【松ゼミWalker vol.123】西成ライブエンターテイメントフェスティバル2013を終えて(教員 松村嘉久)

 西成は日常的にライブエンターテイメントで溢れている街…。
 大衆演劇,上方落語,それに西成ジャズ,いつも西成のどこかで,演者と観客とのアツいかけあいが繰り広げられている。そうしたライブエンターテイメントを無理することなく応援しよう,というのが西成ライブエンターテイメントフェスティバル,通称・西成LOVEフェスです。今年も西成ジャズを中心として,西成LOVEフェス2013を8月9日(金)から8月14日(水)の日程で開催しました。
 西成LOVEフェスの趣旨は,西成で日常的に行われているライブエンターテイメントのファンのすそ野を広げることにあります。私とゼミ生たちは,西成のライブエンターテイメントを実際に観て楽しんだ経験があり,心から楽しみファンになりました。大衆演劇も上方落語も西成ジャズも,それだけ人を楽しませ魅惑する力を持っています。
 問題はライブが行われている場所へ行くチャンスがない,ファンになるきっかけがないこと…。だから西成LOVEフェスは単純明快,「とにかく,この機会に友だちや知り合いを誘って,一緒に西成のライブエンターテイメントを楽しみに行こう!」,という一種のキャンペーンのようなものです。実際のライブを観れば,必ずファンになるはず…,そしてファンになって観に来れば,明日への元気がもらえるはず…という信念が私たちにはあります。

 さて,西成LOVEフェス2013のオープニングは,8月9日(金)にCafé Grainfieldの開店7周年記念も兼ね同所にて,阪井楊子・宮藤晃妃のツインボーカルGee-Babyを迎えて,西成ジャズで始まりました。この日はミニフリーマーケットも併設して物品販売も行うとのことで,松村ゼミ有志が物販の応援かたがた,ジャズを楽しみに駆けつけました。
 会場は20名を軽く超える大入り,Gee-Babyの絶妙なハーモニーに酔いしれ,何とも言えない高揚感の余韻を残し,ライブは終わりました。写真は出演ミュージシャンとゼミ生たち。会場では西成LOVEフェス2013の告知も行い,松村ゼミが作成したチラシも配布させていただきました。
8月10日(土)のライブもCafé Grainfieldにて,ボーカルはSOULキングのマイケル松本,マイケル松本ファンの松村ゼミOG・OBも何名か駆けつけてくれました。この日はダンスチーム「ちーむあふりょ」も加わり,1970年代を代表するディスコナンバーEarth Wind & FireのSeptemberが演奏されると会場総立ち,不惑を超えた私も惑わされ久しぶりに飛び跳ねました。

 8月11日(日)のライブは会場を山王交差点南東の「おでん成田屋」へ変え,女性ボーカルの松原衣里さんを迎えて行われました。ジャズライブの面白いところは,メンバーが違い客も違うと,不思議な化学反応が起こり,同じ曲が全く違う曲になるところ。この日のライブはピアノの生島裕文さんがノリノリで,松原さんの野性味溢れる歌声の魅力を存分に引き出しました。
 8月14日(水)は西成ジャズの発祥地,「立飲み難波屋」でのフィナーレ,ボーカルの宮藤晃妃さんとテナーサックスの里村稔さんのかけあいが絶妙でした。西成ジャズは投げ銭(チップ)で運営されているのですが,いつもチップを集めて回るスマートなお姉さん「めぐみさん」がおられます。この日のライブでは,サプライズでめぐみさんのHappy Birthdayをお祝いしました。めぐみさんの日頃からの地道なサポートが,今日の西成ジャズの発展を支えてきたことは,西成ジャズファンならみんなが知っています。心からおめでとうございます。
 私は西成LOVEフェス2013の期間中,西成ジャズのライブを全て聴き,オーエス劇場で大衆演劇を2回観ました。ゼミ生たちも,色々な人に声をかけ,それぞれが好きな演者のライブを楽しみました。

 最近私は,「都会に住まう」意義や意味をよく考えます。都会に住まう最高の幸せのひとつは,身近に質の高いエンターテイメントがあり,それを気軽に日常的に楽しめることではないでしょうか。演者と観客が繰り広げる一期一会の世界に,ライブ会場で観客として加わる醍醐味は,都会でないとなかなか味わえません。
 なかでも,なぜ,西成のライブエンターテイメントに魅せられたのか。その答えは,コミュニケーション論の本質とも関わります。西成のライブエンターテイメントには,舞台の上で演者間のコミュニケーションがあり,演者と観客とのコミュニケーションがあり,色々な要素の相互作用とネットワークのなかで,ライブが成立しています。相互作用やネットワークのどこかが異なれば,全く異なった結果になり,それらがバッチリとハマったときは,とてつもない感動のうねりを生み出します。
 能楽や宝塚歌劇団の舞台と比べると,大衆演劇の場合はその相互作用やネットワークの妙を最初から織り込み,観客もそれを大いに期待している点で異なります。西成ジャズはその極致です。このバンド編成であのボーカルがあの場所で演奏したならば…,などと想像するだけでワクワクして,観客として参加し目撃したくなります。パチンコや,映画など一方通行の娯楽では絶対に味わえない,都会ならではの魅力,それが西成のライブエンターテイメントにはあります。
 さて,2013年9月22日(日)・23日(月曜・祝日)の連休,難波屋にて,第1回西成ジャズオールスターズを開催します。普段から西成ジャズに出演しているミュージシャンが難波屋に集結し,入れ代わり立ち代わりアツい演奏を繰り広げます。松村ゼミは当然,会場整理ほかお手伝いに馳せ参じる予定です。