【松ゼミWalker vol.175】新今宮TIC便り(3回生 竹中さおり)

OG・OBの新今宮TIC来訪

 2015年4月に入ってから,新今宮TICは通常通り,毎週土日の運営を続けています。日々の運営が終わったら,ゼミのラインでその日のうちに,運営報告が回ります。その運営報告と記録ノートを参照しながら,久しぶりに,新今宮TIC便りをお送りすることになりました。
 4月11日(土)はゼミ卒業生の来訪者が多い1日でした。11時前,10代目(2014年3月卒)の大宅和佳さんと谷河里香さんが,「OGです。先生はいてはりますか。」と立ち寄られました。特に来訪の目的はなく,むかしよく通った「あなぐま亭」で昼食を食べよう,と新今宮TICに集まられたそうです。この日は松村先生も来られる予定で,12時前に合流されました。
 ランチブレイクは先輩方や先生と一緒に全員で「あなぐま亭」へ。その帰り,大宅・谷河の両先輩が西成アート回廊プロジェクトで描いた壁画をぜひ見たい,とおっしゃいました。そこで先生のご案内で,萩之茶屋地区を軽く30分ほどフィールドワークしつつ,壁画も鑑賞して新今宮TICへと帰りました。
 この日は14時過ぎに,11代目(2015年3月卒)の松川和矢さん・山下喜央さん・山中彩帆里さんも,大阪城でのお花見の待ち合わせということで,新今宮TICへ来られました。

新今宮TICの大掃除と桂ちょうば先輩の来訪

 4月12日(日)は,久しぶりの晴天となりました。この日のスタッフは,4回生の張純倩と3回生の私・竹中さおりの二人,お昼前から先生も参加されました。新今宮TICの利用者は,午前中に6組ほど集中して来られましたが,お昼過ぎからは人通りも落ち着き,暇になりました。すると,先生が「天気もええし,昼からは利用者も少ないし,シャッターを洗って大掃除しようか。」とおっしゃいました。
 掃除道具は西成アート回廊で使用したタオルや刷毛を利用,洗剤だけを購入し,お隣のホテル中央から水道のホースを長くのばし,13時前からシャッターを洗い始めました。先生によると,「創設以来,シャッターは洗った記憶がない…」とのこと。洗剤をかけて刷毛でこすり,タオルでふき,高い水圧で水をかけると,どす黒かったシャッターは驚くほど白く蘇りました。新今宮TICのシャッターには,近い将来,西成アート回廊プロジェクトの一環として,アートを描くことが決まっていて,ゼミで色々と図案についても話し合っています。今からとても楽しみにしています。
 みんなでシャッターを洗っていると,キャリーバックを引いた若い男性が,「松村先生,おはようございます。お久しぶりです。」と声をかけて来られました。この方は阪南大学国際観光学部OBで,落語家の桂ちょうば先輩でした。この日の午後,動物園前の「動楽亭」に出演されるとのことで,たまたま通りかかられたそうです。
 「すいませんけど,これ,ここで宣伝していただけます」とちょうば先輩は,先生に「桂ちょうば独演会」のチラシを手渡されました。2015年6月19日(金)午後6時半開演,場所は天満天神繁昌亭。公演のタイトルは「ちょうば 京都三題」となっていて,京都出身のちょうば先輩が,「京の茶漬け」「はてなの茶碗」「三十石」という京都を舞台とした上方落語をされます。先生はすぐに手帳で予定を確認され,「空いてるわ,必ず行きます」とおっしゃっていました。

新しい着地型観光「Eat Osaka」と出会う

 洗い終わったシャッターを乾かせている間,松村先生のご提案で,新世界の通天閣近くの「甘味処 三好」へ,かき氷を食べに行くことになりました。「三好」へ向かう途中,「新世界だるまの発祥地のお店は知ってるか」とか,「大衆演劇の浪速クラブの場所はわかるか」とか,先生は色々と質問をされます。私たちが「知りません」や「わかりません」と答えると,必ずそこへ寄って説明しながらの移動。まさにフィールドワークでした。
 通天閣近くでビヨンさんが運営する「Tower Knives Osaka」も,この日の新世界フィールドワークで訪問しました。張先輩は何度も行ったことがあり,試し切りもされたそうですが,私・竹中は初めて。カナダ生まれのデンマーク人というビヨンさんのお店には,数名の外国人が来られていて,ビヨンさんが英語で対応されていました。
 ビヨンさんに「例の和食の実演の話はどうなってるの」と先生が尋ねられると,「ちょうどいい,今,いてる」とTower Knives Osakaすぐ裏の民家へ案内してくださいました。
 そこは「Eat Osaka」というところで,ダガス・アリサさんという美しい女性から,色々とご説明していただきました。ここでは,外国人旅行者を対象として,日本料理の作り方を体験してもらい,できた日本料理を一緒に食べて楽しむ,という体験型のプログラムを提供されています。食事の際は色々な日本酒や焼酎も試飲してもらうそうです。
 プログラムは11時からと18時からの1日2回で,1回あたり2,3時間くらい。使用言語は英語,日本料理は家庭料理か大阪のストリートフードのどちらか,集合場所は「とてもわかりやすいから」,通天閣の真下にしているとのこと。使用する包丁はすべて,ビヨンさんのTower Knives Osakaから提供されています。
 この内容で体験料金は一人当たり6,500円,1回あたりの定員は6名くらいに限定されているそうです。私は「少し高いな…」と感じたのですが,松村先生は「50ドルから60ドルくらいやね,作って,食べて,飲んでなら,絶妙の値段や」と評価されていました。

 ビヨンさんは,「体験プログラムが終わってから,私のお店の見学に来て,包丁を買ってくれる人もいます。私のお店からEat Osakaへ行く人もいる。お互い様ね。」とおっしゃっていました。
 アリサさんのお話では,土日など休日よりも,平日に来るお客さんが多く,ほぼすべて「トリップアドバイザー」や独自のウェブサイト(http://www.eatosaka.com/)を見て来られるそうです。2014年秋のオープン以来,半年近く経ち,最近は毎日お客さんが来るようになり忙しい,とおっしゃっていました。
 何か困ったことはありませんか,との問いには,「サイトで予約していたのにお客が来ない」,いわゆる無断のドタキャンのお客さんもかなりいて困る,とのこと。でも,予約しないでフラッと飛び入りされる方もいるとのこと。お友達どうしでの参加は多いが,いわゆる団体やパッケージのお客さんは受け入れておらず,大手の旅行代理店を経由するような受け入れもないそうです。ダガスさんからEat Osakaのご説明を伺い,先生は「これこそ本当の着地型観光やね。通天閣の下に集合というのが面白い。このやり方が理想で,これができるのは,大阪やったら道頓堀と通天閣くらい。私たちの新今宮TICでも宣伝するし応援させてもらいます。新今宮界隈のホテルともつなぐよ。」と大絶賛されていました。

不幸な案内看板

 Eat Osakaから新今宮TICへ帰る途中,ジャンジャン横丁を抜けて,地下鉄御堂筋駅1番出口へ向かうあたりに,「てんのうじどうぶつえんOSAKA ZOO」という新しい案内看板が出来ていました。みんなでこの案内看板をしばらく観察。先生は,「典型的な縦割りのお役所仕事や。利用者目線がないと,こんなんができるねん。」と批判されていました。
 案内看板の地図は日本語・英語・韓国語・中国語の4ヶ国語表記でこれは便利。先生が指摘された問題点は,地図の枠外にある凡例や地図そのものの掲載内容。医療施設や郵便局の凡例があり,大阪市立の施設はとても詳しいのですが,民間運営のホテル・レストラン・施設などの情報は凡例もなく,ほとんど掲載すらされていません。
 いったい誰がこの案内看板を見るのかと考えると,ほぼ他所から来た人たちなのは間違いなく,その来訪目的は観光や娯楽や飲食が中心です。その目的に沿ってこの案内を見て探した人たちは,さぞやがっかりするに違いありません。つい最近できた案内なのに,阪堺線「新今宮駅前」は昔のままの「南霞町」,太子交番の位置も昔のまま…地域情報が古い…。地図の掲載範囲が広すぎる…。先生は色々な問題点を次々に指摘されました。先生によると,この案内看板のところには,かつてたこ焼きの屋台があったそうで,「わざわざ撤去して整備して,できたのがこれやったら,みんなが不幸になっただけや。」とおっしゃっていました。

松村先生よりひと言

 ダガスさんのようなお仕事が近い将来の日本を形作り,新しくできた案内看板のようなお仕事が日本の将来を潰すような気がします。桂ちょうばさんの独演会,大入りになることを祈念しています。プロだから当然かもしれませんが,ちょうばさんは落語が上手いしとても研究熱心。落語好きの私から見ても,同年代の落語家さんのなかでは,群を抜いて上手い。間違いなく将来の上方落語を支える逸材です。阪南大学の卒業生の方々も,ぜひ,独演会へお越しいただき,「ちょうばの実力」をお確かください。