2021.7.27

2021年度大阪フィールドワークを終えて 

はじめに

SA杉本真悟

 2021年度の中山ゼミ(大学入門ゼミ)の大阪フィールドワーク(以下、FWとする)は緊急事態宣言の延長のため日程の延期を余儀なくされたが、7月3日4日に無事実施できた。
 今年はSA岡田さんの発案により、以下の通りゲーム感覚でFWを行った。
  1. まず、9人の1年生を2つのチームに分け、それぞれ地下鉄路線を担当させた。私たち4人のSAも2人ずつに分かれた。地下鉄路線は1つは谷町線、もう1つは本町起点の四つ橋線、ニュートラム、中央線の3線からなる環状線である。谷町線は天王寺と東梅田を除く24駅、四つ橋線、ニュートラム、中央線の環状線はなんばを除く22駅である。
  2. 次に、チームごとに担当路線全駅の「駅近観光スポット」を事前にネットを使って調べさせた。駅からの地図をコピーし、徒歩何分か、その場所の概要、入館料などの情報を一覧にした。事前調査でどうしても観光スポットが見つからない駅は行ってから人に聞いて探すこととした。
  3. FW当日は、谷町線は八尾南駅、四ツ橋、ニュートラム、中央線の環状線は本町駅に集合した。最初の駅で1年生が先生とじゃんけんをし、勝ったら3駅、引き分けなら2駅、負けたら1駅進むというルールで、行く駅を決めた。(ちなみに7月3日は谷町線、7月4日は四ツ橋、ニュートラム、中央線の環状線のFWを行い、先生だけが2日連続でFWを行った)。
  4. 駅からは事前調査した場所に行って1ポイント、そこで、さらにその場所の情報を得るためにインタビューをして1ポイント、インタビュー内容がメモできるほどの内容だったら1ポイント、もし事前調査で分からなかった観光スポットを見つけたら3ポイント、というようにポイント獲得制で競うこととした。
  5. 時間は公平性を期すために10時~17時とし、途中90分のランチ休憩を挟んだ。もしランチに90分も時間がかからない場合は、別途休憩してもいいし、30分を上限として、フィールドワークを行えるアディショナルタイムとしてもいいこととした。なお、遅刻者がいた場合は90分から差し引くこととした。
 このFWの目標は、大きく2つある。1つは、2つのチームに分けてチーム対抗で競う点、じゃんけんやすごろくの要素を取り入れている点でFWにゲーム性を生み出し、1年生が楽しみながら積極的に学び、チームワークが生まれやすくなること。もう1つは、事前調査の準備量で有利に進めることができるルールにすることで、事前学習の方法や重要性を理解することである。
 20を超える駅の事前調査をしたにもかかわらず、当日は谷町線は7駅、四ツ橋線、ニュートラム、中央線の環状線は6駅と、3分の1程度しか周ることができなかった。しかし、それぞれの場所で、積極的にインタビューを行い、学ぶことも少なくなかったようである。  
 以下、初めてのフィールドワークを経験した1年生の感想である。

谷町線チーム

  • 平野駅:旧南海電鉄平野線平野駅プロムナード

観光地に対する人々の思い
久保田彩乃

 今回の大阪FWで、事前調査では学ぶことができなかった観光地の歴史や魅力・観光地に対するその地域の方々の考え方を知ることができ、普段の授業では体験できないことを体験することができた。
 大念佛寺は事前調査では調べていなかった観光地で、事前調査で調べた旧南海電鉄平野線平野駅跡プロムナードで出会った方から教えてもらった。大念佛寺では、このお寺の近くに住んでおり、よく来るという方々にお話をお伺いすることができた。その方々によると、「大阪一の高さで150mもある」また、「本堂は一度火事で燃えてしまい、今あるのは2つ目の本堂である」、火事の原因はさまざまな説があるが一番有力なのは「当時電気がなかったためろうそくを使用しており、そのろうそくが倒れて木造のお寺が一気に燃えてしまった」ということだった。実際にその火災で類焼した建造物が今も残っており、柱には焦げた跡があって触ってみると炭が手につくぐらいだった。お話をお伺いした方々がとても分かりやすく教えてくださり、すごく興味を持つことができた。
 そして、田辺駅にある法楽寺では、事前調査で「樹齢約800年のクスノキがある」ということを調べており、実際に見るとビル5階建てぐらいの高さがあった。そのお寺で働いている方によると、「このクスノキは、ヒロシマに原爆が落とされる前に実験する模擬原爆の目印にもなった」ということだった。このような歴史のあるクスノキを見たのは初めてだったためとても感慨深かった。また、つい2年前に岩手県から親交を深めるために運ばれた大きな岩が山門の近くに置かれていた。このことから、現在も法楽寺は国や地域との交流のために使われていることが分かった。
 また、文の里駅にある文の里商店街では、事前調査で「活性化させるため『文の里商店街ポスター展』を大阪商工会議所が実施し、コミュニケーションのきっかけづくりに大きな効果を発揮している」と調べていたが、実際にそこへ訪れてみるとコロナ禍であるということもあるが、シャッターが閉まっているお店が多数あり、商店街を歩いている人もすごく少なかった。また、布団屋さんの店長さんにお話をお伺いすることができた。その方によると、「『文の里商店街ポスター展』を実施した際に作られたポスターはお店で作ったわけではなく、大阪商工会議所の人が作った」また、「好んでこのポスターをお店の前に吊っているわけではない」とのことだった。このことから、ネットやその地域のホームページに書かれていることがすべてではなく、実際にその場に行って見たり聞いたりしないと分からないことがたくさんあるということを改めて知ることができた。文の里商店街は、今はシャッター街だが営業しているお店もあり、お客さんも入っていた。よって、その地域に住む人々の生活にはなくてはならない商店街だと感じた。また昭和のおもちゃなどを販売しているお店があり、今回は入れなかったが機会があれば入ってみたいと思える雰囲気だった。最近、若者の間でレトロブームが巻き起こっているためアピールしていけばお客さんも増え、活性化していくのではないかと思う。
 今回の大阪FWでインタビューに答えていただいた方々は親切でとても分かりやすく教えてくれたため、観光地に対する地域の方々の思いやその地域の温かさをすごく感じた。またこのような機会があればもっとたくさんの観光地を巡り、たくさんの方にお話をお伺いして、より多くの知識を身に付けたいと思った。
  • 平野駅:大佛寺

  • 田辺駅:法楽寺

たくさんの方に出会ったフィールドワーク
博多琴美

 1年生初めてのフィールドワークは、事前調査で谷町線の全ての駅の観光スポットを探して調べておき、フィールドワーク当日はじゃんけんで行く駅をその都度決めて、観光スポットに行き、そこでインタビューをしてさらにそのスポットの理解を深める、というものだった。大阪に住んでいても知らない場所が多く、事前調査で観光スポットを見つけることは大変だった。またフィールドワーク当日も観光スポットを訪れている人にインタビューをすることも困難だった。道行く人全員がインタビューに答えてくれる訳ではなかった。答えてくれる人でもその場所の観光スポットの歴史や由来などを確実に知っている人は少なく、時間がかかった。だが、インタビューをしたことにより事前調査では知りえなかった、素敵な観光スポットを知ることができた。
 最初に訪れた出戸駅付近の西出戸天照皇大神社で初めてのインタビューをしようとしたが、大変なことが分かった。観光スポットが住宅街にあり、人通りが少なくインタビューをすることに手間取ってしまった。その中でようやく出会った方から、神社の狛犬が阿吽の呼吸だと聞いた。右が口を開けているから阿で、左が口を閉じているから吽だということが分かった。しかし、この神社に関する情報は得ることはできなかった。
 平野駅で旧南海電鉄平野線平野駅跡プロムナードに訪れた時に出会った方に、インタビューを行うと快く受け入れてもらえた。しかし、そのプロムナードに関する情報ではなく、近くにある大念沸寺について教えてもらった。そこで大念沸寺にも足を延ばすことにした。大念沸寺は大阪の中では一番大きい木造建築だった。お寺の方に話を聞くと、明治に本堂が全焼失してしまったが昭和3年に建て直されたということであった。また聖應大師の良忍上人の像があった。案内看板によると良忍上人は12歳で比叡山に登り出家し、四天王寺にいたときに聖徳太子の霊告により大治2年に根本道場として大念沸寺を建てたと書かれていた。おばあさんに出会い、初めてインタビューで観光スポットを知ることができ嬉しかった。大念沸寺はとても広く、建物の中もきれいだった。
 駒川中野駅付近の駒川商店街は活性化しており、土曜日ということもあって、人がすごく多かった。私の近所の商店街はシャッターで閉まっているお店が多いため、羨ましく思った。ここでは観光案内所に行き、インタビューをした。駒川商店街に活気があるのは、新鮮な魚や野菜が届き、スーパーなどよりも安いためだと分かった。
 文の里駅の文の里商店街はあまり人が多くなかったが電通とのコラボでポスターを作っていた。商店街の店主の中には、ポスターに対し、好印象を持っている人ともっていない人がいた。好印象を持っている人は商店街を活性化さえるためには良い方法だと思っているが、好印象を持っていない人は望んでいなかったことのようだ。フィールドワークでインタビューをしていなければ気づけなかったことだと思う。
 今回初めてのフィールドワークを行い、道に迷ったり、インタビューが上手くいかなかったりなど大変だったが貴重な体験をした。インタビューをすることによって知らなかったことに気付けたり、観光スポットを知ることができた。今回の反省を次のフィールドワークや2回生になったときに活かせるように努めたい。
  • 出戸駅:西出戸天照皇大神社

フィールドワークでの出会い
吉井風花

 今回初めてフィールドワークをしていろいろな経験ができました。フィールドワークをする前から事前調査をして資料作りをしていましたが、インターネットで得た情報だけでは分からないことがたくさんありました。実際に現地の人に話を聞いてみると地元の方がおすすめしてくれたお寺などが見つけられ、達成感が大きかったです。
 特に平野駅近くのチンチン電車跡地のプロムナードのところで出会った方にお話を伺ったところ、大念佛寺を教えてもらいました。実際に足を運んでみると、立派なお寺で驚きました。そのお寺にいた近所に住んでいる3人組の方々にお寺についてのお話を聞きました。大念佛寺は、戦前に火事になり立て直したお寺だそうで、火事の原因は明らかになっていないとのことでしたが、地元の人たちの間では、電気がなかった時代なのでロウソクを使っていたお坊さんが寝ている間に倒してしまい、火事になったという噂が流れているそうです。インターネットには載っていないようなことを聞けて、人に話を聞くことは大事だと思いました。その方たちは実際にお寺の中を案内してくださり、詳しくわかりやすく説明してくれて嬉しかったです。
 その後、駒川商店街と文の里商店街に行きました。駒川商店街は活気があり、食材が新鮮で、地元の人たちがたくさん買い物をしていてにぎやかでした。それに比べ、文の里商店街はシャッターを下ろしている店が多く、人が少なく閑散としていました。何故こんなに違いが出るのか気になり、文の里商店街の布団屋の店主にお話を伺いました。その店主は文の里商店街は駒川商店街とは知名度が全然違うとおっしゃっていました。文の里商店街では町おこしのため店ごとにポスターがたくさん貼られていました。しかし、布団屋の店主が、「貼りたくて貼っているわけじゃない。」とおっしゃったとき、違和感を覚えました。町おこしのために一番の主役となる商店街を営んでいる方々の思いは取り入れられていないんこともあるんだなと、少し残念に思いました。将来、観光業に携わる仕事に就こうと考えている私は知名度を上げるために、主役となる商店街の方々の意見などを取り入れて、どうしたら活気のある商店街になるのかなどの課題を分析して解決していきたいと思いました。
 今回初めてフィールドワークでインタビューをしましたが、インタビューを受けてくださった方々は皆さん優しく温かい方が多く、人間の温もりを感じることができました。
  • 駒川駅:駒川商店街

  • 文の里駅:文の里商店街

四つ橋線、ニュートラム、中央線の環状線チーム

  • 本町駅:難波別院

私の印象に残った難波別院
辻 杏爾

 7月4日、各駅の観光スポットの調査を行うためにフィールドワークを行なった。沢山の場所に行った中で本町駅の近くにある真宗大谷派難波別院というところが印象的であった。  
 事前調査では、芭蕉終焉の地という場所を調べていたのだが、それだけでは観光地として紹介するには物足りないと思い、フィールドワーク当日近くにあった難波別院という場所を新たに調査した。難波別院の僧侶さんに話を聞いたところ、難波別院とは、京都にある日本一または世界一とも言われるお寺である東本願寺が建設されるまで、真宗大谷派の本山であったということである。また、東本願寺は難波別院をモデルとして作られたことから、日本を代表するお寺である東本願寺より前に作られていたということに、難波別院は歴史あるところであると実感した。さらに、大阪には600寺ほどの真宗大谷派の寺があり、それらを支えているのがこの難波別院であることも知ることができた。しかし、真宗大谷派のお寺をどのように支えているか気になったのでもう一度訪れたいと思う。話を聞く前までは大きい寺としか思っていなかったが、話を聞いて非常に素晴らしい役割をしているお寺であると分かった。そこで、フィールドワークが終わってから難波別院について調べてみると、難波別院は創建以来、大阪の街の発展と共に歩み、人々に「御堂さん」「難波の御堂さん」と呼ばれ親しまれている。大阪の商人にも「御堂さんの屋根が見える所で、鐘の聞こえる所で商売するのが夢である。」と言われ、大阪の精神文化に大きな影響を与えていることが分かった。
 難波別院の隣には芭蕉の句碑があり俳句好きの人には一度は訪れてみたいところである。また、仏様のご恩を常に忘れないようにとの願いからブットン(仏恩)君と名づけられたマスコットキャラクターがいた。ブットン君は「ゆるキャラ大集合INさんだ」という人気投票ランキングでは四位と素晴らしい結果を残したそうだ。
 このように今回のフィールドワークは、普段訪れることがない駅周辺の観光地をより深く調べ、みんなが気づいていない観光地を見つけるいい機会であり、インタビューすることへの緊張感や、初めてみる観光資源への驚きはフィールドワークでなければ体験することができないことだと思った。また、共に行動することでチームの学生とも仲が深まり、協力することができた。私は将来地元の和歌山を盛り上げたいと思っているので、時間が有れば今回行ったことを地元で挑戦し、SNSなどを活用して地元の観光資源の魅力を発信したいと思う。コロナ禍でもこのような機会を作ってもらった大学に感謝して、今後の活動も頑張りたいと思った。ありがとうございました。
  • 本町駅:難波別院の中の松尾芭蕉の石碑

  • 本町駅:松尾芭蕉終焉の地の石碑

大阪の観光スポットについて深く知る 
水本侑希

 今回のフィールドワークで私たちのグループは四つ橋線の本町を起点に、中央線、ニュートラム、四つ橋線の環状線を担当した。それぞれの駅の近くの観光スポットについて事前に調査をしてから、フィールドワーク当日に現場調査を行った。大阪に住んでいるが行った事のない場所ばかりで、事前調査をするだけでも自分の知らなかった事を知る事が出来た。 
たとえば、朝潮橋の八幡屋公園はプールや芝生広場もある大きな公園でありコンサートも開く事が出来るほどの体育館は半地下方式になっていて世界的にも珍しいものだと知り、一度見て見たいと思った。他の地もその地ならではの場所があり、自分が知ろうとしていなかっただけで調べれば調べるほど多くの事が分かった。したがって、他の行った事のない地も調べてみたいと思うようになった。
 当日は雨が降る予報だったが、暑いくらいの晴天で、雨に降られずにフィールドワークができて良かった。
 多くの所を回ったが印象に残っている場所は二つある。一つ目は本町である。その地はあまり事前調査でスポットを見つける事の出来なかった場所であった。そこで歩いていると難波別院を見つけた。そこに行ってみてインタビューをさせてほしいと話すと職員の方が快く対応してくれた。難波別院というのは、浄土真宗の仏教寺院である。難波別院(南御堂)の創設は1595年に大谷本願寺を建立した事に始まった。難波別院(南御堂)と津村別院(北御堂)を結ぶ参道が御堂筋であり大阪の町のメインストリートとなった。
 また、難波別院では多くの人々に知ってもらうために広報活動に力をいれており、その寺オリジナルのゆるキャラがいる事や、南御堂にちなんだオリジナルの南御堂カレーを作りテレビで放送されたこと、他にも日本で初めて大阪庶民に親しまれていた御堂を現代によみがえらせるために寺院山門一体型ホテルを作りバリアフリーにも力を入れている事が分かった。自分の知っている寺とは違う事が多く、今の時代は寺でも広報活動をして多くの人々に知ってもらう事が大事なのだと思った。
 二つ目は九条である。この駅では神社にいく予定であったが反対方向に進んでしまった。しかし代わりに他の場所を見つける事が出来た。その場所は安治川トンネルと呼ばれる所で川の下に地下道がある珍しいものであった。階段とエレベーターがあり、どちらからでも行けるようになっていた。実際に通ってみると中は涼しく川の匂いがした。そして地上に出て観察していると利用している人が多くいる事が分かった。その中の一人に、何のために利用しているかを聞くと、このトンネルが川の向こう側にいく近道であり他の橋などは遠回りになるため、このあたりに住んでいる人にとっては非常に便利なものだと教えてくれた。後から調べてみると、安治川は河川舟運の重要航路の一つで大型の貨物船が頻繁に行き来していた。その間隙を渡船が運航するのが困難であり橋をかける事も出来なかった。そのため河底トンネルを造った事が分かった。
 今回のフィールドワークでは、自分の知らない事を多く学ぶ事が出来た。安治川トンネルは地元の人々の役に立っていて快適にすごせるようになっていた。そして寺では広報活動やバリアフリーの事まで考えていてその地に訪れた人が寺の魅力を知る事が出来るような取り組みをしている事が分かった。また、インタビューをすると快く対応してくれる方が多く、自分たちが聞いた以上に詳しく話してくれる方もいて、いい経験になったと感じた。
【参考文献】
近畿交通民俗学研究会. “安治川トンネル”. (2017年10月31日更新).
安治川トンネル | 近畿交通民俗学研究会 (amebaownd.com),(参照2021年7月8日)
  • 本町駅:難波別院ゆるキャラ「ブットン君」

  • 九条駅:安治川隧道