【松ゼミWalker vol.168】 地域のこどもたちと2回目のワークショップを開催(4回生 山下喜央)

2回目のワークショップは水彩絵具で

 2014年11月8日(土),西成区天下茶屋北にある「今池こどもの家」にて,13時過ぎから14時半頃まで,西成アート回廊プロジェクト実行委員会主催の壁画制作に向かって,地域のこどもたちと2回目のワークショップを行いました。
 松村ゼミからは,松村先生ほか,松川和矢(4回生),山下喜央(4回生),ジーン(3回生),竹中さおり(2回生),浜野文菜(2回生)ら6名が,12時過ぎに,会場となる「今池こどもの家」へ,模造紙や絵具や絵筆などを運び込みました。その後,グラフィティ・アーティスト3名と合流して,ワークショップの準備作業を進め,こどもたちが集まるのを待ちました。こどもたちの集合時間は13時でしたが,集まってくれたのは,こどもらとその保護者たちの20名くらいでした。
 学生スタッフとアーティストたちで事前に準備したのは,タタミ2畳弱くらいの大きさで,同じ形に切り取った模造紙3セットでした。こどもの家の板の間に,大きなブルーシートを敷いて,そこへ模造紙を並べました。本日の画材は12色の水彩絵具を10セット用意。絵筆は松村先生が100円ショップへ行って「ピーンときた」と衝動買いした色々な大きさの刷毛や,スポンジ筆や平筆を含む多様な品揃え。集まったこどもたちは早速,自分の好みの色や筆を物色して,「これは私が書くやつ」とキープするものも…。

 SHINGO★西成さんはまだ到着していなかったのですが,こどもたちは真新しい絵具と筆とキャンバスを前にして待ちきれない様子でした。そこで,松村先生から簡単にこの日のワークショップの趣旨説明があった後,13時過ぎから早速,こどもたちは描き始めました。
 描き始めるとこどもたちはもう夢中。刷毛で大きく塗りたくるこどももいれば,細めの絵筆で次々とカラフルな「うんち」を描き続けるこどもも…。
 アーティストらからは特に何の指示もなく,「とにかく好きなように,やりたい放題,やってもらいましょう。」とのことでした。
 そうこうするうちに,SHINGO★西成さんが到着,ラップに乗せてこどもらの作業を応援しながらの入場。こどもたちだけでなく保護者からも歓声があがり,こどもたちの表現したい,という気持ちもUPしました。そうすると,絵筆をおいて,手形やこぶしや指で模様をキャンパスに描き始めるものや,絵具をチューブから直接キャンパスへ飛ばし出すものも出始めました。わいわいがやがやと過ごした1時間弱の間に,三枚の模造紙はほぼすきまなく彩られ,終了。

 出来上がった作品からは,こどもたちのノビノビとした個性は感じられましたが,どう見ても統一感のない落書きにしか見えません。学生スタッフだけでなく松村先生も,「これがアートになるのか。」と不安げな表情でした。
 また,水彩絵具は混ぜると濃い色が勝つためか,描き始めた最初の彩りは鮮やかだったのですが,仕上げ近くになって塗り重ねると,色々な絵具が混ざって,結果として黒や茶色や緑の暗い色調が目立ってきました。
 私たち学生スタッフは当初の打ち合わせ通り,壁にコンパネ板を並べて,こどもたちが描いた3枚の作品を画びょうで固定しました。水彩絵具が乾く時間を待っての作業だったので,10分くらいの間が空いたのですが,その間,こどもたちのリクエストに応えて,SHINGO★西成さんがマイクもカラオケもなしのアカペラで,ラップのパフォーマンスをしてくださり,私たちも作業の合間に楽しみました。

アーティストらによる仕上げの線入れ

 作品の仕上げの作業としては,こどもたちが自由に描いたものに,アーティストらが「線を入れる」ということになっていました。この「線を入れる」という作業がなかなか経験的にイメージできず,松村先生らの頭を悩ませてきたそうです。
 用意されたのは,MOLOTOWの黒色のスプレー1本。このスプレーは西成アート回廊プロジェクトにご協賛いただいている「CalmaArt」(http://www.calmaart.jp/),というショップから松村先生へサンプルとしてプレゼントされたものでした。
 まず松村先生から,「このMOLOTOWのスプレーは落書きするためのものではなく,アートを描くためのものです。プロのアーティストがこれを使うと,みんなの描いた絵にとても素晴らしい魔法がかかります。」との前置きがあり,後は全てをアーティストらに委ねました。
 すると,アーティストのひとりが何のためらいもなく,スプレーで黒い線を引き始め,見る見るうちに統一感のない落書きのようなものを,「おばけ」のようなものへと変えて行きました。見ていて,雑然としたこどもの絵から,何か不思議な生命力を掘り出しているような気がしました。

 プロのアーティストがパフォーマンスを見せた後,「誰かこのスプレーで描きたい人はいませんか」と呼びかけると,ほぼ全てのこどもの手が挙がりました。そのうちの2名のこどもに代表で,実際にスプレーで描いてもらいました。
 最初の男の子はかなりビビリながら,スプレーのノズルを押し込みました。すると,勢いよく黒いスプレーが噴射して,描きかけのおばけの口のなかを黒く塗りつぶしていきました。次の女の子は,ややためらいながらも,シュー,シュー,シューと小さな黒い点を描きました。これがおばけの頬っぺたになりました。スプレーを押しているこどもらの表情は,とても活き活きとしていました。
 実は,私たち学生スタッフも,新今宮TIC内でコンパネに色々と線を引いてみたのですが,これが快感で爽快,ストレス解消に最適です。最後にアーティストがスプレーを受け取り,3枚の作品を素早く仕上げると,拍手が巻き起こりました。

 そして最後に,松村先生からのお知らせがありました。次回のワークショップは,西成区内の仏現寺公園へコンパネを持ち出し並べ,色々な色のスプレーを用意して,こどもたち全員にスプレーで,好きな絵を描いてもらう予定となっている,とのこと。このお知らせを聴いたこどもたちは,まさに興味津々の様子でした。仕上がった作品のうちの1枚は,こどもの家の壁に当分飾り,来訪するこどもたちへ,次回のワークショップへの参加をよびかける材料にすることになりました。
 ワークショップ終了後,私たち学生スタッフは新今宮TICと帰り,松村先生はSHINGO★西成さんやアーティストらとの打ち合わせに行かれました。この打ち合わせのなかで,「水彩絵具は混ざってしまうが,スプレーは乾いた壁に上塗りされていくので混ざらない。だから,もっと早く仕上がり,美しく仕上がります。」,とアーティストから伺ったそうです。それを次回のワークショップでこどもたちに実感してもらい,スプレーの使い方にも慣れてもらう予定になりました。その上でもう1回,最後のワークショップを行い,「線を入れる」モチーフを何に決めるのか,こどもたちと一緒に考えてゆくことになったそうです。実際に壁画を描く本番は,2015年1月17日(土)を第一候補,1月31日(土)を第二候補として調整しているそうです。