2016.8.31

連載講座「インターネットと経営」ポケモンGOと企業・社会

ポケモンGO狂想曲:第1楽章

2016年7月22日、日本でもポケモンGOの配信が始まりました。配信先としては37か国めですが、アジアでは初めてです。配信開始とともにダウンロードが殺到し、アップルの無料ダウンロード数でトップになりました(毎日新聞7/23)。その人気たるや、スマホでゲームをしたことがない方でもご存知のことと思います。ポケモンGOは、GPS(全地球測位システム)に加えてAR(拡張現実)を活用して爆発的ブームをもたらしたものとしてゲーム史に大きな足跡を残すことでしょう。

それは単に人気が高いからと言うことだけではなく、当初から、地方に人を呼び込んだり、出会い・交流を促進したりすることが期待されていたからです(日経MJ7/22)。実際、精神科医が対処できなかった自宅引きこもりが、外に出てポケモンをするようになったという海外の例さえあるそうです(毎日新聞7/23)。また、システムの不具合によって偶然サービスが始まった韓国北東部の小さな町に、ユーザーが殺到しました(Newsweek日本版8/2号)

ポケモンGO狂想曲:第2楽章

しかし配信開始日の夕刊、早くも「歩きスマホ・事故懸念」などと負の側面を新聞各紙が一斉に報じています。実際、配信の翌23日から数日で様々な事件・事故、トラブルなどが起こりました。25日午前11時半までに道路交通法違反が71件、人身事故も4件ありました。

事故以外では、「ポケスポット」ゆえに昼夜を問わず大勢の人が集まって周囲の住人から苦情が出ましたし、広島平和公園や長崎原爆資料館では、「ポケスポット」の削除要請をしています(日本経済新聞7/29)。また、情報を抜き取る偽アプリも出ました(読売新聞7/23)

マクドナルドや任天堂の株価

このような中、次のような大きな株価の変動が起こりました。7月21日、前日にポケモンGOとのコラボレーションを発表した日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドと略します)の株価と時価総額は、ともに15年ぶりの高い水準になりました(日本経済新聞7/22)。任天堂の株価は、7月7日〜22日までに2倍近くになりましたが、22日、ポケモンGOによる業績への影響は限られると発表されると、逆に2割近く下落しました(日本経済新聞7/26)。では株取引について、株価が上がり始める前の6月末から2か月の動きを「株価チャート」というグラフで確認しましょう。
上図で下から出ている棒グラフは、株の出来高(取引高)です(左目盛)。7月20日前後に大きく伸びています。株価を示すのは、白や黒の箱みたいな、中心に線が突き出ている場合もあるものです(右目盛)。白い箱は、その日の取引開始直後の株価(始値(はじめね)と言います)より取引終了時の株価(終値(おわりね)と言います)の方が高いことを示します。黒い箱はその逆です(その日1日を通して株価が下落)。線の上端はその日の最高値、下端は最安値を示します。7月20日以降は黒い箱が目立ち、株価も低下傾向にあることがわかります。

次の図は、マクドについて株価の動きだけを見やすくするために、終値だけを追ったものです。7月13日に2,884円でしたが、9日後の7月22日には3,620円になりました。
マクド株は100株単位で購入できます。つまり、手数料などを無視して考えると、7月13日に100株・28万8400円分の株を持っていた人は、9日後には36万2000円になったわけです(差額は7万3600円)。逆に、7月22日(金)に36万2000円で購入した人は、翌営業日の25日(月)には32万円に落ち(株価は3,200円)、1か月後の8月26日では29万5000円です。

「使用期限切れ鶏肉問題」で株価が2,215円まで落ちた(2016年1月22日の最安値)マクドですが、その後回復し、7月13日に2,884円になっていました。これと比べると、7月22日以降はより高いわけです(グラフ参照)

また、多くの会社が「株主優待」をしており、マクドでは100株購入すると、優待食事券(バーガー類、サイドメニュー、飲物、3種類の商品の無料引換券が1冊になったシート6枚)を提供しています。なお、経営情報学部のパソコン実習科目では、自分が気になる会社や業界について自由に調べることも課題になります。

ポケモンGO狂想曲:第3楽章は?

配信開始から1か月後の8月23日、徳島市で、ポケモンGOで遊んでいたために起こった交通事故で、初めて死者がでました。ゲーム内通貨である「ポケコイン」の詐欺サイトもあるようですし、この次元ではありませんが、プリペイドカードと同じ支払い手段である可能性があるとして、金融庁がポケコインの使い方や発行体の所在などを調べ始めた模様です(日本経済新聞8/26)。未成年等の被害も心配されるところです。

このような問題とは逆に、期待される側面もあります。売り上げを伸ばしている企業はマクドと言った飲食業関連以外にも、バッテリーメーカーなどがあります。また、前述の「出会い・交流の促進」について、ポケモンGOを利用しているのは企業だけではありません。宮城県他、地震の被災地自治体、それから、「居住人口」が最も少なくて、安全に楽しめると考えられる砂丘がある鳥取県が、「交流人口」を増やして地域の活性化を図りたい、と考えるのは当然かもしれません。世界的観光地である京都でさえも、ポケモンGOとコラボしようとしています。
このように当初から予測されていたこと以外にも、次々と正負両側面の効果・影響が出てくるかもしれません。「最終楽章」は、それがあるとしても、GPS、ARとは全く別、あるいはそれらの「超発展形」のゲームが登場するときでしょう。

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