塩路ゼミ4年生の卒業研究フィールドワーク

ゼミ4年生が卒業研究に関するフィールドワークを報告

 塩路研究室の4年生は、各自がこれまでに行った卒業研究に関するフィールドワークの結果を報告しました。フィールドワークの結果をふまえて、ほとんどのゼミ4年生はすでに卒論を一通り書き終わっており、現在は推敲を重ねている段階です。今回は、そのうちの3名がフィールドワークについて報告します。

島根県のパワースポット
国際観光学部 4年生 野田頼子

 卒業研究の一環で、昨年9月27日から29日までの3日間、島根県のパワースポットといわれる場所にフィールドワークに行きました。島根県は縁結びの神様の出雲大社が恋愛のパワースポットとして若い女性を中心に注目を集めており、さらに島根県内に多くのパワースポットが点在しています。さらに、昨年2013年は、島根県の観光名所である出雲大社の式年遷宮の年であったため、メディアに大きく取り上げられており、その影響も見ることができるのではないかと考えました。そして、以下のように島根県内のパワースポットを巡りました。
 一日目に出雲大社、稲佐の浜、二日目に玉造温泉周辺の足湯、恋叶い橋、湯(ゆ)閼伽(あか)の井戸など、三日目に玉作神社、清巌寺、八重垣神、県立美術館などを回りました。まず、一日目について述べます。大阪駅から高速バスを使って約四時間半で出雲市駅に到着し、一畑電車に乗り、出雲大社前駅で降りると徒歩10分もかからないうちに出雲大社に到着しました。この日は平日であったことと、もうすぐ旧暦の10月の神在月であったことがかさなって、学生グループや団体旅行など多くの観光客が訪れていました。旧暦の10月の7日間、人の縁など一年のことを相談するため全国各地の神々が出雲大社に集まるとされています。そのため、神無月と呼ばれる旧暦の十月は出雲地方では「神在月」と言われています。境内には土産屋があり、縁結びのご利益を授かれるようにとストラップ等の品々が販売されていました。出雲大社は、ひとたび足を踏み入れると緑に囲まれ、空気が澄み神聖な雰囲気を感じ取ることができました。また銅の鳥居をくぐり、御仮殿、御本殿と奥に進むにつれ、荘厳でピンと張りつめた空気が漂っているようでした。近頃、観光客のマナーが問題視されていますが、ここではマナーの悪い様子はみられなかったです。さらに、先ほど述べた稲佐の浜ではウェディングドレスを着た女性とタキシードを着た男性が写真撮影をしており、神々のゆかりの地という点にあやかっているのだと思いました。
 また一畑電車に乗車した際には、2両編成の小さな電車で、観光客が使用する交通手段として整備されているといった様子はありませんでした。さらに、出雲市駅では「平成の大遷宮」と大きな看板が掲げられており、島根県全体をアピールしていました。そして、宿泊したホテルの周辺で夕飯に名物である「出雲そば」をいただきました。入店した時間が20時頃であったため、私以外のお客さんは一組の観光客だけでしたが、旅先のご当地グルメを食べることは旅行の醍醐味であると感じました。
 つづいて二日目についてです。出雲市駅から玉造温泉駅で降り、徒歩約20分で玉造温泉周辺のパワースポットに着きました。はじめに玉造神社の参道につづく宮橋に向かいました。この橋は別名恋叶い橋と呼ばれており、写真を撮る際に玉造神社の鳥居が映り込むと恋が叶うと言い伝えられています。次に、湯閼伽の井戸で、ここも恋来井戸と呼ばれており女性観光客がガイドブックを手に実際に鯉に餌やりをしていました。玉造温泉は古代から「神の湯」と呼ばれ、『出雲国風土記』には「一度湯につかれば肌が美しくなり、再び入浴すれば、どんな病気も治ってしまう。その効き目がなかったことはないので、人々は神々の湯と呼んでいる」と記されており、日本で初めて「美肌の湯」と言われ、科学的にも日本一の潤いのある源泉であることが判明し、安全性と肌への効果から最も優れた温泉と評価されているため、湯薬師広場では200円払うと源泉を持ち帰ることができ、観光客が順番を待って利用していました。さらに、姫神広場では足湯が設置されており、誰でも利用することができました。また、「因幡の白うさぎ」など、出雲神話に登場する場面が八体のオブジェで再現され、飾られていました。
 この玉造温泉周辺では、写真が撮りやすいように台が設置されており、人にわざわざお願いして撮影してもらうというわずらわしさがなく、観光客に配慮されていると感じられました。また、まちに飾られていたオブジェには分かりやすく神話の案内板が設置されており、観光客が足を止め眺めている姿が見られました。                             
 

最後に三日目についてです。この日は27日に宿泊したホテルでたまたま見つけたパンフレットにタクシーで縁結びのパワースポットを巡るツアーの案内があったので、利用してみることにしました。前日のうちに予約をすませ、9時からのツアーに参加しました。料金もタクシー代・ガイド料合わせて一人2,000円ととても割安に感じました。私の他にも関東から観光に来た女性三人組が参加していました。JR松江駅南口を出発し、まず玉造湯温泉を訪れました。玉造湯神社はいまや出雲大社・八重垣神社と並び、島根県の三大縁結び神社と言われています。境内の「真玉(願い石)」に「叶い石」をあて、御神水をかけ願い事をし、そして、複写式の願い札にお願い事を記入し、一枚は賽銭箱へ納めて神社に参拝し、もう一枚は叶い石をとともにお守り袋に入れ、お守りとして持ち歩けば願い事がかなうとされています。実際、多くの女性観光客が願い石に列をなしていました。  
 次に、清巌寺のおしろい地蔵で、筆でおしろいを塗って美肌祈願をするといったものでした。続いて、八重垣神社です。硬貨をのせた用紙を池に浮かべて占う鏡の池の縁占いが有名です。実際、池の周りは常に人が取り巻いていました。実際に占う前に御神木の前でお祈りをしてから占いを試みました。他の観光客は鏡の池一直線であったが、ガイドの案内があったため御神木に祈りを捧げることができました。つづいて島根県立美術館の縁結びうさぎです。二番目のうさぎが出雲大社の方向を向いているのでそのうさぎをなでると幸せになると言われています。
 最後に、カラコロ工房の幸運のポストに行きました。ピンク色のポストと一緒に写真を撮ると幸せになると言われています。また、今回は時間内に回れなかったのだが、京商店街のハートの石畳もツアーに組まれていました。女性が片方のハートの上に立つと、もう一方のハートを最初に踏んだ男性と結ばれると言われています。どこも観光客が記念に写真を撮っている姿が見られました。
 このツアーは、NPO法人の松江ツーリズム研究会が企画・運営しており、このタクシーで巡るツアー以外にも松江城めぐりや八重垣神社無料ガイドを行っているとのことでした。また、移動の間はガイドの方が各神社にまつわる神話の紹介をするなど語り部のような役割もしていており、観光客への対応がなされていました。
今回、島根県でのフィールドワークを通じて、全体的に神話をもとに各地を縁結びパワースポットとして観光を推し進めているといった印象を受けました。そして、そのパワースポットとしての背景の神話をオブジェや紹介文を記載した表示板を設置するなどと、観光客向けの案内が多くみられました。さらに、出雲大社ではご利益があれば、またこの地にお礼のために訪れることを「お礼参り」といい、一度だけで終わる観光でないという特徴がありました。このように、今回のフィールドワークを通して、島根県ではパワースポットによって観光が支えられていると言っても過言ではないと思いました。

信仰深い霊場 高野山
国際観光学部 4年生 小倉里菜

 私は卒業研究で、“世界遺産から知る和歌山の魅力”というテーマを設定しており、その一つの例として、熊野古道・高野山をフィールドワークとして数回にわたり訪れました。
 まず、7月5日には、ゼミの3回生、4回生で和歌山県の高野山を訪れました。現地ではバスが走っており、観光客等多くの人が利用していました。私達は街並みも楽しむため、集合場所であった金剛峯寺から奥ノ院まで歩いて散策しました。道には、高野豆腐や高野薪、やきもち等お土産物屋さんが立ち並んでいました。その中には、宿坊と呼ばれる観光客が宿泊する事の出来る寺院が数多く立ち並んでいました。
 高野山では、刈萱堂、摩尼宝塔を訪れ、一の橋から入り奥ノ院弘法大師御廟を目指しました。奥ノ院に続く道には数多くの墓石が並んでおり、その中には歴史人物の供養塔、有名企業の名前が刻まれた墓等が存在しました。小さなお地蔵様や、大きな墓石と形が様々なものが多く祀られていました。
 奥ノ院では、今も弘法大師が生きているとされており、神聖な場所とされています。奥ノ院では、脱帽し、写真撮影は禁止、またガイド等の音声マイクの使用も禁止されており、非常に身が引き締まる、神聖な場所でした。寺院の前で数珠を手に巻き、念仏を唱えている人の姿も見られました。人々は弘法大師の存在を信じ合掌し、弘法大師の教えや救いを求めているのだろうと感じました。
 奥ノ院では、線香やロウソクが多くたてられており、観光客達はその前でも合掌し、念仏を唱え、線香の煙を自分に浴びせていました。線香やお香の香りが寺院一帯に漂っており、落ち着いた気持ちにさせられる、そんな空間でした。
 訪れた日は土曜日という事もあり、多くの人が訪れていました。観光客の特徴として、50〜60代の方が目立ちました。ツアーなどの団体客もおり、また小さな子供を連れたファミリー層等も多く目にしました。ツアー客は現地のガイドを付けて説明を受けながら散策している姿が見受けられました。日本人観光客だけではなく、外国人観光客も目立ちました。外国人観光客の特徴としては、アジア圏やヨーロッパ圏からの観光客が多いように感じました。大きなリュックサックを背負い、カメラを片手に寺院や墓石、何本も立ち並び生い茂る杉の大樹等を写真に収めていました。

 また同月、ゼミ活動とは別に、高野山をもう一度訪れ、宿坊に宿泊しました。宿坊には、自分達以外に外国人観光客が3組程泊まっていました。食事の際など慣れない手つきでお箸を持ち精進料理を楽しんでいました。精進料理の内容は、晩御飯では白ご飯・漬物・高野豆腐・ゴマ豆腐・野菜の天ぷら・吸物・酢の物・みかん等が用意されました。一つひとつの量は多くは無く、味付けも薄めで、食材本来の味を楽しむ事の出来る料理でした。普段食べるものと比べれば質素に感じますが、充分お腹は満たされる食事でした。朝食も、白ご飯に味噌汁、漬物・海苔・ひじきの煮つけ・豆腐でした。肉や魚が無くてもしっかりとした食事をとる事が出来、食材の味を楽しむ事が出来ました。宿泊して感じたことは、思っていたより外国人観光客の方が多く宿泊しており、外国人観光客に向けた観光対策の必要性です。
 また、このフィールドワークでは阿字観やお勤めを体験しました。阿字観とは真言宗に伝わる瞑想法であり、阿字観を通して大日如来を瞑想し、仏と一体の境地に入るものです。高野山総本山金剛峯寺で阿字観が体験できると聞き参加する事にしました。初めての体験でありましたが、改めて今までを振り返り、普段は考えない仏や宇宙との繋がり等を考えさせられ、非常に新鮮な体験となりました。
 お勤めは宿泊していた宿坊で参加する事が出来ました。朝6時からお堂に集まり約60分間、読経を聞き、そのあとは僧侶の方からのお話を聞きました。朝早くからでしたが、自分達以外に泊まっていた外国人観光客の方達も参加していました。朝の冷たい風がお堂に流れ、神聖で厳粛な雰囲気の中行われ、一日の始まりから身を引き締めることが出来ました。高野山にはこのように様々な体験をする事が出来ます。ただ見て写真に収めるだけではなく、是非多くの観光客の方々に体験を通じて歴史を感じ、理解してもらいたいと感じました。
 今回のフィールドワークを通して、高野山という地は、日本人のみならず海外からの観光客も多く訪れる信仰深い場所であると感じる事が出来ました。また開創されて間もなく1200年という、歴史溢れる場所であり、私たちが生まれる前から人々の信仰の姿を見てきた、情緒深い場所でした。現在ばかりに目を向けるのではなく、後ろを振り返り、歴史を知るという事も自分の知識や考えを養うことに繋がる、非常に大切な事であると考えさせられました。

憧れの地 ペルー
国際観光学部 4年生 松永眞奈美

 私が大学2年生の頃に受講していた世界遺産の授業で、興味のある世界遺産を調べてレポートを書くという課題があり、その時にペルーのマチュピチュを選んだことがきっかけで私はペルーに興味を持ち始めました。卒業論文のテーマをインカ帝国にして、2014年2月14日から24日までペルーの首都リマ、クスコ、オリャンタイタンボ、アグアスカリエンテス、プーノなどの地を周りました。
 まず観光客の多さに驚かされました。もちろんペルーの観光客数は南米の国々が上位に上がりますが、日本は11番目に入ります。マチュピチュへ行った時は日本語が飛び交っており、その中に流暢な日本語を話すペルーのツアーガイドさんを見つけました。ペルーのツアーガイドさんたちは、英語はもちろん日本語を勉強している方も沢山いるそうです。どこに行っても観光客が大勢いて、ペルーという国は観光客なしでは成り立たない国だと感じさせられました。ペルー初日にペルー人の友人の家に一泊させてもらったのですが、家は豪邸でメイドもいました。一家にメイド一人、それがリマでは普通だそうです。約2900万人の国内人口のうち、約900万人が暮らすリマ都市圏は別格で、スーパーマーケットやファストフード店の展開が進んでいました。

次の日にはオリャンタイタンボという小さな村へ行きました。首都リマとのギャップはより一層大きく感じられました。
 小さな村を散歩している時に沢山の現地住民を見かけました。現在、ペルー独特の刺繍が入った民族衣装は観光客向けに着ているものだと思っていましたが、年配の方々は今も着ている人がいるということに気づきました。子供たちはその衣装を着て、観光客に「フォト!フォト!」と言って写真を撮っていいよとアピールしてお金を稼いでいましたが、今も普段着で着ている人がいることに嬉しくなりました。私は旅行のプランを考える時になるべくツアーは使わずに行こうと思い、現地の人々が使う交通手段を選びました。最も印象に残っているのは、この小さな村に滞在している時に何度も使った約10人乗りの乗合自動車です。何人乗りなど気にすることはなく、車にどんどん人が乗っていき満員電車に乗っているような感覚でした。値段は日本円で言うと50円〜150円。観光客価格にはなっていますが、それでも『安い!』と思いました。それと、トゥクトゥクという乗り物があり、距離は短いけれど荷物が重くて疲れた時に何度が使いました。実はトゥクトゥクは東南アジアや南アジアで人々の足として活躍している乗り物で、インドネシアに行った際によく見かけたのを思い出しました。造りは貧弱で、長距離だと振動がかなり身体に響くのでお尻が痛くなると思いますが、短距離なら特に問題はありません。宿泊は一泊朝食付き1500円ほどのモーテルに滞在しました。各部屋にトイレとシャワーがついていてシャワーはお湯がすぐでなくなりましたが、ペルーの2月は夏なので困りませんでした。私が行った時期は雨期だったので夜中になると毎日の様に雷が鳴るほどの大雨が降っていましたが、いつも朝には止んでいました。ペルーは雨が多いので、集落の中には水路が張り巡らされていて雰囲気が日本の城下町に似ていました。食事はすべてレストランで食べましたが、500円ほどでサラダ・メインディッシュ・デザート・ドリンクを楽しめて大満足でした。ペルーは魚料理がどれもとても美味しくてよく注文しました。
私は憧れの地ペルーを訪れ、その歴史的背景にあるインカ帝国の存在を強く感じました。卒業論文では、私が現地で調査してえた内容にもとづいて今は亡きインカ帝国に支えられているペルーとその観光の現状について書きます。