決勝大会当日の学生レポート(レポーター:橋本果奈・前島佑香)

緊張感漂う「よみうりホール」

 カオサン東京アネックスでは,前日4日の夜遅くまで,松村ゼミの先輩方や韓国人旅行者のキムさんらとお話しができて楽しかった。朝起きるとそこは多国籍な雰囲気が漂い新鮮,スペイン人と「おはよう!」ではなく「Good morning!」と挨拶をかわす世界であった。
 ゼミの先輩方とゲストハウス前で記念撮影してから,社会人基礎力育成グランプリ2010の決勝会場の「よみうりホール」へ向かいました。そこは1,000人くらい収容できる大ホールで,一般の観客も多く来られていて,何とも言えない緊張感が漂っていました。
 発表は第1部と第2部の2部構成で,第1部で愛知学泉大学・関西学院大学・跡見学園女子大学・京都産業大学が,第2部で石川県立看護大学・阪南大学・山形大学・流通科学大学が発表を行いました。愛知学泉大学が最初に発表したのですが,もうあと少しで発表が終わりそうなのに,司会の小島奈津子アナウンサーが出て来られて,「本当にごめんなさい…,時間が来てしまいました…,決勝大会なので…」と発表が打ち切られてしまいました。私たちも西日本予選大会を観戦しましたが,こんなことは起こらなかったので,決勝大会の厳しさをいきなり実感しました。

いよいよ出番!!

 西日本と東日本の予選大会を勝ち抜いてきた大学ばかりなので,どの大学のプレゼンも迫力があり取り組みも個性的で,内容も充実していました。第1部では京都産業大学のプレゼンがとても印象に残りました。同じ観光振興が活動テーマで,発表者がいきなり万葉集を吟じ始めたので驚きました。昼食休憩とNHK「サラリーマンNEO」の吉田照幸ディレクターの特別講演のあと,第2部が始まりました。私たち二人は松村先生から「荷物番を頼む,あとレポートもな」と言われ,発表者らとともに2階席にいました。石川県立看護大学のプレゼンが始まると,会場担当の方が来られて,阪南大学の発表者たちを舞台裏へと誘導されていきました。私たちはそれを見送ったのですが,先輩方も山田社長も普段と変わらない様子でしたが,松村先生が「よっしゃ。ほないこか。」と立ち上がられたのが印象に残っています。
 いよいよ松村ゼミの発表順が来ました。1階席で寄り添って見ていた先輩方は,発表者らが舞台袖から登場すると同時に「阪南大学」の小旗を振って応援。会場には辰巳浅嗣学長,吉兼秀夫教授,キャリア支援担当の中島功さん,広報担当の中上智夫さん,同窓会広報誌のカメラマンと記者,発表者の窪堀愛子の姉も来られていました。アウェーの東京でしたが,私たちゼミ生も含めて阪南大学関係は20名くらいもいて,東京がホームの跡見学園女子大学に負けない大応援団となりました。

充実のプレゼンから結果発表へ

 松村ゼミのプレゼンは内容たっぷりで,緊張感の漂う会場で笑いをとるという,大阪代表らしいものでした。私たちの記憶では,プレゼンで2回,質疑応答でも佐藤ゼミ長が1回,確実に笑いをとって会場を沸かせました。最後のスライドでわずかに時間切れしてしまいましたが,充実したゼミ活動の全てを盛り込んだ充実したプレゼンでした。全てのプレゼンが終わって,改めて,松村ゼミの活動がどの大学よりも充実していて,地域社会にとっても意義深いものだと確信しました。後は結果発表のみ…。
 結果発表は会場特別賞,準大賞,大賞の順で行われました。会場特別賞は流通科学大学。「準大賞は当初2校の予定が3校になった」とのアナウンスがあり,準大賞の発表に入りました。1階で応援されている先輩方は手を合わせてドキドキの様子,辰巳学長たちは座席から身を乗り出す勢い,舞台上の松村先生や発表者たちにも緊張が走りました。私たちも「ここで名前を呼ばれたくないなあ…,でもここで呼ばれなければ…」と,とても複雑な気持ちになりました。

準大賞と優秀指導賞を獲得!!

 審査委員長の諏訪康雄先生から「では,準大賞の発表です…,京都産業大学…,続いて阪南大学…」と聞いて,正直なところ「嬉しい!!」というよりも,「ああ,悔しいなあ」と思いました。大賞をとったのは産学連携で「夫婦三昧」というお弁当を開発販売した流通科学大学。会場特別賞とダブル受賞でした。
 新今宮という厳しい地域で120日間も課外でボランティア活動を行い,地域に欠かせぬ存在となったゼミ活動の実績が,審査員たちに上手く伝わらなかったのがとても悔しかった。でも,7代目ゼミ長の佐藤先輩が舞台上でインタビューを受け,「仲間たちに感謝している。みんな大好き!」と会場の私たちに声をかけてくれた時,本当に良いゼミに入ったなあ,と実感しました。8代目の私たちは,新今宮TICの活動だけでなく,先輩方の想いや悔しさも引き継いで,新しい活動に挑戦して次のグランプリでリベンジしたいと思いました。今回のグランプリでは,新たに優秀指導賞という賞ができ,松村先生が受賞されました。その先生のもとでゼミ活動できる私たちは幸せだと思いました。

準大賞でええやん

 グランプリ終了後は,松村先生とゼミ生たちで準大賞受賞の祝賀会を行いました。ここにはご来場いただいた辰巳学長・吉兼教授・中島さん・中上さんも駆け付けてくださり,コンパのカンパもいただき,盛り上がりました。松村ゼミの活動は,色々な人々に応援され支えられていると実感しました。松村先生の乾杯の音頭では,「ちょっと残念やったなあ。絶対に一番や思うたけどなあ。しかし松村ゼミのスタイルを貫いて,堂々と2番になったんやから,よしとしましょう。僕らが大事にせなあかんのは,賞をもらうことやない。地域との関係や。いただけるものはありがたくいただいて,淡々と活動を続けていきましょう。今後ともよろしく!!」,と松村先生らしい挨拶がありました。私たちの前の席に辰巳学長が座られたのですが,「ホンマにひいき目なしに,君らの活動が一番やと思う」,とおっしゃっていただきました。私たちもそう思っています。さて,祝賀会は終始笑いの絶えない松村ゼミらしいものとなり,宴会の途中で松村先生と丸市将平先輩のサプライズ誕生日会が開かれました。河嶌友紀・山岸枝里子先輩が,受賞式終了後ダッシュで買い出しに行かれたようで,発表者3名にもプレゼントが手渡されました。

発表者からのコメント

石橋涼子

 松村ゼミの代表,新今宮TICに関わった100名以上の学生の代表,阪南大学の代表,新今宮地域の代表というプレッシャーは予想をはるかに超えて重かった。でも,みんなの想いを受け止めて頑張り,みんなで力を合わせて頑張ってきたことが,よみうりホールでの決勝大会という大舞台で,準大賞受賞という最高の形で認められ,本当に嬉しかった。
 松村先生が優秀指導賞を獲得されたのも,本当に嬉しかった。個人的には,舞台裏で味わう心地よい緊張感が最高で,楽しかった。このような機会を与えていただき,ありがとうございました。

窪堀愛子

 このグランプリへの出場を目標としてゼミ活動をしていた訳ではありませんが,これまでの活動を振り返るとても良い機会になりました。発表用のパワーポイントを作るなか,「私たち本当によくやったね!!」,と何度も自画自賛しました。伝えたいことが多すぎて,時間内でおさめるため,言葉を選びぬきました。プレゼンの準備でさらに成長したと実感しています。
 大きなホールでの発表も初めての経験でしたが,仲間が見守ってくれていたので,安心して堂々と発表できました。松村ゼミの団結力はすごいと改めて感じました。今後も淡々とゼミ活動を続けていきます。

佐藤有(第7代目ゼミ長)

 私たちはこれまで,前だけを見て,そこに何か答えがあると信じ,走り続けてきました。今回この大会への出場が決まり,走りながらも初めて自分たちの活動をふりかえることができ,とてもいい機会を頂けたと思います。これまでの松ゼミWalkerをゼミみんなで読み返して振り返ってみると,「そんなこと本当に私たちにできるの??」というような挑戦が,これでもかこれでもかと続いています。正直なところ,悩む間もないほど忙しく猛スピードで走り続け,ふと振り返ると,いくつもの成果が並び,最初はできないと思っていたことが,今では本当に普通に当たり前にできるようになっているのに気付きました。ひとつひとつの活動のなかで,ゼミ生ひとりひとりがよく考えてさっと行動し,大きな挑戦と小さな成功を積み重ねて,現在の成果と存在意義を勝ち取ってきたと実感しました。私もこの1年間余りで,みんなと一緒に成長できたと思います。

 今回の受賞,発表したのは私たち3名でしたが,松村先生,ゼミのみんな,手伝ってくれたボランティアスタッフ,声援を送り見守ってくれた地域や大学の方々,本当にみんなの力ででいただいたものです。みなさんのおかげで,予選大会からの念願である経済産業省の林揚哲企画官との握手も実現できました。ありがとうございました。東京まで応援に来てくださった辰巳学長,吉兼先生,中上さん,中島さん,本当にありがとうございました。ものすごく心強かったです。
 社会人基礎力育成グランプリの参加を通して,私は改めてゼミ活動の意義を感じ,阪南大学で学びを深めることのできる幸せを感じました。阪南大学で学ばせてくれている両親にも感謝したいです。これからも変わることなく,松村先生とゼミのみんなと後輩たちとで,淡々と新今宮TICの運営を続け,活動を支えてくださっている方々への感謝の気持ちを忘れずに,みんなで協力して活動していきます。みなさん,本当にありがとうございました。

松村先生からの長めの一言(北京より)

阪南大学松村のスタイル

 西日本予選大会の優秀賞受賞インタビューで佐藤が,「プレゼンテーションを作る際に松村先生と本当に何度もバトルして…」とコメントしていました。「社会人基礎力育成グランプリ」という趣旨を踏まえて,予選大会のプレゼン作成で発表者3名たちは,「最初は全く何もできなくて,悩み苦しみ落ち込んで,何かのきっかけをつかみ工夫をして乗り越え,成長してきました」というプレゼンを作ろうと主張しました。つまり,出来なかったことができるようになった,その成長の伸び幅をしっかりと見せよう,ということでした。この提案に私が強く反対しました。
 反対した理由はいくつかありました。発表者3名は実数で100名を超えるボランティアスタッフみんなの代表なので,3名の個人的な成長を述べるのは適切ではない。「こんなアホやったのが,こんなにカシコになりました」と成長の伸び幅を見せるのに時間を割いて,私たちがどのような背景のなかでどのような活動を行ってきたのか,それを語らずに終わるならば出場する意味はない。そもそも,君らゼミ生はアホやなく,色々な困難をいとも軽やかに乗りこえてきたのではないか。そもそも,私たちのゼミ活動は社会人基礎力の育成を意識したものではなく,新今宮地域の再生のため,国際観光学を学ぶ私たちの力で一体何ができるのか,と考え行動してきたのでなないか。ならば,新今宮地域での私たちの活動内容をしっかりと回顧して盛り込み,この地域でどのようなことが起こりつつあるのか,その現状を少しでも多くの人たちに知っていただくのが重要なのではないか。充実した活動実績を並べれば,ゼミ生やボランティアスタッフたちがどのくらい成長したのかは,語らずとも明白であり,審査員も伸び幅を想像してちゃんと評価してくれるに違いない。

 結果として,発表者3名は私の反対意見を納得して聞き入れ,相手に合わせて受賞を狙うプレゼンをするのではなく,阪南大学松村ゼミのスタイルと想いを貫いてプレゼンを行い,それを審査員に評価してもらおう,とゼミで決定しました。そこで発表者たちは予選大会でも決勝大会でも,ゼミ活動の内容を中心に据えたプレゼンを作成してくれました。ゼミ活動が本当に充実していて多岐にわたり,この大会の期間中も新しいことに取り組んできたので,限られた発表時間のなか,成長の伸び幅などを入れる余地などなく,プレゼンの文言も一言一句まで吟味して究極の減量を行いました。
 大賞を逃したのは残念でしたが,私たちのスタイルと想いを貫いたので,全く後悔はしておらず準大賞獲得を誇りに思います。ゼミ生たちも同じ気持ちでいると信じています。私個人にも思いがけず「優秀指導賞」をいただき,それを私以上にゼミ生たちがとても喜んでくれ,それを見てこれまでの苦労が報われた気がしました。
 実のところ,あまり苦労と感じたことなどありません。一緒に時間と空間を共有して楽しんできたとの想いがあります。共通の目的に向かってみんなで想いを一つにして,苦楽を共にして努力すれば,何か「戦友」のような連帯感が生まれます。苦楽を共にしたくなる「戦友」に恵まれたからこそ,「鬼軍曹」の私が優秀指導賞をいただけたと「戦友」たちに感謝しています。