国際観光学部李ゼミ3年
 村田 歩夢

 私たち李ゼミは、ゼミ活動のフィールドである「あわら温泉」をより詳しく理解するため、8月7日から10日までの3泊4日、あわら市観光協会主催のインターンシップに参加しました。本レポートでは、「あわら市の現状」・「3日間のインターンシップの活動報告」・「実際に体験して感じたあわら温泉の魅力と課題点」について述べます。
 まず、あわら市の現状についてですが、あわら温泉は1883年に開湯し、今年で140周年を迎える節目の年でした。通常の温泉地では1つの源泉を旅館やホテル等の各施設で分割して使用するが、あわら温泉は74本という多くの源泉を保有し、各施設が独自に複数の源泉を所有しているため、施設によって泉質や温度が微かに異なるという特徴を持っています。また、あわら市の観光協会は情報発信に注力しており、公式インスタグラムのフォロワー数は先日1万人を突破し、観光協会の公式アカウントに限定すると全国18位の実績です。一方で、福井県は訪日外国人観光客数が全国最下位と海外からの注目度は低いため、今後は福井県全体での底上げが必要となります。
 4日間のインターンシップで私たちは、旅館内のレストラン業務・清掃業務、あわら温泉で開催された「湯かけ祭り」のお手伝いを体験した。以下、それぞれの具体的な業務内容について述べます。
 まず、初日は17時から21時30分までレストラン業務を体験しました。お客様の席への案内や配膳、食器洗浄等の作業を分担して行い、私はドリンクを入れる係と食器洗浄を担当しました。この業務では台湾の大学から参加している研修生の先輩に教えていただきながら作業をしました。具体的な業務内容は、フロア担当が伺ったドリンクの注文がこちらに伝達され、用意し、配膳担当に渡すという流れでした。この業務は、インカムを装着しての作業でしたが、誰が誰に話しているのかを聞き分けるのが難しく、慣れるまでに時間がかかりました。また、レストラン業務では外国人の方も多く、半数近くが外国人でしたが、コミュニケーションは流暢な日本語で取っていました。

 2日目は午前9時から12時30分まで旅館の清掃業務、15時から21時30分まで湯かけ祭りのお手伝いを行いました。旅館の清掃業務は客室の掃除・大浴場や廊下等の館内の清掃を分担して行い、ここではビジネスルームと露天風呂付洋室の清掃を担当しました。
 この業務では、学生1人に従業員が1人ついてくれたため、マンツーマンの作業となり、より詳しい業務の指導をしていただけました。また、ビジネスルームのチェックアウト時間は10時に対し、露天風呂付洋室は12時であるため待機時間が長く、その間に様々なお話をうかがうことができました。中でも印象に残っているお話は、旅館美松の従業員は、大浴場で入浴できないというものです。これは、従業員同士が鉢合わせすると業務の話になることがあり、お客様の気分を悪くする可能性があるため、それを未然に防ぐための対策であると伺いました。旅館は人のサービスの重要度が高い職業であるため、そのような工夫がされている点に関心を持ちました。
 午後からは、「湯かけ祭り」のお手伝いをしました。湯かけ祭りとは、今年で第18回目の開催を迎える祭りで、あわら温泉を代表する祭りを目標に企画・実施されています。今年は、2つの旅館から合計45tの温泉が提供され、旅館美松からはその大半を占める40tが提供されました。これは通常の家庭の1年分のお風呂の湯量に相当する量であり、この量のお湯を約30分で掛け尽くしました。私たちは、湯かけ祭りのお手伝いとして、8基の仮設プールの組み立て・設置・撤去、祭り会場のゴミ箱の入れ替え等を行いました。この祭りでは経費削減のため受付や設営はもちろん、温泉の運搬に使う散水車や大型トラックの運転、大工仕事等のほとんどが市職員や旅館関係者の方々で構成されている実行委員会で準備、運営されており、旅館業務だけでなく様々なスキルが必要となることを学びました。さらに、毎年世相を反映した宣伝用のポスターを作成しており、今年は副実行委員長の山口さんが大谷翔平選手になりきったポスターを作製しました。このような活動もあり、お祭りには多くのお客さんに参加して頂き大盛況で迎えることができました。
 3日目は9時30分から12時まで湯かけ祭りで使用した仮設プールや桶の洗浄・片付けを行い、16時から21時30分まで饅頭投げのお手伝いをして、途中の休憩で民踊に参加しました。仮設プールと桶の洗浄が終わり、乾燥するまでに時間があったため、休憩を兼ねてお祭りを8月8日と9日に実施する理由をうかがうことができました。8日と9日は温泉地で祀られている人々の病患を救うとされる仏である薬師如来の「やく(89)」から取り8日と9日に実施しているため多くの温泉地で祭りが行われているようでした。また、あわら温泉で独自に8日と9日を「お湯が湧く(89)日」として、温泉が枯れることなく湧き続けることを祈り、曜日に関わらず8月8日と9日にお祭りを開催しています。そして、夕方からの饅頭投げは、明治後期から始まった福井県の婚礼の際の伝統行事であり、湯かけ祭りでもおめでたい日として最後に祭りを締めくくるものとなっています。
 今回は約1万個のお饅頭や駄菓子が用意され、参加者に向かって投げられました。私たちは開始前にお饅頭と駄菓子の搬入を手伝い、開催中は子供が押しつぶされないように小学生以下限定のコーナーを設置し、案内と警備、終了後は片付け作業を行いました。饅頭投げは想像していた以上に人の動きが激しく、子供専用コーナーを設けたことは賢明な判断であったと身をもって実感しました。民踊はあわら音頭や金津音頭等の4つの民踊があり、実行委員会の方に促され女将さんに混じって参加させていただきました。踊り方が全く分からない私たちに女将さんや市職員の方々が丁寧に教えて下さり、楽しんで参加することができました。
 以上、体験した3日間のインターンシップの活動の他に、実際に実行委員会の方々にあわら市の魅力と課題点を伺いました。魅力は、観光振興に積極的である点、一方、課題は、人手不足であるとうかがいました。あわら市では、新たな取り組みを発案するとスムーズに資金援助をしてくれ、最近までにまちづくり団体が5個ほど誕生しました。今回の湯かけ祭りも旅館関係者の若い世代の方々が中心に企画したものであり、実行委員長が交代制であるため、ノウハウが全体に伝わることが継続的に続ける上での魅力です。一方で、改善点として人手不足が深刻であり、私たちがインターンシップとして参加しなければ祭りが実現しなかったと言っていただけました。
 実際にインターンシップで訪れた私が考えるあわらの魅力は、人の温かさです。私たちが話しかけるとほとんどの方が笑顔で対応してくださり、実行委員会の方々も外作業を行っていた私たちに対して水分補給をしているのかどうかなど細かい気遣いを行うなど、常に気にかけてくださっていました。美松の取締役で実行委員会メンバーの前田健吾さんに至っては私たち全員に休憩中、アイスと飲み物をご馳走して下さいました。このような方々の温かさに応えようと私たちも一生懸命に頑張ることができました。一方で私が考えた課題は、業務の効率化です。例えば、湯かけ祭りのお手伝いの際に20時30分からの開催予定だったが、それ以前にお湯を使って遊んでいる方へ開催時間前であることを呼びかけてほしいという指示を与えられました。しかし、普段、あまり人に注意することがない私たちが制止すると怒っているように聞こえるらしく、申し訳なさそうにされ、こちらも心を痛めることが多かったです。そのため、看板やポスターに「湯かけ祭りは20時30分からの開催です」等と書いて代用する方が、お互いに気まずい思いをすることなく、さらに高い効果を得られると考えられます。また、実行委員会の方々が挙げられた人手不足については、湯かけ祭りが18回目の開催と比較的新しい祭りであるためであり、10年後20年後もこの盛り上がりを維持し、あわら温泉を代表する祭りとなれば、現在は客として参加するだけであった若い世代が実行委員として参加を希望し、解消していくものだと私は考えます。
 今回のインターンシップを通じて、旅館業務やお祭りのお手伝い等、普段は経験できない貴重な体験させていただき、とても勉強になりました。中でも、湯かけ祭りの雰囲気は実際に参加してみないと分からないがそれを運営実行する側として体感することができたことは、今後の活動において活かすことができる経験であると考えます。また、後期の李ゼミでは、あわら温泉の宿泊企画の作成に取り組む予定であるため、今回の経験を活かして少しでも良いものを企画できるように精進していきます。そして、再度あわら市を訪問し、企画した宿泊プランの発表をする機会を頂くことができれば、発表時に高い評価を得られるよう精一杯の努力をしたいと考えています。

国際観光学部李ゼミ3年
 中尾 優花

 私たちは8月7日から8月10日までの4日間、インターンシップシップとして福井県のあわら温泉の旅館「美松」とあわら市のお祭りである「あわら湯かけ祭り」のお手伝いをしました。
 一日目にはあわら市観光協会の方により、あわら市の紹介の講義を受け、その後、旅館「美松」の業務のお手伝いをした。二日目は旅館「美松」で清掃業務、あわら湯かけ祭りの準備などのお手伝い、その後、祭りにも参加しました。
 三日目は湯かけ祭りの後片付けと、祭り二日目に実施される饅頭投げの準備と警備をおこないました。そして最終日には「坂井あわら倫理法人会」に参加させていただき一緒に朝食をいただきました。どの活動も私にとって非常に勉強になり貴重な体験でした。その中で私はこの4日間で最も印象に残った一日目について報告します。

 一日目ではあわら市観光協会の津田さんにあわら市の概要と魅力を説明してもらいました。あわら市が誇るあわら温泉は福井県有数の観光地であり地元からも愛される温泉地です。あわら温泉は、今年で開湯140周年の長い歴史があり、源泉も74本と非常に多いことが魅力の一つです。地域別来訪者の割合では関西からの来訪者が圧倒的に多く44%です。次いで関東や中京の地域からの来訪者が多く、2024年の春に北陸新幹線が福井・敦賀まで開業されることで関東の来訪者が期待できるとお話しされていました。しかし訪日外国人旅行者数が福井県は最下位です。インバウンドによる訪日外国人観光客をいかに取り込めるかが今後の課題になると考えました。
 一日目の夜に旅館「美松」で夕食のお手伝いをさせてもらいました。ホールやドリンカー、裏方作業など学生ごとに様々な仕事を体験しました。私はお客様に夕食のお席をご案内する係を体験しましたた。業務内容は夕食会場の入り口の前に立ち、お客様の名前と部屋番号を聞いて席の番号を確認してご案内することでした。お客様がチェックイン時に希望した夕食時間がまとめられた紙があり手作業で夕食の座席番号と時間を一致させます。担当していただいた阪口さんによると15分刻みで決められており人数を調節していて混雑にならないようにしていると話してくださいました。暇なときは次の時間帯に来るお客様の確認と廊下を歩いているお客様の挨拶・お声かけをおこないました。荷物を持たれているお客様には「いらっしゃいませ」、大浴場や夕食の帰りのお客様には「ごゆっくりどうぞ」と声をかけるように教えてもらいました。この時に阪口さんはお客様の次の行動を判断する状況判断が早くて驚きました。私が「この方はどこに行くのだろう、何をしたのだろう」と考える間もなく阪口さんは「ありがとうございました。ごゆっくりどうぞ」と言い、夕食帰りのお客様と判断していました。阪口さんにお聞きしたところ「なんとなく顔を覚えていた。雰囲気で分かった」と言っていました。経験による状況判断能力は素晴らしいなと感じました。
 また旅館で最も大事なのは情報共有だと教えてもらいました。私が体験した席案内の業務だけでも様々な情報の共有が行なわれていました。夕食の時間、席案内するときのお客様が来られたとの合図などがスムーズにお客様を案内することにつながると感じました。また、布団を敷く客室清掃の方も夕食に入られたか確認することで効率よく客室で布団を敷くことにつながります。こうした情報共有をスタッフ全員ですることでお客様にとって快適な空間を作っているのだと感じました。
 一日目は4日間の中で一番勉強させていただいた一日でした。あわら市の特徴や、旅館「美松」の魅力が分かり新たな発見がたくさんありました。旅館での業務は短期間しか体験することができなかったが貴重なお話が聞けて嬉しかったです。このあわら市での経験を今後のゼミ活動に活かしたいと考えます。