<半端ないプロローグ>

JR系百貨店で、駅ビル型ショッピングセンターの立ち上げなどを行っていた池澤教授。商業施設のプロとして「商業施設の現在の流行とは?」「どんな場所に人が集まる傾向があるのか?」など実態や消費者の行動を語ってもらった。

ブランド志向と経済成長の関係性。

聞き手:前職では、百貨店で働かれていたとお聞きしました。どんな業務をされていたのですか?

池澤:ジェイアール東海髙島屋に入社し、名古屋駅にある約5万5000平米の広さを誇る「ジェイアール名古屋髙島屋」の立ち上げメンバーとして働いていました。その後、「JRゲートタワー」という駅ビル型ショッピングセンター(3万2,000㎡)の開発業務にも携わっていましたね。

聞き手:名古屋駅の!知っています。そんな百貨店・小売業界のプロから見て、業界全体の変化など何か感じますか?

池澤:百貨店・小売業界なんて、変化ばかりですよ。

聞き手:どんなところですか?

池澤一番は消費者のモノを選ぶ基準が大きく変わったことです。
昔だと百貨店やショッピングセンターに「財布を買いたい…」とモノ自体を求めて来る人がほとんどでしたが、今では「〇〇のブランドの財布が欲しい…」とアイテムよりもブランドで選ぶ人が増えています。

聞き手:たしかに、ブランドで選んでしまっています。

池澤:しかも面白いのが、ブランド志向と経済成長には密接な関係がありました。
経済が成長することで、国内市場にモノが溢れ、いつしか人はありふれたモノでは物足りなくなり、ブランド志向になっていくのです。
日本もそうですが東南アジアだとタイなんかも経済成長を遂げ、ブランド志向の方が増加傾向にありますね。

聞き手:知りませんでした。

池澤:海外に行ったときは、そういった視点を持って百貨店やショッピングセンターを訪れてみると新しい発見に出会えるかもしれませんよ。

集積地は、店の価値を向上させる?

聞き手:先生は百貨店やショッピングセンターを研究される傍ら、ラーメン店の調査もされているとお聞きしました。

池澤:実は大の集積地好きで…

聞き手:え、集積地とは何ですか?

池澤:集積地とは、業種問わず店舗が集まったアメ村などの商店街、ショッピングセンターを含みます。そのうち、たとえば東京や新横浜、京都、博多などラーメン店が複数集まった商業施設がありますよね。あのような同じ業種の店舗が一堂に介する場所のことを「(同業種)集積地」と呼びます。様々な集積する場所を研究対象としているのですが、最近では全国のラーメン店の集積地を巡り、調査しています。

聞き手:全国ですか!半端ない!

池澤集積地の興味深いところは、店の価値を向上させるところです。

聞き手:店の価値を向上させる?

池澤:街にポツンと1店舗だけ建つ路面店とは違い、8、9店舗程のラーメン店が一気に集まることで、その場所に新しい価値が生まれ、人が集まり出すのです。

聞き手:価値が生まれる要因は何ですか?

プロのマーケターの極意を学べ。

聞き手:先生のゼミではプロのマーケターを招聘し、講義もされているとか?

池澤:そうですね。もともと知り合いの「ルクア イーレ」や話題の「バルチカ03」を開発担当したJR西日本SC開発の舟本恵さんに来ていただき、ゼミ生たちへゲスト講義をお願いしています。

聞き手:どんな講義ですが?

池澤:ルクア イーレやバルチカ03がどういう仕組みで成り立っているのかなどをお話いただいていますね。

聞き手:気になります!

池澤:バルチカ03で言うと、西梅田で働く30代後半~40代の会社員が1,000円以下で食べられるランチ店がないことや、夜もリーズナブルに呑みに行けない状況があり、高コスパ・高回転のお店をあえて誘致することで、西梅田という街に新しい価値を生み出したというような、なかなか普通には知ることのできないお話を聞くことができましたね。

聞き手:なるほど!

池澤:他にもその講義では舟本さんに講評もお願いしています。

聞き手:講評?

池澤:そうです。どんな商業施設なら学生が行きたいかをチームで考えてもらい、そのアイデアをプロの視点で講評していただくのです。例えば、ショッピングした後にサ活(サウナ活動)ができる温泉施設を作るといったものや、インバウンド向けに日本文化を体感できるショップを作る、など個性豊かなアイデアばかりで興味深かったですよ。

聞き手プロに学び、プロに意見を聞ける場、いいですね。

池澤:その他にも、私のゼミでは様々な企業の方にお越しいただき、実践的な講義を行っていただいています。みなさんその道のプロだからこそ、面白い、面白くないだけではなく、きちんとそのアイデアは収益につながるのかまで考え講評いただけているので、学生たちにとっても大きな学びにつながっていると感じます。