第4回卒業研究発表会を開催しました

4年生が卒業研究の成果を、3年生がゼミ研究の成果を発表しました

 2月6日(月)、森重ゼミ2〜4年生、ゼミOBの計42名が参加し、第4回森重ゼミ・卒業研究発表会を開催しました。森重ゼミの卒業研究では、各自で地域社会の問題を見出し、観光の視点や特性を生かして、問題解決に向けた論理を展開することを求めています。今年度はなかなか研究が進まず、苦労するゼミ生が多く見られましたが、何とか昨年12月20日までに卒業研究を提出できました。
 当日は、今春卒業予定の4年生14名が研究成果を発表し、活発な質疑応答が見られました。4年生の卒業研究発表に続いて、3年生が「若者が求める観光情報とメディアによる情報発信の相違に関する研究−鹿児島市を事例に」をテーマに、ゼミ研究の成果を発表しました。卒業研究発表会終了後には、2年生が企画した懇親会がカフェテリアで行われ、学年を超えた交流が繰り広げられました。
 以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)

写真−当日の様子

  • 開会挨拶の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 質疑応答の様子

  • 質疑応答の様子

  • 3年生のゼミ研究成果発表の様子

  • 研究発表を聞くゼミ生

  • 卒研発表会後の全員での記念撮影

  • 卒研発表会後の懇親会の様子

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卒業研究のテーマおよび要旨

トライアスロンを活用した地域活性化に関する研究−大雪旭岳SEA TO SUMMITを事例として(No.37)
 国際観光学部4年 李龍珠

 現在、全国220箇所以上でトライアスロン大会が行われている。地域主導のトライアスロン大会は経済効果を高める可能性があるため、まちおこしの手段として取り入れられることが多い。北海道東川町では、2011年から民間有志主導で「大雪旭岳SEA TO SUMMIT」が開催されている。そこで本研究では、大雪旭岳SEA TO SUMMITの現状を明らかにし、地域活性化の手段としてトライアスロン大会を機能させるには、どのような要素が必要か検討することを目的とした。まず、事前調査でトライアスロンの概念と北海道東川町の観光の現状を明らかにした。次に、大雪旭岳SEA TO SUMMITの現状分析のため、SEA TO SUMMIT実行委員会の関係者への聞き取り調査を行い、第6回大雪旭岳SEA TO SUMMITに参加した。その結果、大雪旭岳SEA TO SUMMITを活用した地域活性化に向けて、①開催日の変更を検討すること、②女性も気軽に楽しめる大会であることをPRすること、③環境シンポジウムで多様な情報を伝えることという改善点を指摘した。加えて、大雪旭岳SEA TO SUMMITが観光客の滞在時間を延ばすこと、地域の情報を直接発信できること、参加者の友人も訪れるといった効果をもたらすことを明らかにした。

インバウンド着地型観光を活用した地域活性化に関する研究−小豆島を事例として(No.38)
 国際観光学部4年 劉峻峰

 現在、日本の過疎地は人口減少や少子高齢化など、さまざまな課題を抱え、地域が衰退している。そのため、地域活性化を実現する方法が求められている。一方、訪日外国人旅行市場の拡大により、過疎地は訪日外国人旅行者を受け入れることを通じて、地域活性化を実現する可能性が広がっている。本研究では、香川県小豆島を事例として、インバウンド着地型観光を活用した地域活性化の可能性を検討することを目的とした。まず、文献調査で「地域活性化」、「着地型観光」、「インバウンド」の3つのキーワードを整理した。次に、小豆島の現状を分析し、地域活性化に向けた課題を指摘した。そして、先進事例として飯豊町で行われたインバウンド着地型観光、和歌山県田辺市熊野ツーリズムビューローの2例を取り上げた。その結果、小豆島のインバウンド着地型観光を活用した地域活性化に向けて、①多言語対応人材の育成・採用により、受け入れ環境を整備すること、②「小豆島ファン」をつくることにより、持続可能な観光を実現する必要があることを明らかにした。

並行在来線維持に関する研究−北陸3県の相互協力による並行在来線維持の可能性(No.39)
 国際観光学部4年 長谷川真保

 2015年3月14日に北陸新幹線・長野〜金沢間が開業した。整備新幹線は都市と地方の移動を容易にし、ビジネスや観光に移動手段の多様性をもたらした。しかし、華やかに見える整備新幹線の開業と同時に、これまで運行していた在来線はJRから切り離され、「並行在来線問題」が発生する。本研究では、並行在来線の現状を明らかにし、並行在来線を維持していくにはどのような要素が必要か検討することを目的とした。そこで、文献調査によって北陸新幹線における並行在来線の現状を整理し、課題を明らかにした。そして、先行研究として「肥薩おれんじ鉄道」、「富山ライトレール」、「WILLER TRAINS」の3例を取り上げ、それぞれの事例から並行在来線を維持していくために必要な要素を検討した。その結果、並行在来線を維持していくためには、①県境を越えた沿線地域間での相互協力によって維持していくしくみをつくること、②「上下分離方式」を導入すること、③「舞レール意識」を醸成する必要があることを明らかにした。そして、北陸3県においてこれらの要素を取り入れた並行在来線の維持の可能性を指摘した。

うちわの知名度向上のための魅力発信−香川県丸亀市を事例に(No.40)
 国際観光学部4年 榊原知恵

 香川県丸亀市はうちわの生産量が全国シェア90%を誇り、日本一の生産地である。うちわは千葉の房州うちわ、京都の京うちわ、香川の丸亀うちわが日本三大うちわと呼ばれており、丸亀うちわは1997年に国の伝統的工芸品に指定された。しかし、うちわ職人の高齢化や後継者不足が課題となっている。これらの課題解決に向けて、丸亀うちわの魅力を再認識し、価値を伝えていく必要があると考え、知名度向上に焦点を当て、考察した。本研究では、文献調査で丸亀うちわの歴史を振り返りながら、産業の現状を明らかにした。また、大学4年間を通して、北海道標津町、香川県小豆島、京都丹後鉄道でのフィールドワークでの調査の成果を整理し、各地域で参考にできる成功要因を取り上げた。その結果、丸亀うちわの知名度向上に向けた魅力発信のために、①地域住民の地域産業への誇りを高める必要性、②女性ならではの視点を加えたコトづくり、③歴史的背景に注目したうちわづくり、④丸亀うちわによる地域ブランド化の構築の4点が必要であることを明らかにした。

地域コミュニティの役割を果たすカフェについての研究−奈良県明日香村「カフェことだま」を事例に(No.41)
 国際観光学部4年 吉田知奈

 奈良県明日香村にある「カフェことだま」は、地域住民の憩いの場として愛されている。ランチやデザートには明日香村で採れた食材が使用され、明日香村の土産物の販売にも力を入れ、地域の魅力発信に貢献している。カフェタイムには地域住民が訪れ、他愛のない話から地域の問題まで、さまざまな話題で盛り上がっている。そこで本研究では、ことだまの現状を明らかにし、明日香村の理想的な地域コミュニティとして成り立つにはどのような要素が必要か検討することを目的とした。まず、文献調査とウェブサイトから、本研究で使用する「地域コミュニティ」の用語を定義した。次いで、ことだまへの聞き取り調査とことだまが参加するイベントの現地調査を行ったうえで、先行事例から地域コミュニティとして運営されている「苗穂カフェ」、「プラネット・サード」、「海士町総合振興計画」の3例を取り上げた。その結果、ことだまが理想的な地域コミュニティになるためには、地域住民同士の交流の場の多様性を高めるためのきっかけづくり、地域の問題を地域全体で共有し、意見を出し合うためのワークショップの開催が必要であることを明らかにした。

不寛容社会の原因と改善の可能性に関する研究(No.42)
 国際観光学部4年 絹田祐介

 現在の日本社会は不寛容な人の増加により、不寛容社会の問題が指摘されている。社会の不寛容さや攻撃性が特に問題になっており、世論調査の結果からも現在の日本社会は息苦しい世の中であることがあげられている。そこで本研究では、不寛容社会の原因を明らかにし、改善に向けてどのような要素が必要か検討することを目的とした。まず、文献調査で不寛容と不寛容社会の違いを明らかにし、不寛容社会の現状分析のため、現在の日本社会に対してどのように感じているのか世論調査を取り上げるとともに、先行研究で指摘されているいくつかの要因を取り上げた。その結果、不寛容社会の改善に向けて、①他者を理解するためのコミュニケーション能力を身につける必要があること、②他者を理解するほか、子どもたちの人間関係を構築する力を身につけるうえで、自然体験が1つの手段であることから、その機会を増やしていく必要があることを明らかにした。

温泉地における再生に向けた課題−熱海温泉を事例に(No.43)
 国際観光学部4年 木村愛美

 温泉地は古い時代から重宝されてきた観光資源である。しかし、昔と現在では観光客の温泉に対するニーズが変化し、かつて温泉地として栄えていた場所の中には、過疎化が進んでいる地域もある。温泉地として有名な熱海温泉も年々衰退している。そこで本研究では、観光客が温泉地に求めるニーズを明らかにし、熱海温泉を再生する方法を考えることを目的とした。まず、行政資料や温泉に関する文献を通してニーズの変容を整理したほか、熱海温泉の現状分析のために現地調査を行った。また、先行事例として別府温泉、黒川温泉の2例を取り上げた。その結果、熱海温泉の地域再生に向けて、①歩いて楽しい温泉保養地、②全員参加のまちおこし、③熱海の魅力を伝える温泉街へとシフトチェンジすることが必要であることを明らかにした。

食べ歩きイベントを使った地域活性化の可能性−奈良県「あるくん奈良まちなかバル」を事例に(No.44)
 国際観光学部4年 川口華月沙

 現在、食べ歩きイベントは全国各地で行われ、観光客の約30%が旅行に出かける目的に“グルメ”をあげている。本研究は奈良県で開催されている「あるくん奈良まちなかバル」を事例に、街バルを使った地域活性化の可能性について検討することを目的とした。まちなかバルの現状分析のため、まちなかバル関係者への聞き取り調査、10代〜40代を対象にアンケート調査を実施した。その結果、まちなかバルは「他の地域にまちなかバルの存在が浸透していない」、「繰り返し来る参加者が少ない」ことが課題にあげられた。そこで、課題の解決に向けて、「浦和フットバル」、「阪急石橋美酒フェスタ」を先行事例として取り上げた。研究の結果、街バルとその土地にもともとある観光資源を組み合わせることにより、その土地にしかない街バルの付加価値がつき、他の街バルと差別化を図ることができ、地域活性化につながる可能性があることを明らかにした。また、新しい観光資源を使った地域活性化のためには、まず魅力を発信する地域住民の理解が必要であることを指摘した。

テーマパークの盛衰と今後の可能性−東西のテーマパークを事例に(No.45)
 国際観光学部4年 高橋和

 2016年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは開業15周年、東京ディズニーランドは開業33周年、東京ディズニーシーは開業15周年を迎えた。現在、日本のテーマパークは東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの2つで集客力を競っているといえる。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは開業から1年後、事実上経営破綻したが、現在では東京ディズニーシーを超える入場者数を記録している。本研究では、なぜユニバーサル・スタジオ・ジャパンの入場者数が増加し続けているのか調査し、東京ディズニーリゾートとともに今後の可能性を考察することを目的とした。調査の結果、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが今後も入場者を増やすためには、①新規アトラクションの定期的導入、②枠にとらわれないさまざまなアニメやアーティストと連携し、年齢やターゲット層にこだわらないコンテンツを組み合わせること、③1年で最も集客の多いハロウィンのイベントを新しいものへリノベーションすることの3点が大きくかかわってくることを明らかにした。一方、東京ディズニーリゾートの今後の課題として、入場者にさらに期待以上と思わせるキャストのトレーニングが必要であることを明らかにした。

地域活性化に向けた新農村建設に関する研究−江蘇省華西村を事例として(No.46)
 国際観光学部4年 温莎莎

 中国は現在農業国であり、「農業・農村・農民」という三農問題が指摘されている。そこで、中国共産党は都市と農村の経済・社会発展を協調させるため、新農村建設の政策を推進している。その中で、国民の生活水準の向上とともに、「農家楽」というグリーンツーリズムが人気となっている。本研究では、中国の三農問題の解決に向け、現在政府主導で個人経営から発展している江蘇省華西村を事例に、地域活性化の手段として農村地域資源を活用するために、どのような要素が必要か検討することを目的とした。文献調査によって、華西村および農家楽の現状を明らかにした。その結果、①農家楽の発展により、三農問題をめぐる農業構造の調整を図り、単なる農業から改められたこと、②農村環境やインフラを改善したこと、③農家楽によって観光客それぞれの好みやニーズに応じて対応したことが、華西村のグリーンツーリズムの成功要因であることを明らかにした。

古民家再生につながる地域活性化に関する研究−兵庫県篠山市を事例に(No.47)
 国際観光学部4年 久保田萌子

 現在、古民家をカフェなどにリノベーションし、活用する例が増えている。それらの場を中心に人が交流するきっかけとなる場合もあり、新しい地域活性化の手段として注目され始めている。兵庫県篠山市では若者離れが指摘され、地域の過疎化が進んでいる。そこで、古民家を活用することで地域にどのような影響を与えるのか、地域活性化につなげるために考えられる手段について研究することを目的とした。調査では、まず文献調査で古民家再生事業の概要と篠山市の観光の現状を明らかにしたうえで、考えられる課題を3点あげた。それらを解決するための先進事例として、「ニセコ地域におけるオフシーズンの集客」、「「おんせん県」動画によるPRキャンペーン」、「岡山県美作市地域おこし協力隊」の3例を取り上げた。この結果、篠山市での古民家を活用した地域活性化の実現に向けて、①オフシーズンの積極的な集客行動、②篠山市プロモーション動画の作成、③景観を維持する交流の場づくりが必要であることを明らかにした。

コンテンツ・ツーリズムとアニメを活用した商店街の活性化の可能性−長野県上田市を事例に(No.48)
 国際観光学部4年 佐藤研

 現在、全国に約12,000箇所の商店街があるが、年間約200箇所が消滅しているといわれている。その中で、長野県上田市は大河ドラマ「真田丸」のロケ地になっており、主要観光地である上田城から最も近いところに松尾町商店街があることから、本研究ではこの商店街に着目した。そして、松尾町商店街を活性化するにはどのような要素が必要か検討することを目的とした。まず、文献調査を通じて、商店街および松尾町商店街の概要、上田市の観光の現状を明らかにした。松尾町商店街は現在、大型ショッピングモールやコンビニエンスストア、スーパーなどに負け、衰退しているという課題がある。プロが教える講座なども行っているが、来街者の年代が高齢者に固定され、若者を誘致できていない。そこで、コンテンツ・ツーリズムを活用することで、松尾町商店街を活性化できないかと考えた。そして、先進事例として「水木しげるロード」、「ウルトラマン商店街」、「大洗商店街(ガルパン)」を取り上げた。その結果、アニメとコンテンツ・ツーリズムを活用した商店街活性化に向けて、①松尾町商店街のイベントを活用した取り組み、②公共施設のリノベーション、③他の中心商店街との連携が必要であることを明らかにした。

再生可能エネルギーの普及促進に向けた観光の導入可能性(No.49)
 国際観光学部4年 合田絵里奈

 再生可能エネルギーの必要性や重要性が認識されているにもかかわらず、日本では普及が進んでいない。本研究では、再生可能エネルギーの普及促進に向け、観光を取り入れる可能性を明らかにすることを目的とした。岩手県葛巻町と栃木県那須塩原市を事例に、再生可能エネルギーの普及要因を調査したところ、観光の特徴が活かされていたことが明らかになった。これらの事例では、再生可能エネルギーを活用した施設が展開されており、観光目的でこれらの施設を訪れることによって、再生可能エネルギーの普及促進のきっかけがつくり出されていた。そこで、さらなる普及促進に向けた観光の役割として、以下のことを指摘した。①観光による収益を利用して、再生可能エネルギーの普及上の課題である高コスト問題を軽減できる。②観光客が持つ再生可能エネルギーの普及に向けた知恵やノウハウを地域に取り入れることができる。③観光客が観光地で得た知恵やノウハウを持ち帰ることで、地域外での普及促進にもつながる。以上のことから、再生可能エネルギーの普及促進に向け、観光を取り入れる意義があることを明らかにした。

閑散期における観光産業の振興の可能性−和歌山県白浜町を事例に(No.50)
 国際観光学部4年 小原奈珠

 筆者は和歌山県白浜町をよく訪れるが、白浜町の観光産業が繁忙期と閑散期でとても差があるように感じていた。そこで、白浜町の現状を調査したところ、夏季の観光客数が多く、季節変動型の観光地であることが明らかになった。また、アンケート調査の結果から、白浜町の取り組みに対する認知度が低いこともわかった。そこで、これらの問題の解決に向けて、遠方からの宿泊客と関西からの日帰り客の両方を集客し、季節変動型の観光地から通年型の観光地をめざし、観光産業の振興の可能性を考えた。その結果、歴史ある観光資源である白浜温泉やブランド食材といわれている「クエ」を利用し、メディアを使って白浜町の魅力についての情報を積極的に発信する必要があることを明らかにした。