2016.6.16

飛鳥フィールドワークを終えて

飛鳥フィールドワークを終えて

 五月晴れの5月14日に国際観光学部の1年生全員が明日香村にフィールドワークに出かけました。往復は全員が同じ電車で移動しましたが、現地ではゼミごとに行動しました。中山ゼミは飛鳥駅から高松塚古墳、亀石、石舞台という行程を全員で歩き、石舞台の近くの茶屋でお昼の休憩を取りました。そこでは事前に皆で話し合って予約していた古代米を使ったランチをいただきました。その後、3つのグループに分かれ、いよいよミッション遂行に向けて始動しました。
  • 石舞台にて

 グループには当日の朝、先生から次のようなミッションが下っていました。

 Aグループ:古墳と自然を巡り、飛鳥に行ってみたいと思わせるようなキャッチコピーを入れたポストカードを作成する。
 Bグループ:石造物と万葉歌碑を巡り、万葉歌碑の中から一つ選んで、その内容に沿った動画を撮る。
 Cグループ:飛鳥寺までの道のりで、気になったものの写真を撮影し、「飛鳥○○写真集」という名の写真集を作成する。

 ミッションを受けてから電車の中で、各グループでどのように回るか話し合いました。
 以下では、協力し合い、ときには苦難を乗り越えてミッションを達成した様子について1年生から報告します。

(SA:湯栗未名実、町野早彩、寺地広将)

自然が豊かな明日香村

福田将也・山下美羽・山下弥華

 福田将也・山下美羽・山下弥華・SA寺地広将の4人はAグループとして活動しました。私たちは、天武・持統天皇陵、鬼の俎、鬼の雪隠、稲渕棚田、飛び石の5か所へ行き明日香村の良さを写真に撮り、行きたいと思わせるようなキャッチフレーズをつけたポストカードを作るというのがミッションでした。私達は、お昼休憩の場所だった石舞台古墳から近く、駅から一番遠い「飛び石」とその手前にある「稲渕棚田」に行くことになったのですが、これがどれほど大変なミッションなのか、このときにはまだ知り得ませんでした。
 目的地の「飛び石」は、山を登り「稲渕棚田」を経てしばらく行ったところにあります。先生からもらった地図では「飛び石」の正確な場所がわからなかったため、携帯電話を使い探しました。しかし、携帯電話でも正確な位置が出てこなかったため、何度も道を間違えました。地元の人ともなかなか会えず、道を聞くこともできませんでした。私たちのグループはひたすら山を登り続けました。
 石舞台古墳から、一時間以上登り続けたところで、「稲渕棚田」と書かれた看板を見つけることができました。ですが、私達は「飛び石」を目的地としていたため、気分が高ぶることなく、おまけで見つけることができたというような感じでした。そして、「飛び石」は「稲渕棚田」の奥にあるため、この先まだ歩かないといけないと考えると、引き返したくてたまりませんでした。
 気持ちを切り替え、稲渕棚田から15分ほど歩いたところでやっと「飛び石」の看板を発見することができ、矢印の方に進むと階段がありました。階段を下ると、「飛び石」がありました。私たちは、ものすごくうれしいと思う反面、心のどこかで「予想していたものと違う・・・」と感じました。ですが、綺麗な水に誘われ、暑かったこともあり足を入れてみました。とても冷たくて気持ちよく、水遊びをするにはちょうどいいなと思いました。ここでゆっくり休憩したいところでしたが、来るまでに時間を使いすぎてしまったので、必死に笑顔を作ってポストカード用の写真を撮り、急いで山を下りました。
 山を下りている途中で中山先生からメールがきました。「時間が足りないと思うので、もう駅に帰ってきてください。」という内容で、まるで先生がついて来ているかのようでした。結局私たちのグループは、残りのミッションを達成することができずに駅に帰りました。先生も私達が大変だったことを理解してくれていたので、ジュースを買ってくださいました。その時に飲んだジュースは最高に美味しかったです。
 今回の明日香村のフィールドワークはひたすら歩き回ったため本当に大変でした。しかし、大変な思いをしたからこそ、より一層グループの仲が深まるフィールドワークになったと感じました。また、町に住んでいる私たちが普段はあまり見ることのない山の自然を全身で感じることができました。
 下の写真が私たちがミッションで作ったポストカードです。完成したものを見ると「稲渕棚田」も「飛び石」もとてもきれいです。「稲渕棚田」の写真を撮影したときは「飛び石」に行くことしか頭になかったため、あまり感慨もありませんでしたが、今思いかえしてみると棚田は美しかったですし、緑がきれいだったと思います。皆さんも是非一度は行ってみてください。

日本の心 万葉歌碑に触れる

松田希、宮本有紀、安田知弘

  • 犬養万葉記念館にて、動画を撮影中

 私たち、Bグループ(松田希、宮本有紀、安田知弘、SA湯栗未名実)は酒船石の意味を考えながら見学することと、万葉歌碑を見つけその意味を探り動画に撮るというミッションを遂行しました。
 まず、石舞台古墳からグループに分かれて酒船石を目指しました。道中には石造物や田園風景があり飛鳥の自然を満喫できます。酒船石があると載っていた場所には、かなり急な階段がありました。階段をワクワクしながら登ったのは、久しぶりでした。酒船石は酒をしぼる槽とも、あるいは油や薬を作るための道具とも言われています。昔の人はこんなに硬い石の上で形を削って、暮らしのために利用したのかととても奇妙に感じました。そこで偶然観光客の方と出会い、酒船石について質問されました。私たちは事前学習で酒船石について勉強していたので、自分たちの言葉でしっかりと説明することができました。
 次に向かったのは犬養万葉記念館です。ここでは万葉集に生涯を捧げて研究していた犬養孝先生の資料などが展示されていました。万葉集をいろいろな方向から鑑賞し、万葉歌に旋律をつけて歌うところがとても魅力的でした。そこで私たちは一つの万葉歌碑に出会いました。高市皇子(たけちのみこ)が詠んだ「山吹の 立ちよそいたる 山清水 汲みに行かめど 道の知らなく」という歌です。詳しい意味を知るために、記念館の方に歌碑の意味を尋ねてみました。直訳すると「山吹が咲いている山の清水を汲みに行きたいが、そこへ行く道がわからない」という意味だそうです。さらに、この歌の裏には、「大切な人が亡くなり、悲しくて会いに行こうとするが、黄泉に通じる道がわからず、会えない」という悲しいストーリーがあるのです。記念館にこの歌碑を建てた理由も、犬養先生のお弟子さんたちが大切な先生の死を悼んでいるためでした。
 私たちは犬養万葉記念館の方の協力のもとこのストーリーに沿って劇をして動画におさめました。一人が先生役で、二人が学生役をやってみました。まずは先生が授業をし学生が熱心に聞いている場面を撮って、次に、学生の二人が昔の教室に入って、亡くなった先生のことを忍んで語り合う場面を撮りました。万葉歌は恋の歌が少なくありませんが、こういう風に自分の思いと重ねて味わうのも1つの面白さです。この歌碑以外にも、明日香村にはたくさんの歌碑があります。歌碑見つけてその意味を理解したら、昔の人々の暮らしや考えに触れることができるかもしれません。これからも、多くの人に万葉集について関心を持ってほしいと思いました。
 最後に、明日香村に対して、私たちが気がついた、ささやかな提案があります。飛鳥は、観光スポットが豊富にあるのが魅力ですが、距離がかなり離れているので、楽しい反面つらさもあります。安全な場所に、背もたれ付きのベンチを設置するといいと思います。また、犬養万葉記念館を過ぎてから酒船石に向かう道路は、車が来ると歩行者は端のほうに寄っても、かなり危なくて、観光地として人を呼ぶ場所なのに、これでいいのかと心配になるほどの狭路もありました。子どもを持つ親は、ひやひやするだろうなと思いました。観光客や地元の人が安心して歩ける歩道があるといいなと思いました。
 今回のFWでは、明日香村でしか味わえない、人との出会いがありました。やはり、実際に話してみないと知りえないことはたくさんあります。とりわけ犬養万葉記念館の方には、興味深いお話をたくさん聞くことができました。歴史的なもの以外にも、人との触れ合いも観光の魅力ではないでしょうか。旅先での出会いは大切だと改めて考えさせられました。
  • 万葉歌碑の前で記念写真 

  • 犬養万葉記念館の方から説明を受ける

飛鳥にしかないもの写真集

ウォーレン湖南、川上桃華、堀切悠那

 Cグループのメンバーは、ウォーレン湖南、川上桃華、堀切悠那、SA町野早彩です。私たちのミッションは、飛鳥寺までの道中でテーマを決めて気になったものを写真に収め、自分たちだけの「飛鳥○○写真集」を作ろうというものでした。ただし、名所旧跡はダメという制約付きでした。
 飛鳥で気になったのは、普段目にするものとは違った素材や色でできたものです。そこで、私たちは「飛鳥にしかないもの写真集」を作成することにしました。一つ目は「岡寺前」と記されたバス停です(写真1)。よく見るバス停とは違い、木で作られていました。二つ目はポストです(写真2)。全国のどこの都道府県もポストは赤色に塗られていますが、ここで発見したポストは黒色に塗られていました。この村は建物が全体的に落ち着いた色で統一されていたので、この二つもそういった村の雰囲気に合わせるために作られたのだと思います。それから、珍しい外見の建物がありました。それは小さな病院です(写真3)。白と黒で塗装されており、パッと見ただけでは病院だと思えないようなおしゃれな外見です。入るのに抵抗がある病院も、これだと少しは入りやすくなっていいなと思いました。
  • 写真1:岡寺前停留所

  • 写真2:黒いポスト

  • 写真3:病院

 そして、ゼミ全員で歩いた時に撮ったものですが、亀石の近くで見つけた木のアイスクリームです(写真4)。都会にあるプラスチックで作られたアイスクリームとは違い、これもまた飛鳥ならではの雰囲気を感じられました。また、薄い赤、黄、白色の紙で作られている不思議な紙の束が何件もの家に飾られていました(写真5)。私たちは、これが一体何なのか調べてもわからなかったため、大学に帰ってから飛鳥を専門にしていらっしゃる先生に尋ねました。これは、施餓鬼幡(せがきばた)と呼ばれる魔除けのようなもので、施餓鬼会(せがきえ)という各宗教を通じて行われる仏教行事に参加した際に持ち帰って来るのだそうです。年に一回、この施餓鬼幡は取り替えられます。
  • 写真4:アイスクリーム

  • 写真5:施餓鬼幡

  • 写真6:飛鳥寺

 飛鳥にしかないものではありませんが、自然のものともたくさん触れ合いながら歩けました。道端には色鮮やかなたくさんの花が咲いていて目を楽しませてくれました。タンポポの綿毛をふいて飛ばしたり、足の速いトカゲを追いかけたりと小さい頃に戻った気分を味わえました。また、地元の人とも道を聞くなどして触れ合えました。飛鳥寺に向かう途中、道に迷ったときに、横を通り過ぎたバイクのおじさんは、私たちが呼び止めたら、ずっと先まで進んでいたのにわざわざ戻って来て、親切に道を教えてくださいました。私たちはほんわかした気分になり、感謝を込めておじさんの後姿を写真に収めました。そしてやっと飛鳥寺に到着することができました(写真6)。
 写真を撮るというミッションがあることによって、普段なら目を向けずに通り過ぎてしまう道のりをよく見ることができ、たくさんの新しい発見や出会いができたと思います。