【松ゼミWalker vol.227】インバウンドと新今宮の近未来を考えるシンポジウム

 2017年7月15日(土)午後,あべのハルカスキャンパスにて,松村嘉久研究室主催で,インバウンド観光と新今宮の近未来を考えるシンポジウムを行いました。パネラーは,矢野到さん(南海電鉄インバウンド事業部),山田英範さん(ホテル中央グループ),杉浦正彦さん(大阪府簡易宿所生活衛生同業組合)の3名。司会進行は松村嘉久(阪南大学国際観光学部),写真撮影はOBの濱中勝司さんが担当しました。

 広く一般公開はしないで,聴衆は知人とゼミ生に限定,OBや新今宮関係者ほか,1年生から4年生までの20数名が集まりました。
 まずは,パネリスト3名の簡単な紹介をしたいと思います。関西国際空港と大阪ミナミを結ぶ南海電鉄は,関西私鉄のなかでもインバウンド客の利用が特に多く,昨年度も抜群の収益増を達成しました。矢野到さんは,その南海電鉄でインバウンド事業の最前線を切り開いて来られた先駆者です。
 「新今宮をタイのカオサンのようなまちにしたい」と志した山田英範さんは,ホテル中央グループを率いて,外国人旅行者の受入れ整備を陣頭指揮し,松村研究室とも協働して,新今宮に大きな変容をもたらした功労者です。
 新今宮界隈の不動産や民泊の事情に詳しい杉浦正彦さんは,簡宿組合事務局長として,幅広い人脈をいかして,様々な組織や個人を積極的につないでくれています。
 今回のシンポジウムは二部制で,第一部は「インバウンドの現状と近未来予想」,第二部は「新今宮と新今宮TICの新たな展開に向けて」,学生にも分かる言葉で気軽に意見交換しよう,という趣旨で企画しました。以下は,3名のパネリストとのやりとりから…。
 「インバウンドで儲かってますか」という松村からの質問に,南海の矢野さんは全くためらうことなく,「儲かってます。」と言い切られました。「何年か前まで空気を運んどるとちゃうんか,と揶揄されたラピートですが,最近はおかげさまで,スーパーシートまで満席です。」とのこと。矢野到さんのお話で印象に残ったのは,関西国際空港の離発着回数や南海利用者調査など,信頼性の高いデータの現状分析と,それを踏まえた科学的な需要予測に基づいて,事業や投資などの経営戦略を立案しようとする南海電鉄の姿勢です。「儲かっていたらそれでええんやないんです。儲かっているからこそ,次の手を打っていかなあかんのです。」と,南海電鉄や大阪インバウンドの具体的な将来像について,力強く語られていました。

 「星野リゾートの新今宮進出はどう思ってはりますか」との松村からの質問に,「大歓迎です。」と即答した山田英範さんは,「フードコートと一緒ですわ。魅力のあるお店がいっぱい集まったら,それが強みになってお客さんを呼び込むんです。」と,経済地理学で言うところの集積の強みを語られました。「これからの新今宮に何が必要やと思いますか」との問いには,「楽しむっていう要素がもっと増えたらええなぁって思います。食べるところ,飲むところ,遊ぶところ,色々なお店がもっとできたら,本当に面白いまちになると思います。」と,タイのカオサンを意識して発言されていました。
 新今宮のまちの変化に詳しい杉浦正彦さんは,「新今宮界隈に注目しているのは星野リゾートだけではなく,その前から中国系の不動産会社や,他のホテル事業者や民泊事業者も注目してました。ただ,星野リゾートの進出決定が決まってから,今まで以上に注目が集まるようになった。」と言う。ここ数年で,旅館業法関連の条例が改正され,民泊新法が制定され,福祉マンションを宿泊施設に転用できる状況になりましたが,「福祉マンションの多い新今宮界隈にとっては,この流れも大きな意味を持つだろう。」とのことでした。
 この他にも,話題はたくさんありました。南海新今宮駅をJRへの乗り継ぎ駅から駅の外へ降りる駅にする必要性,なにわ筋線の計画が新今宮界隈に与えるであろう影響などなど。なかでも,新今宮TICの新たな展開に向けて,山田英範さんからは,「外国人旅行者と日本人が交流できて,お互いが楽しめるような仕掛けを期待したい。」,杉浦正彦さんからは具体的に,「カフェでもやってお金を稼げるような場所にして,まち歩きツアーの参加募集の窓口にもすればいい。」とアドバイスをいただきました。このシンポジウムでの意見交換は,ゼミ生たちに良い刺激を与えたと確信します。また,ぜひこうしたアドバイスをいかして,新今宮TICの進化と深化を検討したいと思います。