村田 歩夢

 私たち李ゼミ3年生は、あわら市観光協会との産官学連携の締めくくりとなる「あわら市研究成果発表会」を2024年2月7日、JR芦原温泉駅のAFLAREで行いました。私たちは、昨年度から始めたあわら市観光協会との連携活動を通じて、この1年間で、大きく成長できたと実感しています。この活動によって培った経験を、今後の学生生活に活かしていきたいと考えています。
 私たち李ゼミAチームは、2月7日の発表会で、あわら市の売りである「女性活躍」と「競技かるた」に着目し、旅館美松の宿泊プラン「女性活躍後押しプラン」と、あわら市観光協会に対して、新規プロジェクト「あわら百人一首プロジェクト」の提案を行いました。  
 以下、作成に至った経緯と作成から発表までの流れ、発表後の振り返りについて述べていきます。
 まず、私たちは企画作成にあたり、あわら市の置かれている現状について整理するため、メールであわら市観光協会と旅館美松に「ターゲット層」等についてヒヤリング調査を行った。その結果、双方ともターゲット層は若い女性であることが分かった。私たちも同様に、ターゲット層を20代から40代の女性に決定しました。
 また、あわら市は、関西の奥座敷と称される「あわら温泉」で有名ですが、近隣には加賀温泉郷等の競合も存在し、北陸新幹線金沢-敦賀間が開業するにあたり、関東からの訪問客が距離的に有利な加賀温泉郷に集中する可能性もあると考え、温泉だけで勝負するのではなく第二、第三の「あわら温泉ならではの魅力」を示す必要があると考えました。
 そこで、私たちが着目したのが、あわら市の売りである「多くの女性の活躍」と「競技かるた」です。あわら市は昔から温泉の花形として芸妓さんが存在しており、現在も伝統文化を継承し舞踊や唄などで楽しませてくれます。また、温泉旅館の女将さんらで結成された「あわら温泉女将の会」は女将さんたちがプロデュースした日本酒「女将の酒プロジェクト」等で注目を浴びました。このように、あわら市では昔も今も女性が大きく活躍しているという特徴があります。また、「競技かるた」もあわらを代表する売りの1つです。福井県はかるた王国として全国に名を轟かせています。中でもあわら市は、映画化された競技かるたに青春をかけた高校生を描いた漫画「ちはやふる」の聖地として知られています。この競技で使用する小倉百人一首も女性の活躍と関係があり、時代背景的に男性優位だった時代にもかかわらず文学世界では女性の活躍が顕著に見られたとして世界的に注目されています。また、競技かるたにおける4大タイトルの1つで女性のみが出場できる「全国女流選手権大会」も毎年あわら温泉で開催されていることから、女性をターゲットとする今回の企画にとって十分に通用するテーマであるとともに、今後のあわら市の強い魅力になると考えました。
 女性活躍をテーマにした旅館美松に対する宿泊プランの提案では、「頑張る女性に休息を」をコンセプトとした「女性活躍後押しプラン」を提案しました。内容は、実現可能性を意識し、旅館美松の負担にならない企画作りを心掛けました。例えば、「シャンプー&リンスバー」の導入や「大浴場における赤ちゃん優先時間の確保」、「現在提供されている料理の美容を意識した紹介」、価格面では「女性・子どもの人数に応じた割引」等、初期費用が小さく、すぐに実現できる内容を提案しました。
 競技かるたをテーマにしたあわら市観光協会に対する新規プロジェクトの提案では、「#気付いたら集めてた」をコンセプトとした街歩きを促進させる企画「あわら百人一首プロジェクト」提案しました。競技かるたの持つ特性として百人一首の暗記が必須というものがあります。今回、私たちはこの特性に着目し、競技かるたの観光利用を決定しました。
 本プロジェクトでは、あわら市内の温泉旅館や名所、飲食店やお土産店等の観光に関する店舗に和歌を作成して頂き、訪問客にお渡しするというものです。そして、あわら百人一首を使用した競技かるた大会も開催し、大会参加者には順位に応じた賞品を授与し、連続5期または通算7期優勝した方には永世名人の称号を与えられますが、この大会の本質は競技かるたの特性の1つである暗記すればするほど有利になるというものを利用したものであり、あわら市内の街歩きをすればするほど百人一首を暗記することができ、勝利に近づくという競技かるたを活かした観光戦略です。
 一方で、競技かるたに興味のない方でも積極的に集めたくなる工夫として、背景イラストにもこだわり、100枚すべてコンプリートしたくなるようなものの作成を目指します。今回の発表会では先方に具体的なイメージを持っていただくため、私たちが作成したあわら市内の旅館等をテーマにした和歌にAIで作成したイラストを背景に添えたものをサンプルとして20首を持参し、実際に触れていただきました。
 今回、ご来場いただいた方々に私たちの企画案に対する評価は高く、中でもあわら市の「女性活躍」と「競技かるた」に着目した点に対する評価が高かった。旅館美松に対する提案では、美松の前田社長から企画の実現化に意欲的なコメントを頂きました。また、終了後のアンケートを見ても旅館美松の新宿泊プランで提案した「大浴場における赤ちゃん優先時間の確保」やサンプルとして持参した百人一首にAIのイラストレーターを使用した部分に対してポジティブな反応を頂きました。
 私たち李ゼミ3年生は、今回の発表をもってあわら市観光協会や旅館美松と連携した今年度の活動は終了しました。この活動で得られた体験を今後にも活かしていくとともに、一連の活動を通じて感じたあわら市の魅力についても発信し続けていきたいです。