【新今宮TICの運営報告 vol.13】 2012年9月17日から9月30日までの新今宮TIC報告

2012年9月17日(月) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 清水翔平)
【スタッフ】高橋菜央(4),清水翔平(4),井上咲季(4),中川光華(1)
【利用者】2組2名。すべて日本人でした。
【来訪者】西口宗宏OIG委員長,山田裕也さん(松村ゼミOB)
敬老の日の今日は天気も良く,おでかけ日和な1日でした。TIC前の人通りは,ファミリーやグループが多かったのですが,新世界方面へ歩いて行く人たちばかりで,TIC前の立て看板は見るものの,立ち寄られたのは2組だけでした。

 最初の利用者は,この周辺地域の方のようで,動楽亭のチラシを見て,「ここはチケット売ってるん?」と尋ねられました。TICではチケット販売は行っていませんと応じると,足早に立ち去られました。2人目の利用者は,地図が欲しいとのことで,中国語版食べ歩きMAPを渡すと,「おっ! いいね! ありがとう!」とおっしゃりました。
 今日一番のニュースは,松村ゼミOBの山田さんが,TIC運営の様子を見に来られたことです。現在は京都に住まわれているのですが,近々大阪へ転勤されるらしく,用事があって大阪に来たついでに寄られたそうです。

 TICに来られるのは,卒業して以来の3年ぶりだそうで,TIC内に飾ってあるまち歩きの写真などを見て回り,「懐かしいなあ」とおっしゃっていました。私たちが1回生の時に4回生だった先輩で,私は初対面でしたが,いつもニコニコされていて,とても優しそうな方でした。井上さんは1回生の頃からTICの活動によく参加していたので,山田先輩のことを知っていました。ぜひまた,気軽にお越しください。

松村先生からのひと言

 山田裕也君は6代目のゼミ長,TIC創設時の3回生で,松村ゼミの懇親会にも良く来てくれる松岡慶祐君と同期です。
 山田君の卒業研究は,よく覚えています。「通天閣はランドマークとして機能しているのか?」というテーマで,新世界から西成にかけての地域を歩き回り,通天閣を目視できる範囲とできない範囲を,地図上に示した大力作でした。南海新今宮駅やJR新今宮駅の構内で,通天閣を目視できる範囲が意外なほど少なく,案内標示も充分でないため,出口を間違う観光客が多い事実を,フィールドワークから明らかにしました。
 山田君が卒業してから,彼の卒業研究の成果を持って,JR西日本へ伺い,JR新今宮駅構内の多言語案内標示を充実するよう,関係者と一緒に陳情に行きました。あれから,もう3年が経ったのですが,JR新今宮駅構内には,新世界100周年記念事業とタイアップして,ようやく多言語標示の立派な看板が設置されました。山田君は間違いなく,この看板設置の功労者のひとりです。

2012年9月18日(火) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 井上咲季)

【スタッフ】井上咲季(4),橋田翔子(2)
【利用者】4組8名。このうち3組6名が外国人で,オーストラリア2組,香港からの方々でした。
【来訪者】大阪商工会議所の友田裕之さん,西口宗宏OIG委員長の計2名。
今日は色々と事情があって,橋田さんと私の二人だけで運営することになりました。朝からの雨でTIC前の人通りは少なく,利用者の半数はオーストラリア人でした。

 昨日に続いて,「大衆演劇のチケットは売っていますか?」という問い合わせがありました。宣伝用の立て看板を見ると,どう見ても,チケット販売しているように見えるようです。いっそのこと,発想を変えて,宣伝するだけでなく,大衆演劇のチケットを販売できるようにすれば,いいのではないかと思います。
 「天王寺動物園に行きたい」という香港から来た子供連れの利用者がいましたが,毎週月曜日と祝日の翌日はお休みなので,パンフレットを渡しながら,もしかしたら今日は休園の可能性が高いので,その際は通天閣にでも登ってください,とアドバイスしました。
 オーストラリア人男性の利用者は,日本製カメラの愛用者で,その性能がどれほど優れているか,10分以上は語ってくださり,一緒に記念撮影しました。長期滞在されるそうなので,また利用しに来られると思います。
 大阪商工会議所の友田さんは,新世界・西成食べ歩きMAPをとりに来られました。大阪市福島区界隈の商店街の方々に,このMAPを紹介したいとのことでした。近々,松村ゼミでは福島区界隈でのまち歩きツアーの実施を検討することになっていて,来年早々には,外国人参加者を募り実現するかもしれません。西口OIG委員長は,「松村君,いてるか?」と来られて,「今,金沢で調査してはります。」と答えると,「ほな,また来るわ!」とすぐ帰られました。

松村先生からのひと言

 経験豊富で語学力の高い井上と橋田ならば,二人での運営でも全く心配はありません。ランチブレイクを上手く利用して,臨機応変に対応してください。TICは着地型の施設,たまたま通りがかり空いていれば利用する,というスタンスで利用者は来られます。わざわざ利用するために遠方から来られる方はいません。その点,何度でも強調しますが,無理や無茶をする必要は全くありません。

2012年9月19日(水) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 清水翔平)

【スタッフ】井上咲季(4),清水翔平(4),谷口真帆(1)
【利用者】1組1名。オーストラリアからの方でした。来訪者はいませんでした。
今日はTIC前を頻繁に外国人も通るのですが,TICに立ち寄ることなく通り過ぎ,ふと気が付けば,利用者が1名という寂しい1日でした。

 唯一の利用者はオーストラリア人女性で,神戸への行き方が知りたく,神戸のマップが欲しいとのことでした。神戸への行き方に関しては,JR利用の場合も,私鉄利用の場合も,ともに資料を用意しています。
 問題はマップです。TICには京都と奈良の観光マップはあるのですが,残念ながら,なぜか神戸のマップが見当たりませんでした。探したところ,写真のような姫路と姫路城のガイドマップを見つけたので,井上さんが,世界文化遺産の姫路城にも行かれたらかがですか,とそれを渡しておすすめしました。神戸のマップは神戸のTICで入手してください,とお願いしました。
 利用者のいない間,TIC備え付けの図書「地球の歩き方」などを読んだり,1回生の谷口さんと大学生活について雑談などして過ごしました。

松村先生からのひと言

 もう随分と前,近畿一円の観光地を学生らが回り,関西圏各地の観光案内所を訪ねて,新今宮TICとの連携を申し出て,マップなどの資料の提供を受けました。その際,神戸市にも行ってマップをいただいてきたので,その在庫がもう底をついたのだと思います。
 新今宮TICの最大の特徴は,外国人個人旅行者の宿泊拠点に立地しているので,日本各地のみならず近隣諸国の大都市も含めて,実に多様な観光地の情報提供を求められる点にあります。姫路のTICで求められる情報は,ほぼ全て姫路城と市街地の情報でしょうが,新今宮TICの場合は,極端な話,「富士山に登りたいのですが…。」という人が来ます。
 そんな観光ニーズに応えてノウハウを蓄積してきた珍しい存在が,私たちの新今宮TICです。その点,学生スタッフたちは,誇りを持っていいと思います。
 それはさておき,毎日運営の間にTIC内の資料を整理して,後期に入ったら,補給すべき資料,廃棄すべき資料などを検討しましょう。

2012年9月20日(木) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 内田裕規・1回生 谷口真帆)

【スタッフ】内田裕規(4),谷口真帆(1)
【利用者】6組14名。その全てが外国人で,オーストラリア,イギリス,スペイン,デンマーク,香港,フランスからの方々でした。
【来訪者】松村先生
 今日はスタッフ3名の予定だったのですが,1名から欠席の連絡があり,私と1回生の谷口さんの2人だけでの運営となりました。谷口さんは,この夏休みの毎日運営で,何回もスタッフ経験を積んでくれているので,何とか2人で乗り切れるだろうと判断して,スタッフ連絡網に「緊急Help!」情報は流しませんでした。

 安心できる英語リーダーが不在な日に限って,不思議と外国人利用者が多いような気がします。今日も利用者の全てが外国人でした。
 最初の利用者はオーストラリア人男性で,「大阪城のMAPはあるか? ATMはどこにあるのか?」という問い合わせでした。OSAKA CITY MAPを渡して説明しようとすると,「また来る」と言って立ち去られました。かなりしてから,このオーストラリア人が家族とまた来られ,「海遊館に行きたい,大阪城にも,アメリカ村にも行きたい。」とのことだったので,「OSAKA海遊きっぷ」をおすすめしました。ATMは自分で見つけられたそうです。
 このオーストラリア人グループは,先日来のリピーターの方々で,何度もTICを利用してくださっています。とても気の良い方々で,ヘタな英語の説明でも辛抱強く聞いて,言い方を間違ったら直してくださり,まるで英会話の先生のようでした。(以上,内田裕規)
 イギリス人とスペイン人のカップルも来られました。問い合わせは,大阪・岡山間を走る両備バスのチケットはどこで買えるのか,というものでした。岡山にいる友人に会いに行くので,土曜日に出発して金曜日に大阪へ帰る往復チケットを購入したいとのことでした。インターネットでチケットを予約してコンビニで支払いできるのですが,ウェブサイトが日本語のみでわからないらしく,困っておられました。
 内田さんによると,新今宮TICでは,チケットの手配をしてはいけないことになっているそうです。結局,ウェブサイトで座席にかなりの空きがあると確認できたので,難波のOCATにあるバスターミナルへ直接行くことをすすめました。
 15時過ぎ,松村先生がいらしたのですが,岡山まで往復するならば,高速バスよりも,JRや私鉄のお得チケットを使った方が便利で安いかもしれない,とのことでした。新今宮TICでチケットの手配をしないのは,金銭トラブルの原因になるかもしれないし,厳密に言うと,旅行代理店登録していないとチケットを手配できないとのことでした。本当に勉強になります。(以上,谷口真帆)

松村先生からのひと言

 大阪から日本各地への長距離バスに外国人旅行者が乗ろうとすると,いくつもの困難が立ちふさがります。まず,バス会社がたくさんあり,高速路線バスとツアーバスの違いがあり,発着するターミナルも大阪各地に散らばっていて,日本人でも分かりにくい状況です。これが外国人旅行者となると,ウェブサイト情報がそもそも日本語だけのバス会社が多く,英語ウェブサイトを持っていても,驚くほど幼稚なものばかりで,まともに利用できない状況です。
 難波のOCATにあるバスターミナルは「西日本最大級」だそうですが,日本語ウェブサイトでの情報も少なく,英語ウェブサイトに至っては,全く利用者のことを考えているとは思えません。
 海外の大都市へ行くと,たいていは大規模な長距離バスターミナルがあり,そこへ行けば,その国の各地や時には国境を跨いで隣国へ向かうような,色々な会社のバスが発着していて,とても便利なものです。日本の場合,特に大阪の場合は,ツアーバスや観光バスが発着する場も含めて,バスターミナルの整理統合が必要なのではないでしょうか。

2012年9月21日(金) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 井上咲季)

【スタッフ】井上咲季(4),谷河里香(3),谷口真帆(1)
【利用者】8組12名。このうち6組10名が外国人で,オーストラリア,コンゴ,タイ,デンマーク,東アジア系(聞き逃しました)の方々でした。来訪者はいませんでした。
 今日の利用者は午前中に集中し,とても忙しい時間帯がありました。オーストラリア人の方はリピーターで,ここ数日ほぼ毎日来てらっしゃって,また来るとおっしゃっていました。問い合わせ内容については行き方が最も多く,広島,関西国際空港,箕面公園,神戸などへの行き方を尋ねられました。

 写真はTIC内に飾ってあるタオル,1回生の谷口さんが不思議そうに見ていました。これは松村ゼミ伝説の7代目から,卒業時に先生や在校生に贈られたプレゼントで,おそらくもう最後に残った1枚だと説明しました。
 さて,今日の珍しい問い合わせは,イギリス在住のコンゴ人からのもので,英語かフランス語の通じる教会で,お祈りしたいとのことでした。TIC周辺の教会はホームレスを対象に,食事の提供と絡めて布教しているところが多く,少しこの方のニーズからは離れているので,おすすめしませんでした。インターネットで教会を探したのですが,言語対応についての説明がなく,まともにお答えできませんでした。
 とはいうものの,この方は2週間滞在される予定だそうで,お寿司やしゃぶしゃぶなど日本食について長くおしゃべりして,おそらく満足して帰られました。日本では言葉が通じないため困ることもあるそうですが,親切な人が多いとのことで,日本滞在を楽しんでいらっしゃるようでした。また来られるかもしれません。

松村先生からのひと言

 コンゴからの利用者は初めてでは…。教会や祈りの場については私も無知。地域の宗教事情に詳しい友人に問い合わせておきます。最近,新今宮界隈でマレーシアやインドネシアからのイスラム教徒の旅行者が増えて来ています。彼らはお祈りや戒律の多い食事をどうしているのか,近々しっかりと調査して対応策を考えなければならない課題です。
 この日はTICの運営終了後,スタッフ3名を誘って井上さんのエジプト報告を聴きがてら,すし寛へ行きました。今年初めての北海道産ブリが入荷していて,初ブリをいただきました。ハモの季節が終わり,初ブリを食べると,毎年おおよそTICの毎日運営が終わる頃…。行きつけの寿司屋で季節を感じる贅沢を味わっています。

2012年9月22日(土) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 大宅和佳)

【スタッフ】井上咲季(4),大宅和佳(3),山崎育美(4),新田麻紀(4)
【利用者】7組14名。全て外国人で,シンガポール,アメリカ,ドイツ,イギリス,フランス,オーストラリアからの方々でした。
【来訪者】松村先生,森山ゼミの菅野君と掛尾君(ともに1回生),濱中勝司さん(OB),ホテル中央グループ山田英範社長の計5名。
 今日から季節ががらりと変わり,夏から秋になったように感じました。もう暑さはなく,涼しく過ごせる1日となりました。11時頃,TICスタッフ経験のある森山ゼミ1回生の菅野君が,同じゼミの掛尾君を誘って,見学がてら手伝いに来てくれました。
 松村先生も朝から来られて,私たちと相談しながら,とある応募書類をみんなと相談しながら仕上げて,メールで提出されから昼前に帰宅されました。
 その際,松村先生から朗報が…。台湾の高雄餐旅大学からの交換留学生2名が,後期から松村ゼミに入ることに決まったそうです。2名の名前は呉佩瑾さんと林宜欣さんで,愛称は呉さんがペペちゃん,林さんがリンちゃんに決まりました。写真は河内天美での第1回目の歓迎会の模様です。近々TIC毎日運営の打ち上げパーティーを予定していて,正式な歓迎会はそこで行います。松村ゼミの正式な歓迎会は,ここ数年,すき焼きと決まっています。
 さて,本日のTICの利用状況ですが,ドイツ人1名とイギリス人2名の男性3名グループが,本日TICを二度利用してくれました。問い合わせ内容は,心斎橋にあるクラブの前売りチケットはどこで買えるのか,というものでした。このイベントには,クラブ世界で有名な石野卓球さんという方が来るとのことで,色々と問い合わせると,当日券はもうほぼ買えないという状況でした。私たちが知らない世界でも,色々な日本人がワールドワイドに活躍されているんだな,と知った瞬間でした。
 TICではスタッフ入りしている先輩からだけでなく,外国人利用者からも,色々な経験やためになる話が聞け,それがスタッフ入りする楽しみのひとつでもあります。

松村先生からのひと言

 いわゆるクラブシーン,私は全くわかりません。新今宮界隈に滞在する外国人旅行者は若者が多いので,「騒いで楽しみたい」という需要は高いと思います。今のところ,Why Not!? JAPANにいくつかのクラブが掲載されています。それ以外のところは個別に調べて,対応するしか方法が無いのが現状です。

2012年9月23日(日) 新今宮TIC報告 (レポーター:4回生 清水翔平)

【スタッフ】高橋菜央(4),清水翔平(4),山崎育美(4),松川和矢(2)
【利用者】5組7名。このうち1組1名が外国人で,オーストラリアからの方でした。
【来訪者】松村先生
 今日が2012年夏休み毎日運営の最後の日でした。スタッフのみなさん,お疲れ様でした。何とか最終日まで大きな問題もなく運営できました。
 今日唯一の外国人利用者のオーストラリア人女性は,瀬戸内海の直島への行き方を教えてください,との問い合わせでした。スタッフ全員,直島のことを全く知らなかったため,インターネットで情報検索し,直島までのアクセスを調べ,英語で説明しました。

 調べてみて初めて知ったのですが,直島は風光明媚な景色と同時に,現代アートの聖地のようなところでもあり,安藤忠雄先生が設計された美術館もありました。このオーストラリア人は,午前中に来られ,それからすぐに出発されました。
 日本人の利用が多かった1日でしたが,チケット販売についての問い合わせが,今日もありました。あと,泉佐野ほか南大阪でのだんじり祭りについての問い合わせもありました。9月末から10月にかけて,南大阪ではだんじり祭りのシーズンに入ります。基本的に土日開催のところが多いので,情報を収集しておきましょう。
 さて,今日で長い夏休みも終わり,明日から授業もゼミも始まります。気持ちを切り替えて,後期の活動に取り組みましょう。

松村先生からのひと言

 瀬戸内海の島々は,島国日本のイメージに合うためか,外国人旅行者が良く持っているガイドブックでも,かなりのページを割いて紹介されています。瀬戸内海の観光地理知識をぜひ深めましょう。
 南大阪から泉州にかけての秋のだんじり祭りも,観光資源化は進んでいませんが,関西圏の重要な地域資源です。ところが,観光プロモーションで推奨されるのは大規模なお祭りばかり…,でも,祇園祭や天神祭を見るため海外からわざわざ訪日する観光客なんているのだろうか。たまたま日本に来ている時に,お祭りがあれば見に行きたい…,そんな観光ニーズの方が圧倒的に高いのではないでしょうか。
 関西圏の祭り情報,それもとてもローカルなものも含めて網羅するようなウェブサイトというか,データベースのようなものを作って英語で公開すれば,日本のお祭りが好きで滞在し続けるような,海外からの若い旅行者が増えるのではないでしょうか。私自身,学生の頃,中国の雲南省から貴州省にかけての少数民族のお祭りにハマり,何年も通い続けた経験からそう思います。
 大学生個人の卒業論文レベルではなく,ゼミのレギュラー活動として継続的に取り組み,祭り情報を蓄積しつつ公開するようなものができれば,社会的意義も深く影響力を持つことでしょう。

2012年9月29日(土) 新今宮TIC報告 (レポーター:3回生 WU XIAOTING・2回生 花尻準基)

【スタッフ】大宅和佳(3),WU XIAOTING(3),川原美穂(4),花尻準基(2)
【利用者】10組19名。この全てが外国人で,アメリカ,南アフリカ,タイ,スペイン,ポーランド,中国,ロシア,イギリス,カナダ,コンゴからの方々でした。
【来訪者】松村先生,ホテル中央のマネージャーの計2名。
今日は台風が近づいていることもあり,曇りがちな1日でしたが,利用者は多く,それも全て外国人でした。英語の得意なスタッフがいない日でしたが,昼前に松村先生が来てくださったので,助けてもらいながら運営しました。

 最初の利用者は,アメリカ人1名と南アフリカ人2名の若い女性3名のグループでした。10時頃に来られて,大阪城とセガ梅田ジョイポリスへの行き方を尋ねられました。セガ梅田ジョイポリスの問い合わせは,おそらく初めてではないでしょうか。ジョイポリスはHEP FIVEの8階・9階にあります。
以前に来られたコンゴ人もまた再訪され,やはり「教会でお祈りしたい」とのことでした。色々な教会を訪ね歩いたけれども,閉まっているところばかりで,ずっとお祈りができなかったそうです。実は新今宮TICの隣に,キリスト教の教会があります。この教会は日本語で布教してから,ホームレスに食べ物を無料で配るところですが,その事情を説明して,それでもいいのならばぜひどうぞ,と伝えました。
 いつもトイレをお借りしているホテル中央セレーネ,今日はいつもより若い日本人女性がロビーに多いような気がしました。福本マネージャーに伺うと,29日・30日と長居スタジアムでKAN JANIのライブがあるそうで,日本各地からKAN JANIファンが新今宮界隈に集結しているそうです。このようなイベントに来るお客さんは,リピーターになってくれる確率が高いので,大歓迎なのだそうです。ただ野外ライブなので,台風が近づいているのが心配です。
 今日は月末の運営で,明日は台風が上陸しそうなので,大宅さんと花尻君が朝から,大衆演劇のポスターを貰いに行ってくれました。利用者も多く,やることも多く,充実した1日でした。(以上,WU XIAOTING)
 松村ゼミではこの8月から西成の地域文化,特に大衆演劇や寄席などのライブエンターテイメントの存在を知ってもらおうと,TIC前に大きな立て看板を出して宣伝しています。今日は月末なので,大衆演劇の10月公演のポスターをいただきに,大宅先輩と私とで,ホテル中央セレーネの貸し自転車を使わせていただき,10時頃から地域を駆け回りました。

 最初にTICから近い朝日劇場と浪速クラブに向かいました。10時半頃に着いたのですが,どちらの劇場も11時開場で,整理券を持つ大勢の人々が列を作って待たれていて,その行列を見てまず驚きました。邪魔にならないタイミングで,朝日劇場の方に「新今宮TICです。来月のポスターをいただきに参りました。」と話すと,私たちの活動を覚えていてくださり,とても快くポスターをいただきました。次に浪速クラブへ向かったのですが,行列がすごくて話しかけられる状態ではなかったので,また後に寄ることにして,西成区側の鈴成座へと向かいました。
 私たちは上のような,新今宮TIC前の立て看板で宣伝している風景の写真を持参していました。鈴成座の入り口でその写真を見せて,私たちの活動を説明すると,ポスターを並べて宣伝している様子は初めてご覧になったようで,大変驚き喜ばれて,ポスターと一緒にミネラルウォーターもいただき,頑張って宣伝してください,と声援もいただきました。
 梅南座にも行ったのですが,この日は千秋楽で満員御礼,お客さんの対応で大忙しの状態でした。そこで,「お昼過ぎにもう一度ポスターをいただきに伺います。」とだけ伝えて,いったんTICへ戻りました。15時前に梅南座を大宅先輩と二人で再訪して,写真を見せて説明すると,とても喜んでいただき,快くポスターを下さりました。私たちが帰ろうとすると,梅南座の方は「わざわざありがとう。時間はあるの。」と近くの喫茶店に誘い,ジュースとサンドイッチまでご馳走して下さりました。西成は人情味溢れる温かい街,ということを体感しました。
 喫茶店を後にした私たちは二手に分かれ,大宅先輩はオーエス劇場へ,私は浪速クラブへと向かいました。私が浪速クラブに着いた時,公演終了間際で劇場内からアンコールの声が聞こえていました。浪速クラブの方も私たちの活動を知っていてくださったので,劇場内の様子を気にしながらも,とても快くポスターをくださいました。

 オーエス劇場に向かった大宅先輩は,公演終了時のお見送り重なり,千秋楽ということもありお客さんが一杯で,とても近づいて「ポスターください!」と言える雰囲気でなかった,と帰って来られました。
TICの運営終了後の17時過ぎ,松村先生と川原先輩と私とで,もう一度,オーエス劇場へ行きました。すると,劇場前には荷物がいっぱい置かれていました。9月に公演された劇団の方々が,次の公演先へ移動され,10月に公演される劇団の荷物が今夜にも運び込まれるとのことでした。劇場の方と松村先生は顔見知りで,移動される劇団員さんにも松村先生は挨拶されていました。当然,ポスターもゲットして,5座のポスター全てが揃いました。
 
 私はTICスタッフの経験を重ねるにつれ,先輩方や松村先生が地元の方々と深くて親密な関係性を築いてらっしゃることを知るようになり,とても驚きました。あのような関係性を築くには,長い時間が必要だろうな,ということはわかります。先輩たちが努力を積み重ね,長い時間をかけてTICの運営を継続されてきたからこそ,あのような信頼関係が築けているんだなと感じました。私たちの代もその関係性の輪のなかに入り,一層深められるよう,頑張っていきたいと思います。(以上,花尻準基)

松村先生からのひと言

 オーエス劇場で9月公演されていた紅大介座長の紅劇団には,テレビ大阪の取材でお世話になりました。取材日は月1日しかない貴重な休演日,紅大介座長は他の劇団の応援に行かれていて不在,取材対応いただいたのは,26歳の若手,といっても芸歴10年の紅友也さんと女優陣の方々でした。西成区を盛り上げるためならば…,と快く取材を受けてくださいました。ありがとうございました。
 なお,9月30日(日)は台風接近による暴風雨警報発令のため,運営は行いませんでした。この日は1回生の菅野樹彦君が初めてのレポートを担当する予定でしたが,デビューは次の機会へ持ち越されました。

2012年TIC夏休み8・9月運営の総括(レポート:教員 松村嘉久)

 2012年夏休みの毎日運営は,8月4日から9月23日までの51日間,これに9月29日運営を加えると,この8・9月は52日間でした。さて,この期間中,毎日の運営報告を大学ウェブサイトで公開し続けました。それを読み続けてくださった方は,これ以上でもなくこれ以下でもない,創設以来4年目に入った,新今宮TICの日々の姿がお分かり頂けたかと思います。
 この夏の毎日運営で特に印象に残っているのは,やはりTICに取材や視察で来られる方が増えたことです。西成特区構想が注目されていることもあり,色々な方々がTICを来訪されましたが,SPAN! が取材に来てくれた日が特に印象に残っています。ちょっとしたお祭り騒ぎで,スタッフみんなで楽しみました。

 さて,ごく簡単に,この8・9月運営を総括しておきます。詳しくはまたゼミでデータベースを作成して,分析してもらいます。
 スタッフは延べ192名,2名体制というギリギリの日が3日間ありました。利用者総数は253件439名,そのうち180件327名が外国人でした。件数ベースで71.1%,人数ベースでも74.5%を外国人利用者が占めました。これほど外国人利用者の多いTICは,日本でも新今宮TICくらいではないでしょうか。今年は西成特区構想が注目されたこともあり,来訪者も136名と多かったとの印象です。視察に来られた人数が多くてTIC内に入りきれず,TIC前で説明だけして立ち去られたような場合は,来訪者にカウントしていないので,実態はもっと賑やかでした。
1日当たりの平均で見ると,スタッフ数が3.8名に対して,利用者数は8.6名なので,相変わらずとても効率の悪い運営であることは間違いありません。しかしながら,ボランティアベースで活動する私たちのスタンスとしては,たとえ1日1名の利用であっても,その方の旅の不便を解消するのを支援でき,私たちと対話したこと自体が,日本滞在の良い思い出となれれば,それでいいのです。利用者が1組1名という日が3日もありましたが,それはそれでいいのです。
 利用者の国籍別分析はできていませんが,東日本大震災前,円高前と比較すると,欧米系がかなり減り,アジア系,特にマレーシア・インドネシア・タイなどからの利用者が増えたとの実感があります。間違いなく,関空発着のLCCの影響です。それにしても,日本全体のインバウンド構造とは大きく異なり,欧米系の利用比率は,相変わらず高いのが新今宮TICの特徴と言えます。
ひと夏を過ごした感触として,東日本大震災前の地域での外国人受入れ状況を,この夏は大きく上回っていました。このまま大きな事件も事故もなく2012年が終われば,地域の外国人旅行者受入れ実績は,確実に2010年を超えると予想しています。
 毎年同じことを思うのですが,長い夏休みを頑張って駆け抜けてみると,楽しい思い出と充実感と着実な成果が残ります。「継続こそ力なり」という格言がありますが,これはやったことのある人だけが実感できるものです。
 ボランティアスタッフの関わり方も様々ですが,各自がそれぞれの役割分担のなかで努力した成果なので,2012年夏のTICの毎日運営は私が支えた,と胸を張って誇りに思ってください。みなさんの力は,確実に役立ち,地域の底上げにつながりました。
 毎日運営開始前にボランティア学生たちに言いましたが,特に今年は,西成特区構想の渦中にあり,これまで以上に意味も深く価値も高い年でした。学生ボランティアスタッフのみなさんに感謝します。後期の講義がもう始まりました。少し落ち着いたら,夏休み運営の打ち上げパーティーを行いましょう。