人は社会的な動物であるといわれています.社会の中で生活するためには,社会で共存する人々とコミュニケーションをとり相互理解の中で生活しなければなりません.この意味では,コミュニケーションとは,人と人が相互に情報交換することです.もともとは対面でコミュニケーションしていたものが,最近では情報通信技術を介してコミュニケーションをとる割合が急増しています.また,デジタル機器が急速に普及して,我々の生活の変化にともなってコミュニケーション様式も大きく変化しています.さらに,我々の生活様式の変化が,企業から消費者である我々への情報伝達方法を大きく変えています.講義「デジタルコミュニケーション」では,上記のような我々生活者のコミュニケーションの特性,情報通信技術が進展する中でのコミュニケーションの変化,そして企業から我々生活者への情報伝達の仕組みの変化を学ぶ講義となっています.

 企業から生活者へ様々なメディアを用いて情報伝達がなされていますが,生活者と密接に関係する流通企業においては,この情報伝達すなわち広告が重要な意味を持っています.そのため,生活者との接点を如何に創生してビジネスに展開するかが課題となっています.そこで,小売り流通を本業とする近鉄百貨店上本町店営業推進部課長 水谷敏也氏をお招きして,商業流通における消費者とのコミュニケーションの現状と課題についての講演をいただきました.
 講義の前半は,消費者の消費動向について種々の統計をもとに解説をいただきました.流通業での消費金額は20年前を大きく変化していないにも関わらず,ファストファッションの台頭や生活者の衣料に対する価値観の変化により,衣料関係消費は33%も減少している事実に接し驚きました.講義後半では,市場動向の調査を踏まえた近鉄百貨店の中期経営戦略の概略を解説いただきました.従来の百貨店としてのビジネスモデルではなく,マルチデベロッパーとして他業種展開に取り組まれていることやターゲット層を明確化して集客方法の検討など,多面的なアプローチについてご教示をいただきました.講義のような概論ではなく,現場での実践についての講義を頂け,学生にとっても有意義な講義であったと思います.

学生の感想

4年生 男子学生

 百貨店業界は多くの有名企業がある一方で、業績は伸び悩んでいることを講義で知りました。近年、外国人旅行者が多数来日していることから、インバウンド需要を取り込んで業績が回復している百貨店があることを知りました。百貨店業界の業績があまりよくないとのニュースを聞いていましたが、百貨店では、これまでの集客を活かした新たなビジネス展開していることを、本日の講演でしりました。高品質で高価な商品を買うための場所から、様々な娯楽体験等ができる施設に百貨店が変身するなど、百貨店は新たな存在に生まれ変わることを目指しているそうです。知名度の高さと一等地に立地する店舗を活かして成長できるチャンスがあると思いました。インターネットの普及をより活かして新たな百貨店事業モデルを構築してほしいとかんじました。

3年生 男子学生

 近年では、ネットが進化し続けているため、買い物もネットで済ませる消費者が増加していることを統計データに元に教えていただけました。これは、今後の消費傾向がこれまでと大きく変化すのだろうと感じました。食や衣料品などは直接に見たり触ったり食べたりしなければその価値が判断できない商品であると感じていましたので、近鉄百貨店が、デパ地下を充実させて食のイメージを強化するとの戦略にも、うなずけました。上本町店やハルカス店は梅田とは商圏がことなり、地域住民がターゲットになっており、来客増加のために、てんしばの開発、食品売り場の開発、地域住民を呼び込めるイベント開催など、これからの百貨店は、百貨店での小売りではなく、フランチャイズの運営、自動車販売など多方面でのマルチデベロッパーを目指されているという中期経営計画についても大変興味深く聞くことができました。時代とともにビジネスを新たに展開することが必要であるとの話は印象に残りました。