平成27(2015)年度 国際観光学部和泉研究室研究活動報告「兵庫県養父市における観光地域づくり研究」

 国際観光学部和泉研究室は「地域・観光の創造(地域資源や人的ネットワークを活用しながら、地域づくりや観光振興のための新たなデザインプランを思考・提案し、地域の方々と共創的に実践する)」を研究テーマとしています。平成27年度、2回生ゼミは、兵庫県養父市をフィールドに研究活動を展開しています。この取り組みは、養父市商工会との連携事業で、平成29年度を終了年度と予定する3ヶ年の事業です。初年度となる今年度は、大屋地区の観光地域づくりデザインを思考し、提案することを事業目標とする年度でした。ここで初年度の取り組みをまとめておきたいと思います。

 兵庫県に所在する養父市は、兵庫県最高峰の氷ノ山、明延鉱山、養蚕農家、天滝、但馬牛など、観光資源の豊富な地域です。また、2014年に国家戦略特別区域農業特区の指定を受けたこともあり、農業と観光を軸とする6次産業化などによる地域の活性化が期待されている地域です。
 私たちは養父市の中でも、地域資源がまとまりをもって集中する大屋地区において、豊富な地域資源を観光資源として活用する観光地域づくりデザインを思考・実践し、コミュニティーベースの経済振興を生成しながら、地域基盤の強化や活性化を目指す取り組みを養父市商工会との産学連携という形態で共創的に展開させることとなりました。
 なお、研究活動は、2回ゼミ17名を3グループに分けて展開しています。

2015年7月22日(阪南大学)キックオフ会議

 阪南大学50周年記念館において、養父市観光協会、養父市役所商工観光課、養父市商工会から6名の方々に来学いただき、説明を受けました。
 自治体の方々などと同じテーブルでディスカッションをするのは初めての経験でしたので、学生はやや緊張気味でしたが、会議の終盤にはその緊張も少しほぐれ、積極的に発言するようになりました。
 商工会の方から「ぜひ、第3者的な目線で地域の魅力を発見し、私たちに教えてほしい」というお言葉を頂戴しましたが、この言葉により自分たちの役割を明確に認識したものと考えています。

2015年9月11日〜13日(養父市大屋地区)フィールドワーク

 養父市大屋地区においてフィールドワーク(2泊3日)を行いました。
 「自然に学ぶ」を理念にキャニオニング・スノーシューなどのアクティビティを展開されている「ノースツアー」、廃校を利用したアート施設である「おおやアート村BIGLABO」、スノーシーズンだけでなく、グリーンシーズンにはマットジャンプ&ウォータージャンプなども展開されている「おおやスキー場」、あたたかな作品が並ぶ「木彫展示館」、養蚕農家が点在する歴史的空間「大杉地区」、坑道見学ができる「明延鉱山」、アユのつかみ取り体験が可能な「あゆ公園」、養蚕の歴史を体感できる「かいこの里」などなど、大屋の豊かな地域資源を確認し、多くの地域の方々の話を聞くことができました。

2015年10月8日・9日(養父市大屋地区)フィールドワーク

 前回のフィールドワークの欠席者を中心に少人数でフィールドワーク(1泊2日)を行いました。
 前回・今回のフィールドワークにおいて、多くの事を学生は感じ、考えたようです。大きく以下の3つのKeywordに整理し、これらをベースとして観光地域づくりデザインを描くこととなりました。

Keyword① 地域資源のつながり
「明延鉱山」、「かいこの里」、「あゆ公園」、「天滝」、「BIG LOB」、「若杉高原スキー場」などなど。資源の1つ1つはすごく魅力的。でも何となく個別に一生懸命な感じ。もっと一体的に考えたらどうかなあ?例えば、「大屋」という地域一体で。資源どうしの「つながり」を意識してはどうかなあ?

Keyword② ありのままの風景
「この建物、古そう」。「田んぼと畑ばっかり」。「(夜)暗っ」。「(川)冷たっ」。「お菓子買ってくるわ。えっと、コンビニ、どこ?」。「何にも無いなあ」、「でも、何にも無いって、都会には無いなあ」。もしかしたら、これが魅力?

Keyword③ 人の魅力
「よう来んさったなあ」
地域のおばあちゃんが声をかけてくださった。
おばあちゃん。可愛くて♡ 温かくて♡♡ 素敵♡♡♡

2016年1月20日(阪南大学)中間発表会

 養父市商工会から2名の方々に来学いただき、ご意見を頂戴しました。
 各グループ、この時に頂いたご意見を参考に最終のブラッシュアップ作業に取りかかり、2月26日の本番への準備を進めました。

2016年2月26日(養父市大屋地区)デザイン提案プレゼンテーション

 養父市大屋地域局の会議室において観光地域づくりデザインの提案を行いました。
 また、提案後の意見交換会において、地域の方々と活発な議論、意見交換をすることができ、大変、有意義な時間となりました。
 なお、各グループの提案内容は、以下の通りです。
提案した養父市大屋地区における観光地域づくりデザインのタイトル
A 「Healthy&Beauty」
Healthy&Beauty。これまでの養父観光にはなかった思考。積極的に自転車を考える。養蚕の繭玉も美容に。ターゲット層の拡充を!
B 「出会い」
人、もの、風景、などなど。何かに「出会うことができる」のが養父の魅力。
そのことを意識した、あたたかく、穏やかな、あたらしい養父デザイン。
C 「〜感じよう養父〜」
感じる。つまり、「体験すること」を大切にしたコンテンツ。例えば、地域の方々と鍋をご一緒するという心身ともに「ホッコリ」を感じるコンテンツも。

そして、創造した観光地域づくりデザインについては、冊子として形になりました。

 以上が養父市における研究活動のプロセスです。2回生というゼミが始まる初年度であるにも関わらず、ゼミ時間外や休日にグループで集まるなど、自分たちで自分たちのグループをマネジメントしながら、デザインをまとめてくれたと考えていますが、観光地域づくりは始まったばかり。これからが本番です。
 2年目である平成28年度については、提案させて頂いた観光地域づくりデザインをベースとしてアクションにつなげていきたいと考えています。同時に地域のステークホルダーとも連関を生じさせ、地域の方々のディスカッションの機会を増加させながら、「観光」を共通項とする新たなコミュニティーの形成を目指し、観光地域づくりのきっかけとなるムーブメントを創発させたいと考えています。