東京のゲストハウス事情と意見交換会(レポーター:河嶌友紀)

せっかくやからフィールドワークもしようや!!

 社会人基礎力育成グランプリ2010の決勝大会,松村ゼミからは発表者3名以外に,13名の応援団が自腹での東京行きを志願しました。決勝大会は3月5日の10時開始なので,発表者ほか総勢17名(夜行バス往復で日帰りのゼミ生・松原歩美を除く)は,前日の4日に先乗りすることになりました。せっかくゼミ生たちがまとまって上京するのだから,このチャンスを活かして学びを深めようということになり,松村先生と山田英範社長(ホテル中央グループ)のツテをたどり,東京の格安ゲストハウス事情の視察と墨田区観光協会との意見交換会が企画されました。極力出費を抑えたいので格安ゲストハウスでの宿泊も体験してみようと,私たちの宿泊先は,「カオサン東京アネックス」(キャビンベッドのドミトリーで何と1泊2,500円)に決まりました。以前,「カオサン東京」のマネージャーたちが新今宮地域とTICの視察に来られ,松村先生と山田社長が地域の現状を案内して回られたことがあるそうで,今回は逆に「カオサン東京」のご案内で私たちが学ばせていただくことになりました。
 さて,松村ゼミのお約束は,国内でも海外でも現地集合の現地解散。今回の現地集合は,3月4日15時に浅草の雷門の下でした。私は山岸枝里子と午前中に浅草に到着。チェックインには早いが荷物だけでも置かせてもらおうと,「カオサン東京アネックス」へ向かいました。道に迷いながらも12時過ぎにはたどり着き,ここでゼミ生の安達七菜・茶谷みなみとも合流。松村先生に到着の報告メールを送ると,先生もすでに浅草に来られていて,「昼飯おごったるからはよ来い,腹減った!!」とのこと。ゼミ生4人で先生の待つ浅草へ向かいました。

浅草地域通貨でランチタイム

 13時過ぎに吾妻橋交差点で松村先生と合流。「浅草地域通貨両替所」にて浅草地域通貨というものを購入しました。これは浅草界隈の商店街で使える小判型の地域通貨で,ハローキティのキャラクターが刻印されているレア—もの。現金950円で1,000円の地域通貨と両替してくれます。全員一致でとんかつを食べたいとなったので,窓口のおじさんに紹介していただいた「井泉」というとんかつ屋さんへ行きました。私たちを待つ間に松村先生は窓口のおじさんとかなり話し込まれた様子で,美味しいとんかつを食べながら,「浅草の商店街は元気があるなあ」と感心されていました。確かに浅草は外国人や観光客がたくさんいて,威勢の良い人力車のお兄さんたちもいて,商店街にも活気がありました。井泉でのお会計では,ちゃりーんと小判で払い,気分は江戸時代。先生ごちそうさまでした。

雷門に感動

 集合時間までまだ1時間ほどあったのでフリータイムとなり,先生は墨田区観光協会との意見交換会に向けた打ち合わせに行かれました。私たち4人は浅草寺界隈の商店街を歩いておみくじをひきました。「せーので見せあおうな,せーの…」。結果,私と安達と茶谷は吉,山岸は何と凶!! 浅草寺でひとり泣き叫んでいました。その後は皆で芋羊羹を食べ,少し早目に雷門で他のゼミ生たちの到着を待ちました。すると外国人に道を尋ねられました。アウェーの東京,全く分からないので雷門前の交番で聞いて,それを拙い英語で通訳して見送りました。まさか浅草まで来てTIC的案内をするとは…。でも外国人から突然話しかけられても,全く動じなくなりました。我ながら成長したと思います。そうこうするうちに,男性陣の丸市将平・笹部和平・永野健太が雷門に到着。彼らは早朝から築地市場へ行き,昼前から一杯飲んで,築地から浅草まで歩いて来たらしい。さすがフィールドワーク慣れしている。でも道理で酒くさい…笹部さん。
 その後は続々とゼミ生たちが到着して,15時ちょうど,松村先生の「誰か忘れてない?」,「たぶんこんなもんやと思います。」で集合完了。雷門をバックに記念撮影して,ゼミ生たちはチェックインするため,カオサン東京アネックスに向かいました。少し歩いて隅田川を渡る頃,松村先生が「あ…2年生のふたり忘れてた…来てへんわ…」,これもよくあることです。笹部さんが雷門へと走って戻りました。松村先生と山田社長はカオサン東京の珍田亮さんの案内で,ひと足先に墨田区観光協会との意見交換会が開かれる墨田区役所へと向かわれました。

カオサン東京は外国や!!

 「カオサン東京アネックス」は地下鉄浅草駅から徒歩10分くらいの普通の住宅街にあります。アネックスの建物はもともと印刷工場兼事務所だった所で,それをゲストハウスにリフォームして用途転用して,簡易宿所営業の許可を得て営業しているとのこと。一歩なかに入るとそこは異国の匂いが漂い,コミュニティースペースでは英語が飛び交い,ここは外国かと錯覚してしまいます。私は窪堀と一緒に2009年夏に1ヶ月ほどヨーロッパ旅行へ行ったのですが,その時泊まったゲストハウスと雰囲気が似ていて,懐かしく思いました。今晩ここに宿泊するのは12名,部屋はキャビンベットが並ぶドミトリーで,12名全員が同じ部屋でした。荷物を置いてすぐ出発,いよいよ墨田区観光協会との意見交換会です。

墨田区観光協会との意見交換会

 墨田区役所の意見交換会は,思いのほか立派なホールで16時から行われました。松村先生・山田社長が正面,その左手にカオサン東京の珍田さんと小澤弘視さん,右手に墨田区観光協会の石母田あゆ子さんがいらっしゃいました。会場観覧席には私たち以外に10名くらいの関係者が来られていました。墨田区役所の産業振興課の方,墨田区内で「街歩き案内処」を引き受けられている商店主,ホテル関係者などなど。「これはマジな場や…そんなん松村先生から聞いてない…」,一気に緊張感が高まりました。意見交換会の初め,カオサン東京の珍田さんから趣旨説明がありました。その後,松村先生が新今宮地域での私たちの社会的実践について30分くらい発表され,山田社長が新今宮地域に集う外国人の特徴などを補足説明されました。
 質疑応答に入って,私たちは色々なことを学びました。墨田区役所のすぐ横に東京スカイツリーができること,それに合わせて観光振興や街歩きツアーなどが注目されていること。私たちが驚いたのは,墨田区で「3M運動」という先進的な活動が,とても早い時期から取り組まれていることでした。3Mとは,Museum(「小さな博物館」),Manufacturing Shop(「すみだ工房ショップ」),Meister(「すみだマイスター」)のことで,まさに吉兼秀夫教授の授業で習ったエコミュージアムそのものでした。羨ましいことに,墨田区にはものづくりだけではなく,江戸時代から脈々と続く下町文化と人情もあります。東京は全国各地・全世界から人が集まる国際都市なので,これだけ豊かな地域資源があれば,ほんの少しの工夫や見せ方で,集客は簡単なのではと感じました。松村先生も私たちが実施してきた外国人向けの街歩きツアーや「大阪あそ歩」などを紹介され,地域資源を上手く見せる街歩きを仕掛けるのが良いのではとアドバイスされていました。会場に来られていた方とも活発で有意義な意見交換が行われ,あっと言う間に予定されていた2時間が過ぎてしまいました。ご来場いただいた皆様,本当にありがとうございました。

意見交換会後の夕食でハプニング!!(レポーター:永野健太)

あの人…歌舞伎の人とちゃうの??

 意見交換会が終わると解散しました。松村先生と山田社長はカオサン関係者と一緒にカオサングループのゲストハウスの視察へ向かい,社会人基礎力の発表者たちは会場近くのホテルへ帰ってプレゼンの最終確認,カオサン東京アネックスに宿泊する私たちは,全員でそろって晩御飯を食べに行くことになりました。小雨模様のなかお店を探していたのですが,急に雨が強くなってきたので,たまたま目に付いたちゃんこ屋さんに駆け込みました。料理が出てくるのを待ちながらワイワイガヤガヤと楽しむなか,ゼミ一番のお調子者の山岸がお店にいた子供と遊び始めました。
 私たちのすぐ近くの席に,どこかで見たことのある…しなやかな立ち振る舞いの方がいらっしゃいました。「あの人,絶対どっかで見たことある…。さんまさんのテレビに出てた人やわ…。」とヒソヒソ話をしていました。山岸と遊んでいた子供がどうやらお店のお孫さんだったらしく,女将さんから「うちの孫の相手をしてくれてありがとうね」,と話しかけてこられました。「もしかしたら気付いたかもしれないけど,あそこの人,市川春猿さんなんよ」と女将さん,ゼミ生一同は「ええー,やっぱり。絶対そうやと思っててん」と大騒ぎに。
 その騒ぎに気付いた春猿さんがこちらに寄って来られ,「お孫さんの相手してくれてるんやね。ありがとう。」と話かけてこられました。会話のなかで大阪の阪南大学の学生であるとわかると,春猿さんは「ほんまに!富田林に知り合いおってね。お好み焼き屋やってるんやけど,今度皆で行き!! 言うとくから」,とおもむろに携帯電話をとり出し,「今,阪南大学の学生らとおってね…,今度あんたの店行かせるから,支払い私に回して…」。「ちゃんと言うといたから,皆で食べに行ってね」,とお好み焼き屋の店主の電話番号を渡してくださいました。下町のちゃんこ屋さんで,歌舞伎女形で活躍されている市川春猿さんと素敵な出会いができるなんて,さすが東京!! 翌日このエピソードを松村先生に話すと,「春猿さんって,無茶苦茶凄い女形やねんで。あの坂東玉三郎の後は春猿さんやって言われている人やで。お前ら失礼無かったやろうな。何で俺に電話せえへんかってん。すぐに駆け付けたのに…。」と本気で悔しがっておられました。

カオサン東京の視察(レポーター:松村嘉久)

やっぱり東京は凄いなあ!!

 松村と山田社長はゼミ生たちとは別行動で,カオサン東京のゲストハウスを視察して回りました。珍田・小澤・馬込マネージャーの案内で,「カオサン東京」・「カオサン東京アネックス」・「カオサン忍者」・「カオサン侍」・「カオサンスマイル」と東京墨田区で展開する全てのゲストハウスを見学させていただきました。
 私と山田社長の共通の感想は,「やはり東京は凄いなあ!!」でした。東京はさすがに世界都市,外国人旅行者そのものの母数が多いので,格安旅行者に完全に特化したゲストハウス経営が成り立つことを目の当たりにしました。私は80年代のバックパッカー,山田社長も90年代のバックパッカー,ともにアジアのゲストハウスを泊り歩いた経験があります。カオサン東京のゲストハウスの雰囲気を体感して,「懐かしいなあ!!」との印象も同じでした。思い起こせば,カオサン東京のコミュニティスペースのような場所で,私は英会話を覚え,人間として成長し,日本人であることを自覚していきました。私の人格形成の根底にそうした経験が間違いなく影響しています。
 今回の視察と意見交換会はとても有意義なものとなりました。ゼミ生たちにとっても良い経験になりました。色々とご配慮いただいたカオサン東京のスタッフの方々,墨田区の関係者の方々に感謝いたします。