【松ゼミWalker vol.211】 IGC2016Beijingへ参加して(教員 松村嘉久)

 2016年8月21日(日)から25日(木)の日程で,中国北京市の国家会議中心にて,国際地理学会議【IGC: International Geographical Congress】2016 Beijingが開催されました。IGCは多い年なら軽く5千人以上,少ない年でも3千人くらいは,世界各国から地理学研究者が集い,研究成果の発表と意見交換を行う国際的な学会です。
 ちなみに,IGC 2016 Beijingの大会発表要旨集は,総ページ数が4,159頁となり,印刷物では分厚くなり過ぎるため,PDFファイルの入ったUSBで配布されました。会場となった国家会議中心は,北京を代表する建造物のひとつで,オリンピック公園のなかにあり,関係者以外はなかなか近寄り難いような場所でした。IGC 2016 Beijingの看板前で記念撮影する参加者をよく見かけました。
 松村はこれまで,2012年にドイツのケルン,2013年に日本の京都,2014年にポーランドのクラコフで開催されたIGCにて口頭発表してきました。現代中国を研究していて,中国人の地理学研究者とも交流がある私は,このIGC 2016 Beijingは行こうと思っていました。オープンキャンパスなど学内業務との兼ね合いから,フル参加という訳にはいきませんでしたが,8月23日(火)から25日(木)の2泊3日で,北京へ行ってきました。

 IGCでの発表は,口頭発表とポスター発表に大別されます。発表するためには,まず発表内容の英文要旨を添えて,口頭発表かポスター発表かどちらを希望するのか,口頭発表ならどのセッションで発表したいのか,専用サイトへ申し込みます。それが受け付けられたら,英文要旨がレフリーによる審査に回されます。その審査の結果,「受諾」か「拒否」の通知が来ます。受諾されれば,メールで招待状が届きますが,拒否されれば,発表者としては招待されません。右写真は発表会場の様子,IGC 2016 Beijingで用意された発表会場は,大小40箇所を超えました。
 IGC 2016 Beijingで発表予定の私の英文要旨は,本学流通学部のパーソンズ先生にチェックしていただき,ベルギー人の地理学研究者にも見てもらったのでバッチリ。何の修正要求もなく,無事,申し込んだ通り受諾されました。パーソンズ先生,ありがとうございました。さて,問題は口頭発表の準備です。IGCの公用語は英語かフランス語です。口頭発表でもポスター発表でも,どちらかの言語で行わなければなりません。フランス語が全くわからない私は,英語で発表するしかありません。

プレゼンテーションの準備と口頭発表

 8月23日午後に北京入りした私は,空港からホテルへ直行しホテルに籠り,英語でパワーポイントを作り込みました。プレゼンテーションに向けて,とても詳しい英語原稿を書く人が多いのですが,今回は時間が限られていたこともあって,英語のパワーポイント作成で時間切れ…。口頭発表で語る内容は,プレゼンテーションするその場で思い浮かんだ英語で何とかしよう…,という状況でした。
 ホテルの部屋でパワーポイントをざっと見直しながら,このスライドではこの部分,次のスライドではこの部分,という感じで,必ず伝えたいところを確認しながら,頭の中で何度か予行演習して,発表当日を迎えました。
 私が参加したのは,都市委員会【Urban Commission】の「複雑化する世界における都市の挑戦:競い合う社会空間」【Urban Challenges in a Complex World: Contested Social Spaces】というセッションでした。このセッションか観光学のセッションか,どちらで発表するか迷ったのですが,研究内容から,こちらが適切だと判断しました。当初このセッションは5名で80分の予定でしたが,当日になって発表キャンセルが1名出て,4名で80分となり,発表持ち時間は各人16分間から20分間へ。
 突然の発表時間の延長…,詳しい原稿を準備していると慌てるかもしれませんが,何を話すかその見出しと順番くらいしか考えていない私は,それならあの部分を少し丁寧に説明すれば…くらいの感覚。

 プレゼンテーションで最悪なのは,周到に準備し過ぎて,原稿を棒読み,時間が大幅にオーバーして,準備していた半分も語れず,座長に止められて退くパターンです。発表中に英語が全く出てこなくなり,黙り込んでしまうのも大問題ですが,頭が真っ白になっても,パワーポインに書いてある内容を読めば,何とかつなげます。20分くらいの発表ならば,言いたいことを厳選して,そのことだけは絶対に伝えたい,という迫力で臨む方が効果的です。
 IGC 2016 Beijingでの私の口頭発表は,8月24日(水)の16時30分から,この日の最後のセッションで,タイトルは,「日本・台湾・香港における都市空間とグラフィティの相互作用」【The Interaction between Urban Space and Graffiti in Japan, Taiwan and Hong Kong】でした。発表会場は407号室,最大で50名くらいは収容できる会議室で,聴衆は20名くらいいました。
 発表は持ち時間内に終わり,英語で詰まることもあまりなく,言いたいことは全て言えました。国際的な学会で,SHINGO★NISHINARIさんほか,西成WANに協力してくれたアーティストの名前や功績をしっかりと語ってきました。研究対象がグラフィティで,プレゼンテーション資料もビジュアルな写真を中心に構成していたので,とても分かりやすい発表だったと思います。聴衆からの質問にも,何とか対応できました。
 さて,IGC 2016 Beijingへは阪南大学国際観光学部からもう一人,新任の渡辺和之先生も口頭発表で参加されていました。発表スケジュールを見ると,23日(火)朝8時からのセッションで,【Over Sea Migration and Village based Animal Husbandry, Changing Agro-Pastoralism of East Nepal】というタイトルで発表されたようです。北京へ到着する前だった私は,残念ながら聞き逃しましたが,地理学の専修コースを持たない阪南大学から,IGCへ2名もの参加者があったのは,素晴らしいことです。