2010.9.14

松ゼミWalker vol.52 毎年恒例!! 夏のゼミ合宿フィールドワーク(レポーター:松村嘉久・勝元暁美)

今年の夏は広島フィールドワークに決定!!

大人になってからの広島再訪は大事

 毎年恒例となった松村ゼミの夏のフィールドワーク。今年の行き先はなかなか決まりませんでした。マレーシアのクアラルンプール,韓国の釜山などが候補に挙がりましたが,松村先生もゼミ生たちも何かと忙しく,2泊3日で広島と決定しました。
 なぜ広島なのか…?? 理由は色々あります。列記するならば…。原爆ドームと厳島神社という二つの世界遺産があり,日本有数の観光地である。新今宮TICで広島観光に関する問い合わせがたまにあるので,広島の観光事情を知り,できれば広島のTICとの連携を探りたい。広島訪問経験のないゼミ生も多く,修学旅行で訪問した者の記憶も薄らいでいる。そんななか,大人になってから広島を訪れ,原爆ドームや平和記念資料館を見学することは大事である。広島も大阪と同じく「水の都」を掲げ,水辺空間や水運を観光に上手く利用しているので,学ぶべきことが多いはずである。何よりも大阪から近いので,ゼミ生たちも参加しやすい!!
 そんな思いから2010年9月6日からの2泊3日で,松村先生ほかゼミ生14名(4年9名・3年2名・2年3名)が広島フィールドワークに行くことになりました。なお,このフィールドワークは,阪南大学学会「学生研究活動支援事業」の支援を受けて実施しました。

現地集合の初日は原爆ドームと市内散策

 松村ゼミのフィールドワークは,ここ数年,海外でも国内でも現地集合の現地解散が原則となっています。国際観光学を学ぶ学生だから,自分の旅程は自分で組むのは当たり前のことで,それ自体が学びとなります。ホテルをしっかりと比較して選び,目的を持って宿泊体験するのも大事な学びのひとつ。今回,初日はホテルサンルート広島,二日目はグランドプリンスホテル広島でした。
 今回の集合は9月6日15時に,ホテルサンルート広島のロビーでした。青春18切符を利用して在来線を乗り継いで来る者もいれば,夜行バスで早朝に広島へ着き岩国の錦帯橋を回ってから合流する者も…。就職活動ほかで遅れると事前連絡のあった2名を除いて,全員が15時までに無事到着しました。
 初日は移動が大変だったので,参加者全員がお疲れモード。休憩した後,夕方から松村先生の解説付きで,原爆ドームへ歩いて向かい,元安川沿いから市内繁華街を散策し,広島風お好み焼きを食べて19時過ぎには解散しました。
 広島市は毛利元就が築いた城下町なのですが,原爆でほぼ全てが破壊されたため,戦前の建物や面影は見当たりません。市内繁華街の散策から,ゼミ生たちも,絶望のどん底から戦後復興した広島の逞しさを感じたようでした。広島市民がなぜ熱狂的にカープを応援するのか。松村先生によると,それは戦後復興の象徴そのものだからだそうです。戦争のとてつもなくつらい記憶を刻む原爆ドームと,旧広島市民球場は,チンチン電車の走る道路を挟んで向かい合う。昔は,原爆ドームを眺めていると,カープを応援する熱狂的な声援が聞こえたとのこと。左の写真を撮影した場所は,絶望と希望の象徴のまさに境目でした。

平和記念資料館はじっくり見学,水辺空間もフィールドワーク

 翌7日は朝から平和記念資料館を見学しました。松村先生からの指示は,とにかくじっくりと資料を見て回ること,あとは外国人観光客の反応に注意することでした。さすがに2時間あれば充分見学できると思っていましたが,数名のゼミ生からもっとじっくり見学したいとの申し出があり,別行動に。
 数名のゼミ生を資料館に残し,松村先生とゼミ生本隊は京橋川沿いの水辺空間の利用を見に行きました。京橋川沿いには堤防から川へ降りる階段があちらこちらにあります。これはかつて船着き場として利用された「雁木(がんぎ)」と呼ばれる施設であり,「水の都ひろしま」の象徴でもあります。この京橋川沿いには,水辺空間を活かした洒落たオープンカフェが立地していて,堤防上の遊歩道も整備されています。
 元安川沿いにもとても洒落たオープンカフェがあり,ここは平和記念資料館から原爆ドームへの導線上なので,観光客からの人気を集めているそうです。そのカフェのすぐ横に平和公園と宮島をつなぐ世界遺産航路の乗り場があり,これも観光客の利用が多いとのこと(写真参照)。

広島市観光施策担当者からのレクチャーと意見交換会

 7日14時からは平和公園内レストハウスにて,広島市役所の観光施策担当からレクチャーをしていただきました。
 まずは広島市都市活性化局観光交流部の寺尾様から,広島市の観光の現状や施策などを概説していただきました。滞在型観光と広域観光の促進を図り,市民との交流を重視する姿勢が印象に残りました。続いて,同部梶川様から「水の都ひろしま」のこれまでの取り組みを説明していただきました。大阪も「水都大阪」を掲げていますが,実態として「水の都ひろしま」の方が進んでいると痛感しました。最後は広島観光コンベンションビューローの中島様から,広島市内の観光案内所の概略について説明していただきました。広島市の観光案内所は,諸般のしがらみにとらわれることなく,利用者のニーズに応じて,とてもきめ細やかな対応をされていると感心しました。
 その後,質疑応答・意見交換へと移りましたが,ゼミ生たちからの質問は,広島市内の観光案内所の運営の実態に集中しました。利用者統計はどのような形でとっているのか。スタッフの育成システムはどうなっているのか。などなど。意見交換のなかで,広島市の観光マップを新今宮TICにご提供いただき,相互に連携を深めることも快諾していただきました。
 有意義な会議は2時間を超えましたが,あっという間に過ぎました。今後は,新今宮に滞在する外国人にも,「広島はぜひ宿泊してじっくりと見て回るべきところ。とても親切な観光案内所があり,安い宿も手配してくれるから,とにかくそこに行って相談してください。」と勧めます。広島にはその価値があり,受入れ体制も整っている,と確信しました。

最終日は世界遺産の厳島神社へ

 フィールドワーク最終日の8日朝,グランドプリンスホテル広島の桟橋から高速船で「安芸の宮島」厳島神社の見学へ向かいました。台風の影響が心配されましたが,瀬戸内海は穏やかで,高速船の乗り心地は快適でした。
 広島観光の醍醐味のひとつは,色々な乗り物を体験できることでしょう。広島市内は昔懐かしい市電や最新モデルの市電が走り,広島市内から宮島へのアクセスには高速船もあれば,宮島口発の昔ながらの連絡船もある。広島へのアクセスは新幹線で,広島市内では水上タクシーも利用できます。
 宮島での松村先生の指示は,世界遺産の核心部分と緩衝地帯の違い,景観整備や多言語表示の現状などを意識して歩くことでした。原爆ドームでも,この厳島神社でも,数多くの外国人旅行者を見かけました。広島でのフィールドワークの成果は,新今宮TICの活動でも必ず活かせると思います。

広島フィールドワークを終えて(松村嘉久)

 広島には今から実に32年前,小学校の修学旅行で最初に訪れました。当時の記憶はほとんど残っていませんが,広島の宿で被爆体験者から壮絶な話を聞いたことは覚えています。それ以降,大人になって,出張などで広島を訪れるたび,必ず原爆ドームと平和公園へ行くようにしています。HIROSHIMAは日本人にとって特別な場所であり,外国人旅行者にも是非とも見てもらいたいと思う場所です。
 平和記念資料館の入場料は大人50円。今回のフィールドワークでも,数多くの外国人旅行者がこの資料館を訪れ,真剣に,無言で,時に顔をしかめながら,展示に見入る姿が観察できました。戦争で起こった悲惨な事実を正確に知ること,そこから平和への道筋が生まれます。
 フィールドワーク2日目の広島市役所の皆様からのレクチャーは本当に刺激的で,我々のTICも大阪も,学ぶべき点が多々ありました。ご協力いただいた広島の皆様,本当にありがとうございました。