産官学連携先:KCI京都服飾文化研究財団

 今年度の安城ゼミ3回生を対象とするキャリアゼミでは、京都国立近代美術館とKCI(京都服飾文化研究財団)のコラボレーションによる特別展「LOVEファッション——私を着がえるとき」展の見学会を行い、「ファッションとは何か」という根本的な問いに関する考察を深めていった。
  • 「こぶドレス」として知られるコムデギャルソンの1997年春夏コレクション

  • 川久保玲(コムデギャルソン)が手がけたオペラ『オルランド』の舞台衣装(2019年)

  • ジュンヤ・ワタナベ(渡辺淳弥)の2000年秋冬コレクション

学生活動状況報告

■流通学部3年 渡 夢現
 毎年のように、トレンドは変わっていき、過去に流行したファッションを実際に目にできる機会は非常に限られている。コロナ禍でバレンシアガが近未来的なヴァーチャルと融合した作品を発表していたことは、今回のLOVEファッション展に行かなければ知ることができなかった。この作品を知り、AIと人間が共存したヴァーチャルのような空間の実現がどのようなことか具体的にイメージできるようになった。

■流通学部3年 植田 愛衣
 
近年、ファッションの世界では、昔流行ったスタイルが再度流行るというブームが起こっている。これは、目新しいものが増え続ける現代において、なかなか目にすることができない過去のものや昔のものが求められるという逆の現象が起こるようになったのではないかと考えた。今回のLOVEファッション展で展示されていたセリーヌの黄色のファーのパンプスを近年のブームと照らし合わせてみると、ファーという過去に流行ったアイテムが現代のファッションに影響を与えていることが分かる。もう一つの例として、ヘルムートラングの作品は、シンプルでありシャープなアイテムばかりであったが、最近の「シンプルこそおしゃれ」というノームコアの考え方に通じる部分があり、ノームコアのはしりはヘルムートラングのミニマリズムな世界観ではないかとも考えさせられた。「こんなファッション思いつかない!」と感心しつつ「今も同じようなアイテム流行ってるよね」という会話を見学しながら友人と交わした。時代を巡るファッションは非常に興味深く、いつまでもファッションを追求したいと感じた。

ゼミ集合写真

参加学生一覧

井野 壮志、 義村 真海、 石戸 杏奈、 福田 沙弥、 宮城 杏海、 甘利 俊介、 恒田 楓、 妻木 萌香、 山本 七海、 植田 愛衣、 登 佑香、 別苻 志遠、 渡 夢現、

連携先コメント

KCI京都服飾文化研究財団
アシスタント・キュレーター 五十棲 亘 様

 ファッション展は、衣服やスタイルを通じて、社会的・文化的な価値を再考する重要な場です。日常的なテーマであるファッションを美術館という空間で展示することにより、衣服が持つ表現力や意味が新たに浮かび上がります。展示を通じて、ファッションが単なる消費文化にとどまらず、個人や社会のアイデンティティを表現する強力なツールであることが認識されます。
 「LOVE ファッション─私を着がえるとき」展は、「人々の装いにまつわる情熱や願望」=「LOVE」に焦点を当て、ファッションの持つ多様な側面を探求することを目的としています。本展は、単なる衣服の展示にとどまらず、衣服がどのように私たちの感情や社会的つながりを形成し、また変化させてきたかを示しています。学生の皆様にとって、この展覧会がファッションの社会的・文化的役割に対する関心や理解を深める一助となれば幸いです。

教員コメント

経営学部
安城 寿子 教授

 「ファッションとは何か説明してください」と言うと、答えに窮する学生が多い。教員である私自身、唐突にこの質問をされたら、的確かつ簡潔な返答ができないかもしれない。
 確かに言えるのは、ファッションは、買って、着て、楽しむだけのものではないということだ。例えば、「なりたい自分」と「現実の自分」の間で葛藤したり、服装をめぐる常識やルールに抵抗したりすることも含めて、ファッションだと言えるだろう。
 今回見学した京都国立近代美術館の展示は、「LOVE」すなわち「着ることへの愛」をテーマに、「自然にかえりたい」「きれいになりたい」「ありのままでいたい」「自由になりたい」「我を忘れたい」という5つの視点から、一つではないその愛の形に迫るものだった。見学に先立ち、本展示を企画したKCI京都服飾文化研究財団学芸員の五十棲様からレクチャーをいただいたことで、ゼミ生一同、「ファッションに向けられる私たちのLOVEとは何か」という問題視意識を持って見学に臨むことができたように思う。今回の展示とレクチャーは、ゼミ生にとって、上述したようなファッションが内包する複雑さについて考える好機となった。
 見学を終えたゼミ生からは、普段なかなか目にすることができない過去のファッションの実例を目の当たりにした感激も多く聞かれた。自分が生まれる以前に活躍を見せたデザイナーの仕事がその後のファッションに及ぼした影響の大きさやリバイバルしていることに驚いたというゼミ生もおり、ファッションの歴史を学ぶことの意義に気づいてくれたようだ。