2025年7月10日(木)、金融概論の授業に消費生活相談員の澤村美賀様をお招きして、「契約社会を生きるために役に立つ話」と題して講演を行っていただきました。学生にとっては、日々の生活に潜む消費者トラブルについて知ることができ、大変有意義な時間になったようでした。

最初に、今を生きる私たちの消費行動が、社会経済の情勢や地球の環境に影響を与える可能性があることを理解して、将来世代により良い社会をつなぐために積極的に行動しなければならないことを学びました。責任ある私たち消費者にできることには、以下のような例が挙げられ、無理のない範囲で取り入れることが求められます。
① エコマークやフェアトレード商品など環境に配慮した商品を選ぶ
② 食品ロスを減らす
③ 地域を応援する商品(地元の農産物や海産物)を購入する
④ 節電や節水を心掛ける
⑤ 事業者へ意見を伝える


消費者の役割のお話の後は、本題である日々の消費にかかわる「契約」「消費者トラブル」についてお聞きしました。

消費者(客)と事業者(お店)との間の契約は、お互いが契約内容について合意した時点で成立します。みなさんの中には、お店で購入した商品を交換・返品したければ、レシートを持って行けば交換・返品してもらえると思っている人がいるかもしれません。実は契約は一方的にやめることは不可能で、お店には返品や交換に応じる義務は原則的にはありません。交換や返品に応じてもらえるのは、それはあくまでもお店側のご厚意(サービス)なのです。

しかし、私たちはついつい衝動的にモノを買って(契約して)しまいがちです。そして、そのことを後から後悔することもあります。また、未成年者が、親の同意なしに高額商品を購入し、大きな問題になることもあります。前者の問題に対してはクーリングオフという方法があります。これは「訪問販売など一定の取引について、消費者が契約した後に冷静に考え直す時間を与え、一定の期間内であれば、一方的に無条件で契約を解除できる制度(全国消費生活相談員協会)」です(ネットショッピングは、その対象外であるため要注意)。

では、後者の親の同意のない未成年者の契約はどうかというと、原則として取り消しをすることができます。しかし、自分は成人であるや、親の同意を得ていると嘘をついて相手をだましたり、契約した金額がお小遣いの範囲であったりした場合は取り消しができないことがあります。今回のお話を聞いた学生は全員成年年齢に達していますので、未成年者取消権は行使できません。

大学生に限らず、現代はインターネットを利用した商品やサービスを購入する機会が増えています。そして、この取引においても、気を付けないとトラブルに巻き込まれることがあります。例えば、みなさんもこの間見たインターネット上のサイトの表示が変更されていた、または消えていたという経験があるかと思います。こういったことから消費者トラブルに巻き込まれることもあります。この対策としては、契約完了などの重要な画面はスクリーンショット等を行うなどして記録をとることが考えられます。

また、商品やサービスの購入代金の支払いについても気を付ける必要があります。買い物は自分のお金の範囲内で行うことが最も重要です。クレジットカードの使用にも気を付けましょう。クレジットカードの支払いは、通常、利用した月の翌月に指定口座から引き落とされますが、それまでは借金をしていることになります。分割払いやリボルビング払い、キャッシングなどを利用した場合は、手数料や利息が発生します。借金は、自分の「所得の前借り」です。前借りをたくさんすると、将来の自分の生活が苦しくなるだけです。

さらに、講義では「副業」に関するトラブルについても事例を提示してお話しをしていただきました。最近は、副業に多くの人が関心を持っています。自分のスキルを活かせたり、在宅で仕事ができたりするため人気になっているようですが、ここでも注意が必要です。
副業でも簡単に儲かる方法はありません。「儲かる」という言葉につられて、安易に個人情報を開示したり、お金を振り込んだり、借金をしないようにしなければなりません。
誰でも被害者にはなりたくないものですが、それだけでなく知らず知らずのうちに加害者になってしまう可能性もあります。自分の人生を台無しにしてしまうようなことがないよう気を付ければなりません。

今回の講義では、消費者トラブルに合わないためにさまざまなポイントを教えていただきました。しかし、これは現時点でのポイントで、すぐに変化する可能性があります。常にこうした情報に耳を傾けることが大切です。そして、困ったときは、1人で悩まず、周囲の人に相談しましょう。「消費者ホットライン(188)」に電話をして相談することもできます。