が発達し、吟醸や大吟醸など端麗で辛口な酒が好まれる傾向がある。確かに飲みやすいが、味に奥行きはあまりない。高知などお酒をたくさん飲む地域のお酒は辛口が好まれるが、ゆっくり飲むには甘味・旨味のあるお酒が向いているので、自分の飲み方に合ったお酒を選んだ方がお酒を楽しめるそうだ。最近は日本酒離れが進んでいて、最盛期の昭和1973年と比較すると出荷量が35%にまで減っているという。


時には真面目に、時にはユーモアを交えた山野社長の絶妙な語り口に、どんどん引き込まれる参加者。改めて日本酒がいかに素晴らしいかを再認識できる機会となった。

酒蔵見学では、生きている日本酒を体感。

日本酒の製造工程について基礎知識を聞いたところで、酒蔵見学へ。木造の酒蔵に一歩足を踏み入れると、日本酒の香りがたちこめる中に大きなタンクがいくつもそびえ、脇には蒸し上がった米や麹室から出たばかりの出麹(でこうじ)が箱に入って並んでいる。米や麹の味見をしたり、はしごに昇って仕込み中のタンクの中を見たり、香りの違いを楽しんだりと、なかなか味わえない体験ばかり。ここでも山野社長のきめ細かな解説があり、「早朝の静かな時間にはタンクからお酒のふつふつという音が聞こえますよ」との言葉には一同が日本酒へのロマンをかき立てられた様子だった。
酒蔵を歩いて見て回ることで、山田錦という米が、多くの人の手と自然の力によって日本酒へと成長するプロセスを体感できた。

全問正解者4名の快挙となったマッチング。

酒蔵見学の後は、参加者お待ちかねのマッチングタイム。純米酒・吟醸酒・本醸造酒・生酒の4種類を味見し、その後ラベルを隠した状態で4種類を当てる。山野社長からは「同じ量で味わう」「舌全体で味わう」「味の違いをメモする」「印象を好きな女性(男性)に例えるなど、自分の中のランキングをつける」とアドバイスがあった。
山野社長は清酒業界人の利き酒コンテストで入賞した経験もあるというが「プロでも体調次第では間違えますから、皆さんはまず当たらないでしょう(笑)」と、10人にひとり当たれば良い方と予想。ところが今回の参加者は強者揃いだったのか、昼食タイムに発表された全問正解者は20人中4名と、予想を裏切る高成績。日本酒をいただきながらの昼食タイムは大いに盛り上がった。

ゼミ生の企画に、参加者も大満足。

約3時間半のツアーだが、ゼミ生たちは、参加者に資料を配ったり、利き酒や食事のセッティングをしたりと、常に目配り心配りを欠かさず対応していた。

リーダーの福崎さんは「最低10名は集めなくてはと思っていたのに、20名とは本当にうれしいです」と感想を述べてくれた。企画が動き始めたときは、山野社長にメールや電話で連絡するのにも緊張していたという。「社長と仕事の打ち合わせをする経験が無かったので……。でも山野社長のお人柄もあって、徐々にコミュニケーションが取れるようになりました」。またチームメンバーに仕事を頼むことで、ディレクションする力も身についたという。「大阪からの参加者の方が多かったのですが、ツアーを楽しんでいらっしゃる様子を見て、地域振興の大切さを実感できました。どんな仕事に就きたいかはまだ定まっていませんが、自分の住む地域を好きになれるような活動はずっと行っていきたいです」と将来の目標も見えてきたようだ。

参加者の方々にも企画意図は十分に伝わっていた。「酒蔵見学の経験はあるが、こんなに充実した内容は初めて」「やっぱり日本酒は最高。世界遺産にしたい」「北田家住宅を見学できて良かった」「スタッフ(ゼミ生)も親切」とツアーの感想を語ってくれた。

ガイド役を務めた山野社長は「しっかりと企画を立ててくれたので、不安もなく当日を迎えられました。特に若い人の日本酒離れが進んでいるので、大学生と一緒にこうした企画を進めることで若いファンを獲得できればうれしいですね」と見学ツアーの意義を語ってくださった。

産官学連携の着地型ツアーで、地域に元気を。

ツアーには国土交通省・近畿圏広域地方計画推進室の専門員である濱詰輝紀さんも帯同。濱詰さんは他大学とも「はなやか関西」の企画を進めているが、阪南大学の仕事ぶりを高く評価している。「清水ゼミの皆さんは積極的で、自分からどんどんアイデアを出して進めてくれる。募集定員が満員なのは8ツアー中2ツアーのみでいずれも清水ゼミ。企画や集客の極意をぜひ教えていただきたい」と述べ、さらに「国土交通省は道路や橋を造る機関ですが、それだけでは地域は活性化しない。インフラと同時に文化も発展させていくことが不可欠なので、これからも若い力を借りて一緒に関西を盛り立てていきたい」と今後の抱負を語ってくださった。

清水准教授からは「福崎さんたち2年生のクラスはAO入試組でクリエイティブ精神あふれるメンバー揃い。きっと自主的に良い企画を作ってくれるはずと期待していました。今日ツアー本番を体験し、反応を見ることでさらに勉強になったと思います。初めての試みとして大成功だと思いますが、20代の参加者を獲得できなかったことは課題ですね」と高評価ながらも、さらなるパワーアップを期待する。 「地域振興に欠かせないのは、今回の佐々木さんや山野社長のように、地元の方が案内役を務める“着地型ツアー”。 行政と民間企業と大学が同じ目的に向かって連携すれば、きっと感動につながるはず。これからも楽しんで取り組んでほしいです」。 清水ゼミは、今後も関西の地域振興に欠かせない存在となりそうだ。

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