2016.8.22

連載講座「インターネットと経営」 人工知能は人類の敵なのか、それとも味方なのか?

人工知能は人類の敵なのか、それとも味方なのか?

インターネット等の情報技術の進展が目覚ましい。ネットショッピング、情報の収集や管理あるいは発信など書き出せばきりがないが、情報技術は間違いなく人間の生活をとても便利で豊かなものとしてきた。今や様々な情報技術なしでは人間の日常生活は成り立たないと言っても過言ではないであろう。
一方で、情報技術の進展に人間社会が脅威を感じ始めている。特に人工知能(AI)に対してである。ワープロの予測変換機能、最適なルートを探し出してくれる路線検索、掃除ロボット等、身近なところで人工知能は人間の生活を便利なものとしてきた。人工知能の技術はますます進化し、近年ではとうとう将棋や囲碁の名人を打ち負かすまでにいたった。人工知能が人間を脅かす存在にまでなってきたのである。今後も人工知能の進化は止まらないであろう。

2015年、野村総合研究所はオックスフォード大学のマイケル A. オズボーン及びカール ベネディクト フレイとの共同研究で、日本における601種類の職業の人工知能代替可能性試算した。その結果、日本の労働人口の49%が、10〜20年後には人工知能で代替可能であるということを試算している。ちなみに、アメリカの場合は47%、イギリスの場合は35%であった。下記の表は職業別代替可能性について示されたものである。芸術、歴史学・考古学、哲学、進学等の抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は人工知能での代替は難しい傾向があるとしている。逆に、これらの知識を要しない仕事や、秩序的、体系的操作が求められる職業は人工知能での代替可能性が高いとしている。

今後、人工知能の存在が人間の働き方に大きなインパクトを与えることは間違いないであろう。言い換えると、人工知能は現存の人間の仕事を奪うのである。一方で、人工知能に関連する新たな仕事も増えるであろう。インターネットの出現が特定の職業を駆逐したかわりに新たな産業と雇用を創出したように、人工知能に関連する新たな産業が勃興することによって雇用が純増するならば、人間社会は人工知能を歓迎すべきであろう。というよりも歓迎する用意をしておくしか選択肢はないのである。
「グーグル、AIに非常停止ボタン、「暴走」阻止へ開発推進」、これは2016年6月9日の日本経済新聞朝刊に掲載されていた記事である。囲碁のプロ棋士を破った囲碁AI「アルファ碁」を開発したグーグル子会社の英ディープマインド・テクノロジーの研究者と英オックスフォード大学の研究者のグループが仕組みを考案したとのことである。同グループによると、現存するいくつかのAIは安全に停止できるものの、全てのAIを安全かつ簡単に停止できるかは不透明であるという。安全かつ簡単に停止できない場合、どういったことが生じるのかはわからないが、人類社会が歓迎すべきことでないことは確かであろう。
人工知能は人類社会に一定の恩恵をもたらしてきた。今後も恩恵を増幅しながらもたらすことは間違いないであろう。一方で、負の恩恵に恐怖を覚える。特定の仕事が人工知能に奪われるということも小さくない問題であろうが、何より恐ろしいのは人工知能の暴走、あるいは、人工知能が人工知能を生み出し、人間の管理下から解き放たれる時である。人類の英知が人類を滅ぼすというターミネーターのような世界にならないよう、人類の英知に期待するばかりである。

参考資料

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