
突然ですが、日本記念日協会によると、11月11日は「ポッキー&プリッツの日」だそうです。これは、1999年に、大阪市に本社のある江崎グリコ株式会社(以下、グリコ)が「自社の人気商品ポッキーとプリッツのPR」のために制定したものです。最近は、ポッキー&プリッツの日もすっかり定着して、全国各地でイベントが行われていますね。
今回は、この記事を書いている私も大好きなポッキーが人気な理由を探ってみたいと思います。
今回は、この記事を書いている私も大好きなポッキーが人気な理由を探ってみたいと思います。
<豆知識>
ポッキーは、テスト販売の際には、テクテク歩きながら食べられることからチョコテックという商品名で発売されました。しかし、商標(権利)の問題から、食べる時のポッキンという音から、ポッキーと名付けられました(島森(2003)、『地上 = Good earth』2004年12月(58巻12号)100-101ページより)。1.お菓子の寿命は短い?
グリコ冷菓開発企画部部長(当時)の島森清孝氏によると、「菓子類は単価も比較的安く、日々繰り返して消費される足の早い特性の商品ですので、短期的にトライアルされ、そして気に入った時のリピート反応も、素早く荷動きに表れてきます。初期段階では時間を追うごとに新規にトライアル購入される方が増え、そして飽和点に達するとトライアルが減少するようになります。飽和点は商品によっては異なりますし、広告の多寡、店頭での目立ちなどによって左右されます。この間、リピート購入が長期にわたって維持されれば、当該商品のプロダクトサイクルは長期化します(島森(2003)64ページ)」と話します。
とても難しいような気がしますが、
"簡単にいうと、お菓子は値段が安いので、
新商品が出るとみんな買うけど、飽きてしまったら売れなくなる。
逆に、「何らかの理由」でリピートしてくれたら
長期的にその商品を買い続けてくれるということです。
実際にポッキーも1966年の発売から、何度かの停滞期があったようですが、以下等を行っています。
①味やパッケージの改良・改善
②新しいフレーバーの開発
③新たな顧客層(買ってくれる人)の開拓
とても難しいような気がしますが、
"簡単にいうと、お菓子は値段が安いので、
新商品が出るとみんな買うけど、飽きてしまったら売れなくなる。
逆に、「何らかの理由」でリピートしてくれたら
長期的にその商品を買い続けてくれるということです。
実際にポッキーも1966年の発売から、何度かの停滞期があったようですが、以下等を行っています。
①味やパッケージの改良・改善
②新しいフレーバーの開発
③新たな顧客層(買ってくれる人)の開拓
例えば、1970年代には、すでに、いちごポッキーやアーモンドポッキーなどの派生商品の販売を行っていますし、1990年代には、リピート顧客の年齢が上昇していくことも考えて、当時としては、高価格ポッキーである、アーモンドクラッシュポッキー(30代主婦が主要な購入者、300円)やポッキーつぶつぶいちご(10代後半の女性が主要な購入者、200円)などが販売され、新たな顧客層の開拓と今の顧客層の維持を行っています。
当然、これらのポッキーは現在も販売されています。さらに2000年には、1箱の中に2つの分割包装を行うことで、一度に食べきらないという実態に合わせた改良も実施しています。
当然、これらのポッキーは現在も販売されています。さらに2000年には、1箱の中に2つの分割包装を行うことで、一度に食べきらないという実態に合わせた改良も実施しています。
2.ポッキーが売れている理由─手が汚れないだけか?
実はポッキー、2020年、2021年の2年にわたり、「チョコレートコーティングされたビスケットブランドの世界売上No.1」となっています(グリコニュースセンター「「Pocky」 が世界売上 No.1(※)としてギネス世界記録™に2年連続で認定(※)されました。
世界売上No.1を記念して、世界のポッキーが楽しめる施策も実施!」2021年10月15日より)。
現在、ポッキーは、アメリカなど世界30の国と地域で発売されており、その売上は、2019年度で5億8,990万ドル(約620億円)になるといいます(NIKKEIリスキング「世界で最も売れた「ポッキー」 50年超え人気の理由」2021年8月3日より)。
その人気の秘密には、以下のようなものがあります。
世界売上No.1を記念して、世界のポッキーが楽しめる施策も実施!」2021年10月15日より)。
現在、ポッキーは、アメリカなど世界30の国と地域で発売されており、その売上は、2019年度で5億8,990万ドル(約620億円)になるといいます(NIKKEIリスキング「世界で最も売れた「ポッキー」 50年超え人気の理由」2021年8月3日より)。
その人気の秘密には、以下のようなものがあります。
★ポッキーの人気のヒミツ
- 棒状で持ちやすく、1本ずつ分け合える。また持ち手がチョコレートコーティングされていないため、手が汚れない(NIKKEIリスキング「世界で最も売れた「ポッキー」 50年超え人気の理由」2021年8月3日の中にある、江崎グリコのマーケティング担当の槌田智子氏の発言より)。
今やスマートフォンを操作しながらお菓子を食べることが多くみられることから、手が汚れるお菓子は敬遠されますよね。特に真夏の暑さでチョコレートはとけるため、なおさらですよね。また、家族や友人と簡単に分け合えることは、日常のコミュニケーションをとるためのツールとしてポッキーが機能している可能性が示唆されますね。 - もぐもぐしなくても良いため、「ながら食べ」ができる。そのため、食べながら話すことができる(三田村(2015)の中にある、江崎グリコのグループ広報部担当課長の山本京子氏の解説より)。
三田村(2015)で、前述の山本京子氏は、「『ながら食べ』が可能なお菓子はありそうでいてほかにないと思う。『ポッキー』は唯一無二、ワン&オンリーのお菓子なんですよ」という。また、大石(2016)もポッキーは「手に持ちやすく、折れにくく、1本1本がくっつきにくいという特性は競争力を持つ」と指摘しています。
筆者の私は思いました!
ポッキー以外にも、株式会社ロッテ(以下、ロッテ)のトッポ(1994年発売)や、カルビー株式会社のじゃがりこ(1997年発売)も、棒状で1本ずつ分け合えるようになっているなと・・・。
トッポは、形状の特徴からポッキー以上に手が汚れにくいものの、いわゆる中チョコ菓子のため食べ応えが強く、もぐもぐが必要です。現に、トッポのホームページでも「最後までチョコたっぷり!」との表記があります(ロッテブランドサイト「トッポ」より)。
じゃがりこは、生産工程の1つに油でフライする行程があるため手の汚れを完全に防ぐことは難しく、そもそもの味(塩味ベース)が違うことから、ポッキーは、これらのお菓子とは一線を画するものであると考えられます(じゃがりこ公式WEBサイト「担当者が解説!じゃがりこってこうやって作ってます!」より)。
ポッキー以外にも、株式会社ロッテ(以下、ロッテ)のトッポ(1994年発売)や、カルビー株式会社のじゃがりこ(1997年発売)も、棒状で1本ずつ分け合えるようになっているなと・・・。
トッポは、形状の特徴からポッキー以上に手が汚れにくいものの、いわゆる中チョコ菓子のため食べ応えが強く、もぐもぐが必要です。現に、トッポのホームページでも「最後までチョコたっぷり!」との表記があります(ロッテブランドサイト「トッポ」より)。
じゃがりこは、生産工程の1つに油でフライする行程があるため手の汚れを完全に防ぐことは難しく、そもそもの味(塩味ベース)が違うことから、ポッキーは、これらのお菓子とは一線を画するものであると考えられます(じゃがりこ公式WEBサイト「担当者が解説!じゃがりこってこうやって作ってます!」より)。
3.ポッキーの未来
─バトンドールと海外進出、そして消費者との接点を増やす!
実は、ポッキー、ギネス認定されるほどの売上をあげていますが、その秘密は、積極的な海外進出だけではなく、高級化を進めていることも見逃せません。
一般的には、ある商品の値段をあげることができれば、より多くの利益を出すことが可能になります。
なぜなら、原材料費を良いものに変える分、費用はかかりますし、それに伴う宣伝費もアップするかもしれません。さらに言えば、新商品開発にかかる費用もあるでしょう。しかし、これらに関わる人件費は大きく変わらないことがほとんどです。よって、その分、利益が出やすいのです。
グリコは、2012年から、百貨店販売を想定した、高級ポッキーとして「バトンドール」というブランド名で、高級ポッキーの販売をはじめました(当時の販売価格は1箱500円)。バトンドールは、百貨店では手ごろな価格であったこと。当時は、阪急百貨店うめだ本店や髙島屋大阪店など限られた店舗でしか購入できなかったこともあり人気を博しました。現在では、オンラインショップなどでの販売はあるものの、百貨店の人気商品の1つとして定着しています(『週刊ダイヤモンド』2015年8月29日号、102-103ページより)。
また、アジアに目を向けると、インドネシアでは、2014年に設立した「グリコインドネシア」の売上が2022年には6倍に達したといいます。インドネシアのポッキー1箱あたりの販売価格は、8000-8900ルピア(約72-80円)でかなり低価格での販売です。これはインドネシアの経済発展状況を勘案した価格設定です。
他方で、1970年にグリコが進出したタイでは、2022年現在、すでに出生率が低下しており、所得(=給料)もかなり高い水準に達しているそうです。そこで、グリコはポッキーに加えて、健康をキーワードに、低糖質菓子やアイスの販売も行っているのです(『日経ビジネス』2023年7月31日号、34-39ページより)。
ポッキーの人気を受けて、グリコのブランドを用いながら、その国々の現状(ニーズ)に応じた商品を適宜発売することで、ポッキー+αの販売を行っているのです。
一般的には、ある商品の値段をあげることができれば、より多くの利益を出すことが可能になります。
なぜなら、原材料費を良いものに変える分、費用はかかりますし、それに伴う宣伝費もアップするかもしれません。さらに言えば、新商品開発にかかる費用もあるでしょう。しかし、これらに関わる人件費は大きく変わらないことがほとんどです。よって、その分、利益が出やすいのです。
グリコは、2012年から、百貨店販売を想定した、高級ポッキーとして「バトンドール」というブランド名で、高級ポッキーの販売をはじめました(当時の販売価格は1箱500円)。バトンドールは、百貨店では手ごろな価格であったこと。当時は、阪急百貨店うめだ本店や髙島屋大阪店など限られた店舗でしか購入できなかったこともあり人気を博しました。現在では、オンラインショップなどでの販売はあるものの、百貨店の人気商品の1つとして定着しています(『週刊ダイヤモンド』2015年8月29日号、102-103ページより)。
また、アジアに目を向けると、インドネシアでは、2014年に設立した「グリコインドネシア」の売上が2022年には6倍に達したといいます。インドネシアのポッキー1箱あたりの販売価格は、8000-8900ルピア(約72-80円)でかなり低価格での販売です。これはインドネシアの経済発展状況を勘案した価格設定です。
他方で、1970年にグリコが進出したタイでは、2022年現在、すでに出生率が低下しており、所得(=給料)もかなり高い水準に達しているそうです。そこで、グリコはポッキーに加えて、健康をキーワードに、低糖質菓子やアイスの販売も行っているのです(『日経ビジネス』2023年7月31日号、34-39ページより)。
ポッキーの人気を受けて、グリコのブランドを用いながら、その国々の現状(ニーズ)に応じた商品を適宜発売することで、ポッキー+αの販売を行っているのです。

まとめ
最後になりましたが、グリコには、ポッキー以外にも、ビスコやセブンティーンアイスなど長寿(ロングセラー)商品があります。例えば自動販売機(自販機)で買えるアイスである「セブンティーンアイス」は、駅や学校、ボウリング場など全国に約2万台設置があるそうです。
コンビニやスーパーよりもさらに気軽にアクセスできる環境が整っています。少子高齢化が進んだとしても、次の成長をけん引するのは若者です。学校に設置する場合は、保護者からの反対もあるそうです。しかし、アイスを食べる時のルール作りを行ってもらうなどの教育現場ならではの工夫を用いることで、2024年には過去最高の売上高を記録したのだそうです(『日経XTREND』2025年5月号、2-5ページより)。
まとめになりますが、長寿(ロングセラー)商品が売れ続けるためには、絶え間ない工夫が必要なのです。
私はこれを、商品のアンチエイジングと呼んでいます(笑)。
人間も商品も日々のアンチエイジングを行うことで、いつまでも健康でいられるんですよ。
コンビニやスーパーよりもさらに気軽にアクセスできる環境が整っています。少子高齢化が進んだとしても、次の成長をけん引するのは若者です。学校に設置する場合は、保護者からの反対もあるそうです。しかし、アイスを食べる時のルール作りを行ってもらうなどの教育現場ならではの工夫を用いることで、2024年には過去最高の売上高を記録したのだそうです(『日経XTREND』2025年5月号、2-5ページより)。
まとめになりますが、長寿(ロングセラー)商品が売れ続けるためには、絶え間ない工夫が必要なのです。
私はこれを、商品のアンチエイジングと呼んでいます(笑)。
人間も商品も日々のアンチエイジングを行うことで、いつまでも健康でいられるんですよ。
参考文献
三田村蕗子(2015)『「ポッキー」はなぜフランス人に愛されるのか?』日本実業出版社。
大石 芳裕(2016)「グローバル・マーケティング最前線(第5回)広告の複合化戦略 : 江崎グリコの事例を中心に」『日経広告研究所報』(日経広告研究所 [編])50巻3号、34-39ページ。
島森 清孝(2003)「江崎グリコのブランド戦略--「ポッキー」のロングセラー化を事例に」『食品加工技術 : 日本食品機械研究会誌』(日本食品機械研究会 [編])23巻2号、64-68ページ。
「江崎グリコ「セブンティーンアイス」 過去最高売り上げ 今なぜ「高校」で増殖?」『日経X trend : 新市場を創る人のデジタル戦略メディア』(日経BP社)85号、2-5ページ。
「時事深層 チョコフレークも生産終了 知名度では売れず、定番品に逆風」『日経ビジネス』2018年10月15日号、18ページ。
「それにつけても…時代の流れ、「カール」東日本で販売終了、明治、登場から半世紀。」『日本経済新聞(朝刊)』2017年5月26日。
「「チョコフレーク」来夏までに生産終了、森永製菓。」『日経MJ(流通新聞)』2018年10月1日。
「定番商品、淘汰進む、セブンなどPB伸びる、消費者の安さ志向つかむ。」『日本経済新聞(朝刊)』2018年11月19日。
「特集 「ポッキーだけ」とは言わせない ASEANで成長持続へ 江崎グリコの二刀流」『日経ビジネス = Nikkei business』2023年7月31日号(2201号)、34-39ページ。
「ヒット商品に秘密あり(12)ポッキーチョコレート 江崎グリコ」『地上 = Good earth』(光の家協会)2004年12月(58巻12号)、99-101ページ。
グリコ「ポッキー商品紹介」
https://www.pocky.jp/products/index.html
グリコニュースセンター「「Pocky」 が世界売上 No.1(※)としてギネス世界記録™に2年連続で認定(※)されました 世界売上No.1を記念して、世界のポッキーが楽しめる施策も実施!」2021年10月15日。
※ 最大のチョコレートコーティングされたビスケットブランド(最新年間売上,2020年)
国際市場調査のデータ分類上、クリームでコーティングされたビスケットも含まれる
今回の記録にヨーロッパで販売する「MIKADO」は含みません。
https://www.glico.com/jp/newscenter/pressrelease/36541/
NIKKEIリスキング「世界で最も売れた「ポッキー」 50年超え人気の理由」2021年8月3日。
https://reskill.nikkei.com/article/DGXMZO74286320Z20C21A7000000/
ロッテブランドサイト「トッポ」
https://www.lotte.co.jp/products/brand/toppo/
じゃがりこ公式WEBサイト「担当者が解説!じゃがりこってこうやって作ってます!」
https://www.calbee.co.jp/jagarico/article/detail/293
Baton d'or バトンドール公式サイト「Line up」
https://www.glico.com/jp/batondor/lineup.html
