2017.6.23

【連載講座】日本の2大テーマパークのマーケティング戦略 その7

【連載講座】日本の2大テーマパークのマーケティング戦略 その7

その7 まとめ

 日本にある2大テーマパークである東京ディズニー・リゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンについてグローバルマーケティングの観点から分析してきました。両方のテーマパークともアメリカ生まれ・アメリカ育ちで、ウォルト・ディズニーとハリウッド映画というアメリカ文化を象徴するモノです。そして、それらを海外で展開するということは、アメリカ文化を輸出することとに繋がります。その意味で、この2つのテーマパークは異国の地でアメリカ文化を発信する文化的装置であると言えます。
 そうした文化的装置であるテーマパークですが、採用したマーケティング戦略は異なっていました。東京ディズニー・リゾートはハードの部分においては標準化された東京ディズニーランドと適応化された東京ディズニーシーを併せ持ったハイブリッド戦略で、ソフトの部分は日本流のおもてなしを取り入れた適応化戦略でした。もう一方のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、ハードとソフトの両方において適応化戦略を取っていましたね。
 なぜ、生まれと育ちが同じようなテーマパークなのに戦略が異なってくるのでしょうか?そこには、企業が持つ経営理念と企業の強み・弱みがあります。東京ディズニー・リゾートは“夢と魔法”“Happiness(幸せ)”、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは“感動”“エンターテイメント&レジャー”です。明らかに企業として目指している方向が違います。ディズニーは夢・魔法・Happinessを提供するためにパークだけでなく、制作・配信する映画自体も“愛”をテーマに徹底的に作り込んでいるのに対して、ユニバーサル・スタジオは感動・エンターテイメント・レジャーを提供するために全てにおいて“おもろい”をテーマに徹底的に作り込んでいるのです。その意味で、これら2つのテーマパークは全くの別モノで、比較するものではないと言えます。
 次に企業の強み・弱みですが、何といっても東京ディズニー・リゾートにはミッキー&ミニーという強力なキャラクターが存在します。パーク内では彼らと写真を撮るために長蛇の列ができ、彼らに会えるレストランやホテルは人気でなかなか予約できないくらいですし、誕生してから90年近く経っていてもその人気は不動だと言えます。これらのことから、ミッキー&ミニーはディズニーの強みです。片やユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、残念ながらそれほど強力なキャラクターが存在しません。確かに、ユニバーサル映画から数々のヒット映画が制作・配給され、スパイダーマン等の人気キャラクターはいることから知名度は強みであると言えるのですが、映画として上映され・ヒットしなければ人々の記憶からは忘れられていきまし、一世紀近くも人々から愛され続けているキャラクターとなると難しいですね。だからこそユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、日本人が大好きな人気キャラクターを求めて映画とは関係のないスヌーピーや、日本生まれのハローキティーを採用したものと考えられます。
 このように企業が持つ強み・弱みは、企業が取る戦略の方向性を決定づける要素になります。つまり、企業がライバル企業と戦う場合の選択肢として、“自らの強みをさらに強めていくのか”“自らの弱みを補っていくのか”、が考えられますが、どちらを選ぶかによって取るべき方法は異なってきます。そして、そうした選択の積み重ねが、企業の特徴として浮かび上がってくることになるのです。
 東京ディズニー・リゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、アメリカ生まれ・アメリカ育ちで、共にアメリカ文化を発信する文化的装置として初めての海外進出先に日本を選んだのですが、元々持っている企業の持ち味(強み・弱み)が異なっていたことから、日本開演からディズニーランドは30年以上、ディズニーシーとユニバーサル・スタジオは15年以上の時間を経て、現在のように全く異なったタイプのテーマパーになっていきました。
 
 これで、7回にわたる私のコラムは終了です。みなさん、楽しんでいただけましたでしょうか?このコラムでは、経営学やマーケティング論といった小難しいと思われがちな学問をできるだけ優しく、解りやすく説明するようにテーマ選択を含めて努めました。もし、それでも解りにくい点があったとすれば、それは私の力量不足なのでご容赦願いたいと思います。また逆に、これを読んでマーケティングに興味を持ってくれた人がいれば、喜ばしい限りです。そうした人たちと、また一緒に勉強できる日を楽しみにしています。

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