2017.10.17

来村多加史ゼミ活動報告

来村多加史ゼミ活動報告
藤井寺市の地域文化遺産継承事業に参加

文化遺産を次世代へ伝える事業

 大阪府堺市に広がる百舌鳥古墳群と藤井寺市・羽曳野市にまたがる古市古墳群は、大阪府と3市が協力して世界文化遺産への登録推進事業を進めてきました。2017年7月31日には、ようやく国内推薦候補に選ばれ、2年後に開かれるユネスコ本会議での登録承認をめざしています。そのようななか、「古墳にコーフン協会」などの民間グループも結成され、現代に残された古代遺産に対する若い世代の関心も高まっています。国も地方創生の一環として文化財を地域振興に活用する道を開こうと、文化財保護法のあり方を検討しています。本学を含む松原市にも真の雄略天皇陵ではないかと言われる大塚山古墳がありますが、隣接する藤井寺市にはさらに多くの大型古墳が分布し、葛井寺、道明寺、道明寺天満宮などの歴史ある寺社が点在します。藤井寺市は文科省の助成を受け、2017年度の「地域文化遺産継承事業」として、市内の文化財を次の世代にしっかりと継承する施策を民間団体とともに展開しています。藤井寺市と阪南大学は2012年に連携協力協定を結び、その後、大坂の陣400年祭の道明寺合戦イベントなどを応援してきました。このたびはゼミの学生が文化遺産継承事業に参加し、この12月2日(土)に地元の子どもたちとのガイド合戦イベントを行ないます。若い世代の発想をもって、外国人に古墳や寺社の魅力を伝えようとする試みです。その準備として、学生たち8人が9月30日(土)に古市古墳群を訪れ、外国人を感動させる魅力を求めて探索しました。以下には学生の記事でその成果を綴ります。(来村多加史)

古墳の昔と今の姿を同時に見る  国際観光学部3回生 胡文啓

 12月に藤井寺市で行なわれるイベント「古市古墳群ガイド合戦 小学生vs大学生、審査員は外国人」の準備として9月30日の土曜日に近鉄南大阪線の土師ノ里駅に集合しました。見学は駅の近くにある鍋塚古墳から始め、仲津姫陵・澤田八幡神社・古室八幡神社・古室山古墳・赤面山古墳・大鳥塚古墳・応神天皇陵・助太山古墳・道明寺・道明寺天満宮などを巡りました。仲津姫陵は墳丘が300m近くもある大型の前方後円墳で、丘の上に築かれているにもかかわらず、深い壕が巡っていて、迫力満点です。墳丘には木が茂り、森のようになっていますので、本来の形がわかりづらくなっていますが、藤井寺市の世界遺産登録推進室が制作した「藤井寺古墳探検」というスマホアプリを見ると、前方後円墳の姿がよくわかります。目の前に横たわる古墳の迫力を感じる一方、バーチャルリアリティの技術で細部を観察すれば、古墳に対する興味も湧いてくるでしょう。蚊に悩まされ、蜂に脅かされ、陽ざしに汗を流しながらも、全員が最後まで探索できたのは、古墳や寺社に対する興味を持てたからかも知れません。日本や世界の若者が文化遺産に目を向け、保護に対する意識を強めることを願い、このたびの活動も頑張ります。

古墳の上で味わった清々しさ  国際観光学部3回生 羽室美穂

 近鉄土師ノ里駅の改札口を出ると、南北の道路を挟んで、すぐ近くにある鍋塚古墳は1辺50mばかりの方墳です。以前は墳丘に木が茂っていたようですが、今は伐採され、草の丘になっていますので、360度のパノラマで周囲を見渡せます。近くにはさほど高い建物もなく、眺望を楽しむことができるスポットです。東の遠方に玉手山丘陵が横たわり、丘の斜面に広がる住宅街が立体的に見え、印象がヨーロッパの街並みに重なりました。鍋塚古墳の南にある仲津姫陵はうっそうと木が茂り、黒々とした大きな森が家々の背後に迫ります。古墳の上に立つと、風通しがよく、清々しい気分になります。ここに葬られた人もそのような気分を味わっているのでしょうか。仲津姫陵の堤にもたれる澤田八幡神社は参道が北に伸びていますが、拝殿から見下ろすと、すぐ前を近鉄の線路が横切り、ときどきカンカーンという踏切の音が響きます。神社の参道を線路が横切り、電車が勢いよく通過してゆく光景に、不思議な感覚となりますが、鳥居と電車をいっしょに写せる面白い撮影スポットとして、ガイド合戦でも外国人に紹介したいところです。探索の途中から藤井寺市世界遺産登録推進室の山田幸弘室長が合流され、多くのことを教えていただきました。最も印象に残ったのは古墳の案内板の話です。ひとつを設置するのに60万円から70万円もかかるそうで、それでも他市のものと比べると、ずいぶん安いとのこと。文化遺産の大切さを人々に知らせるのも、結構大変なのだと、改めて感じた次第です。

たっぷりと集まったガイドの材料  国際観光学部3回生 岩田汐梨

 鍋塚古墳で驚いたのは被葬者との距離の近さでした。階段がついていますので、墳丘の上に登ることができますが、「君たちの足元に被葬者が寝てますよ」と来村先生から指摘され、思わず端へよけることに。千数百年も前の人がすぐ近くにいると思うと、不思議な気持ちになりますね。仲津姫陵は大型の前方後円墳で、馬蹄形をした周濠の外堤が道となっています。鍋塚古墳から向かうと、前方後円墳の後円部から前方部へ進むことになり、円くカーブした道がそのうち直線に変わり、遠方への見通しがよくなります。遠くまで見通せると、その長さに驚かされます。まさしく歩いて前方後円墳の形と大きさを実感できるのです。これはガイド合戦に取り入れたい感動です。古室山古墳や大鳥塚古墳は中型の前方後円墳で、この2基も墳丘に登ることができます。ところどころに赤い埴輪のかけらが落ちているということで、目を凝らしましたが、素人の私たちには石しか見えません。どこかの写真で古墳の上に円筒形の埴輪が並んでいる風景を見たことがありますが、歩いている地面の下に埴輪が埋まっていることを知ると、関心度が一気に高まります。こういう感動も伝えたいものです。このたびのゴールとなった道明寺天満宮では、近くで出土した修羅のレプリカが覆い屋で保存されていました。上に大きな石を載せて運ぶソリのような形をした運搬具で、今で言えばトラックに当たります。違うのは人力で引っ張ることで、太い縄をかける穴も刳り抜かれています。古墳を造る苦労を語ることができるポイントです。2時間半ばかりの見学でしたが、ガイドの材料がたくさん集まり、充実した探索となりました。これを膨らませてガイド合戦に臨みます。

陵墓を守る任務の重さを伝えたい  国際観光学部3回生 直井理津子

 探索では2ヶ所の陵墓を参拝しました。仲津姫陵と応神陵です。仲津姫命は応神天皇の妃ですので、ご夫婦の墓をめぐったことになります。いずれも大型の前方後円墳で、周りには壕が巡り、前方部側の外堤に拝所が設けられています。天皇や皇后、皇子や皇女の陵墓は宮内庁が管理しています。その大きな事務所が応神天皇陵の前にあります。聞けば、陵墓巡りの陵印が集められているとか。今で言うスタンプラリーですね。陵墓を美しく保つのが宮内庁の務めであるとのことですが、あれほど大きな古墳を清掃し、樹木を剪定するのは大変な作業でしょう。多くの人たちの努力でしっかりと古墳が守られていることをぜひ外国人に伝えたいものです。藤井寺市の山田幸弘室長の説明で印象に残ったのは、「花より男子」の話です。ドラマで松本潤さんが演じていた道明寺司の名が、実は訪れた道明寺に由来するというのです。歴史の話は私たちにも難しく、外国人にはさっぱりわからないことでしょうが、日本の漫画やアニメやドラマは世界にも出回っていますので、もとしかすると、この話は受けるかも知れません。試してみる価値はありそうです。

細部に目を及ぼしながらの散策  国際観光学部2回生 仲村つづり

 来村先生にお願いして3回生のゼミ活動に参加させていただきました。違うゼミの先輩たちに囲まれる形となりましたが、普通に接していただき感謝しています。見学の目的は12月に行なわれるガイド合戦の材料集めということで、細部にまで目を及ぼしながらの散策となりました。以下、気づいたことを報告します。初っ端に見学した鍋塚古墳は、下から見上げるのと登って見下ろすのとでは、高さの感覚が違います。少し登るだけで、景色が広がり、墳丘に祭り上げられた被葬者の気持ちがわかります。仲津姫陵は周りの壕に水が溜まっておらず、墳丘の裾がよくわかります。後円部と前方部の接点がくびれ、そこに「造り出し」という壇が出っ張り、森が膨れています。これまで何度か前方後円墳を見てきましたが、そんなことには全く気付かず、言われてみて初めてわかることでした。それにしても、何のための施設でしょうか。と、疑問を持つことが、好きになる入口なのでしょうね。古室八幡神社では、屋根に置かれた鬼瓦に八の字の飾りがあり、それが鳩の形になっています。聞けば、鳩は八幡神の使いであるとか。動物が神の使者となっていることを外国人はどう感じるのでしょうか。古室山古墳は前方後円墳です。私たちは前方部の隅から登りましたが、一旦登って少し下り、後円部へはまた登らなければなりません。前方後円墳の起伏を歩いて感じることができます。後円部からの見晴らしはよく、あべのハルカスを遠望できます。眺望のよさは鍋塚古墳以上で、感動します。知ることの感動と見ることの感動を組み合わせてガイド合戦に臨もう。そう思いました。