【松ゼミWalker vol.182】 なんばパークスでのイベント協力を終えて(教員 松村嘉久)

とてもやりがいのある現場共育の現場

 2015年8月26日(水)から30日(日)まで、南海なんば駅横のなんばパークスにて、期間限定の屋台街「星空スタンド」がなんばカーニバルモールにて、芦原橋UP MARKETと大阪ぐりぐりマルシェなどが集う「GARDEN MARCHE」が、パークスガーデンにて開催されました。
主催は南海電鉄、協力に大阪市浪速区と阪南大学国際観光学部が並び、連携団体として、ウラなんば・大阪ぐりぐりマルシェ・芦原橋アップマーケットが並ぶ大規模なイベントでした。
 よく「産学連携」という言葉が使われますが、今回のイベントは南海・浪速区・阪南大学・ウラなんばという、「産官学街」の四者連携。加えて、ここ数年来の台湾でのゼミ現地調査などから、松村ゼミは街の賑わい創出のため、台湾のような「夜市」や「屋台街」が、大阪の観光振興でも不可欠だと認識していて、「星空スタンド」のコンセプトはまさにそれに沿ったものでした。志が高く響きも素敵な産官学街の四者連携に加わっていただけないか、という南海電鉄からのお誘いを受けて、ゼミ生らとも議論を重ねて「やろう」と決めました。
 「やろう」と決めたらいつも本気…。ゼミ生個々人の能力や才能はバラバラですが、ひとつのチームとして一丸となり、現場で試行錯誤するなか個々の基礎力を高めて乗り切り、私たち自身も現場も共に成長する…、それが私の目指す現場共育です。今回のイベントは、とてもやりがいのある現場共育の「現場」となりました。

2ヶ所でのWelcome Informationの運営

 さて、ゼミに依頼された協働の役割は、このイベントに来られた方々に、正確なイベント情報を提供し案内することでした。日本人の来訪者はもちろん、外国人旅行者の方々が来られてもぜひ対応して欲しい…、とのこと。具体的には、なんばパークス2階の「GARDEN MARCHE」の入口、なんばカーニバルモールの「星空スタンド」の入口に開設された2ヶ所のWelcome Informationを運営しました。ただ座っているだけでなく、余裕があれば、ブースの外へ出て、声かけや呼び込みもしました。
 イベント期間は5日間、決して全く同じ内容ではなく、星空スタンドの出店が入れ替わったり、よしもと芸人のライブイベントがあったりと、微妙に変わります。雨天による企画の変更もありました。このようなイベントで、学生スタッフが毎日入れ替わるようなことになると、せっかく現場で蓄積した運営ノウハウが継承されません。2・3・4回生の全員参加は当然として、大切なのはスタッフのシフトをどのように組み、運営ノウハウをどのように継承して乗り切るかでした。
 こんな時、ゼミには心強い学生が何名もいます。4回生の平山あかねは、国際観光学部の学生委員長を務め、阪南大学のオープンキャンパスでも学生スタッフを仕切った経験者。4回生ゼミ長の栃原智美も、4回生の中井美菜子も、3回生の竹中さおりも、2回生の三宅亜紗未も、オープンキャンパスほかで活躍するなど、イベント支援の経験が豊富。スタッフのシフト組みは、彼女らに「これでうまく回るやろうか」と相談しながら決めました。
 5日間の参加学生スタッフは以下の通りです。学生は毎日12名から14名が参加、実人数にして学生35名(OB1名を含む)が、私も含めて5日間のべ人数で70名の応援となりました。特に最後の土日は14時から22時までの長時間、さすがに疲れましたが、チーム一丸となってこういう現場を乗り切ると、それが自信となって、次から挑戦することをビビらなくなります。

  26日(水):竹中さおり(責任者、3回生)、宗政巨地(補佐)・南亮輔(補佐)・川内麻央(以上、4回生)、高岸佳梨・小幡晶子・左近未来・西山瑛理・福田葵(以上、3回生)、三宅亜紗未・大嶋千波(以上、2回生)、濱中勝司(OB)の計12名。
 27日(木):栃原智美(責任者、4回生)、竹中さおり(補佐、3回生)、宗政巨地(補佐、4回生)・川内麻央・平山あかね・井上航太(以上、4回生)、福田葵・大久保愛仁(以上、3回生)、徳田成美・村野実・阪上千里・大西美咲(以上、2回生)の計12名。
 28日(金):栃原智美(責任者、4回生)、竹中さおり(補佐、3回生)、三宅亜紗未(補佐、2回生)、中井美菜子・川瀬将之・平山あかね・ジーン(以上、4回生)、大久保愛仁・宇都宮沙希(以上、3回生)、阪上千里・三宅将生・妻藤稀保・川畑成美・廣瀬直人(以上、2回生)の計14名。
  29日(土):三宅亜紗未(責任者、2回生)、南亮輔(補佐)・ジーン・井上航太(以上、4回生)、竹中さおり(補佐)・小山舞・浜野文菜・西山瑛理・宇都宮沙希・辻勇之介(以上、3回生)、辻彩佳・大嶋千波・妻藤稀保(以上、2回生)の計13名
 30日(日):三宅亜紗未(責任者、2回生)、平山あかね(補佐)・南亮輔(補佐)・張純倩(以上、4回生)、小山舞・浜野文菜・小幡晶子・西山瑛理・辻勇之介・谷村恵美(以上、3回生)、辻彩佳・徳田成美・西崎拓真(以上、2回生)、濱中勝司(OB)の計14名

 ゼミ幹部と議論を重ねたスタッフシフトですが、3・4回生幹部を中心とした活躍で現場を乗り切りながら、2・3回生を育てて戦力にしていく、実に絶妙のものでした。イベント期間を通じて大活躍してくれたのは、3回生ゼミ長の竹中さおりと2回生の三宅亜紗未で、二人の成長は著しいものがありました。大事な局面でしっかりと動いてくれたのは、やはり4回生たちでした。2回生にとっては事実上のデビュー戦だったのですが、全員が参加して、予想をうわまわる活躍をしてくれました。
 28日(金)の夜、今年3月に卒業した松川和矢君(11代目ゼミ長)が、同期の山下喜央君と山中彩帆里さんと3名で、星空スタンドへ立ち寄ってくれました。松ゼミWalkerを卒業後もチェックしていて、このイベントを知ったそうです。「後輩たちは、この半年でずいぶんとパワーアップしましたね」と松川君は感想を述べていました。
 現場へ出て一緒に活動していると、個々の学生の特性や才能や課題がよくわかり、伸ばすべきところも、改めるべきところも把握できます。大教室で講義をする側と受ける側に分かれていては、絶対にわからないことばかりです。台湾の国立高雄餐旅大学からの交換留学生たちとこのイベントで合流できたのも、次世代の育成につながる好材料となりました。

やはり韓国人・中国人が多い…

 Welcome Informationでの問い合わせを見ていると、当然、日本人がイベント内容について尋ねて来られることが多かったのですが、ホテルや店舗の場所を問い合わせる韓国人・中国人も目立ちました。普段運営している新今宮TICでは、韓国人や中国人からの問い合わせはそう目立ちません。新今宮界隈では、韓国人や中国人の滞在者は日本をよく知るリピーターが多く、新今宮TICに問い合わせに来るのは、むしろ、初訪日の欧米や東南アジアからの来訪者が目立ちます。
 新今宮界隈は比較的安価な宿泊拠点であるのに対して、大阪なんば界隈は、大阪を代表する繁華街でありホテルも多く、関西国際空港直結の買い物拠点でもあります。今回のイベントでWelcome Informationを運営して、新今宮界隈の地域的な特性、新今宮TICの貴重な立ち位置を再認識しました。
 さて、新今宮TICで経験を積んできた学生スタッフたちは、外国人が問合せに来られても、決してビビることなく、尋ねる方も答える方も、あらゆるコミュニケーション能力を駆使して意思疎通を図っていました。具体的な店舗やホテルなど、場所に関する問い合わせが多かったので、新今宮TICの運営よりもずっと楽だった…との印象を持った学生もいたようです。
 今回のイベントでは、なんばと新今宮の宿泊施設で多言語チラシを配布していただきました。チラシを見て来られたのかどうかはわかりませんが、さすがに「なんば」ということもあり、外国人旅行者の方々も多数イベントに来訪され楽しまれていました。当初、新今宮界隈のホテルと連携して、星空スタンドへのツアーを出そう、とゼミでは相談していたのですが、さすがに、そこまでの余裕はありませんでした。
忍者になってイベントを楽しもう!

 イベント期間の半ばを過ぎ、Welcome Informationの運営も安定して余裕ができて来ると、スタッフTシャツを隠すよう何か上着を着て、休憩を兼ねて交代でイベントも楽しみました。ただし、単に楽しむのではなく、何かイベント会場で問題が発生すれば、Welcome Informationへ連絡して上着を脱ぎ、スタッフに変身して現場を助ける「忍者のように楽しんで…」と私は指示しました。
 楽しみながら見守り、見守りながら楽しむ…、そんな存在がいることで、イベントの消費者目線から課題が発見できます。これはボランティアで関わる学生スタッフしかできない立ち位置で、私はとても重要な目線だと思っています。
 この立ち位置を最も楽しんだのが、2回生の三宅亜紗未さんと私だったかもしれません。三宅さんは大のよしもとファンだそうで、土日限定開催の「よしもと芸人がやってくる!」の公演を、ぜひ見に行きたいと強く希望していました。
 私たちが懸念していたのは、人気芸人が集う公演会場に、お客さんが殺到してパニックになるのは絶対に避けたい、逆に、あまりにも集まりが悪いのも勿体ない…。公演会場の状況を把握しながら、イベントへの呼び込みを調整したかったので、三宅さんと私が会場へ向かいました。観客と同じ目線で会場を盛り上げながら状況を観察し、もし何か課題があればすぐに連絡する…、ということになっていました。

 結果、何の問題も発生せず大笑いして終わりました…。しかしその状況を観客目線で観察していることが重要なのです。公演終了後、イベントMCから、よしもと主催の別のイベントをリツイートすると、出演していた芸人さんたちと記念撮影できるよ…との呼びかけがありましたが、反応はイマイチ…。
 「私が行ってもいいですか」と三宅さん、一番にリツイートして最初の記念撮影へ。その後は長蛇の列となりました。三宅さんは「銀シャリ」や「かまいたち」との記念撮影に本気で大はしゃぎ、最高の「くノ一」でした。
 星空スタンドでも日替わりでバンドが生演奏するスペースがありました。大の音楽好きの私は、Welcome Informationで、聴こえてくる音から、「玉石混交やな」と感じていました。そのなかで、「あかん、パニックになるかも」と何名かの学生スタッフを連れて、忍者として潜伏したケースが二つありました。
ひとつは、27日夜出演の8人編成のBLITZ AND SQUASH BRASS BAND、もうひとつは29日夜と30日夕方に出演したHeartful★Funksでした。

 前者がWelcome Information前で演奏し始めると、そのデカい音量とグルーブ感は半端ではなく、私は「うわー、むっちゃニューオリンズやん、カッコええなあ」と聞き惚れました。ブラスバンドはマイク無しでも大迫力で練り歩けるので、「あかん、もしかしたら人が集まり過ぎてパニックになるかも」と、学生スタッフに上着を着てもらい、一緒に後を追いました。
 幸い、ほどよいパニックで観客はノリノリ、私も仕事を忘れて忍者として楽しみました。西成ジャズとの縁から超絶技巧の管楽器奏者は知っていますが、ブラスバンドの強烈な音量とアンサンブルは全くの別物。星空スタンドには最高の演奏者で、まるでニューオリンズの繁華街で飲んでいるような錯覚に陥りました。
 後者のHeartful★Funksはバリバリのファンクバンドで、漏れ聴こえてきたリハーサルの演奏から、「もしかしたら…この音と声は…」と見に行くと、やっぱり…でした。

 これまた西成ジャズとの縁から、私はボーカルのナイルパーチ富樫さんと知り合い、Heartful★Funksの存在も知り、ファンになりました。もともと、私は黒人音楽が大好きで、ブルース、ファンク、ジャズが大好きで、大学での講義でも、黒人音楽の歴史を語っています。黒人音楽のなかでもグルーブ感が満載なのは、間違いなくファンク。私は踊るのは苦手ですが、ファンクのグルーブ感は、人間の根源を揺さぶるものだと思います。
 玉石混交のなかでHeartful★Funksが出す音は、間違いなく最高の「玉」。私の脳裏には、このチャンスに、ぜひゼミ生らにも彼らの音を聴かせてあげたい、という思いが浮かびました。そこで、29日も30日も、Heartful★Funksの出演時間帯は非常事態を宣言。Welcome Informationに最低限のスタッフのみを残して、その他は全員、ライブスペースに集結。忍者として、ノリノリで音を楽しみ、演奏終了後、みんなで記念撮影させていただきました。
人と人とがつながり広がる
 この5日間、私は、別件の仕事で途中抜けたりすることもありましたが、毎日、イベント会場へ通い、学生スタッフとともに過ごしました。その間、実に色々な人たちが名刺交換に尋ねて来てくださり、知り合い、夢を語り合いました。ウラなんばのお店の人、浪速区職員、イベント会社関係者、南海電鉄社員、まちづくりの仕掛け人などなど。なかには、いつかどこかで協働することもあるだろうな、という人もいました。
 ゼミの将来を担う竹中さんや三宅さんらには、こうした人との出会いが将来を切り開き、観光まちづくりやそれにつながるイベントにおいて、産官学街の「学」として関わる意義を丁寧に説明しました。5日間を通じて、色々な人たちから「ありがとう」と感謝され、時にはイベントそのものも「楽しみ」、夢中で過ごして過ぎてしまえば、「やり遂げた」という実績と自信が残った、参加した学生スタッフがそう感じてくれていたら幸いです。あとは、やってみたからこそ分かったこと、それをしっかりと反省して、次につなげることが大切です。星空スタンドとGARDEN MARCHEの発想は、今の大阪にぜひとも必要な存在…、また必ず次があるはず…。