旅行動機を喚起する情報発信について考えていきます

 国際観光学部では、学生有志が2014年度から北海道標津町でさまざまな調査を行ってきました。コロナ禍で2022年度は現地調査を行いませんでしたが、今年度は2年ぶりに1~4年生の学生有志8名が標津町で現地調査を実施しました。今回は、学生自身が旅行に行く時にいつ、どのように情報を収集するのかを検討した上で、学生と同世代の人びとに訴求するための情報発信のあり方を考えることを目的に調査を行いました。
 今回は標津町役場職員から標津町の観光の現状や取り組みなどを教えていただいた後、町内のさまざまな観光資源を調査しました。特に今回は天候に恵まれ、日の出や夕焼け、満天の星空を見ることができたほか、たまたまお会いした観光協会会長の計らいでカヌー体験もできました。さらに、サケの遡上時期でもあったことから、標津川や薫別川で遡上の様子も見学できました。
 以下で、今回初めて標津町を訪れた学生3名のレポートを掲載します。今後は今回の調査で収集した写真や動画をもとに、学生と同世代の人びとの旅行動機を喚起する情報発信の方法を考え、具体的な動画を作成し、標津町に提案する予定です。(森重昌之)

当日の現地調査の様子

  • サーモン科学館での集合写真

  • 町役場での聞き取り調査の様子

  • 夕日を撮影する学生

  • ポー川史跡資料館を見学する学生

  • 伊茶仁カリカリウス遺跡でガイドの説明を聞く学生

  • ポー川でのカヌー体験の様子

参加した学生の報告

一度行ったら必ず好きになる標津町
 国際観光学部1年 真室美空

 10月13日(金)から15日(日)までの3日間、北海道標津町にて「標津プロジェクト」の現地調査を行いました。今回のプロジェクトでは、私たちと同世代に向けて標津町を紹介する動画を作成することを目的に、いくつかの観光スポットや施設などを実際に回って調査しました。動画を作成するにあたって、私たちは何がきっかけで観光行動につながるのかということをメンバーで議論したところ、多くの場合SNSの投稿やVlog動画などが要因の1つとしてあがりました。調査に行く前の下調べとして、Vlog動画の素材となるような観光スポットや施設、グルメなどを調べ、どのような画角や撮り方が見る人の目を引くのかを考えました。
 調査当日の3日間はとても天気に恵まれ、良い写真や動画をたくさん撮ることができました。1日目は釧路から移動し、昼頃に標津に到着しました。この日は標津町役場職員の齋藤さんにお時間をいただき、標津町の観光の取り組みなどを教えていただき、私たちからも素材に使えそうなおすすめのスポットなどを質問させていただきました。2日目は午前中にサーモン科学館、サーモンプラザ、標津湿原、ポー川史跡自然公園を全員で周りました。サーモン科学館では、今の時期にしか見られないサケの遡上を間近で見ることができました。また、標津町全体が大切にしている「鮭の聖地」についても学ぶことができました。午後からは海側チームと山側チームの2つのグループに分かれ、それぞれで調査しました。私は山側チームでした。山側チームは天空への道、川北駅跡、メロディーロード、あかつきダイニングに行きました。天空への道は写真を撮ることが難しかったですが、本当に天に届きそうなほどまっすぐな道で、皆さんにも肉眼で見てほしいと思いました。そして、最終日は前日に偶然お会いした標津町観光協会会長の井南さんのご厚意により、ポー川史跡自然公園でカヌー体験をさせていただくことができました。その後、薫別川とホニコイに行き、調査を終了しました。
 たくさんの観光スポットや施設を周っていく中で、標津町の「景色」もとても印象に残りました。私自身、北海道に行くのが初めてで、行く前から何となくイメージを持っていたのですが、まっすぐで広々とした道路やその左右に広がる牧草に牛や馬が普通にいる景色など、まさに「広大な土地」でどこを見ても自然を感じることができる風景に終始感動していました。特に忘れられない景色が、周りに明かりが1つもない場所で見上げた星空です。普段大阪では見ることができない星空で、ずっと見ていられる気がしました。自然の豊かさや美しい景色は行く前よりもはるかに想像を上回りました。
 今後は、観光客がどのような傾向や動機で旅行しようとするのかを具体的なデータを調べ、そのデータをもとに観光地側はどのようにアピールをするべきなのかを考えていこうと思います。その一例として、今回集めた素材をもとに標津町の紹介動画を作成していく予定です。現地調査でお世話になった標津町の皆さまのためにも、しっかりと最後まで成果をまとめていきたいと思います。

現地で見た人手不足の実態
 国際観光学部1年 清水毅琉

 2023年10月13日~10月15日の3日間、北海道標津町にてフィールドワークを実施しました。フィールドワークには8名の学生が参加し、現地で観光地や名所の調査を行いました。
 今回のフィールドワークの目的は、SNSには載っていない情報を現地で見つけ出すことです。旅行プランを考える際、若者はSNSを多く利用します。インスタグラムなどのSNSでヒットし、気になった場所を調べるのですが、その際、口コミや評価を気にするグループと、ホームページを見て印象を気にするグループとで分かれることがわかりました。そこで、インターネットに記載されていない情報を現地で見つけ出し、それらをSNSで若者に向けて情報発信するということが目的でした。
 以上の目的を達するために、標津町のあらゆる情報やスポットをインターネットで調べました。標津町のあらゆるスポットを巡るために評価などは気にせず、Googleマップに記載された細かな情報も含め、標津町の情報を収集しました。
 調査の1日目は、標津町役場の齋藤さまに話をうかがいました。標津町の観光スポットやその中身について詳しい情報を聞き取りました。齋藤さまの話の中から、「人手不足が懸念」というキーワードが示されました。人手不足の影響で旅館や飲食店が営業できない日があるということです。そして、事前に準備した情報をもとに、標津町の観光スポットを巡り、写真や30秒~1分の短い動画を収めました。
 2日目は、朝からサーモン科学館に行きました。サーモン科学館とは日本で一番東にある「水族館」として取り上げられているのですが、事前に調査した内容の中で、サーモン科学館は水族館なのか、博物館なのか、それとも科学館なのかという疑問が提案されました。その疑問を知るためにも、館内の説明なしでサーモン科学館を見学しました。そこは意外にも楽しい場所であり、普段自分たちが当たり前に食べているサケについて学び知ることができました。サケも人間と同じように苦労して生きていて、歴史がある。サーモン科学館とは水族館としての要素もあり、博物館としての要素もあり、科学館としての要素もあるのだと実感しました。
 その後、ポー川自然公園に行きました。そこでは道東らしい景色を見ることができました。何もない湿原を歩くことができ、道東の魅力を実感しました。夕方にかけ、標津町の温泉である川北温泉に行きましたが、1人で行くにはやや不安であることがわかりました。温泉とは、普段の疲れを癒しに行くという目的の人が多数ですが、道中が悪いと温泉に入った後でまた疲れがたまり、結局振出しに戻ります。しかし、温泉としては素晴らしい場所で、道中を整備すれば安心して行くことができます。
 3日目、ポー川でカヌーを体験した後、口コミレビュー星1つのトマリさんにうかがいました。話の中から、星1つにすることで逆に注目を浴びるとありました。
 現地で実感したこととして、実際に訪れてみないと得られない情報がたくさんあるということでした。しかし、人手不足には懸念があります。時間とお金をかけて向かった先が予告もなしに定休日となれば、台無しになります。しっかりとした定休日を設け、観光客にわかりやすい情報を共有することが求められると実感しました。
 また、道東全体で見受けられますが、若者の観光客が少ないということが実態です。そのような中で、やはりSNSでの情報発信が重要です。道東、標津町の魅力をどういった人びとを対象に情報発信していくかが課題です。何を目的で旅行するかによって行先も変わります。しかし、あまりに観光客が増えれば大変になります。人手不足が課題の中、どうすれば標津に足を踏み込んでもらえるのか今後考えていく必要があります。

Z世代に向けて地域の魅力をどのように発信すればよいか
 国際観光学部1年 大賀結太

 Z世代はインスタグラムやユーチューブなど、SNSの情報をきっかけに旅行する人が多いことがわかりました。しかし、趣味やグループで行くなど、場面や状況によって情報の調べ方に違いがあることも明らかになりました。そこで、Z世代はどのような情報をきっかけに旅行するのか、なぜそこに行きたいのかなど、観光行動を分析することを目的としました。
 はじめに、標津町と聞いて観光のイメージが浮かばなかったのが私の本音です。そこで、各メンバーの実体験をもとに、行きたいきっかけやどこからの情報をきっかけに行きたいのかなどを結びつけて、標津町の魅力をどのように発信していくかについて話し合い、分析を行いました。そこからわかったことは、インスタグラムのリール、ユーチューブのショートと呼ばれる短時間の動画から偶然流れる、旅行関連の動画によってZ世代は旅行に関心を持ち、行きたいと思うきっかけになるのではないかと考えました。それも、個人が投稿している動画をきっかけで旅行に行きたいと思うZ世代が多いということです。また、インスタグラムの投稿にある自然の綺麗な風景の写真をきっかけに、「ここどこなのだろうか」など旅行に関心を持つ要素なのではないかと考えました。これらを標津町と結びつけて、綺麗な風景が撮影できるスポットや食事処など、Z世代がどのようにしたら行きたいと思うのかを考えながら、グーグルマップやインスタグラムの情報をもとに調べました。
 現地調査当日の行動は、食事処の食べ物の撮影や山や海、湿原などの風景の写真撮影を行い、Z世代がどのようなきっかけで旅行に行きたくなるのかを考えながら撮影を行いました。また、サーモン科学館やポー川史跡自然公園、旧川北駅などの観光スポットを巡り、現地の魅力をどのように発信していくかを自分自身に置き換えて調査を行いました。
 はじめは標津町と聞いて、観光というイメージが湧かなかったのが私自身の意見です。だが、標津町でしか見られない景色が数多くあり、現地に行くことで町の魅力について深く知識を得ることができました。また、アイヌ文化とサケの歴史をどれほど大切に守っているのかについても深く理解することができました。
 今後は、現地で撮影した写真や動画を収集して、どのような形で標津町の魅力を発信していくかについて、実際に撮影した動画や写真を使って動画作成をしていく予定です。また、どのようなタイミングまたは時間帯に投稿するのがベストなのかを調査し、これらを成果として報告を行おうと思います。