2015.4.20

【松ゼミWalker vol.174】 新今宮TICの近隣における新しい動きや変化

【松ゼミWalker vol.174】新今宮TIC便り 新今宮TICの近隣における新しい動きや変化(3回生 浜野文菜)

新今宮TICの近くをフィールドワーク

 2015年4月7日(火)午後は,新今宮に滞在する外国人旅行者も誘って,松村ゼミ恒例のお花見へ出かける予定でした。しかしながら,4月に入ってから雨の日が続き,気温も低く風も強く,とてもお花見できる状態ではなかったので,外国人とのお花見ツアーは無理せず早めに中止が決まりました。
 でも,この日のためわざわざ予定を空けていたゼミ生も多かったので,松村先生からの提案で,お花見のかわりに,新今宮TICの近隣をフィールドワークすることになりました。今にも雨が降り出しそうな天気のなか参加したのは,新4回生が栃原智美・平山あかね・中井美菜子・南亮輔・宗政巨地・井上航太・川内麻央・張純倩・ジュディの9名,新3回生が小幡晶子・小山舞・高岸佳梨・竹中さおり・福田葵・浜野文菜の6名,合計15名でした。
 新3回生はみんな,新今宮TICでのスタッフ経験が浅く,地域のこともまだあまりよくわかっていません。外国人旅行者に役立つ情報を提供するためには,新今宮TICのスタッフ自身が,色々な最新の情報を知っている必要があります。何よりも大切なのが,地域のどこにどのような資源があるのか,どのような新しい動きや変化があるのか,それを把握していることです。そのためには日々のフィールドワークが欠かせません。この日は,松村先生のご案内で,あいりん地域のなかやその周辺を歩き回りました。

JR新今宮駅近くの新しい動き

 新今宮TIC近くの大きな変化は,JR新今宮駅から通天閣へ向かう環状線の内側,旧フェスティバルゲート跡地の2階に,ドン・キホーテができたことです。売り場面積のとても大きなドン・キホーテで,外国人旅行者を意識した免税品やお土産物の品揃えも豊富。このドン・キホーテは,新今宮界隈に滞在する外国人旅行者にとって,間違いなく魅力的な存在になります。左写真は別の日に撮影しました。
 松村先生は,フェスティバルゲート跡地がマルハンに売却され,パチンコ店が建設されるまでの様々な経緯,ドン・キホーテの出店が決まるまでの経緯など,詳しくご説明してくださいました。
 JR新今宮駅の東口の周辺では,もうひとつ新たな動きがありました。もともと堺筋の太子交差点の東北にあった「太子交番」が閉鎖され,太子交差点西南の「めしや 宮本むなし」の隣に新しい太子交番ができました。松村先生によると,かつての太子交番があった建物は,大阪市の所有物で近く競売にかかる予定で,誰が買って何をするのか,地域の人々から注目されているとのことでした。また,新しい太子交番のなかには,松村ゼミも制作協力した「新今宮地区案内図」が掲げられているそうです。

 あと,太子交差点の東南にある「餃子の王将」前に,衝撃的な自動販売機がありました。新今宮TIC近くの自動販売機で,50円缶コーヒーはよく見かけます。しかしここには,何と20円の缶コーヒーが売られていました。松村先生によると,この自動販売機には,たまに10円缶コーヒーも出るそうです。
 なぜこんなにも安いのか,その秘密は賞味期限にあります。20円缶コーヒーは,賞味期限まであと1週間とか2週間くらいの品物,10円缶コーヒーは,「賞味期限切れ」と表示されているそうです。どちらも人気商品でいつもだいたい「売り切れ」,特に賞味期限切れ10円缶コーヒーはほぼ即完売,もし買えたらとてもラッキーなのだそうです。
 そもそも賞味期限切れの食べ物を売っていいのか,私は疑問に思いました。松村先生は,「ちゃんと賞味期限切れって書いて,値段をさげて売ってんねんから,何の問題もない。物の売り買いは,お互いが納得して取り引きすれば成立する。最近は,賞味期限切れの食品を集めて社会貢献しようとする動きもある。」とおっしゃいます。少し抵抗はありますが,賞味期限切れだからという理由で廃棄されるのも,確かにもったいない話です。
 ゼミでは4回生の南亮輔さんが,一度,20円缶コーヒーを買って飲んだそうで,その感想は「別に何ともない。普通の缶コーヒーやった。」とのことでした。

地域のホテルを巡り学ぶ

 この日のフィールドワークでは,新今宮界隈の主要なホテルも,一軒一軒,その場所や特徴などを確認して回りました。松村ゼミの活動を支援してくれているホテル中央グループの6軒(中央・オアシス・セレーネ・来山北館・来山南館・みかど),アンケート調査やメディアの取材でよくお世話になる東洋・太洋・パークインなどはもちろん,いま流行りのシェアハウスやウィークリーマンションも含めて,外国人旅行者が宿泊する可能性のある施設のほぼ全てを回りました。
 最近,太子1丁目の国際ゲストハウスはほぼ連日満室状態が続き,ここに泊まれなかった外国人旅行者たちが,堺筋沿いのホテルダイヤモンドや,萩之茶屋地区のホテル福助やホテル和香などへ流れているそうです。
 2年くらい前から,大阪へ来る外国人旅行者の数が急激に増え,大阪市のホテルの収容能力が不足していることもあり,日本人旅行者と競合する週末の土曜日や連休になると,大阪市内のほとんどのホテルは,空き部屋が無い状態になるそうです。例えば,ホテル中央グループの2014年の年間客室稼働率は,高いところで90数%,低いところでも80%後半。これは驚異的な記録だそうです。ホテルセレーネの福本マネジャーに伺ったところ,今年3月末から4月に入ってからの客室稼働率は,「連日満室の100%です。予約の電話があっても断ってばかりですわ。」とおっしゃっていました。
 松村先生はもう10年以上も前から,「近い将来,大阪へ来る外国人旅行者が増え,大阪市内の宿泊施設の収容能力がパンクするから,早いうちに対策を練っておくべき」,と色々な会議で主張されてきたそうです。ゼミでも,阪南大学の「観光地理学」の講義のなかでも,確かにそうおっしゃっていました。この予想が2年くらい前から現実のものとなり,現在,早急な対策が必要になっています。
 ただ,松村先生によると,「大阪は気づくのが遅すぎた」ため,「これからも当分,慢性的なホテル不足が続く」とのこと。しかしピンチをチャンスに変える発想も重要で,「和歌山県とか奈良県とか,大阪に近い他府県の宿泊施設にとっては大チャンス。勇気を持って外国人対応へ踏み出し,積極的に受け入れたら絶対成功する。10年先を思い描いたら,大阪だけの発想やとあかん,オール関西くらいがちょうどええ。」ともおっしゃっていました。

まちづくりは人とのつながりが大切

 さて,私たちは単にホテルを回って歩くだけではなく,その途中の色々な場所で立ち止まり,松村先生から色々と地域の事情についても学びました。「大きな声で話されへんから,近くへ寄って来て」が松村先生の口グセ。本当に大きな声では話せない地域の事情も,たくさん学びました。
 まちなかや商店街などを歩いていると,色々な人たちが松村先生にご挨拶され,話しかけて来られます。松村先生の方から「毎度」や「おはようございます」,とご挨拶されることもたびたびありました。
 そのたびに,「今の人はこのあたりの町会長さん」とか,「このお店は安くて美味しい」とか,教えていただきました。「まちづくりで一番大事なのは人と人とのつながり」,「うちのゼミはもう10年近くこの地域で活動しているから,人とのつながりはばっちりや」とのこと。地域のキーパーソンは誰か,どんな人がどこでどんな活動をされているのか,そうしたことが分かっていてネットワークを築いていないと,何もできないそうです。

 この日は特に,西成アート回廊プロジェクトとも絡めて,地域のなかに点在するシャッター画やスプレーアートを鑑賞して回りました。あいりん地域内では,西成アート回廊プロジェクトが始まる以前から,何名かのアーティストたちが地域へ密着して,シャッター画などを描いていました。現在,松村ゼミでこうしたストリートアートの描かれている場所を地図にする話があり,そのための情報収集と場所の確認も行いました。
 当然,ゼミで支援した「ここから いまから」の壁画も,改めて鑑賞しました。地域での活動でも,この壁画のように,みんなで力を合わせて,何か形として残せることをすれば,「やったぞ」という実感が何度も味わえます。
 この日のフィールドワークは,16時過ぎにいったん解散。その後の予定のなかった3回生の小幡晶子・小山舞・高岸佳梨・福田葵・浜野文菜の5名が残り,松村先生と大衆演劇の「オーエス劇場」へ。片岡梅之助・大五郎「本家真芸座」の公演を鑑賞し,晩御飯を軽く食べてから21時過ぎに解散しました。