【松ゼミWalker vol.187】 新今宮TICから気軽に行けるまち歩きツアーを企画(2回生 辻彩佳)

 2015年9月26日(土)、外国人旅行者向けのまち歩きツアーを行いました。ゼミとしては、今年に入って3回目のツアーだそうです。このツアーは、台湾の国立高雄餐旅大学からの交換留学生がゼミに加わったので、その歓迎の気持ちも込めての企画。また、NHK大阪放送局の『学校再発見バラエティー あほやねん すきやねん(あほすき)』の取材も入っていたので、新今宮TICの活動の紹介も兼ねて、一般の外国人旅行者の参加も募集することになりました。
 ツアー2週間前の9月12日(土)、私は3回生の浜野文菜さんと、運営スタッフとして新今宮TICで活動していました。この日、たまたま、NHK『あほすき』取材班と松村嘉久先生が、打ち合わせのため、新今宮TICへ来られました。その際、取材班と松村先生がご相談されているなかで、「台湾からの交換留学生も来たことやし、何かこれまでにやったことのないような、新今宮TICから気軽に出かけられるような、新しいまち歩きツアーでもやろうか」ということになりました。
 浜野文菜さんは、9月14日から始まる西成WANの中心人物で超多忙。そこで、残った私に先生が、「辻ちゃん、新しいまち歩きツアー、企画できるか、挑戦してみるか」と提案されました。私は前回の平野郷まち歩きツアーに参加して、外国人旅行者と歩きながら交流できるツアーの楽しさを経験したので、勢いで「やります」と答えました。しかし先生は、「参加者として後ろを歩くのと、企画してツアーの先頭を歩くのは、全く意味がちゃうで、ホンマにできるか」と不安そう。そこで、同じ2回生で、まち歩きツアーに参加した経験のある大嶋千波さんと三宅亜紗未さん、4回生ゼミ長の栃原智美さんに手伝ってもらい、4名でツアーを企画することになりました。

 その後、私たちは西成WANへ参加する日程を調整して、西成WANの作業の空いた時間に新今宮TICへ何度も集まりました。そして、まち歩きでどこに行くのか、どこへ行ったら参加者に喜んでもらえるのか、どの道を通って行けば途中で飽きないのか、集合時間や終了時間は何時にするのか、などを話し合いました。
 話し合いの結果、ツアー当日は、18時にまずTOWER KNIVES OSAKAへ行き、通天閣の真下を通り抜けて、通天閣の撮影スポットへ行き、大衆演劇のオーエス劇場へ向かうことが決まりました。また、一般の外国人旅行者を集客するため、26日の12時くらいから、どこかのホテルにご協力いただき、たこ焼きパーティーを開こうとも決まりました。
 実際にそのコースを下見して歩いた私たちは、まち歩きツアーで訪問してもよいかどうか、立ち寄り先から許可をいただく交渉も行いました。TOWER KNIVES OSAKAも、オーエス劇場も、これまでゼミで何度も訪問したことがあり、つながりがとても深く、驚くほど簡単に快諾。オーエス劇場では9月出演の三代目・澤村謙之介座長にもご挨拶させていただき、事情を説明すると、「ぜひぜひ、たくさんの外国人を連れてきてください、お待ちしております」と歓迎してくださいました。

地域とのつながりや信頼関係を大切に

 そこまで良い流れで来ていたので、たこ焼きパーティーも許可をいただけるだろう、という気持ちでホテルへ向かいました。ところが、土曜日のお昼は、チェックインとチェックアウトが重なり、どのホテルも一番忙しい時間帯ということもあり、さすがに許可はいただけませんでした。
 先輩方からアドバイスも伺い、何軒かのホテルを「ご協力願えますか」と回ったところ、一軒のホテルから「少し考えさせて欲しい」とのお答えをいただきました。すると、そのホテルの支配人から先生へ、「生徒さんらだけでお願いに来られたのですが、先生もご存じのお話なのですか」と電話が入ったそうです。私たちは、先生に相談しないで、ホテルへお願いに行っていました。
 その後、新今宮TICへ来られた先生は、「新今宮TIC周辺のホテルは、これまでの私らとの関係から、どのホテルも私らから何か頼まれたら、無理してでも何とかしようと本気で考えてくれる。だからこそ、相手の都合を考えんと、軽い気持ちで頼みに行ったらアカン。」とお叱りを受けました。
 ゼミと地域との関係には長い歴史があり、先輩たちがこのまちと一生懸命関わり、信頼関係を作ってくださったから、今の私たちが色々な働きかけをしても、快く協力していただけます。信頼関係が深いからこそ、「無理なお願いはしたらアカン」と先生はおっしゃいます。

 地域との関係づくりを軽く見てしまっていたことを恥じると同時に、先輩らが積み重ねてきた歴史の凄さを実感できました。今回の企画でたこ焼きパーティーは実施しないことになりましたが、地域のホテルの方々は、「時期や時間帯さえ合えばやりたいし、面白い企画やと思うよ、だからまた機会を改めてぜひ」とおっしゃってくださいました。
 まち歩きの参加者募集のポスターも、2回生が中心になって制作しました。前回の平野郷まち歩きツアーのポスターを真似して、まずは日本語で原稿を作り、それをみんなで英語に翻訳してレイアウトを決め、松村先生に見ていただきOKをもらいました。今回のツアーでは、私たちが外国人旅行者にお薦めするお店や場所を載せたチラシも作り、同時並行で作業が進んでいた西成WANも紹介しました。
 9月24日(木)のゼミで、3・4回生の先輩方に最終確認していただき印刷。放課後、新今宮へ行き各ホテルへチラシの配布をお願いしに行きました。

企画して実践する面白さ

 9月26日(土)のまち歩き本番当日、私たちは朝から新今宮TICを運営しながら、各ホテルを回り、外国人旅行者に参加を呼びかけました。新今宮TICを利用しに来られた外国人はもちろん、まちを歩く外国人にも声をかけました。事前の申し込みは当日午前中の段階で4名、松村先生は「そんなけおったら十分や、とにかく無理せんでええから」とのこと。
 集合時間の17時半、集合場所のホテル中央セレーネに集まってくれた一般外国人参加者は、ドイツ人男性1名、スイス人男性1名、アメリカ人女性1名、中国人カップル男女1名ずつの5名でした。高雄餐旅大学からの交換留学生の女性3名もこれに加わりました。案内する方は、4回生のジーンさん・ジュディさん・栃原智美さん、2回生の大嶋千波と私、それに先生が加わり6名。NHK『あほすき』の取材陣はカメラ3台で 7名が同行。総勢で20名を超える集団でまち歩きが始まりました。
 まち歩きは予定していた通り順調そのもの。18時出発でジャンジャン横丁を抜け、朝日劇場の前を通ってTOWER KNIVES OSAKAへ。そこでビヨンさんの英語解説で堺の包丁の素晴らしさを学び、通天閣の真下を通り抜け、スパワールド北側の階段へ。
 オーエス劇場に着いたのは、19時半少し前でした。お芝居が終わっていたので入場料は700円、後半の歌謡・舞踊ショーが始まった頃に入場しました。ツアー参加者は初めて見る大衆演劇を、心の底から楽しまれているようでした。終演後、澤村謙之介座長は外国人参加者のひとりひとりと丁寧に握手され、記念撮影にも快く応じてくださり、参加した方々は本当に満足されていました。大衆演劇の役者さんたちの「お客様を大切にする」という姿勢は、とても勉強になりました。

 その後は、ホテル中央セレーネのロビーへ帰り、私たちや外国人参加者はNHK『あほすき』取材班のインタビューを受けました。外国人参加者の感想はとても良いもので、私たちはツアーが成功したと確信しました。
 インタビュー撮影が終了した後も、外国人参加者たちはホテルへ帰りたくない様子…、そこで先生が「みんなお腹すいたやんな、お好み焼きでも食べに行こうか」と誘われました。ここからはテレビカメラ無しで、みんなでさらに交流を深めました。ここでのお代は、外国人参加者たちが「今日はありがとう、私たちが払う」と支払ってくれました。
 今回、ツアーを企画させていただいて、地域の多くの方々の優しさを感じ、まち歩きツアーをする大変さも感じ、私にとってとても貴重な経験となりました。ツアーを企画して実践する大変さと面白さもよくわかりました。これからのゼミ活動を通じて、この地域の理解をもっと深め、このまちのため、何か良いことができるよう、私も頑張りたいと思います。

松村先生からのひと言

 西成WANでも、このまち歩きツアーでも、ゼミ14代目となる2回生たちがとてもよく頑張ってくれました。辻彩佳さんはとても控えめで、口数が少なく声も小さい学生。でも、責任感が強く積極的。辻さんのような学生は、経験を積み重ねるなかで、少しずつ自分を変えていけば、必ず大きく成長します。昨日よりも今日、今日よりも明日、たとえ大きな壁があっても、一歩一歩前へ進み乗り越えようと努力していれば、大学生活の4年間で別人かと思うほど育ちます。
 この夏休み期間、なんばパークスでのイベント支援から、西成WANとこのまち歩きツアーの実践と、色々なゼミ活動が重なりました。ゼミ入りの決まった2回生らは、それらを実践していくなかで、驚くほど成長しました。おそらく当事者たちはその成長をほとんど実感していないと思います。ただ、多くの新ゼミ生たちが、こうした経験を「何かずっと、ずーと前のことのような気がする」と表現します。そう感じるのは、この2ヶ月余りの夏休みが充実していて、みんなが成長したからに他なりません。
 私もこの2ヶ月余り、色々と楽しみ苦しみ、苦しみも楽しみ、大きく成長しました。ゼミ生らとその時間を共有でき、地域の発展に貢献できたことが何よりです。「今できるコトを今できるヒトが」、「アセラズ クサラズ アキラメズ」。