安城ゼミでは、ここ数年、基礎演習(2年)および専門演習(3年)において、香水のラベルやコーヒーのパッケージデザインを考える課題に取り組んできました。学生たちは、どのような層に向けた商品なのか、どのようなイメージを持つブランドとして展開するのかを考えながら、企画やデザインの検討を進めています。
                
                           香水のラベルデザイン案(生成AIを使用)

  
                   コーヒーのドリップバックのパッケージデザイン案(部分的にフリー素材を使用) 
こうした課題に取り組む過程で、学生からは、生成AIやフリー素材をめぐって、「どこまで使ってよいのか分からず不安」「知らないうちに問題のある使い方をしてしまっているのではないか」といった声が上がっています。一方で、それが法的なトラブルや炎上に発展しうる問題であるという自覚がないまま既存のデザインを参考にしてしまうケースも見受けられます。

近年、ファッションの世界では、「ファッションロー」という言葉が広く知られるようになり、ファッションビジネスを考える上で法律の問題を避けて通ることは難しくなってきました。そこで今回は、2025年度のゼミ活動の振り返りも兼ねて、ファッションローがご専門の弁護士・海老澤美幸先生にデザイン制作や素材利用において注意すべき法律上のポイントについてご教示いただきました。
 香水ラベルやコーヒー豆のパッケージデザインなどの商業デザインに当たっては、法的な観点から以下の各点に留意することが重要です。

  • パッケージに描かれたイラスト、ブランド名やロゴマーク、容器の形状はそれぞれ異なる法律で保護されている可能性があります。例えば、ブランド名やロゴマークは、商標登録されている場合には商標権で保護され、有名なブランド名やロゴマークであれば不正競争防止法2条1項1号または2号により保護されます。この場合、同じようなブランド名やロゴマークを使用すると、商標権侵害や不正競争防止法違反に当たることになります。
    また、イラストについても著作権が発生している可能性もありますし、商標登録されている可能性もあります。
    商品のデザインが第三者の権利を侵害してしまった場合、商品の販売を中止し、在庫商品を回収して廃棄しなければならないとともに、高額な損害賠償義務を負うリスクがあります。また、クライアントからの信頼を失うことになりますし、SNS等で炎上して「パクリデザイナー」とのレッテルを貼られ、活躍の道を閉ざされてしまうこともあります。
    こうした事態を起こさないためにも、以下の3つのプロセスを意識しましょう。
  • ①どの部分がどの法律で保護されているかをきちんと知る
    ②安易に第三者のブランド名やロゴマーク、イラスト等を模倣しない(参考にすること自体は問題ありませんが、模倣しないようにしましょう)
    ③自身のデザインが第三者の権利を侵害していないかを事前にチェックする
  • 生成AIは今やデザイン業務になくてはならないツールとなっています。
    生成AIはプロンプトに沿った画像やイラスト、ロゴマーク、テキスト等を容易に生成できる便利なツールである反面、第三者が権利を持つ画像やイラスト、ロゴマーク、テキスト等に類似した生成物が生成されることがあります。そのため、生成物が第三者の権利を侵害していないかを事前に十分確認することが重要です。
  • 第三者の権利を侵害していないかどうかを確認する方法はいくつかありますので、その一例をご紹介します。
    ✓ 似たような画像がないか、ブランド名や商品名、ロゴマーク等がすでに有名かどうか等は、インターネットで画像検索する方法が有効です。
    なお、公表前のデザインについては守秘義務の点に注意してください
    ✓ブランド名や商品名、ロゴマーク等が第三者に商標登録されているかどうかは、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)により検索することが可能です。また、パッケージの形状等が意匠登録されているかどうかも、このプラットフォームで検索することができます。
    ただ、検索に当たっては商標権や意匠権等の知識が必要ですし、検索方法や結果の見方には専門的な知見が必要となりますので、専門家にご相談いただけると安心かと思います。

  • フリー素材は、質の高い素材を無料または安価で自由に使用できる点でとても便利なツールです。
    他方で、フリー素材は、利用規約により使用条件が決められており、使用条件を守らない場合、著作権侵害等の権利侵害に当たることになります。
    そのため、フリー素材を使用する際は、必ず事前に利用規約の内容をしっかり確認することが重要です。
    例えば、商用目的で使用できる点数が決められている、商用目的で使用できる範囲が限定されている(Tシャツの柄として使用する場合のように、イラスト自体を主たるコンテンツとして使用する場合はNGなど)、写真に写っているモデルについては別途モデルの許諾が必要とされている、などの条件が決められていることが多いことから注意が必要です。
    また、「フリー素材」等のキーワードでインターネット検索をして表示された素材が、実際にはフリー素材ではないこともあります。インターネット検索で表示されたからといって安易にフリー素材と判断することなく、そのフリー素材が提供されているサイトを確認し、利用規約を十分チェックしましょう。

  •  デザインを進める中で迷ったり悩んだ場合は、近くの信頼できる先生方や専門家に相談していただくのがよいと思います。
     法律を知ることで、皆さまのクリエイティブな活動が実りあるものとなりますよう、微力ながら応援しております。

    2026年5月5日

    弁護士/ファッションエディター
    海老澤 美幸