2017.6.22

【連載講座】日本の2大テーマパークのマーケティング戦略 その6

【連載講座】日本の2大テーマパークのマーケティング戦略 その6

その6 ユニバーサル・スタジオの世界戦略と世界戦略の中のユニバーサル・スタジオ・ジャパン

 今回(その6)は、ユニバーサル・スタジオについてです。ユニバーサル・スタジオは、日本を含めて3カ国に4カ所あります。アメリカ、日本、シンガポールと3つの文化圏に進出しています。ただ、現在建設中のドバイを入れると4カ国に5カ所で、4つの文化圏となります。そして、ディズニーと同様に初の海外進出は日本です。
1 ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド(アメリカ・ロサンゼルス)
1964 ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド
2 ユニバーサル・オーランド・リゾート(アメリカ・フロリダ)
1990 ユニバーサル・スタジオ・フロリダ
1999 アイランズ・オブ・アドベンチャー
3 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(日本・大阪)
2001 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
4 ユニバーサル・スタジオ・シンガポール(シンガポール)
2010 ユニバーサル・スタジオ・シンガポール
5 ユニバーサル・スタジオ・ドバイ(アラブ首長国連邦)
ユニバーサル・スタジオ・ドバイ(建設中)
 ユニバーサル・スタジオは、1964年にロサンゼルスのハリウッドに最初に開演しました。皆さんもご存知のようにユニバーサル・スタジオは、ハリウッドの映画会社でビッグ6と言われる中の一つです。ちなみにビッグ6とは、20世紀フォックス、ソニー・ピクチャーズ、パラマウント映画、ユニバーサル・スタジオ、ワーナー・ブラザーズ・エンターテイメント、ウォルト・ディズニー・カンパニーです。このようにアメリカ・ハリウッドという映画の中心地にあって映画を製作・配給する企業であるユニバーサル・スタジオは、映画という二次元の世界を三次元化することによって新しい映画の楽しみ方を提供すると同時に、映画製作の裏舞台をゲストに見てもらいたい、という2つの目的でテーマパークを開園しました。それがユニバーサル・スタジオ・ハリウッドです。ですから、裏方を見せるテーマパークとしての色彩が強いこともあって、他のユニバーサル・スタジオと比べて規模が小さく、アトラクションも少ないことから入場者数のランキングも世界18位(709万人)となっています。

 その後、フロリダ・オーランドにユニバーサル・オーランド・リゾートという巨大なテーマパークを開園し、映画の裏方を見せるテーマパークから映画を三次元で体験するテーマパークへと戦略を転換しました。そして、そのパークに“リゾート”という名称を使ったのは、ディズニーランドと同じ理由です。また、2001年には東京ディズニーランドの成功を受けて、日本の大阪にユニバーサル・スタジオ・ジャパンを開園します。

 ただ、ディズニーランドと違ったのは、パーク内のアトラクション等のレイアウトが本国のパークと異なっているのと同時に、リゾートではなくスタジオ単体であったことです。2010年にはシンガポールでも開園しますが、これも本国とも日本のユニバーサルとは異なりますし、スタジオ単体で進出しています。特に、現在のユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、アトラクションの構成で言えば約50あるうちの7つだけがアメリカ本国と同じモノ(構成比14.0%)となっていて、同じユニバーサル・スタジオと言っても全く違うパークであると言えます。ちなみに、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールのアトラクションは、本国アメリカと同じモノの構成比は21.1%であるので、ここでも違うパークだと言えると思います。つまり、グローバルマーケティングの“標準化戦略”と“適応化戦略”で言えば、ユニバーサル・スタジオは海外進出をするにあたって、徹底的な適応化戦略を採用していると言えるのです。
 では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンについて見て行きましょう。現在、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを経営しているのは、株式会社ユー・エス・ジェイです。2001年の開園当初は経営に大阪市も出資していましたが、その後撤退して民間企業となっています。そして、株式会社ユー・エス・ジェイは企業理念の中で“エンターテイメントとレジャー業界におけるアジアのリーディングカンパニーを目指す”といっています。つまり、楽しませてくれる娯楽や余暇の分野でアジアNo.1を目指しているのです。そして、この経営理念を実現するために2001年に“Power of Hollywood”のコンセプトで日本進出を果たしました。まさにコンピュータ・グラフィック等の先端技術で造られたハリウッド映画の凄さ(Power)とハリウッド映画特有の楽しさ(娯楽性)を日本の消費者に提供しようとしたのです。確かに、最初は誰もが知っている・見たことがある有名な映画の世界を体験できるテーマパークとして人気を博しましたし、アトラクションの数々が持つ迫力には圧倒されました。
 しかしその後、ハリウッド映画の人気に少し陰りが見え始めると同時にユニバーサル・スタジオ・ジャパンも人気が低迷し始めました。そこで、取り組み始めたのがターゲットとする顧客層の変更と映画以外のコンテンツとのコラボレーションです。具体的には、ハリウッド映画・ユニバーサル映画をテーマとするユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、20代前後の若者をメインターゲット層と考えていましたが、それを女性と子供を連れた家族に変更します。その象徴が2012年に開園したユニバーサル・ワンダーランドです。そして、元々、開園当初からユニバーサル映画がテーマのパーク内に日本生まれのハローキティーがいたりしていたのですが、ワンピースや進撃の巨人のアトラクションの導入し、さらにはユニバーサル・スタジオにとってライバルであるワーナー・ブラザース・エンターテイメント配給の映画「ハリー・ポッター」の世界を再現したウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターを開園させる等、ユニバーサル映画の枠を超えたコラボレーションがさらに加速していきます。その結果が、先に言いましたようにアメリカ本国と同じアトラクションの構成比が14.0%になったのです。まさにグローバルマーケティングの適応化戦略を採用したというわけですね。
 こうしたマーケティング戦略に対して、「テーマに一貫性がない」「何でもありで、ごった煮」といった批判があることもユニバーサル・スタジオ・ジャパンのスタッフも理解していると思います。それでもこうした戦略を採用するのは“楽しませてくれる娯楽や余暇の分野でアジアNo.1を目指す”経営理念にあります。つまり、楽しいことを追求することが理念ですから、そのためにはハリウッドであるとか、ユニバーサル映画であるといった制約条件は関係ないのです。つまり、大阪弁で言えば“おもろいことを追求する”のです。テーマパークのハードとソフトの徹底的な適応化戦略であると言えますね。

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